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「それに、お前は先ほど断る理由に、自分は人間だから人間界に戻りたいと言っていたが、お前はもともと魔族だ。だから人間界に戻る必要などない」





………………はいっ!?






なにか受け入れがたい、信じられないような言葉が聞こえた気がした…



私が魔族?!



「えっと…嘘ですよね?」


もしくは冗談ですよね?


「嘘でも冗談でもない」


私の心を読んだかの如く、心内までハッキリと否定された。


「で、でもっ、私の両親は人間ですしっ…」


自分が魔族だという可能性を否定する為、自分が人間であることを示す。

すると魔王様は片手を顔に当て天井を仰ぎ、重いため息をついた。


な・・なんだろう…嫌な予感がする…


額に嫌な汗がつたう。


「人間から魔族の子は生まれん。片親が人間ならばハーフもあり得るが、生憎とお前の両親は二人ともがれっきとした魔族だ」




えぇえええええええ!!!!???



私は驚きのあまり硬直した。なんかもう、驚くことがありすぎてよく分からない。

その様子を見て、魔王様が「大丈夫か?」と声をかける。

その言葉にハッとし、何かの間違いだと頭を振り、思いつく疑問を叫ぶ。


「で、で、ででで、でもっ!二人とも見た目、人間と同じですけどっ!?魔族の姿、形って人と違うんじゃないんですか?こう、角とか生えてて…」


と、両手で人さし指をたて、自分の頭につけてジェスチャーする。

その仕草をみて魔王様の表情が一瞬緩む。しかし、すぐ「ゴホン」と咳払いすると元の表情に戻り説明してくれた。


「まあ、魔族は色々な種族がいるからな。たしかに人型でそう言った角の生えている奴もいるし、お前が先ほど見て倒れた姿のやつもいる」


そういえば失神する前に見たことのない容姿をしたバケモノ…っていったらいけないのかもしれないけど、見た気がする…。

思い出してサッと顔が青ざめる。


「お前が育った世界ではああ言った容姿はなかなか見ないだろうが、まあ、そのうち慣れる。悪い奴らじゃないから大丈夫だ」


なかなかというか、まったくいない。慣れる…と言われても、そうですか、と頷けない。

彼はそのまま話を続ける。


「…して、先ほどの話の続きだが、見た目なら私も、そこにいるレノールも人間の容姿と似ている。だいたい、魔力の強い魔族は人間と同じような姿だ」


そう言われて、レノールと呼ばれた魔王様の妹を見る。彼女は妖艶に微笑むと力強く頷いた。


「そういうことじゃ。ずっとヒト世界で生きてきたぬしには分からぬかもしれぬが、ぬしも強い魔力を持っておるぞ」


妾には及ばぬがな、そう付け加えてレノールさんがウィンクする。


強い魔力…

そう言われてもよく分からない。でも結局二人が言ってることは、両親も魔族で、私も魔族ってことで…


「私には、よく…わかりません…」


そう言うだけで精いっぱいだった。


「―――っ」



魔王様がまだ何かを言おうとするとレノールさんが手で制し、代わりに口を開く。



「今日は色々とあって疲れたであろう。今宵はゆっくりと休むがよい。明日、ヌシの両親も呼んであるゆえ、聞きたい事は両親の口から聞くがよかろう」




『両親がくる』



その言葉は安心と絶望、両方を私にもたらした。


――魔界にくる


それは両親が人間ではない事を嫌でも受け入れなければならなかった。

私が何も言えず伏すと魔王様が私の前に佇み、手のひらを私の瞼の上にのせるとゆっくりと囁いた。


「レノールの言うとおりだ。今日はゆっくり休め」


その言葉を聞くと強張っていた身体の力が抜け、ベッドに体が沈み込む。そして、ぐちゃぐちゃな思考でとても眠れそうに無かった頭もスッと軽くなり、急に眠気が襲ってくる。

彼が手を放すと私の意識も遠のいていく。

今日は色々あった。信じれないこと、受け入れがたいこと。この眠気に身を委ねて何も考えずにいたい。でも…

薄れゆく意識の中、彼に手を伸ばす。彼の傷ついた顔がなぜか放っておけなかった。



「忘れてしまってごめんなさい、ヴィス…」


彼の名前が自然と口につき、私はそのまま真っ暗な世界へ身を委ねた。


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