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(未完)大魔界大戦 米軍VS魔王軍  作者: 北條カズマレ
第五章 異世界侵攻作戦
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第二十三話 大部隊、スクウェアで

二〇一七年五月二十八日時刻0900、

米国、ネヴァダ州、グルーム・レイク空軍基(エリア51)地から数キロ、スクウェア地球側入口

X+二十六日


 砂漠の太陽の光でほとんど見えないスマホの画面に、大統領が映っていた。


「国民の皆さん。この二週間弱という時間はどうだったでしょうか?私はあなた方の悲しみが怒りへと、そして断固たる決意へと変化していることを知っています。決意が行使するのは、正義の力です。求めるのは自由という大義です。そして私は皆さんの決意の代行者です。本日、わが軍は私の命令の元、行動を開始しました。どこへ向けた行動なのか。答えはネヴァダの砂漠にあります。この映像を見てください……。(中略)敵の正体はいまだ判然としません。しかし敵が皆さんの決意の大きさ、真実の勇気を目の当たりにすることだけは確かです。主役となる兵士たちの自己犠牲は国民から最大級の感謝と尊敬を受けるでしょう。その任務は長いものとなるでしょう。しかし約束します。クリスマスまでには彼らをあなたたち家族のもとに返します。いくら正義の後押しがあるとはいえ、積極的に向かいたい場所ではないかもしれません、しかし、誰かがやらねばならない、そういう戦いなのです。そう、今日、この時、私は敵がおぞましい方法で告げてきた宣戦布告に、応じます。アメリカとアメリカの自由と正義を信じるすべての人々に、神のご加護がありますように」




「そう。何だか、不思議なものね。大統領の演説より前に軍事行動を知るなんて」


 メーリルはスマホをスリープモードにする。そして傍を行くトレーラーに目を移した。


 トレーラーが運ぶのはM1A2エイブラムス主力戦車(MBT)


 そしてトレーラーの後に続くのは、戦車が消費する莫大な燃料を運ぶオシュコシュ燃料車。


 その後には視界を埋め尽くすほどのM1126ストライカー装甲車。


 そして少数だがファランクスCIWSを載せた重拡張起動戦術トラッ(HEMTT)ク。


 その長大な車列がスクウェア前に設営された仮設駐屯地へと入って行く。


 集積された物資、並べられた車両、人員一個師団分12000名。


 クリス・リーヴィス少将指揮下の特別編成異世界派遣師団。


 大急ぎで編成されたこの部隊は寄せ集めの急ごしらえで頼りなかったが、それでもやるしかない。


 スピードが命なのだ。


 もう一度あのトビトカゲーー米国側呼称フライングクロコダイルーーの襲撃があったら、確実にアメリカは国家としての安定を失う。


 少なくとも確実に政権は倒れるだろう。


 それを防ぐための第一の矢がこの部隊というわけだ。


 今回の任務の主眼は本格的な戦闘ではないが、万全を期しての陣容だ。


 それを率いるのは猛将だった。


「しっかしこれだけの地上軍派遣たぁ大統領も思い切ったじゃないの」


 指揮司令専用車両の内部でシートにふんぞりかえったリーヴィス少将が言う。


 答えるのは師団参謀長。


「GPSが正しく作動しませんし、そもそも戦闘捜索救難(CSAR)が二次的被害をもたらさない保証がありません。我々の出番なのです」


「へっ、空軍(金食い虫)が肝心な時に役立たずだな」


「パイロットの命は我々陸軍将兵より重いですから」


 やがて編成が完了する。


 リーヴィス少将は通信機にインカムを繋ぐよう指示し、訓示を述べる。


「いいか野郎ども! 海兵隊の脳筋どもにファックされる前の処女地をブーツで踏みしめられる栄誉にあずかれるのはこれが最初で最後だろう! 何せこれはスクウェアがネヴァダにある限り『国内』問題だからな! ハッハァ! 奴らに出番はないわけだ! すでに死人が大勢出ているが、気にすることはない! 冒険気分で行こうじゃないか!」


 インカムをオフにする。これが彼のやり方である。


 師団参謀長にウィンクすると、彼はうなづく。


 そして作戦についての話に移るのだった。


「作戦を確認します。敵の『兵器』、フライングクロコダイルが湧き出てきているのは、無人機の偵察によればこの地図内の四ヶ所です。ここに3000名ずつ兵員を送り、威力偵察を実施します。同時に行うことで敵の守備が貼り付け防衛なのか機動防御なのかがはっきりします」


 リーヴィス少将はうなづいた。


 あまり練り上げる時間はなかったし、今投入できる全戦力に担わせるには半端な任務だったが、これがとりあえずの方針だ。


 師団参謀長はタブレットに表示された暫定「異世界地図」の一点を指し示す。


 それはスクウェア異世界側末端から西に200kmの地点だった。


「ここが戦略上重要な拠点である可能性が一番高いかと。地形的条件、造成。全てが重要施設であることを指し示しています。敵策源地ですらあるかもしれません。例の部隊を突っ込ませる価値は十分にあるかと」


 リーヴィス少将は顔の前で指で円を書きつつ、


「我々に一番欠けているものは情報だ。それを補えるならどこにでも突っ込ませるさ」


 いよいよ出発の合図をしようとしたその時、前方車両から無線が入った。


本部(HQ)、スクウェアの内部に人の集団が……。こちらに向かってきます」


「何だと?」




 ブロウズたち、勇者パーティと避難民達は起伏のある荒野のなるべく平らな場所を選んで走っていた。


 全力で、だ。


 何故か?


