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第三十話   『ザックvsザギュートⅡ』

 ザックは確かな手ごたえを感じた。先ほどの一撃に合わせて、もう一撃。ここまで入れればかなり相手にダメージを与えられただろう。だとしても、最後まで油断はしない。


 ザックは気を少しも緩めることなく、ザギュートに追撃をしかけようと跳躍する。


 しかし、ザギュートはそれを待ち望んでいるかのように嬉々とした表情を浮かべて立っていた。先ほどザックの攻撃が直撃したというのに、その様子は全くダメージが入っているようには感じさせない。その屈強な身体にはいかなる変化も見られない。


 いや、一点だけ先ほどと違う点があった。


 それは左手に握られているハルバード。先ほどまでは飾りのように後方に控えたまま一切表に出てこなかったそれが表に出てきている。


 それを見たザックの背筋に冷たいものが走る。


 何故か。


 まるでザギュートのその姿が一回りも大きくなったように見えたのだ。本当の敵がようやくその場に姿を現したように。今まで自分の自分の戦いは、その前哨戦でしかなかったのではないかという不吉な予感が頭をよぎる。


 しかし、どんな敵が相手であろうとザックに止まることは許されない。村の安全を脅かすものである限り、相手がどんなものであろうと戦士は戦わなくてはならない。それが戦士頭たるものであるのなら猶更のこと。


 ザックはその身をかがめると、地を半ば這うような姿勢で疾走を開始する。


 ザックはここが勝負時だと判断していた。つまり放つは先程までの小手調べの武技ではなく、ザック最強の拳。この武技を放つのは二年ぶりか。思い返せば、前回の戦士頭決定戦の決勝で放ったきりだ。その後は、全くもって発動させる機会に恵まれなかった武技でもある。ザックはそのかがめた姿勢で脚の動きを緩めることなく、己の右腕を大きく後方へと振りぬく。


 刹那ザックの右拳に灯がともるように、蒼白の炎がザックの右拳を覆う。その炎は、蒼白の閃光。蒼炎は灼熱の熱気を放ちながら、ザックの右拳から右腕全体にまで膨大する。蒼い火花を撒き散らし、辺りをその輝きで怪しく照らす、その蒼炎を身にまとう姿は、バジュラ最強の魔物である戦士頭が持つ至高の武技にふさわしい。


「食らえやぁ!!《鬼神爆砕撃》!!!!」


 極限まで威力を込めたザックの右拳が遂に放たれる。強者を前にしたことで戦士としてのリミッターが外れたのだろうか。その一撃はザックの人生最速の一撃であった。


 それを迎え撃つようにしてザギュートはハルバードを構える。しかし、それはただ構えただけではない。それを示すのは、ハルバードの刃に宿る、まるで憤怒を具現化したような紅のオーラ。それが意味することは即ち、武技の発動である。


「《カラミティ・スラッシュ/惨禍の斬撃》!!」


 ザックの豪速の拳に合わせるようにして、ザギュートのハルバードが振るわれる。


 真紅と蒼白。


 剛撃と斬撃。


 二者の激突によって辺り一帯に硬質な金属同士が激突したような甲高い音が響く。まるで激突の衝撃に耐えられなかったように空気が震えたようだ。


 しかし二者が拮抗することはなかった。一方の威力がもう一方を大きく上回ったからだ。


 大きく上回ったのは拳。


 村にかける溢れんばかりの思いが乗せられたザックの人生最高の拳が、ザギュートの殺意の刃を容易く打ち破る。ザギュートの振ったハルバードは大きく弾き飛ばされ、その姿勢が大きく崩れる。


 ザックの攻撃を受けた拳に少しばかりの痛みが走るが、支障が出るほどではない。そのままの勢いでザギュートを目がけて拳を打ち込む。


 戦士頭としての誇りにかけた、ザックの今持てる最高の一撃がザギュートに激突する。


 瞬刻その拳に秘められていた力が解き放たれる。


 ザックの右拳を中心として放射される蒼炎の奔流は火山の大噴火のごとく。


 その勢いは止められるようなものではない。その一撃を受けたザギュートは紙のように吹き飛ばされる―――――








――――かもしれなかった。


 もしもザギュートの斬撃が一撃のみで終わっていたとしたら。


 しかし、ザギュートの武技は終わってなどいない。


 弾き飛ばされたその先でも、そのハルバードには殺意のオーラが、あの拳との再会を待ち望むように煌々と輝いている。


 ザギュートに命中するかと思われたザックの拳は再び真紅のオーラを宿したハルバードと激突する。


 再び、辺りにつんざくような高音が響き渡る。


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