表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒檀の魔女  作者: ラテオレ
永焔のフィオロオウラ
23/36

9. 途中報告

 ――クロエ・エヴォニアについての報告書。


 先日の報告通り、ルードザルバ飛脚連は『ニック・ネーム商会長の仲介』を理由に監視役の派遣を取り止め。

 予定されていた監視員は元々の事務員・清掃員としての業務を全うしています。


 ザルバレオン騎士団は初めから監視役は付けておらず、これにより監視は魔導院のみで行うこととなりました。


 それ故の人員不足、および情報不足が多々ありますが、ご了承ください。


「私も監視役なのにろくに監視できていませんもの、文句は言いませんわ……」


 報告書をめくる。


 ――先日、騎士団推薦の生徒、ユーズベル・ヒューラーと模擬戦を行っていました。

 円卓推薦であるとの噂からクロエ・エヴォニアが実力者であると勘違いされ、練習試合を申し込まれたものと見られます。

 しかしクロエ・エヴォニアはこの申し出を受け、魔法無しの肉弾戦で一方的に勝利しておりました。

 得物は両者とも同じ規格の木剣でしたが、監視役の目からはクロエ・エヴォニアが素手だとしても圧倒出来ただろうとの報告が上がっています。


「無茶苦茶ですわね……」


 騎士団推薦ということは魔法騎士志望。当然剣の腕前が最上位でなければ推薦は貰えないはず。

 それなのに素手で圧倒できると目されるほどの実力?

 にわかには信じられませんわね。


 ――図書室の利用禁止を言い渡されたクロエ・エヴォニアは、初めこそ落胆していたものの、現在は様々な授業を渡り歩いて見学しています。

 生徒との関係も良好。特に新一年生から魔法の基本を学ぶことが多い様子です。

 夜は教師寮の自室に帰っており、部屋の明かりも消えています。


「……ちゃんと寝ているのかは怪しいですわね」


 何しろクロエの魔女帽のツバ飾り『灯の眼のアダンヴァール』の角付頭骨は、マナリンクで魔力を共有する限り装備者に『闇を見通す魔法』を掛けてくれる魔道具だ。

 さすがに一晩中使っていては魔力が枯渇するが、だとしてもいつ寝ているのやら。

 先日の夜通し女子会でも、私が先に寝落ちし、目を覚ました時にはクロエさんの姿はなかった。

 ただ、私は『魔法お馬鹿の相』が出ていたのに対し、クロエさんはツヤツヤたまご肌のままだったことに納得がいっていない。


「報告を見て、実際に話してみて、感じるのは、クロエさんがとても素直で一生懸命だということ」


 魔法の知識が無いと言っていたのも本当だろう。

 師匠や神様について話すあの子が嘘を吐いているなんてとても思えない。

 だからこそ、誰よりも一生懸命に学ぼうとしている。

 異常な行動は図書室籠りくらいだが、借りた本や読んでいた本から考えてもやはりただ魔法を学ぼうとしているだけに感じる。


 その割には全然魔法の練習はしていないようだが、この理由に少しだけ当てがあった。


「薬師見習い、ですわね」


 クロエさんが一番強く興味を持っていたのは、『復元魔法』だった。

 やっぱり癒す者としては強く興味が惹かれるのだろう。


 だとすれば、クロエさんが魔法を学ぶのも『治療』のため。

 でも『治癒魔法』は人間には使えないと言われているし、使えるようになる糸口すら掴めていない。

 だから、クロエさんは魔法を使う練習をしていないのではないか。

 まだ、使いたい魔法を見付けられていないから。


「あるいは、まず知識だけ蓄えられるだけ蓄えて、学校を去ってから練習する気かも知れませんわね」


 講師期間中しか学校の施設は利用できない。効率を考えるならこの線は合っている気がする。


 いずれにせよクロエさんはきっと善人なんだろう。

 それが分かって安堵する半面、別の不安が持ち上がる。


「あの子、ちゃんと休んでいるかしら」


 お身体が心配ですわ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