第12章:未来へ続く食卓
それから、数年の月日が流れた。
アリーシャ公国は、大陸で最も豊かで、平和な国の一つとして、その名を広く知られるようになっていた。
私の農業知識とマルコの商才、そしてカインが率いる精強な騎士団。それらが噛み合い、国は安定した発展を続けていた。教育水準は高く、医療制度も充実し、民は皆、笑顔で暮らしている。
私とカインは、国民の祝福を受けて正式に結婚し、公私ともに充実した日々を送っていた。彼は騎士団長として国を守り、私は大公として民の暮らしに心を配る。仕事が終われば、私たちは普通の夫婦として、ささやかな食卓を囲んだ。その食卓にはいつも、私たちの畑で採れた新鮮な野菜が並んでいた。
一方、私たちが築いた幸福とは対照的に、クライスハイト王国はすっかり衰退の一途をたどっていた。
偽りの聖女事件と、有能な為政者(私だ)を失った打撃は大きく、立て直しは困難を極めた。結局、エドワードは王位を継ぐことなく、その責任を問われて王族の身分を剥奪された。王国は、今やアリーシャ公国から食料援助を受けなければ、国民を養うことすらできない有様だった。彼がかつて私に言い放った「惨めに朽ち果てるがいい」という言葉は、皮肉にも彼自身に返っていくことになった。
ある晴れた日の夕暮れ。アリーシャ公国の城の、広々としたダイニングルーム。
そこには、大きなテーブルを囲む、たくさんの笑顔があった。
私と、夫であるカイン。財務卿として相変わらず忙しく飛び回っているマルコ。友人として、今も良き相談相手でいてくれる隣国の王レオニール。そして、この国を支えてくれる、たくさんの仲間たち。
テーブルの上には、彩り豊かな料理が、これでもかというほど並べられている。黄金色に輝くローストチキン、瑞々しい野菜のサラダ、湯気の立つグラタン、そして焼きたてのパン。すべてが、この国の豊かな大地がもたらしてくれた恵みだ。
私はグラスを手に取り、立ち上がった。
「みんな、聞いてください! この国が、そして私たちが今日あるのは、ここにいる一人一人のおかげです。本当に、ありがとう!」
私の言葉に、みんなが温かい拍手を送ってくれる。私はカインと視線を交わし、幸せをかみしめるように微笑んだ。
そして、高らかにグラスを掲げる。
「さあ、いただきましょう! 私たちの未来に、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
グラスが触れ合う高らかな音と、人々の楽しげな笑い声が、豊かに実った作物で彩られた食卓に響き渡った。
私の物語は、追放という絶望から始まったかもしれない。
けれど今は、こんなにもたくさんの愛と、幸福に満ちている。




