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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第二章

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八十九:星々の遊び、ありがとうを君に

 無制限化(アンリミテッド)という状態の灯は宙に軽く浮かんでおり、魔法を当てるのは困難だろう。だが、魔力覚醒をしている清からしてみれば、集中力の上昇と合わせて問題はない。

 魔力覚醒の発動は、魔法勝負が終わるまで維持できると思われる。


(今なら、楽しめる!)


 灯の魔法の分析を終えた清は、体勢を低く構えた。


 清は灯の魔法陣展開を合図に、地を蹴り一気に走り出す。


「最大出力! 無制限(むせいげん)合成魔法(ごうせいまほう)――単発式【たんぱつしき】――」


 高威力の熱を生み出した光線が、地を焦がし襲い来る。


「魔法――神速【しんそく】――」


 光線に合わせ、同じく単発の進化魔法である神速で対応する。

 光線と神速が相殺し、地面に風圧を打ちつけ、周囲の土を巻き上げた。

 土煙の中を走り抜けながら、清は右手に思いを託し、力へと変える。


「願いよ、今ここに新たに輝け! 神秘の光――星剣【せいけん】――」


 清は星剣を繰り出し、勢いのままに灯の懐へと潜る。

 灯が宙に浮いているため、星剣の射程外であるのに変わりない。となれば、やることは一つだけだろう。

 星剣を順手持ちのまま、地面もろとも抉るように、灯に向かって下から一気に切り上げた。


「甘いですよ。無制限合成魔法――速射【ばーん】――」

「くっ」


 その瞬間、灯は更に高く浮き上がり、地の破片を避ける。また、それと同時に星剣を狙い撃ちされ、星剣が手から弾き飛ばされる。

 懐に潜られた手段の対策を用意している灯に対して、これまでの魔法や生半可の付け焼き刃では手の打ちようがないだろう。


 ふと考えていれば、灯から強い魔力が溢れ出していた。


「無制限合成魔法は……これすらも可能にします。耐えられますか? 星夜の合成魔法――過去からの始まり――」

「……星夜の魔法。さすが灯だよ」


 空中に無数の魔法陣が展開され、紛れもなく星夜の魔法であると直感が理解させてくる。

 一時の休息もないうちに、無数の魔法が星のように降り注ぎ向かってきていた。

 降り注ぐと同時に、清は再度足に力を籠め、一気に発して雨の中を走り出す。

 風の音響と、地の欠落する音が無数に耳を通り抜け、脳に伝わってくる。


 手数では明らかに灯が上であり、この魔法の中で足を止めれば負けるのは確実だ。

 考えが脳を巡らせている時、一つの導きが今の状況を通して生み出される。


(灯が無数の魔法陣を使った手数なら、魔法陣を使わなければいいんだ……)


 清は走り続けながら、魔力を更に解放させ、魔力の粒を強く輝かせる。

 魔力の開放により、更なる先にある力で魔法を生み出すために。


「これが灯に対抗する、俺の答えだ! 星夜の空間魔法――生まれゆく星々――」


 清は自身の魔力に、常時魔法陣を展開させた空間を纏わせる。これにより、常時魔法陣を展開した状態となり、魔法陣を通さず魔法を使う荒業だ。

 魔力覚醒状態だからこそできる、魔力の大幅消費を度外視した空間魔法となる。


(普段から魔力を消費しないようにしているけど、覚醒以外でこれは使えないな)


 そう思いながらも、星降る魔法の中、灯との距離を再度詰める。


「灯これならどうだ! 同時発動、星夜の魔法――煌めく兆プラス一線【きらめくシグナルプラスいっせん】――」

「な、これは……」


 本来の一線であれば相手の周りに魔法陣を展開し、反射する魔法玉で相手をほんろうする。だが、魔法陣を通していない一線は、点滅しては現れる星へと姿を変えていた。

 同時に発動したシグナルは、清を中心に点滅するかのように波紋を周囲に放つ。

 灯は宙に浮いているが、四方八方の合わせ魔法によって逃げ場を無くしているはずだ。


 灯の魔法が未だに襲い来る中、清は足を止めずに、地を変形させながら場所を移動する。


「見えないのならば、全てを包んで守るのみ。無制限合成魔法――神秘のベール【しんぴのべーる】――」


 灯の周りに守りの空間が生み出され、魔法を全て防いでいた。


(あれは……魔法シールドの完全版か)

