プロローグ~あたらな世界~
トライアングルヴェスペリア第2段です!
結界に閉ざされた世界、ハウル・クライアント―――。
かつて、クロウと言う名の敵の襲撃により、未曾有の危機に陥った世界。
その世界を救ったのは、1人の少女だった。
彼女の名は、ユフィア・ポアローゼ。
かつてこの世界を作り上げた人間、ロゼッタの現代最後の末裔の人間。
世界を救ったのは、その歌声だった。
天上なる歌声。世界のすべてを黙らせるその音は、世界に響き渡り、世界を救った。
危機を脱出し、完全な結界が張られたこの世界は、今はもうとても平和な世界と化していた。争いごとの無い、本当の平和が訪れていた。
そんな世界が誕生して、はや2年。
ここでまた、新たな物語が刻まれようとしていた。
見上げる先にあるのは、大きな千年樹。その前に1人佇む女性。
「あぁ、神様・・・」
女性はその場に跪き、千年樹に願いを込めた。
「まだ、誰も気がついてはくださらないの・・・?これ以上、どうしてわたくしたちを苦しめるの・・・?そんなの・・・あんまりですわ」
尊大な口調に似合わない、とても優しい声色。千年樹にそっと触れた途端、千年樹は光を放ちだす。
『気がついて、ここにいる・・・。私はここにいる』
彼女の声は、突然当たりに反響を始める。その声は次第に天まで上り、きっとこの上の世界につながっている。
『どうか気がついて。ここにいる。私はここにいるの・・・』
とても寂しそうに、彼女は言う。
(お願い、気がついてさしあげて・・・。ずっと苦しんでいますのよ?どうして、誰も気がついてくださらないの・・・?)
悲しそうに下げられた眉。そんな彼女に、そっと声をかけるものがいた。
「何を、しているの?」
「・・・なんでもありませんわ」
彼女は千年樹から手を離し、背後を振り返った。そこにいたのは、少しだけ内気に見える少女。とても美しい美貌を持ち合わせた、艶やかな黒髪の少女。そんな少女に、彼女は笑いかけた。さっきまでの悲しそうな表情が嘘のように、晴れやかに笑う
「大丈夫。なんでもありませんのよ・・・ユア」