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第3話:『視線を交わす2人は』

──パチッパチパチッ

さっきの魔獣は食べられる……というか、魔獣は魔素のせいで毒が分解される。そして魔獣は死ねば魔素も消える……つまり、魔獣は安心して食べられる食料というわけだ。


──パチッパチッ

そのことから、俺ら家族は焚き火を囲みながらさっき狩った魔獣を食べていた。

こうやって家族でご飯を食べることは別に珍しくない……ただ、場所が変わったせいだろうか。

どこか新しく、どこか懐かしい。きっと、俺が求めていたのはこういうものだったんだな。


そう懐かしさに体を沈めていた俺に、話しかける声が2つあった。


「兄上……」

「お兄ちゃん……」

「どうかしたか?」


魔獣を食べ終え、ランフォール王国で5つ買ってきたテントの中に入ろうとした時、レイとヒラが俺を呼び止めた。


「……今日……お兄ちゃんと一緒に寝たいです」

不安な様子で下を向きながら、ヒラがそう言ってきた。不安そうにするヒラの願いに俺は、


「あぁ、家族だからな」

そう返した。


そうして3人でテントの中で寝転がる。

少し狭かったが……久しぶりに間近で感じる人肌は温かかった。


「おやすみ」


『おやすみなさい』


このちょっとしたやり取りが、家族の絆を保ってくれているのだろう。


ヒラもレイも、みんなでギュッと小さくなって、綺麗な星空の下、3人は眠りにつくのだった……。


◇◇◇


──翌日


ガタン、ゴトン

さすがに聞きなれた音を聞きながら、遠くに見えてくるガルティア王国に視線を向けていた。


「あれがガルティア王国か……何気に来るのは初めてだな……」


ガルティア王国、ランフォール王国の東に位置する国だ。西方へは任務で何回か行ったことはあるが、こっちの方向へは来たことが無い。


ただ……人の繋がりは1つあったか。

今は関係ない、けどな。


『お客さん、着きましたよ!』


運転手のおじさんが呼びかけた後、俺らは馬車を降りてその城門の前に立ち、ランフォール王国とはまた違ったような街に入る。


「父さん……これって」

「あぁ……確実に分かる」


『ランフォール王国よりも発展しているな。』


元王家らしからぬ発言を、親子揃って口にした。

でも仕方ないと思う。だって明らかにランフォール王国よりも住民や商売人が活気づいているんだから。


「とりあえずは、住む場所を決めなければならないわね」


そう言う母さんは俺らが付いてきているかも確認せずに、不動産屋へと歩みを進める。

母さんは普段はゆったりとしているが、こういう時は何だか抜けているというか、なんというか………。


──タッタッタッ

「兄上、行こう!」

「あ、あぁ……」


後ろから走ってきて母さんの元へ駆けつけるレイに呼びかけられ、俺は母さんの後へと続く。

どうしてだろうか……母さんが突き進む道には何故か安心感があり、付いて行ってしまう。

まるで母さんに人を惹きつける効果があるような……。


「ま、そんなことは今はいいか」


区切りをつけた俺は、店の中に入る。

王家であり、騎士の時のクセが抜けぬ警戒心の高い歩き方のまま。


その店の扉に手をかける。

──ガチャッ

扉を開けた俺は不動産屋の中に入る……が、


「ここは……冒険者ギルドじゃないよな?」

「うん……」


俺の足を掴んでブルブルと震えるヒラの目の先には……。


『おいおい……もっとやすくなんねぇのかァ?』

1人の、感じが悪い男だった。


『す、すみません……しかしこれ以上は……』

──バンッ


感じの悪い男は机に平手打ちをし、


『これはお願いじゃねえんだよ……』


そう店員に睨みつけた男は手を振りかざす。

……これはさすがに止めないとか。

しかし、そう思った矢先、


『何をしているのですか?』

『あぁ?なんだてめ……』


ある女性に話しかけられた男は、その鋭い目つきのまま振り返る。

ただその女性の顔を見た瞬間、その傷だらけの顔が青ざめていく。


『セイラ様……!?』


明らかに貴族そうな佇まいをした女性を見た瞬間、男は一礼してその場を逃げるように去った。


「シイラ、終わりましたよ」

「あ、あぁ……分かった」


あの騒動があった最中も、母さんは何も変わらず手続きを進めていたようだ。

俺は、母さんのその心の強さに苦笑した。


──コツ、コツ、コツ

俺はそのまま店を出る。

それにしてもあの女の人………セイラだったか?

どこかで会ったことがあるような………?


◇◇◇


あの家族の1人の男性……只者じゃありませんね。

歩き方、目線の配らせ方……そして、蜘蛛の巣のように張り巡らされた警戒心は、これまで出会った誰よりも……いえ、1人だけいましたか。


……とにかく、あの男の人は只者では無い。

──コツコツコツ

その足音さえ完璧なリズムで踏まれ、むしろ不審感が漂う。


──バタン

あの男の人は扉を閉める瞬間、一瞬こちらを向いた。

……私から“何かを感じた”のか。

いや……まさか、ね──────


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