01話-児童養護施設の高校生、その一日。
2005年9月12日夜中2時頃。
とある男の子が自宅出産で生まれた。
名は『蒼生 ?』、性は分かるが名前は不明であった。
生まれて間も無くこの子の両親は自動車事故によ死亡、出来事は出生届が出される前であった。
事故は出産後の母の体調が戻った頃合いに車に乗り、役場へと向かっていた時に起こったと推測されている。
事故の詳細。
自動車事故により男性2人と女性1人が死亡、新生児が軽症。命に別状無し。
事故状況、
法定速度で走行中の軽自動車に、カーブ付近で猛スピードで逆走していた軽トラックが正面衝突。
軽トラックの運転手は70代後半の男性、衝突時に全身を強く打ち死亡。
軽自動車の運転手は10代後半の男性、同じく衝突時に全身を強く打ち死亡。
同乗していた女性も同じく10代後半であり、衝突時に頭を強く打ち重篤。
女性の腕の中には生後間もない赤子が抱きしめられており、手には血のにじんだ付箋のメモがあった。
付箋のメモには赤子の生年月日らしきものと、付ける予定だった名前らしきものが書かれていたが、肝心な名前の部分は血で滲んで分からなくなっていた。
後に、女性は病院に搬送後すぐに死亡した。
赤子の親族は両親だけで、施設に預けられる事になった。
付箋の内容
2005年9月12日
蒼生 **
そして、
2023年10月30日
とある県のどこかの児童養護施設、あの赤子は先月18歳の青年となっていた。
身の上が少し普通とは違う、だけど普通とは言える環境を与えられている。
児童養護施設で18年間を過ごした一般人、今は高校生。
壁は薄いがエアコン付き、4.5畳の部屋を使わせて貰っている。
名前は『蒼星 優斗』。
性は元々『蒼生』だったらしけど、職員のミスで蒼に星で『蒼星』になってしまったと言われた。
名前は当時の村長がノリでつけたらしい。
これは、そんな彼の一日だ。
朝8:00
高校の制服へと着替え、朝ごはんを食べた後。
歯磨きをして寝癖を簡単に整え、施設の外へ。
「今日は少し寒いな、」そう呟きながら青年は、高校へと向かう。
その間で、
彼の友達が後ろから肩を組み「よう、久しぶり。優斗!」と、声をかける。
「久しぶりって、土日で二日しか経ってないだろ。」と、彼は言葉を返す。
こうして職員のミスで、日本でただ一人の珍しい苗字になってしまった蒼星 優斗の一日は、今日も始まった。
いつも通りの一日。
授業、普通の高校生同様。
昼は学食、今日は生姜焼き定食、ご飯大盛りを食べていた。
とても美味しそうである。
その後、午後の授業も無事に終えた。
16時過ぎ頃。
彼は校内にあるトレーニングルームに居た。
そこで日課である筋トレを行っている。
今日は胸の日らしく、ベンチプレスをしていた。
「ふーぅ、う゛ーん゛!はぁ、」このような声を出し、100㎏のバーベルを上げ下げしていた。
これを彼は、10回3セットで行う。
”ガッシャン”ラックへとバーベルを置く音がした。
彼のトレーニングは、これで終わりのようだ。
その彼に、隣で同じくベンチプレスをしていた友達が「相変わらずすごいなぁ、俺はまだ80キロギリなのに。」と、水分補給をしていた彼に声をかけた。
「僕は1年の時からやってたから出来るだけだよ。継続は力なりって言うだろ、田中もその内出来る様になるさ。」と、友達の田中へと伝えた。
その後も、二人は筋トレ関係の話をした。
18:00頃。
あの後、
シャワーを浴びてから一度施設へと戻り、彼はアルバイトへと向かった。
バイト先は、近くのコンビニである。
このバイトは、施設からの許可を得て行っているものである。
彼は平日は18時から22時にコンビニでバイトをして、土日祝は少し給料の良い引越バイトを8時間している。
これで月、8万前後を稼ぐ様にしていた。
1年の時からこれをして、現在は100万以上の貯金がある。
高校卒業後、施設を出ることになっている。
その後の事を考え、お金を溜めている。
「今日はかぼちゃが多いな、そう言えば明日はハロウィンか。」そんな事を考えながら彼は仕事をこなした。
22時過ぎ。
施設へと戻る。
ラップされた食事を温め直し、食べる。
その後はお風呂に入り、簡単に勉強をした。
これが彼、蒼星優斗の一日である。
「今日もそこそこ疲れたな、」そう呟いて、眠りについた。
続く、、、
彼の両親は、両方とも片親である。
他に親族はいなかった、その両親が高校生の時に両方の親は亡くなっている。
父方の親の残した家にその二人は暮す事になり、アルバイトをお互いにしながら高校を卒業。
母は就職に失敗、父は就職できている。
自然と実質的な婚姻関係の様になり、子どもが出来る。
気付いたころには出産。
その後、事故。