女装(強制)執事の俺は今日も主人に手を焼いている
「アディー!!今すぐ来てー!!!!」
俺の主人兼レディスカーレット家長女、ネリッサ・レディスカーレットが屋敷中に響き渡る声で俺の名を呼んだ。
「なんですかお嬢様」
「大変よ!!」
「大変なのはなんとなくわかります」
走ってきたのかってくらいに汗だくの主人が目の前にいれば流石に大変なのは理解できる。
「大変なのよ!!」
「いやだから大変なのはわかりましたって」
「アディ!!」
「聞いてるので肩を揺らすのはやめてください」
お嬢様は肩を揺らすのをやめ、真剣な表情を浮かべた。
「...た、大変なのよ!!」
「早く要件を言ってください。要件がないんだったら仕事に戻りますよ。俺も暇じゃねえんで」
「あなたは私を一番に考えなきゃダメなのにそんなこと言わないでよ!」
「いいから要件を言えよお嬢様」
ぶすっとした表情を浮かべたお嬢様は俺にある雑誌を見せてきた。表紙を見る限りあきらかに服の雑誌だ。
そしてその雑誌をかなり強めに開き、俺にあるページを見せてきた。
「この服を買いたいの。似合いそうでしょ?」
「おー、確かに可愛い服ですね。よく似合いそうです」
見せられた服はフリルがついていて、まさにフリッフリな服。なんというか、ゴスロリとクラロリの中間地点みたいな感じの服だ。
「...あなたが自分を褒めるなんて珍しいわね」
「なんのことです?」
「あなたは『この服俺に似合いそう!』なんて言わないでしょ?だから、珍しいなーって思ったの」
「なんで俺が着る前提なんですかね」
「私の趣味、言うならば、性癖よ!!」
お嬢様は堂々と、ハッキリと、一切隠すつもりがないかの如くそう言い切った。
再確認しておこう。
俺の主人はレディスカーレット家の長女。いわばレディスカーレット家当主を継ぐ者だ。
その人が今、男の俺に女装させようとしている。
しかも堂々と性癖と言った。
もうなんか従者として悲しくなってくる。
言っておくが、俺は普通にスカートなんて履きたくない。お嬢様命令が出れば着るまでだ。
この今着ているメイド服も変態趣味嬢の趣味だ。この屋敷で執事の服を着ているやつなんていないからな。
「でも、この服はあなたに似合いそうでしょ?」
「まあ元の顔がいいんで」
「うわ、普通にドン引きするわね...」
「冗談ですやんお嬢様」
だがそんなことを言っても、やっぱりこの服は着たくない。俺がこんなロリータ服を着るとか尊厳破壊極まりないぞ。
...まあ、メイド服着ている時点で尊厳を破壊されているのだが。
「ミアとかに着させればいいんじゃないですか?あいつ身長だけ見たらロリですし」
俺は同僚であるミア・ガンシェイドの名前を出した。いわゆる身代わりだ。
「それも考えたわ。でもあの子断ってきたのよ!!」
お嬢様が言うに、さっきまでここにミアがいたようなのだが、例の服を見せると同時、用事があるからと逃げていったようだった。
ミアの気持ちはわかるが逃げんなよ。俺が着なきゃいけなくなるだろうが。
「そういうわけで、あなたのサイズでこの服買っちゃうわね!」
「いくらですか?」
「3万円くらいね!」
「であれば、もう二回りくらい小さい物も買ってくれませんか?」
「なんで......ああ、そういうことね!わかった。買っておきましょう!」
「我儘を聞いてくださりありがとうございます。では、俺も用事ができたので失礼させてもらいますね」
俺はお嬢様の部屋から退出し、扉を完全に閉め切った後、全速力で標的を探した。
掃除中のミアを大広間で発見した。
ミアは俺の存在に気がつくや否や、虎に見つかった草食獣かの如く走り出した。
「おいコラ待てミア!!逃げんじゃねえよ!!」
「そんなブチギレ顔されたら逃げるでしょ誰でも!!」
「うるせぇ逃げんな!!」
「理不尽の極みだね!?」
ミアはその後、数分間逃げ回った後、体力が尽きたようで床に倒れ込んだ。
「やっと追いついたぞこのやろう...!」
「な、なんで追いかけてくんの!?私何もしてなくない!?」
「お前がお嬢様から逃げたせいでロリータ服着せられることになっただろうが!!」
「メイド服着てるんだから今更それくらいで文句言わないで!?」
「うるせぇ!!」
「理不尽!」
その後、俺の長い長ーいお説教は日が暮れるまで続いた。