 後ろからアーマード・ゴブリンの大群が群がってきていたからだ。


「おい! ヒゲのノッポジジイ! どうにかしやがれ!」


 ブロウズが叫ぶ。


「うるさいぞ若いの! 背中に人一人背負ってて戦えるか! お前こそそのバンバンうるさいのを使ったらどうだ!?」


「こいつは効かねえんだよ! どうやらまるで測ったみてぇに小銃弾が効かねえギリギリの耐久度らしい!」


 走りながらの会話、シーザーはアルゥールを背におぶっている。


 結局、ピクシアの魔法でも全快までは回復しなかったのだ。


 そのアルゥールが弱々しくも声を上げる。


「みな……逃げろ…………わしが、ここで……食い止める……」


 自分と同じ程度の体重の人間をおぶりながら全力疾走すると言う、およそ老人にあるまじき高負荷に喘いでいたシーザーは激昂する。


「バカを言うなアルゥール! お前はいつもそうやって!」


 その時、避難民の一人が転んだ。


 魔法で浮遊して皆に追いすがっていたピクシアとフリィシカが取って返してその方へ向かう。


 転んだ壮年男性のすぐそばまでアーマード・ゴブリンの魔の手が迫っていた。


氷の壁(レードゥス・シエナ)


 フリィシカの魔法、避難民とアーマード・ゴブリンの群れの間に白い壁が出現する。


 氷の防御壁だ。


 しかしそれは時間稼ぎにしかならない。


 壁の長さが足りず、すぐに迂回されてしまう。


「ふっ、歳は取りたくないねえ……」


「フリィ、もう潮時ですね……いくらかの民を見捨てねばならないようです。悲しいことですが…………。ああ、スクウェアと呼ばれているのでしたっけ? あの転移門はすぐそこだと言うのに……あ!? あれは何でしょう!?」


 ブロウズも気づいた。


「お……おう! 来やがったな!?」


 砂煙を濛々と上げて近づいてくるのは角ばったシルエットのM1戦車だった。


 戦車が数両、スクウェアを越えて避難民とブロウズたちを囲み守るように走って来たのだった。


 車両搭載の無線が声を伝える。


「こちらアルファチーム指揮車両。こちらの判断で異世界へ進出。民間人を保護する。なお、先頭には友軍兵士の生き残りと思われるものが一名……」


「こちら二号車! 氷の壁を回って変な奴らがこっちへ来やがる! 対応指示を求む!」


「各個の判断で攻撃! 攻撃!」


 車内では車長が指示を飛ばし、砲尾から戦車砲弾が装填される。


 弾種は、榴弾。


撃てっ(ファイア)!」


 轟音を立てて火を噴く戦車砲。


 初めての大音声に異世界人たちは腰を抜かしかけた。


 砲弾はアーマード・ゴブリンの群れの中心に吸い込まれていき……。


 正確にど真ん中で爆ぜた。


 アーマード・ゴブリンの先鋒手段の過半が爆煙とともに四散した。


「命中、命中! 次弾!」


 各車両が撃ちまくる。


 砲塔上にマウントされた重機関銃も弾幕を形成する。


 これは小銃とは違い、一撃でアーマード・ゴブリンの鎧を引き裂いた。


 ゴブリンたちは早々と撤退した。


 もともと、小心な性格の魔族なのだ……。




 戦車は一旦スクウェアの地球側に戻り、兵員みんなで衰弱しつつあった避難民を保護しに回った。


 水が配られ、毛布が配られ、一週間近く異世界をスクウェアまで旅した彼らの労を癒さんとした。


「久々の青空が拝めるとは……。助けに感謝する、見知らぬ世界の人よ」


 立って喋れるくらいには気力を振り絞ったアルゥールが、リーヴィス少将に言った。


「別に構わんよ! 誰かが危機に瀕していたらそれを救うのが俺らの仕事だ!」


 傍らにはメーリルがいる。


 危機が去ったと見るやすぐさま様子を確認しに来たのだった。


 ぞろぞろと地球側に入ってくる避難民たちを横目に、


「ねえ! あれどうやったの? あの氷の壁、あなたたちがやったんでしょ? 一体どうやって……」


「ああ、あれですか」


 フリィシカが杖に身を預けながら答える。


 少し、消耗したようだ。


「普通の魔法と比べたらかなり高度だからねえ。不思議に思っても仕方な……」


「魔法ですって!? やって見せて!」


 周りが呆れるほどの勢いでメーリルは食いつく。


 フリィシカは魔法を見たこともない田舎者なのかと判断し、魔法を使って見せようとする、しかし……。


「あら?……あらあらあら?」


 皺だらけの指をいくら振っても、ずっと昔に唱えなくてもよくなった詠唱を試みても、どうしても何もできなかった。


「おかしい、一体これはなんだろうねえ……」


 困惑するみんなの輪の中に、色々と面倒な手続きを済ませて帰って来たブロウズが割り込む。


「あ? こっちでは魔法が使えねえのか? 変だなあ。言葉は通じてるってことは、魔素カルマプラズムってやつはあるんだろ? 一体どういう……」


 メーリルは瞠目する。


「その話、詳しく教えて頂戴」

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