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5 港湾倉庫

 年が明けて、1月になっていた。

 クリスマスも大晦日も、元日さえも出動要請が入り、いつもと全く変わりない研修の日々を送ったシンである。当然、臨時ではあるがチームとなっているヒロとソラも、同様の年末年始を過ごした。


 3人で朝食後のコーヒーを飲みながら、少しだけのんびりした気分で雑談を交わす。今日は、久しぶりに予定がない休日だ。

 近頃はごく自然に、ソラも一緒に食事をとるようになっていて、ヨウムのビートも一緒である。ヒロとシンはダイニングテーブルに向かい合って座っているが、ソラはそこから一番離れた椅子に座る。ビートがいるので遠慮しているのだろう。

《 オイシーネ ソラ オイシーネ 》

 ソラは自然な笑顔で、パンやフルーツを小さくちぎってビートに与える。ソラとビートの間で交わされる会話とその様子が何とも楽しい男2人。そんな朝の風景がこのところ続いている。

 3人と1羽の食事風景。

 そして今日も、ビートの陽気な声をBGMに、和やかな朝食を終えた後のリラックスタイムだ。


 けれど今朝は、ソラの雰囲気がいつもと違う様に感じた。言葉と仕草に、どこか明るいものがある。ひと月半も一緒に過ごせば、そのくらいはシンでさえも解っていた。

「ソラ、何かいいことでもありましたか?今朝は何となく嬉しそうです」

 ヒロが優しい口調で尋ねた。

「・・・そうでしょうか?・・・そうかもしれません。昨晩、目標の一つが達成できたので・・・」

 ソラは考え考え、そんなことを口にした。

「立ち入ったことかもしれませんが、その目標とは何でしょう?」

 重ねて尋ねるヒロは、今の様子なら無口なソラでも話してくれるのではないかと思っていた。

「昨日、今月分の給与が振り込まれていたので、借金の返済が完了しました」

 穏やかな口調もそのままに、ソラはあっさりと答える。

(借金があったのか・・・)

 それで給与にこだわったり節約生活をしていたのか、と納得するシン。

「借金ですか。返済完了できて、本当に良かったですね。ちなみに、どんな借金だったんです?」

 かなり立ち入りすぎかと思われるヒロの質問にも、ソラは素直に返事をする。

「父が残したものですが、結構高額だったので時間が掛かりました。相続放棄も難しい事情があって」

(成程、苦労してたんだな・・・)

「まぁ、でも終わったんなら良かったな。これで、肩の荷も下りたってところだろ?」

 労わるように言葉をかけるシンに、ソラはコーヒーの最後のひと口を飲み干して答えた。

「いえ、まだもう1つ、目標があるので・・・」

 それは何だと、問いかけるような2つの雰囲気にソラは言葉を続けた。

「両親の遺骨を日本に埋葬することです。今は地元の日本寺に預かってもらっていますが、そこを通じて埋葬する場所を探して貰えることになっています。ですので、後はそれにかかる費用が必要なんです」

 日本でも、墓1つ用意するだけで結構費用は掛かる。持って行って納骨するなら交通費だって必要だ。

 どうやらまだまだ、ソラの節約生活は変わらず続くようだ。


 そこで話を引き継ぐかのように、ヒロが話し始める。

「両親と言えば、僕らの事は話していませんんでしたね。聞いておいてもらえませんか?ソラ」

 何でわざわざ、思うシンだが、きっと何か思惑があるのだろうと黙っている。ソラの方は、聞けと言うなら聞いておきますが、とでも言いたげな微妙な顔つきだ。

「僕の両親は不仲でね、僕が5歳の時に母は僕を連れて日本からこっちに来たんですよ。こちらには母の姉、伯母が1人で暮らしていたので呼ばれたような形です。両親の詳しい事情は知りませんでしたが、結局数年後に協議離婚が成立しました。母と伯母は、僕が大学生の時に2人で行った旅行中の事故で亡くなったので、僕が遺産を継ぎました。伯母が祖父からの遺産を継いでいて、資産運用に長けた女性だったので、僕が金銭的に豊かな生活が送れているのはそのおかげですね」

 シンの方は、とヒロが手で促す。

「あ、ああ・・・俺の方は、まぁ普通の両親だったぜ。父親の離婚成立後に、うちの母親と再婚したわけだな。まぁ、付き合いはもっと前からだったらしいけど。俺が産まれたのは、再婚して直ぐだったしな。でも親父は俺が小さい頃に病気で亡くなったし、母親も10年前にやっぱり病気で亡くなった。まぁ、遺産は無いけど、平均的な家庭で育ったってカンジ」

