表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/258

八十三:思いを込めた願い

 起きた経緯を説明し終わった後、心寧が湖の跡地を見渡していた。

 星夜の魔法を試すついでとはいえ、魔法の庭の一部を消し飛ばしてしまったのはまずかっただろう。それも、心寧が幼い頃から生まれ育った土地の一部にもかかわらず。

 近くに居る灯と常和も、ただただ心寧を見つめているだけだ。


「心寧、すまな――」


 清が心寧に謝ろうとした時、常和が腕をそっと横に出し、言葉を止めてきた。

 常和の真剣な眼差しが見つめる先には、こちらの方に振り向く心寧が見える。

 魔法で起こしたとはいえ、何を言われても仕方ないだろう。

 清が心の中で反省していれば、心寧がゆっくりと口を開く。


「まことー、別に気にしなくても大丈夫だよ。この湖は日が昇る頃にまた戻るだろうしね。それに、清の本当の魔法が戻ってきた事実が……見守ってきたうちらとしては嬉しいから!」

「心寧……」

「お二人さんには、星夜の魔法とか色々聞きたいが、何はともあれだ。魔法……戻ってきてよかったな、清」


 そう言って肩に優しく手を置いてくる常和に「ありがとう」とだけ、清は返した。常和になら多く語らなくともわかる、と思ったからだ。

 また、隣では相変わらず心寧が灯に抱きついており、いつもの日常が戻ってきたように思えてしまう。


 ――この四人が今後も笑顔で居られると思える、そんな日常。


 魔法の庭に来た時よりも、今の雰囲気はどこか柔らかくなっているようにすら思える。

 自分を抱きしめてあげたからこそわかる、というものだろうか。


「あ、そうだ! 夕方、みんなである場所に行こうよ!」

「あー、なるほど。俺は心寧に賛成だ」

「私も賛成です」

「灯と同じく」


 そうして、夕方にある場所に行くこととなった。




 日が落ち始めた頃、心寧の案内で、来た時に見えていた近くの山へと足を踏み入れていた。

 心寧にある場所の詳細を聞こうとしたのだが、着いてからのお楽しみ、という理由で教えてもらうことは出来ていない。


 山の中は木々や草花が生い茂っており、何の補装もされていない。だが、心寧は歩きやすい場所がわかっているのか、後を続くだけで道が出来ているようにすら思える。

 常和は「心寧に任せれば大丈夫だ」と自信満々に言っていたので、問題は無いだろう。


「そういや、清? 体の調子は大丈夫か?」

「ああ、今は大丈夫だ」

「清くん、あの後ぐっすり眠っていましたもんね」

「……眠っていたまことーに、膝枕をしたり、頭を撫でたり、顔をぷにぷにして遊んでいた子も居たよねー。離れる時にはちゃっかりブランケットかけていたしねー」

「し、心寧さん!?」


 後ろを振り向かず前を進んでいた心寧が不意に落とした、暴露という爆弾に、灯は顔をわかりやすく赤らめている。そして、灯が首をふりふりしているせいか、ポニーテールでまとめられた透き通る水色の髪が小さく暴れている。


 清としてはそこまで気にしていないが、二人の前でやればこうなるのは目に見えていただろう。もしくは、二人が影からこっそり見ており、気づかなかったのが濃厚となる。


「まあ……体の調子は大丈夫なんだけどさ、星夜の魔法が上手く扱えない、というよりも今の魔力で使えないのがな」

「え……星夜の魔法が使えない?」

「あー、うちらに考えがあるからそこらへんは任せてよ!」

「そうそう。星名さん、後は俺らにバトンを渡してくれよな」

「常和、心寧……ありがとう」

「ありがとうございます。後は頼みますね」


 湖の後、体の調子が悪くなって寝込んでしまったのも事実だ。

 星夜の魔法が戻ったことにより、神秘の力が体に流れ始めたのも影響しているだろう。

 体に馴染まないこともあってか、清は今でも違和感が少しある方だ。


 それでも、今は常和や心寧の言葉を信じて、希望が実る瞬間を自らの手で掴み取るのが最善だろう。


「あ、見えてきたよ!」

「……あれは、神社?」

「清、まとめてる時に言っただろ『ある場所の名称は魔法神社』だって」

「魔法の庭は御二方が総称した呼び名、とは言っていましたものね」

「にしても、近くの山の山頂に魔法神社があるとは思わないだろ」


 山頂付近に上り詰めた時、石の階段が山を円状に囲いながら姿を見せた。そして、木々に囲まれながら、中心に古びた木の神社がポツリと佇んでいたのだ。

 神社自体が小さいこともあって、周りの木々に囲まれ、校舎などの下からは見えなくなっていたのだろう


「みんなでお願いをしたいな、って思ったからここに来たの! それに、四人がそれぞれ思うべきことを、再度思い返す面でもちょうどいいでしょ?」

「さすが心寧! 考えが違うな」

「とっきー、そんなに褒めても笑顔しか出ないよー」

「俺からしてみりゃ、一番のご褒美だな」


 隣でイチャつき始めた二人を横に、気づけば灯が服を引っ張ってきていた。


「清くん、ちょうどいい機会ですし……一緒に思い思いの願いを祈りましょ」

「そ……そう、だな」


 灯が満面の笑みを浮かべながら言ってくるため、清は気持ちが落ちつかず熱くなっていた。


 四人で神社の御賽銭箱前に立ち、鐘を鳴らした。鳴らされた鐘は山の中に響き渡るかのように、綺麗な音を響かせている。

 そして、四人は静かにお辞儀をし、手を鳴らした。


「この四人で今後も楽しく過ごせますように! 心寧の笑顔がもっと見れますように!」

「四人でいつまでも楽しく過ごせますように。とっきーの隣でずっと一緒に居られますように」


 常和と心寧が思い思いの願い事を口にする中、清と灯は目をつむっていた。


(四人で笑顔の絶えない、幸せな毎日を過ごせますように。灯との魔法のような日々に、永遠を誓えますように)


 多分、これはお願いするようなものではないだろう。

 それでも、大事な思いを心の中で、改めて固めておきたかったのだ。



 四人が思い思いの願いを祈った後、月明かりの差し込む山の中を下り、帰路を辿っていた。


「そう言えばさ、灯は何を願ったんだ?」

「内緒です。そう言う清くんこそ、何を願ったのですか?」

「俺も内緒だ」

「ふふ、じゃあ、お互い様ですね」


 うっすらとした月明かりに照らされながら、灯は優しい笑みを顔に浮かべている。

 隣でずっと一緒に居たい、と思ってしまうのは、欲張りなエゴの塊だろうか。

 その時、前を先行して歩いていた心寧が口を開いた。


「明日はまことーが星夜の魔法をしっかりと使えるように本気で指導するから、覚悟しといてよね!」

「あはは。清、俺も付いてるから安心しろ」

「別に心配はしてない」

「清くん、無理はしちゃ駄目ですよ?」

「灯もそれを言うのかよ……」


 灯が微笑みながら言ってくるため、清は苦笑いした。


「あかりー、一緒に歩こうよー」

「ふふ、今行きますから」


 心寧が灯を前に誘い隣を歩かせれば、常和がこちらへと下がってくる。


「清……彼女の希望であるご期待に添えられるようにしないとな」

「ああ、わかっているさ」


 茶化して小声で言ってくる常和に感謝しつつも、清の決意が変わることは無い。

 再度心の中で、覚悟を決め直しているのだから。


 風に吹かれた木々が音を立て、月明かりが帰り道をちらちらと照らす山の中は、四人の思いを自然が祝ってくれているのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