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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第二章

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八十四:五日目、指導とは?

 魔法合宿五日目。

 清、常和と心寧の三人は現在、校庭の中央に立っていた。

 星夜の魔法を使うための指導ということもあり、心寧が一番ワクワクしているようだ。


 清からしてみれば、心から信頼できる二人に指導してもらえるのは、この上なく頼もしいと思っている。


 また、魔法や魔力の扱いに関して、四人の中では常和と心寧が一番高いというのが事実だ。清と灯の場合は魔法を使えるものの、そこまで熟知しているわけではない。


「まことー、体を魔力に慣らすためにも、まずは基礎からだよ!」

「清は四人の中だと、率直に言って動作や魔法までの感覚が一番弱いから……諦めて受け入れてくれ。あ、俺は清の補佐に回るかも知れないだけで、基本は見てるだけだからな?」

「一対一の方が教える面でも楽だからねー。そうそう! 基礎が出来たら、うちと簡易実践の魔法勝負だからね!」

「心寧と勝負か……何気に一対一は初めてだな」


 心寧とはペア戦で一戦交えているが、ペア戦以外では勝負をしたことが無かったのだ。

 心寧の魔法は今でも未知数のところがあるため、実践して学べるのはいいものだろう。

 また、お互いにジャージという動きやすい服装であり、動作による差が起きにくいと思われる。


 その時、「ほらよ、清」と言って常和が木刀をこちらに投げてくる。


「これは?」

「あー、魔力シールドを張っていれば、直接的なダメージは心寧に無いから安心しろ」

「いや、聞きたいのはそこじゃなく――」

「魔法を集中して使えるようにする前置きみたいなものだよ……本来は必要ないけどねー」

「……じゃあ、なんで渡したんだよ」

「え。基礎の動きだけだと素手でうちが圧勝だから?」


 何気に心寧に貶されたが、やってみればわかる話だろう。

 清としては、心寧が素手というハンデを設けられたが、手を抜く気はない。しかし、これで心寧に手が届かなければ、明らかな実力差が判明するのもまた事実だ。


「清がうちから一本でも取れたら褒めてあげる! ――魔力シールドてんかーい!」

「心寧、ハンデをあげた上で負けても文句言うなよ? ――魔力シールド展開」


 魔力シールドを展開するとともに、お互い動きだす――。



 数十分後、清は疲れたように座り込んでいた。そして、心寧はニコニコした様子で清を見ている。

 清は勝つと意気込んだものの、心寧に手も足も出ずに敗北したのだ。それも、僅か数十分の時間の中で百戦し、百敗している。

 行動に無駄は見当たらないと思っていても、心寧から見れば隙だらけだったらしい。清は木刀を全て空振りした挙句、心寧の繊細とも言える手刀で魔力シールドを次々割られたのだ。


 指導という名の完全なる蹂躙(じゅうりん)になるとは常和も思っていなかったらしく、常和の止めが入り、今に至っている。


「ほらよ」

「常和、ありがとう」


 清は常和が渡してきたスポーツドリンクを受け取り、ゆっくりと口に含んだ。

 近くに立っていた心寧は、その様子を見ながら清の隣に座ってくる。


「力量に技術差、全てに応じて今はうちの方が上なのに……まことーはなんで手加減をしているの?」


 心寧は若干の迷いを見抜いていたのだろう。それも、手を交えたあの一瞬のうちに。


「……俺の魔法で、灯を傷つけたくないからだと思う」

「清は魔法で人を傷つけた過去があるらしいし、それがついでにストッパーの役割を果たしてるのかもな」

「本当に優しいね……あかりー、魔法を打ち消す力を微かにだけど持っているみたいだよ? だから、まことーが心配するようなことではないと思うよ?」


 心寧から言われた言葉に、清は一瞬言葉を失った。

 確かに灯は、ツクヨもとい月夜の娘である。だからこそ、打ち消す力を持っていても不思議ではないだろう。

 疑問に思うのはそこではなく、何故心寧が知っているのかが問題なのだ。


「心寧、何でそれを?」

「あー、うちの憶測に過ぎないよ?」

「心寧、清に聞かせてやってくれ。俺も気になるしな」


 心寧はうなずいた後、小さく息を吸う。


「うちが普段からあかりーに抱きついているのは知ってるでしょ?」

「まあ、目の前で見ているからな」

「一日目のお風呂の時にね、油断したら魔力溢れて気持ち悪くなっちゃったの。それで、慌ててあかりーに抱きついたら魔力の溢れが和らいだから、確信を持ったの! 普段はビーズを通して調整してるから、あまり違和感なかったんだけどねー」