「まだまだ行きますよ! 閉じ込めてくれたお返しです。――償えない寂しい過去――」

「灯本来の氷魔法……懐かしいな」

「さあ、どうしますか?」


 突如地中から氷の牢獄は姿を現し、清の足をピタリと止める。

 これを好機と言わんばかりに、過去の始まりは一点に迫ってきていた。


「星剣よ、周囲に現れ氷を薙ぎ払え」


 清が手を上にあげると同時に、星剣は周りに何本も召喚され、氷の牢獄を薙ぎ払う。

 冷たい冷気が肌を撫でる中、清が上にした手は熱気を生み出していた。そして、一点に集中した魔法へと、狙いを定める。


「これは、灯とこの世界で初めて会った際に使った魔法だったな。炎の魔法――愛【ソウル】――」


 お互いの魔法は天と地の狭間でぶつかり、爆煙を巻き上げながら、爆風と共に空間を限りなく灰色へと包み込む。

 空間に光が差し込む時、お互いに地を踏みしめていた。


 瞬時に察することが出来るのは、お互いに疲れ始めている、ということだろう。

 魔力の消費が無いとはいえ、魔力と体力は別であり、肉体が疲れていくのは当然である。

 灯が全てに応じて万能であるとはいえ、回復を回し続けるのも辛い筈だ。

 次の一撃に全てをかけるためにも、清は息を吸い込み、灯に今の思いを伝える。


「灯と全力で戦えて、俺は嬉しいよ――だからこそ、零式の更なる上を君に届かせる」

「……清くん、私はずっとこの機会を待っていました。そろそろ、楽しかった時間に幕を下ろしましょう――持てる知恵での全力の全てを、あなたに届かせて」


 全身全霊の魔法勝負であるにも関わらず、お互いの表情には笑顔が宿っていた。

 灯は魔力を高め、再度、先ほどよりも更に高く浮かび上がる。そして、右腕を天へと掲げた。


「零とは一の原点、故に手の届かぬ泉。世界と魔法の(ことわり)を超え、今現世に姿を現さん」


 灯を中心に、地は泣き、空はヒビを生み、空間と次元を歪ませ魔法陣は姿を見せる。

 灯の零式が更なる上となれば、地上を壊滅させるだけでは済まないのは確実だ。

 清は更なる真理へと、息を吐きだして身を沈める。それは、周囲の魔力の粒を更に輝かせていた。


 灯の右腕が振り下ろされる時、審判は下される。


「無制限合成魔法――命式【めいしき】――」


 灯の魔法陣は、認識できない星の誕生を思わせる魔法を打ち出す。

 認識できない魔法は既に地上へと到達しているはずだ。しかし、時はゆっくりと進んでいるかのように、時間を与えてくる。

 清は右手を横に出し、背中に魔法陣を展開した。


「生まれゆく終わりは一つの終着点に集まり、新たな星を生み出す」


 第一段階、黒い球体の渦を生み出し、認識できない魔法もろとも空間を瞬時に吸い込み圧縮する。


「星々よ、今ここに集い届かせろ!」


 第二段階、周囲に散らばった星剣と、召喚された周囲に浮かぶ星剣を一つに束ねる。

 そして、清は星剣を右手で握り締め、足に力を込めた。

 瞬く間に地を強く蹴り、渦巻く黒い球体へ向かい飛び上がる。


「切り開く未来へ! 星夜の魔法――ロストオブマジック――」


 清は黒い球体めがけ、輝く星剣を振りぬく。

 圧縮された空間もろとも切り裂かれた球体は、膨大な音の無き爆発を起こし、爆風を引き起こした。


「灯、これが俺の――星の魔石の真理だ!」


 清は切り裂く瞬間に球体の上空へと抜けており、爆風を更なる足場とし、浮かぶ灯の元へ辿り着く。


