番外編3:陽だまり亭、本日も満席!
アリーシャ公国が建国されてから数年。街で一番の人気店と言えば、やはり元祖である「陽だまり亭」だった。
今日の厨房は、いつもより少し賑やかだ。
「大公様! もっと火を強く!」
「はーい!」
エプロン姿のアリーシャが、慣れた手つきで大きな中華鍋を振るっている。今日は、お忍びで彼女が厨房に立っていた。公務が忙しくなっても、彼女は時々こうして、料理人としての原点に帰ってくるのだ。
店のホールでは、カインが腕を組んで、少し心配そうにその様子を見守っている。彼の隣には、なぜかまたしてもお忍びでやってきたレオニール王の姿があった。
「相変わらず、アリーシャ殿は楽しそうだな。うちの国のコックにも、彼女の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ」
「……あまり、うちの嫁をじろじろ見るな」
カインが、低い声でレオニール王を牽制する。二人のこのやり取りも、もはや恒例行事となっていた。
「お待たせしましたー! 新作の『お子様ランチ』だよー!」
アリーシャが、旗の立ったプレートを子供たちのテーブルに運ぶ。ケチャップライスにハンバーグ、エビフライ。子供たちの目が、きらきらと輝いた。
「わーい!」「おいしそー!」
そんな平和で賑やかな光景を、マルコがカウンターで酒を飲みながら、満足げに眺めている。
「へへっ、いい国になったもんだ。これも全部、俺の目に狂いがなかったおかげだな!」
陽だまり亭には、今日もたくさんの笑顔と、美味しい匂いが満ち溢れている。
この国の幸せは、いつだって、この温かい食卓から始まっていくのだ。