 ざっとではあるが、2人の家族事情を教えておくのは、今後のお付き合いを考えての事なのだろう。真剣に貴女に惚れていて、先の事も考えています的な。

 そして最後に、さり気ない調子でソラに尋ねる。

「ソラの亡くなったご両親は、どんな方々なのでしょう。きっと子供の頃のソラは、可愛らしかったと思うんですよ」

(あ、そっちを知りたかったのね・・・)

 シンは心の中で納得する。

 けれどソラは、少し考えた後、申し訳なさそうに答えた。

「いいえ、そんなことはありません。スラム育ちなので、痩せて眼ばかりギョロギョロした薄汚い子供でした。その頃からすばしっこかったので、ドブネズミみたいだと、よく言われました」

 おやおや、と呟きながらも、ソラの話の先を待つヒロ。けれどソラは、それきり口を噤んでしまう。

 拒むような雰囲気ではないが、自分から話すつもりは無さそうだ。

 もう少し質問を続けようか、とヒロが考えた時、スマホが鳴った。


 暫く何やら話し込んでいたヒロは、通話を切ると二人に告げた。

「緊急の出動依頼です。場所は港の外れの古い倉庫群。直ぐに出ますから、準備をしてください」

 ソラとシンはサッと立ち上がり、準備を始める。しかしヒロはソラを呼び止めると、しっかり言っておくのだった。

「いつか機会があったら、君の事やご両親の事も聞かせてくださいね」

 ソラは「はい」と答えるしかなかった。


 てきぱきと準備を整えながら、シンは出動先のマップを確認した。

 古い倉庫群は港にそそぐ川の小さな三角州にあって、橋が2つ 東側と西側にある。南は湾に面していて、ひと昔前の古い倉庫が立ち並んでいるようだ。殆どが使われていないようだが、中には幾つか現在も使用されているらしい。おそらくそこで働く人数はかなり少ないだろう。

 ふと見ると、ソラが支度を終えて装備を着けているところだった。いつもの黒の上下だが、髪を後ろにまとめている。うなじの白さと首の細さにシンは思わず目を引かれた。

 視線に気づいたソラが、何か?と言う様に振り返った。

「あ、いや・・・髪、結んだんだなって・・・」

「はい。準備時間がとれるときはなるべくこうしています。特に今回は、倉庫内の捜査もありますから。室内だと空気の流れを察知することも大事なので、空気に当たる皮膚面積を大きくしておきます。状況によっては、ビートは避難させますし」

 そしてソラは、装備を身に着ける。

 右手にウィップを装着し、今回は拳銃とホルスターもだ。

 ソラの拳銃は軽量の小型。ホルスターはいわゆるヒップホルスターだが、細いベルトが2本付いていて、腰回りと太腿の付け根周りで止めている。銃がちょうど、ヒップに乗るような位置に固定してある。左手を後ろ手で回して抜き、空中でもバランスを崩すことなく扱えるようにしているのだろう。

 準備が整うと3人と1羽は現場に向かった。


 倉庫群がある三角州の東側、橋を渡ったところでパジェロを止めると、そこには数名の捜査官と以前にも会ったウィルが待っていた。

 今回は沢山ある倉庫の中の捜査になるのだが、捜査対象があの『NSAP』新型の超吸水性ポリマーなのだとウィルは説明する。


「あの密輸船からSkyに回収してもらった丸筒だがな、中に少量の『NSAP』が入っていた。本部の研究室(ラボ)で調べて貰ってたんだが、市警から回ってきた報告で、胃破裂で死んだ男の腹腔内にあったものと一致したわけだ。で、男の妻の不倫相手を徹底的に調べて、奴がどうやら偶然に『NSAP』を発見したらしいということを突き止めた」

 そこまで言って、ウィルはシンを見た。

「クラップスって知ってるか?」


 クラップスが、いわゆるギャングのファミリーであることは知っている。確か、ここ10年ほどで勢力を伸ばしている暴力集団だ。殺人・暴力・売春その他諸々、ギャングがやることは全て行っているクラップスだが、特に違法薬物の取引や開発に力を入れているらしい。


 シンが頷くと、ウィルは更に説明を続ける。

「不倫相手の助手は、見つけた『NSAP』の製法を学会に発表するより、金を手にする方を選んだんだな。伝手をたどって、クラップスに持ち掛けたらしい。だが所詮素人で、製法だけ取られて逆に命を取られたってわけだ。で、FOIでもかなりの人員を割いて、これに関する捜査を始めてるんだが、ゲインズのチームの捜査官が情報を掴んできて、ここの倉庫群のどこかに『NSAP』が運び込まれてるんだよ」

