第11章:アリーシャ公国の誕生
私たちの決意を伝え聞いたレオニール王は、満面の笑みで「素晴らしい決断です」と、その手を差し出した。
こうして、レオニール王の強力な後ろ盾のもと、ヴァイスの独立計画は着々と進められていった。シルベスタ王国は、独立宣言と同時にクライスハイト王国に圧力をかけ、軍事介入を牽制。食糧難と内乱で疲弊しきったクライスハイト王国に、もはやヴァイスに干渉する力は残されていなかった。
そして、運命の日。
ヴァイスの街の中央広場に設えられた式台の上で、私は、集まった数千の民衆と、各国からの使節団を前に、高らかに宣言した。
「本日、このヴァイスの地は、クライスハイト王国から完全に独立し、新国家『アリーシャ公国』の建国を、ここに宣言いたします!」
地鳴りのような歓声と拍手が、空に舞う色とりどりの紙吹雪と共に、広場を包み込んだ。
私は、民衆の総意によって、初代大公に即位することになった。カインは、正式にアリーシャ公国騎士団の初代団長に。マルコは、その商才を買われ、財務卿に就任した。
建国記念式典の夜には、盛大な祝賀パーティーが開かれた。各国の使者たちは、豊かな食料と文化を持つ、この新しい小国の誕生を心から祝福してくれた。レオニール王は、友人として私の隣に立ち、祝いの杯を掲げてくれた。
パーティーの喧騒が少し落ち着いた頃、私は一人、バルコニーに出て夜風に当たっていた。大公という、あまりにも大きな立場に、少しだけ目眩がしていたのかもしれない。
「アリーシャ」
背後から、優しい声がした。振り返ると、騎士団長の正装に身を包んだカインが立っていた。いつもより、ずっと凛々しく見える。
「どうした? 疲れたか?」
「少しだけ。なんだか、夢みたいで」
私がそう言うと、カインは私の隣に立ち、きらめく街の夜景を見下ろした。
「夢じゃない。あんたが、その手で創り上げた現実だ」
しばらくの沈黙の後、カインは、不意に私の前にひざまずいた。
「え……カイン?」
彼は、私の手を取り、真剣な、それでいて少し照れたような顔で、私を見上げた。
「アリーシャ。俺は、あんたに出会って、生きる意味を知った。これからの俺の人生すべてを、君と、この国に捧げたい。……だから、その、結婚してくれないか」
それは、彼らしくない、とてもストレートな言葉だった。不器用で、飾らない、心からのプロポーズ。
私の目から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。嬉しくて、愛おしくて、たまらなかった。
「……はい。喜んで」
私は涙ながらに頷いた。カインは、安堵したように微笑むと、立ち上がって私を優しく抱きしめてくれた。
こうして私は、国と、そして生涯を共にする最高のパートナーを、同時に手に入れたのだった。




