理由はないけれど。
「ねえ、何してるの?」
道路を走る車の騒音。わずかな風の音。近くの木にとまっている小鳥の鳴き声。
そんな音しかしてなかった。それにここには今私しかいないハズなのに。
背後から声が聞こえた。すごく透き通った綺麗な声だった。
だけどいくら綺麗な声だって人が決意を固めたって時に話しかけられたら。
無視、でしょ。
私は声の主のほうを振り返らず、手すりに手をかけた。
「死ぬの?」
そんな問いかけに。
「だったら何?貴方には関係ないでしょ?」
思わず答えてしまった。図星をつかれて正直、少しムカついたから。
それにここは屋上。しかも平日の10時30分調度。要するに授業中。
おそらく私の学校の生徒しかあり得ないはずだから、授業サボってるってことだよね。
「うん、関係ないよ。でも興味があるんだ。どうして自殺なんかするの?」
「・・・別に大した理由なんてない。疲れた。逃げたい。それだけ。」
「何に疲れたの?何から逃げるの?」
「・・・わかんない。」
「分からないのに死ぬの?」
その質問に思わず止まった。
私は何に疲れたのだろうか。何から逃げるのだろうか。
クラスメイトからのいじめ?・・・違う。なんなのかな。
「分からないけど、生きていたくないの。生きることに価値を感じないの。」
「だから死ぬの?」
「・・・うん。」
なんだか急に声の主の顔が気になりだして、後ろを振り向いた。
そして再び動きが止まった。
すごく美人な少年だった。
男の人に対して美人っておかしいかもしれないけれど。
綺麗な目。整った顔立ち。私より少し高い身長。学校の制服。
「あのさ、貴方、誰?・・・ていうか何しにここに来たの?今授業中だよ。」
「僕?僕は2年6組、藤原静。何しに来たか知りたい?」
「知りたいから聞いたの。」
「君に、会いに。」
私より1つ後輩の彼は、微笑みながらそう言った。
「・・・どういうこと?悪いけど、私はあなたのこと知らない。」
「貴方じゃなくて、名前があるんだから名前で呼んでよ。」
「・・・私は静のことを知らない。」
「でも僕は君を知ってる。」
会話が噛み合ってない気がするのは気のせい?
そもそも私は飛び降りるためにわざわざ屋上まで来たはずなのに。
そんなことすっかり忘れてしまった。
「君はこれからの時間を捨てようとしてるんでしょ?」
「・・・そうだね。」
「じゃあ君のこれからの時間を僕に頂戴。捨てるくらいならくれてもいいんじゃない?」
「・・・そうだね。こんなものでよければあげる。」
「有り難う。」
私の時間なんかもらって何をする気なんだろうか。
そもそも私のことを知ってるって何でなんだろうか。
でも、理由はないけれど、なんだか気分がいい。
「僕がもらった君の時間を、楽しいものにしてあげる。」
彼はそう言って微笑んだ。
捨てたはずの残りの時に、思わず期待してしまう自分がいた。
「よろしくお願いします。」
私はそう言って頭を下げた。
4作目です。紫紀です。
ごめんなさい、何がしたかったか自分でもわかんないです。
何か不思議な感じの少年が書きたかっただけな気がします。
感想、評価是非よろしくお願いします。