 ウィルはそこで肩をすくめ、困ったように続けた。

「ただ、それが全部で2袋、重さで500g程度だから困るんだ。しかも、運び込まれたのは確かだが、どの倉庫かは全く解っていないときてる。たかが吸水ポリマーと言っても、あのレベルだと兵器にもなりかねない」

 倉庫群には大小200くらいの倉庫がひしめいている。その中からその程度の量の粉末2袋を探し出せと言うのだ大変だ。

「気づかれて運び出されても困るんで、東西の橋と沿岸には非常線を張っている。爆弾が仕掛けられたという情報が入ったと言ってね。倉庫の従業員たちの避難も終わったので、早速捜索開始といこう」

 ウィルは手元のアイパッドで地図を表示させる。

「我々は、南の湾に面したところから奥に向かって捜査することになっている。早速頼むよ」

 了解したウィルのチームの捜査官と ソラとシンは港に向かって走ってゆく。

 後に残ったヒロはウィルに話しかけていた。

「その量だと、ドローンで運び出すこともできそうですが」

「ああ、そっちも抜かりないさ。別チームが東側でやってるから」

 その時は、この捜査が大惨事になるとは誰も思っていなかった。


 捜査が始まってから1時間程が経過した。ヒロは車外に出てずっと立っている。彼の眼に捜査が行われている倉庫群は見えないが、せめて雰囲気だけでも感じていたかったのだ。肩には、ソラが残してったビートが乗っている。屋内捜査だと基本ビートは留守番だが、今回は広範囲なので念のため連れてきていた。残るヒロの話し相手にもなるだろう。

《 カゼ、ツヨイネ―! 》

 ビートの羽毛が逆立っている。いつの間にか、西風が強くなっていた。


 シンはソラとコンビを組んで、1つ1つ倉庫の中を捜索していた。大きさとしては20×30センチ程度の袋を、使われていない倉庫とは言え雑多なものが散乱する内部を探し回るのは、かなり時間がかかる。しかも捜査に気づいたクラップスのメンバーが、それを運び出そうとする場面に遭遇する可能性もある。

 ソラは室内に入るたび、そっと唇を舌で湿らせていた。それも空気の流れを察知する方法の1つなのだが、それに気づいた時シンは思わずときめいてしまった。

 ピンクの舌先が口元から覗き、唇を舐める様子は煽情的なのだ。

 いやいや、そんな場合じゃないと思いながら、ふとシンは、今までこんな風に女性を見たことがあっただろうかと考えてみる。折に触れ、素直な気持ちで好きな女を見つめ嬉しくなるようなことが、今まであっただろうか。


 そんな時、外から重く響く大きな音が聞こえる。

 シンとソラは急いで外に飛び出した。

「爆弾か!」

 ほんの数百メートル離れた倉庫の一つから、黒煙が上がっている。赤い炎もチラチラと上がっていた。古い倉庫には木造の物も多い。火の手は強風に煽られて瞬く間に広がりそうだ。

「シン、ウィルのチームと合流してください。私は一度、車に戻ります」

 火の手は西風によって東へと伸びてゆくだろう。運転ができないヒロを移動させなければ、とソラは走り去った。


 パジェロの傍に立ち、強い西風を感じ取っていたヒロは、爆音の後ビートと共にそちらに注意を向けた。直ぐに煙と焦げる臭いを感じ取って、ビートに避難するよう話しかける。その時、軽やかな足元が目の前に降り立った。

「車を移動します。乗ってください」

 正面の倉庫の屋根から、飛び降りてきたソラがそう告げる。最短距離で移動した結果だろう。ヒロは急いで車内に戻り、パジェロは橋を渡って対岸に移った。川幅が結構あるので、ここなら大丈夫だろう。

 大急ぎで戻って来たらしいソラは、ハンドルを握りながら呼吸を整えていた。その息遣いを聞きながら、ヒロは思わず唇を嚙んだ。


 一緒に来なければ良かったのかもしれない。今まで通り、作戦室や危険のない後方で入ってくる連絡を待っているべきだったのかもしれない。任務中にも関わらず、ソラに戻ってこさせたのは自分の落ち度だ。3人でチームとして動くようになってから、一緒にいるのが当たり前のようになっていたが、分を弁えるべきだったのだ。邪魔をしない事、それは大前提だったはずなのに。

 けれど、出来る限りソラの近くに居たかった。けれどそれは、それは自分の我儘ではないのだろうか。

 パジェロを対岸に移動させると、ソラは直ぐに橋を渡って走り去っていった。ヒロはまた車外へ出て、遠ざかる彼女の足音を聞いていた。



 ソラが橋を渡り切った頃には、火の手は目の前の倉庫に迫っていた。

 急ぎ、南に走り湾に面した船着き場に向かう。そこには、シンとウィル達が何か話し合っていた。

「すみません、少し離脱していました」

 そう言って駆け寄ったソラに、ウィルが現状を伝える。

「爆発の近くにいたうちの捜査官によると、粉塵爆発だったらしい。捜査を終えた倉庫で粉類は無かったはずだが、おそらくクラップスの連中が後から忍び込んで粉を撒き、外から火を投げ込んだんだろう」