「これを防いで、私が勝ちます!」

「勝つのは……俺だ!」


 灯の周囲に展開された神秘のベールに、清は星剣を勢いのままに刺しこむ。

 神秘のベールと星剣を中心に、強烈な衝撃波が発生する。


「灯、これで最後だ!!」

「う、絶対に負けたく、ない!」


 風が吹き荒れ始めた瞬間――押し合いは白い輝きを強く発し、二人の世界を包み込んだ。




 どれほど光に包まれていたのだろうか。

 目を覚ませば、背は地面を下にして横たわっていた。

 ふと気づけば、隣に常和が座っているのが目に入った。

 清は疲労しきった体を起き上がらせる。


「う、いてて……常和……灯は?」

「清、あまり無理するなよ。星名さんは無事だ……それと、勝利おめでとう」

「え?」


 常和から言われたことに理解が追い付かなかった。だが、手を見てみれば、魔力シールドが顕在して残っている。

 周囲を見渡せば、常和は静かに指をさしていた。


 指がさされた方向には、灯と心寧の話している姿が目に映る。それでも、灯は座り込んでいる状態だ。


「……清の好きにしろよ。俺は止めもしないし、手を貸す気もないからな」

「常和、ありがとう」


 清はおぼつかない体に鞭を打ち、その場をゆっくりと立ち上がる。

 そして、一歩一歩と足を進め、灯へと近づいた。

 灯も気づいたのか、顔に微笑みを宿してこちらを見ている。

 灯へと近づいた清は、静かに手を伸ばした。


「灯……本気の魔法勝負、楽しかったよ。ありがとう」


 灯は何も言わずに、清から差し伸べられた手を取る。小さくも温かな、優しい手で。


「清くん……私も楽しかったです」


 灯はそう言いながら起き上がり、清との距離を詰める。

 そして、柔らかな風が包み込む。


「え、あ、あかり……」


 瞬く間に、灯は抱きしめてきたのだ。

 柔らかな温もりに、今でも慣れないこの感覚は、嬉しくも痒いものだろう。


「清くん、勝利おめでとう。全力を出したのに……私……負けちゃいましたよ」

「灯、ありがとう。俺が全力を出せたのは、灯のおかげだよ」


 そう言って、清は灯を優しくも強く抱きしめた。

 灯は負けたのが悔しかったのか、小さな嗚咽が聞こえ始める。

 大きくもなく、小さくもない、心から大切な人の泣き声。

 どんな彼女の姿でも、一緒に背負って、受け止めて、未来へ歩んでいくと清は決めている。

 涙を零している灯の背を、清は優しく撫でるように包み込む。


 その時、常和と心寧、ツクヨが温かな拍手を送ってきていた。


(これは勝負後の労わりだ……だから、本当の思いの勝負はここからだ)


 無論、これが灯に対しての告白であるわけがない。

 お互いの近くて遠いような距離が近づいたかもしれないだけで、思いを伝えていないのだから。

 心にある灯への本当の思いは、ここからが本番と言えるのだ。

 それでも、今はこの優しい一時を、堪能してもいいだろう。


「……灯……もう一つの約束は、絶対に叶えるから」

「……いつでも待っていますよ」


 数多の魔法のような記憶を巡り、星々の約束された魔法勝負に幕は下ろされた。

清くんの失われた記憶を巡る物語と、約束された清と灯の魔法勝負はここで幕を閉じましたが……第二章は後二話ほど続きます!

魔法合宿最後の夜、見守っていただければ幸いです。

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