「あー、あの時に灯が若干機嫌悪かったのってそう言う事だったのか……」


 清は心寧に苦笑いしつつも、心の迷いが晴れた感じはしている。

 心寧が言うから信用できるのもあるが、灯と対等に勝負をしたいと思っている以上、ありがたい情報だろう。

 灯の魔法を打ち消す力が本当だとすれば、気合を入れ直さなければ勝ち目は限りなくない。


「とりあえず清! 今は心寧に本気でぶつかって思いを証明して見ろよ!」

「ああ、わかった」

「まことー、見るからにやる気だねー」


 休憩を終わりにして、清と心寧は立ち上がる。

 また常和が、心寧から一本取ったら次に進むからな、と言ってきた以上、いつまでも負けるわけにはいかないだろう。


 その時、常和が手に小さな魔法陣を展開しながら声をかけてくる。


「清、手に魔法陣を展開しつつ、魔力を全体に流した状態で心寧とやってみな」


 清は小さくうなずき、木刀を持った手に小さな魔法陣を展開させ、魔力を身の内の全体に流した。


 魔力の流れに慣れないうちは、清は何回も心寧に敗北を期した。


(次なら、いける!)


 迷いを完全に捨てきり、清は深く息を吸い込み、集中力を限界まで引き上げる。


「なるほどー、おもしろいね! その覚悟、うちに見せてよ!」


 木の葉が地に落ちて音を立てた瞬間、清は心寧との距離を一気に詰める。そして、最小限の動きで心寧の反応よりも早く、清は心寧に木刀を触れさせることに成功した。

 魔力シールドをうっすらと削るような形になってしまい、これでいいのだろうか、と清は疑問に思う。


 そんな考えがよぎった時、心寧が嬉しそうな表情で拍手をしてきた。

 常和も手を鳴らしている辺り、大丈夫なのだろう。


「まことーおめでとう! じゃあ、魔法勝負する前にお手本を見せるから、見ててねー」

「お手本?」

「清、言っただろ? 『心寧に教えてもらえるかもな』って。心寧が手本を見せるから、見て盗め。星夜の魔法を完全に使うためにもな」


 常和が真剣な眼差しで言ってくるため、清の直感が本気だと伝えてくる。

 念の為という事で、清は常和と共に、心寧から距離を軽く離した。

 距離を離せば、心寧は足元に魔法陣を展開させる。

 魔力が溢れるように心寧の体の周りに流れ始めているのか、魔力が心寧の周囲を包み込んでいた。


「清……これが魔力覚醒(まりょくかくせい)状態(じょうたい)のやり方だよ! 美咲家(みさきけ)相伝(そうでん)――咲く一線【さくいっせん】――」


 心寧が魔力覚醒の言葉を言うと共に、溢れ出た魔力が光の粒となり、周囲に煌めき浮かび上がる。

 灯の限界負荷(オーバーフロー)に通ずる何かを感じるが、本質が違うのだろうか。


「魔力覚醒……簡潔に言えば、集中状態となって、魔力を使い放題になるんだよ、無論、限界負荷に唯一ならない、美咲家相伝――今は魔力が溢れる体質の心寧だけができる、魔力覚醒状態になる魔法だ」

「心寧だけしか出来ないのに、俺が出来るのか?」


 清がそう言えば、魔力覚醒を止めた心寧が疲れた様子で近づいてきていた。


「まことーにはうちとの魔法勝負中にこの力に目覚めて、星夜の魔法を完全に使えるようにしてもらうからね!」

「清の星の魔石なら、やれるはずだ。一応、星名さんに許可取りがてら少し聞いてみたらさ『清くんの魔石なら出来ますよ』って言ってたから、出来るだろ?」

「……わかった、俺の事を信用してくれている灯の為にも――魔力覚醒、ものにしてやる!」


 常和が「その意気だ」と言うのと同時に、背中を軽く押してきたので、清はその場を立ち上がった。

 灯に限界負荷になる心配をかけたくない以上、自分なりにあがくのが今できる唯一の方法だろう。


 その時に心寧が「少しだけ休ませてよー」と言ってきたので、三人は一旦休憩を挟むことにした。

灯の出番を楽しみにしてくださっている読者様へ

この回を含め、三話の間は名前だけが出るだけになっております……大変申し訳ございません!

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