 見れば、近くにいたらしい捜査官は怪我をしているようだ。爆風に巻き込まれたらしい。

「その粉って、もしかしてNSAPとか?」

 シンが口を挟む。

「かもな。だとしたら奴らは、きっと大目玉食らうぜ。多分、かなり希少価値だろうからな」

 一度にたくさん作れるような材料も設備も無いんだろうし、とウィルが返す。

「だとしても全部は使わないだろうから、残りの一袋を抱えて脱出経路を探しているんだろう。俺たちは西側から回り込むが、Sky達はどうする?」

 ソラは軽く首を振って、いいえと答えた。

「火の手が東側を全て飲み込むまで、まだ少し時間が掛かりそうです。そちらが通行不可になるまで、この辺りで待機します」

 解ったと言うなり、ウィル達は西側に向かって走り去った。こうなると、粉探しより人探し、クラップス探しになったわけだ。


「シン、ウィルとの連絡は任せます。ここで待機してください」

 南から東側の道路を全て見通す場所に移動しながら、ソラが言う。

 シンは、ウィルからインカムを渡されているが、ソラは持っていない。右耳に補聴器を着けているのでイヤホンは使えないし、左耳は全く聴こえないので相互通信ができないのだ。ソラが今まで、単独任務主体だったのはそのためである。


 200mほど先に橋が見える。障害物が無いので、向こう岸のパジェロも見て取れた。奴らが倉庫から出てきて、橋を渡って逃げるのは避けたい。橋の先にはヒロがいるのだ。ふと川面を見ると、一艘のモーターボートがある。これを使って逃げるのかもしれない、と思いながらソラは橋に向かって走った。


 橋の手前まで来ると、背後の燃え始めた倉庫から、数名の男たちが飛び出してきた。ソラは、踵を返し男たちに駆け寄る。シンが向こうから、インカムに向かって話しながら走ってくるのが見えた。

 クラップスの男たちは、全部で5人。一人が大切そうに、袋を抱えている。あれが『NSAP』だろう。

 2対5なら制圧は可能だ。ただ、あの袋は、無事に回収しないといけないのだけが厄介だが。


 ソラとシンに気づいた男たちは、袋を持つ男を守るように立ち止まった。ソラの前に2人、シンの前に2人。それなりに訓練されているらしい。シンの方の2人は任せることにして、ソラは袋を持つ男に注意しながら、3人の動きを計った。ウィップと銃は既に準備済みだ。

 最初に動いた男の懐に、圧倒的な速度の差で飛び込み、すり抜け搔い潜るような動作でそのこめかみに銃のグリップを叩き込む。その結果を見届けもせず、次の男の前に立つと軽くフェイントをかけていなした後、同じようにこめかみにグリップを叩き込んだ。二人の男が倒れこむ様子を見た袋持ち男が、慌てて岸壁のモーターボートに向かって走り出す。その体に、ソラのウィップが飛んだ。

 男の首に巻き付いた細いウィップが、ソラの手でギュッと絞られる。男の体がソラの方へ引き寄せられながら倒れこみそうになるのを、1人目を制圧されてシンと対峙していた男が気付いた。男は即座に後方へ飛び、倒れそうな男から袋をもぎ取る。そこに、思い切り勢いをつけたシンが体当たりを食らわせた。その衝撃に、ウィップで拘束された男と袋を受け取った男、2人分の体がソラにぶつかってしまった。


 ゴンっ!

 と、鈍い音。


 ぶつかってきた男2人分の質量が圧し掛かり、体勢を整えきれなかったソラはそのまま後ろに転倒してしまった。

 しまった!とシンが思った時、丁度援軍が到着した。

 クラップスたちは、ウィルの捜査官たちによって5人ともその場で逮捕され、『NSAP』の袋も無事回収された。だがシンはそれどころではなく、後頭部を思い切り打って脳震盪を起こしたらしいソラの傍にしゃがみこんでいた。

