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三太への手紙

作者: まじぽん

高校2年生の秋。


学校の校舎裏で待つ2年生の文乃は、スピードスケートの部活終わりにやってきた三太に手紙を渡しつつ、告白をした。


自分よりも一回りも大きい三太は男らしく、かっこいい少年で一目ぼれだった。


たびたび文乃は三太の部活に顔を出し、差し入れをしていたので三太もいつしか恋心を寄せるようになっていた。


文乃は書道部に入っており、告白と共に渡した手紙は思いが伝わるように筆で丁寧に書いた。


その日から文乃と三太は交際をスタートさせ、部活終わりに2人で下校をするようになった。


その年のクリスマスには文乃は赤い手紙を三太にプレゼントをした。


その時の三太は期待していたモノとは違ったのか何とも言えないような表情をしていた。


『今日はね、小林さんからお土産を貰ったんだよ。…』


付き合い初めてもうすぐで1年になろうとしていた頃、文乃はどんなに小さなメッセージも手紙にして渡すようにした。


三太は疑問に思いながらも手紙の返事を毎日LINEで送り返した。


文乃もLINEをやっていたし、何より三太はわざわざ手紙に書いて渡すことが面倒くさいと感じているようだった。


外の気温が下がるにつれて三太の高校最後の大会が近くなり、部活も忙しくなっていた。


日差しが反射するリンクの上、5人の選手がピストルの発砲の音と共に滑り出す。


レース終盤、一番後ろにいた三太がカーブから驚異的な追い上げを見せて一着でゴールをした。


「おいおい、また俺が1位か?これは最後の大会も1位取っちゃうかもしれないな」


三太は後ろから遅れてやってくるチームメイトに向けて無駄に大きな声で言い放った。


「また始まったよ…」


チームメイトは呆れ顔で三太を相手にしないように避けながら去っていった。


大会一週間前、思いもしない事故が起きた。


部活をしているはずの三太から連絡が入り、文乃は急いで病院へ向かった。


病室に入ると、足にギプスを巻いた放心状態の三太の姿があった。


三太は練習中に大きく転倒してしまい、足の関節を大怪我してしまっていた。


医者からは三週間安静と言われ、最後の大会に出られなくなってしまった。


病室に見舞いに来た監督やチームメイトからは「最後の大会に出られないことは残念だが、しっかり直してくれ」と言ってくれたが、中には「あんなに調子に乗っていたのだから自業自得だ」という声が多く聞こえてきた。


しかしそれよりも、三太は3年間やってきたことの集大成である大会に参加もすることができないのが何より辛そうだった。


三太はリハビリを始めてもボーっとする時間が増え、身が入ってなさそうだった。


そんな三太を文乃は支えたいと思い、一緒にいる時間や手紙の量を増やした。


しかし、三太との会話は徐々に減っていき、手紙の返事をくれることも少なくなった。


少しの時間が過ぎたある日、三太は病室でひとりぼっちだった。


最近は、文乃も病室に顔を出してくれることが少なくなり、病室が無駄に広く感じた。


三太は机の上にある文乃からの大量の手紙の中から一通の赤い手紙に目がいった。


その手紙は去年のクリスマス、文乃からもらったプレゼントだった。


この手紙をもらった時は期待していたモノとは違い、中身を見ずに片付けてしまったのを思い出す。


半分に折られた手紙を丁寧に開くと、手紙の前半は学校の世間話などいつもとなんら変わりのない内容だったが、最後の一文だけは違っていた。


『私が何度も三太君に手紙を書くのはね、小さい頃にサンタさんに手紙を書いたのがきっかけなの。サンタさんに手紙を書いている時は妙にワクワクして楽しかったんだ。それは三太くんへの手紙を書いている時も一緒で、いつも楽しい気分になれるの。三太君にもそんな気持ちになってほしい』


三太は手紙を強く握りしめ、もう自分には文乃の手紙しか残っていないのだと思った。


私は今回『手紙』をテーマとして物語を作ってみました。

手紙と言えばあなたは何を思い浮かびますでしょうか。

今の時代、スマホを使って会話のやり取りができるので手紙を使うことがほとんどないかと思います。

しかし、小さい頃に書いた『サンタへの手紙』なら誰もが書いた経験があるのではないでしょうか。私は『サンタへの手紙』を別のカタチで表せないかと思い、この物語を作りました。

読み終わった後にもう一度タイトルに注目していただいて、読む前に見たタイトルの印象と比べてみてもらうと面白いかもしれません。

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