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第六話  『戦闘のその後』

「……」


いやぁしかし先ほど絶命してしまったケンタウロスさんだが、森の方角からやってきたとはいえ知性を宿していたように見えた。


明らかに敵意を持っていたものの一言も声を発することなく即退場となってしまったことに少しばかりこれで良かったのだろうかという不安がよぎる。


というか、視覚と聴覚がはたらかないと、世界を完全に知覚できない。


 辺りは真っ白で何も見えないし、耳からはキーンといった音以外の何の音も聞こえない。この何も聞こえず、何も見えないというのは地味に怖いものがある。まるで、自分がどこか違う世界で一人きりになってしまったのではないかと。


 一番怖いのは、このようなことをさらっとやってしまうシュナちゃんであるが…。


 しかしこれだけデカい音と衝撃を響かせていたのだから、誰かしら様子を見にくるのは確実だ。シュナちゃんはなんと言い逃れするつもりなのか…。


 とりあえず視覚と聴覚が復活するまで何もできない。この状態じゃ見張りもできないし。


 お?ということはつまり…。


 ここは、二度寝のチャンスである!!


 我ながら見事な考えに惚れ惚れする。


 さらに、いい具合に耳が聞こえないから、今の世界は静かな環境で眠るにあたってはちょうどいい。それだけではない。この養分を失い干からびたこの地面は、ひんやりとサラサラしていて意外と寝るのに快適なのだ!


 いや、別に二度寝をしたくてしてるわけじゃないんだよ?


 こうした方が早く回復できるからやむなくしているんだとそこだけは勘違いしないでいて欲しい。


 などとと一人で誰かに言い訳をしつつ、俺はそこで横になる。ヒンヤリとした地面に、興奮で火照った体の熱が放出されていくのが心地いい。


 そこまで考えると俺は意識を手放す。やはり二度寝は最高だぜ…。






 そしてその場に残ったのは、先ほどの黒龍が起こした大爆発の影響で軽いクレーターになってしまった地面と、おびえて急に叫びだしたかと思えば今度は急に睡眠をはじめた謎の魔物。そしてひとり残されてしまったシュナである。


「タツキ?」


 シュナは眠っているタツキに気づいてから何度もこうして呼びかけているものの、タツキからの反応はない。


 ケンタウロスが怖くて気絶してしまったのだろうかと考える彼女には、自分こそが彼がそういった行為に駆り立ててしまった本当の原因だという自覚は皆無であった。


 正確には、彼女が直接の原因というよりもタツキの二度寝にかける情熱こそが直接の原因とも言えるが。


「んー、これはタツキいくら起こしても起きそうにないなぁ。こうしててもあれだし残りの分全部片付けちゃおっと」


 とそれだけ言い残すと、何事もなかったかのようにシュナは作業に戻る。


 元より知覚能力に優れる彼女には、見張りなど不要だったのだ。その事実がタツキに伝えられることはなかったのだが。


 再び辺りに地響きと雷鳴が響き渡り、閃光がほとばしり始める…。



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