「わ、わりぃ・・・大丈夫か?」

 ソラは上体を起こしていたが、目を瞑って後頭部に手を当てている。大丈夫ですと言いながらも、まだ眩暈が残っているらしい。

「ウィル、俺たちはもうイイか?」

 シンはそう言って承諾を得ると、いきなりソラを抱きかかえた。

「あ、あのっ!・・・大丈夫ですから!」

 突然のお姫様抱っこに思わず声をあげて降りようとするソラに、シンは腕に力を込めてきっぱりと言い放った。

「ウルサイっ、黙ってろ」


 燃える倉庫を背景に、橋を渡って戻ってきたシンは、ずっとそのままソラを抱いていた。

《 ワー! ソラ、ダイジョーブ! 》

 騒ぎ立てるビートと、パジェロに近づいてくる足音を聞いたヒロは、1種類だけの重そうなその足音に状況を理解してしまった。

「どうしたんです!」

 車の傍まで来ると、ソラは

「もう大丈夫ですから・・・ありがとうございました」

 と言って、降ろしてもらう。

「んじゃ、キー寄こしな。帰りは俺が運転するから・・・いや、俺のミスでソラが脳震盪起こしちまったんで、ここまで運んできただけ」

 そう言って後部座席にヒロとソラを押し込むと、運転席に滑り込むシン。

 帰りの車の中で、大丈夫ですかと言いながらソラの後頭部を探るヒロだったが、心の中は複雑だった。


 大人げないと思いながらも、湧き上がるのは嫉妬だろう。自分にはできないことを、弟は易々とやってのけるのだ。ソラはビックリするほど軽いから、楽なモンだったというシンの言葉にも、悔しさが募る。失明してからこんな気分を味わったことは無かったと気が付き、何故今更こんな風に思うのだろうとも考える。

 障碍者である自分ができない事を、健常者ができるのは当たり前のことだ。それを充分すぎるほど理解したから、そもそも羨ましいとさえ感じることも無かったというのに。

(・・・それだけ、ソラに執着しているということでしょうか)

 何故これほど彼女に惹かれるのか。

 自分自身を探る必要がありそうだ、と思う。

 そして、彼女自身の事も、と。



 その晩、それぞれが寝室に引き取った後、シンはスマホを持って決意していた。今晩こそアンジーを捕まえる、と。先日から毎晩のようにトライしていたが、返信さえも貰えずにいたのだ。根気強くコールを繰り返していると、ようやくアンジーの声が聞こえた。

「あら、珍しいじゃない。空港以来かしら」

「ああ、やっと捕まえました。忙しかったのですか?何度も電話してたんですが」

「知ってた。でも返信する暇も無かったってことよ。やっと大仕事が終わって自宅に帰ってこれたから、シャワー浴びてこれから1杯やろうかと思ってたところ」

「それはお疲れ様。ところで今は1人なのかな?誰かが傍で待ってたりしていませんか?」

「そんな暇があったら寝るわよ、1人でぐっすりとね」

 そんな軽口も自然に流せる、元恋人たちのオトナな会話である。

「疲れているところ悪いのですが、聞きたいことがありましてね。ソラの事なのですが・・・」

「ソラ?・・・まぁ美人だしねぇ、一目惚れでもした?」

 冗談交じりの口調に、ヒロはあっさりと答える。

「ええ、そうなんです」

「・・・・・・・・・・・」


 その言葉に、暫し沈黙が漂う。アンジーとは昔、同棲までしていてプロポーズ寸前までいった相手である。流石にこれは配慮が足りないと言われても仕方がないのだが。

「・・・気を悪くしましたか?すみません・・・でも・・・」

 そんなヒロの言葉に、ため息をついてアンジーは答えた。

「今、黙っちゃったのは、貴方が考えている理由からじゃないわ。今はもう、私たちは戦友で親友じゃない。だから一目惚れは寧ろ良かったとも思うけど、相手がソラだというなら話は別、って感じなのよ」

「何故ですか?」

「う~~ん・・・以前話したことがあったでしょ。私の妹のこと」

「ええ、確か亡くなったと」

「そうよ、私が大学生の時ね。名前はサラと言ったのだけど、何となくソラと似ていて 私にとって彼女は、妹みたいな感じがしてるのよね。放っておけない、みたいな」

 それで時折プレゼントを送ってきたりしているのか、と納得する。

「だからちょっと心配になったっていうか、大丈夫なの?って思ったわけ。でも考えてみれば、悪いことじゃないかもね」

 そんなアンジーの言葉にホッとして、ヒロは聞きたかった事を言ってみる。

「ソラのプライベートと言うか、過去について知ってることを教えて欲しいんです。何でも構わないので、知っていることを全て」

「全てって言われても、私が知ってるのはソラと初めて会った時から後の事だけよ。それでいいなら、話すわ」

 そう言ってアンジーは、話し始めた。


 ソラを始めて知ったのは、たまたま彼女が書いた論文を目にしたからだった。当時アンジーは人事部の主任を務めていて、新人スカウトの仕事を任されていた。一般的な公募で捜査員の補充はなされるが、それ以外にも有能な人材を見つけてスカウトすることも重要である。手元にある膨大な資料と格闘しながらアンジーが見つけたのは、医学部に在籍する一人の学生が書いた論文だった。その内容が麻薬に関連したものだったので、こっちに回ってきたのだろう。目を通すと、新しい発見や実験などは無かったが、過去に発表されている論文や様々な数値を的確に引用してまとめてある。それだけなら特に目を引く内容ではなかったが、その論文を書き上げるには膨大な資料が必要なのだということがアンジーには解った。そして執筆者の名前を見た時、会ってみようかと思ったのである。

 ソラ・リセリ・キクチという学生と。


 ソラとサラ、似ている名前の女性はどんな人なのか。そんな気持ちで大学に電話をしたら、生憎クリスマス休暇で学生たちは殆どが帰省してしまっていた。ただ、ソラと言う学生は寮生なのでそっちにいるかもしれないと言われ、寮の方に電話を回してもらう。すると、そこで簡単にソラと連絡が付いたのだ。会いたいので来てもらえないかとと言うアンジーに、電話の相手は、事情があって学外に出られないという。そこでアンジーは、こっちから出向くことにしたのだ。


 寮の中のソラの部屋に入ったアンジーは、先ずその殺風景な様子に驚き、目の前にいる学生の尋常ではない様子に目を見開く。痩せて頬がこけ青ざめた顔。表情のない顔には、明らかな栄養失調の兆候が表れている。聞いてみれば、クリスマス休暇が始まってから寮の食堂も閉まってしまったため、それ以来殆ど食べていないという。他に寮に残っている学生はチラホラいるが、彼らは学外で何とかしているのだろう。最初にアンジーがしたことは、外に出て食料を調達することだった。


 アンジーが買ってきたパンとミルクを、丁寧にお礼を言ってから黙々と食べるソラだったが、ろくに食べていなかったにしては落ち着いて品良く食べていた。その様子は、どこか妹のサラに似ていた。食べ終わると、またお礼を言って置いてある鞄から財布を取り出そうとする。アンジーは、好きでやったことだからお金を出したら引っ叩くわよ、とまで言ってソラに支払いをさせなかった。

 そうして、2人はゆっくりと話を始める。


 先ずソラが学外に出られない理由は、親の残した借金が質の悪い相手からの物で、その取り立て屋が大学の外にいるからと言うことだった。真っ当な金融会社ではなく、ヤバい個人からの借金なので相続放棄をしても追って来るのだろう。捕まったら、先は見えている。

 両親が亡くなったのは先月で、学費は奨学金から出ているので良いとしても、卒業も近い現在、大学院に進むことは諦めていると言う。かと言って、この状況では就職先を見つけるどころか、働くことも難しいだろう。最終的には、借金先の方に紹介していただくことになりそうです、とソラは淡々と話した。

 就職先は推して知るべきだろう。身体で稼げ、というやつだ。


 アンジーのお節介魂に火がついたのは、この時だった。

 先ずはソラの論文を手に上司に訴え、逸材だからと主張して許可を貰う。それからあちこちに話を通し、異例の速さでソラをスカウトしたのだ。就職先はFOIの研究室。主に薬物関係の研究を行う部署だった。もっとも、正式な採用ではなくアルバイト的なものだったのだが。

 正式採用とならなかったのは、大学卒業前だったことと、ソラの年齢がスキップしたせいでまだ16歳だったこと。そして何より聴覚障碍者だったからだろう。

 けれど、それでも、それだけ急いだのはソラの状況を一刻も早く改善したかったからだ。特例でFOIの職員寮への入居許可も得て、アンジーが迎えに来た時はまだ1月になったばかりだった。もちろんそれまでの間定期的に寮を訪れては、ソラに食料を配給したことは言うまでもない。


 それから卒業までの間、ソラはFOIの寮で暮らし研究室で働くこととなった。流石に取り立て屋もFOIにまでは行かれないという分別もあったらしく、それ以来ソラの周囲は平穏なものになっていた。


「ビートは?その時はもう、ソラの傍にいたはずですが」

 ヒロの質問に、いささか話疲れたらしいアンジーが眠そうな声で返す。

「寮にいた時は、寝る時以外は外にいたらしいわ。ペット禁止だからね。後でソラに聞いた」

 ソラがFOIに入る時、パートナーとして許可を貰うことにもアンジーは奔走したのだろう。

 流石に長時間の会話になったので、申し訳なさそうにヒロが言う。

「アンジー、眠そうですね。すみません」

「あ~確かに眠いわ。ソラがFOIに入ってからの事は、詳細情報で確認すればいいんじゃない?貴方の階級なら全て閲覧できるはずだし。・・・そうね、カルテとかは見た?」

 そう言えば、職歴の中に入院歴もあったな、と思いだす。

「貴方なら、カルテを見れば何があったのかは解ると思うけど・・・」

 そこまで聞いて、ヒロは今晩はここまでにしようと思う。

「解った、見てみましょう。また電話しても構わないかな?」

「・・・そうね、大仕事もひと段落したし・・・どうぞ・・・」

 今にも眠り込みそうなアンジーの声に、早くベッドに入るよう言って通話を切ったヒロは、再び寝室を出て自分のPCの前に座った。



 翌日の晩、ヒロは再びアンジーと連絡を取った。

 昨晩の言葉通りアンジーは在宅していて、大仕事の疲れはもうすっかり取れているらしい。だが、ヒロの電話に対する声はどことなく沈んでいるようでもある。

「やっぱりかけて来たのね・・・」

「ああ、すみません・・・」

 昨晩、ソラが入院していた時のカルテを閲覧した。最初の入院は、ソラが研究職から捜査官に転属し研修と訓練を終えてすぐの頃。3回目の出動時だった。そして2回目は、それから更に半年たった頃。


 短い沈黙が続いたが、話を切りだしたのはヒロだった。

「最初の入院・・・レイプされたんですね」

「ええ、そう。そして2回目のはギャング・レイプよ。どっちの入院中も、私はソラに会いに行ったわ」

「詳しい話を、僕が聞いても良いのでしょうか?」

「別に構わないと思うわ。実際、FOI内でも知ってる人は知ってるのよ。基本的にソラは、聞かれたことは隠さず話すのよね。例えそれが、自分のレイプに関することであっても。それを聞いて、相手がどう思うかには関心がないみたいだから」

 そしてアンジーは、その時の事を話し始めた。


 アンジーが最初の事件を知ったのは、その翌朝の事だ。人事部のデスクで、いわゆる社内報のような連絡メールを開いた時だった。昨晩の任務での負傷者の中に、ソラの名前を見つけた。大急ぎでその時のチームリーダーに話を聞きに行き、そのまま病院に走って担当医師に話を聞く。そしてソラがレイプされたのだと解ると、そのままソラの病室に駆け込んだのだ。

 肩で息をして飛び込んできたアンジーに、ソラはいつもの穏やかな表情で問いかけた。

「どうしたんですか?アンジー」

「どうしたもこうしたもないわよ!って、ソラっ、大丈夫なの?」

「はい?」

 アンジーが駆け込んできた理由が心底解らないようで、ソラは少しだけ目を丸くしていた。アンジーは大きく息をつくと、ベッドサイドに椅子を引っ張って来て座る。

「・・・レイプされたって聞いたわ。相手は解ってるの?」

「いいえ、補聴器を外されて目隠しもされていたので、解りません」

「何も証拠がないって言うの?臭いとか雰囲気さえも解らなかったの?」

「その程度では、証拠にはなりにくいのではないですか?」

 どっちがレイプされたか解らないような、アンジーの怒りに満ちた声。対してソラの方は、まるで他人事のように冷静で落ち着いている。

 ひと息ついて、アンジーが小声で言った。

「多分アイツだなっていう心当たりが1人、いるんだけど・・・」


 それは今朝方、唐突に人事に回ってきた辞表。昨晩ソラとコンビを組んで捜査に当たっていた人物だ。しかもその男は早朝にデータバンクに侵入して、自分の詳細データを改ざんした形跡があったという。怪しすぎるではないか、とアンジーは言うのだ。

 それはつまり、自分のDNA情報が解らないようにしたのでなないだろうか。レイプ被害者の体内から採取した精液で、DNAは特定できるのだから。

 ソラさえ良ければ捜査できるのよ、とまくし立てるアンジーに、ソラは表情も変えずに答える。

「明日には退院できるそうです。処置は済んでますし、それ以外は擦過傷と打撲がある程度ですから。その程度の軽傷なので、私は別に・・・」

 わざわざ捜査するほどの事ではない、と言うのだった。


「私はその時、この子は強い子だって思ったの。・・・妹のサラは、学校帰りにレイプされて自殺したから。サラがソラのように強かったらとも思ったわ。それからよね、私がソラを妹のように思う様になったのは。サラがもっと強かったら、こんな風に今も生きていたかもって思ったりもして」

 そんなアンジーの言葉を挟みながら、会話は進んでいく。


 2回目の入院は、カルテでも解る通り、かなりの大怪我で入院期間も1か月になっていた。ギャング・レイプで相手は4人。犯人は直ぐに逮捕されたが、彼らは全員が薬物中毒だった。

「あの時はね、本当にタイミングが悪かったのよ。後でソラから聞いたんだけど」

 アンジーは、出来るだけ平坦に話そうと心がけているようだった。


 その時も夜間任務で、ビートは置いてきていた。しかし半年前の出来事の後、ソラは補聴器を着けるようになっていた。開発局にカスタマイズを依頼して、激しい運動をしても外れないようになっている。また色々と新しい機能を追加して貰ってもいて、その時は相互通信ができるように改造された直後だった。それなりの期間使っていて、すっかり慣れたという油断もあったのかもしれない。最悪のタイミングで、補聴器がバグを起こしたのだから。

 任務中、たまたま1人になった時、路地裏の空き地で2人の男を発見した。直接任務に関係なさそうだと判断したが職質くらいはしておかないといけない。ソラは用心深く近づき、男たちが乗って来たらしいバイクの陰に身を潜める。様子を窺ってから出て行こうと考えていたのだが、そこで補聴器が故障したのだ。超音波にも似たとんでもなく大きな甲高い音が直接鼓膜を叩き、その大きすぎる衝撃に、ソラはなす術もなく耳を押さえてその場に昏倒した。


 気づいた時は、男たちは4人に増えており、拘束されていてどうにもできない状況だった。禁止薬物をしっかりキめているらしい彼らは、思いがけなく手に入った獲物を思いつく限りの暴力でレイプを楽しんだ。そして最後には、落ちていたバールを動かなくなった獲物の局部に押し込むという、とんでもない暴挙までやってのけたのだ。

 けれど流石に疲れてへたり込んでいた彼らのところへ、やっと他のFOIの捜査官が駆け付けたのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。命だけは、何とか助かったのだから。


 とは言え、骨折2か所、打撲は数知れず、裂創や擦過傷は体中というくらいで、バールを押し込まれた場所は膣から子宮まで届き内部は縫合も難しいほどになっていた。起き上がれるようになるまで1週間かかり、結局入院1か月となってしまったのだが、アンジーは彼女が落ち着いて話ができる頃合いを見計らってお見舞いに来てくれたのだ。

 顔が隠れるくらいの大きな花束を持って病室に入ってきたアンジーは、今にも泣きだしそうな表情をしていた。そんなアンジーに、ソラは前回と全く同じセリフで迎えたのだ。

「どうしたんですか?アンジー」と。


 犯人たちはその場で捕まっていたし、法的裁きも受けるだろうから、怒りのぶつけどころがないアンジーなのだ。復讐さえできない今の仕事が、恨めしくなるくらいに怒っている。

 何でこの子ばかり、こんな目に合わなければいけないのか、と。

 けれどソラの方は、前と変わらない穏やかな声で、笑顔さえ見せた。

「今回は、流石にちょっと酷かったです。1か月の入院は長すぎます。補聴器の相互通信機能も、外してもらおうと思います」


「その時ね、気づいたの。ソラは強いんじゃなくて、もっと別の・・・よく解らないけど、何というか・・・凄くアンバランスなのかもしれないって」

 アンジーはそこで息を継ぐ。

「危ういような感じ?・・・でも弱さとか儚さとは違ってて・・・う~~ん、やっぱりうまく言えないわ。でも私は、そんなソラに凄く惹かれたの。妹みたいな存在っていうのはもちろんあるけど、それとは別に、私はソラが好きなのよ」

 ヒロは聞いた話の衝撃で、まだ言葉が上手く出てこない。

「だからね、貴方がソラに一目惚れって言うのは構わないけど、それでソラが不幸になるようなことがあったら、私は貴方を叩きのめしにいくからね。覚えておいてよね」

 アンジーはきっぱりと言い切ると、ヒロの返事を待つように黙る。

「・・・ああ、解りました。覚えておきますよ」

 やっとのことでそれだけを言葉にしたヒロに、それじゃオヤスミと言ってアンジーは電話を切る。

 ヒロは暫く、スマホを手にしたまま考え込んでいた。


 ソラの心の欠けた部分は、その2つの事件でできたものなのだろうか。

 いや、それは違う。

 何故ならその直後、病院のベッドでアンジーにいつもの笑顔で答えていた。

 その時にはもう、彼女の心の欠けた部分を覆うような殻、守るような鎧はできていたと考える方が正しいと思う。何故なら、そう言った殻や鎧はできるまでに時間がかかるものなのだから。

 そうすると欠けた部分ができたのは、もっとずっと前の事なのだろう。

 それにしても、レイプやギャング・レイプでさえ壊すことが出来ない殻、あるいは鎧は何と強固であることか。

 だが反面、そんな事さえもただの怪我としか捉えられないソラが、痛々しくも思える。


 そして、やはりそんなソラに更に惹かれてゆくのが解る。

 それが何故かは、未だに解らない。



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