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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第二章

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七十八:無制限合成魔法に隠された君の努力

 灯は無制限合成魔法を語るよりも先に、魔法陣を展開させ、星の輝く空間を創り出した。

 創り出された空間は、星の始まりを直感的に連想させてくる。


「無制限合成魔法は、無制限に魔法を合成できるから……という理由の共通認識で呼ばれていますよね」

「共通認識というか、魔法世界であかりーしか使えないから一般的な認識だよね」

「まあ、そうなりますよね。実は、無制限に魔法を合成出来るのとは別で、無制限合成魔法そのものが存在しています」

「無制限合成魔法そのもの?」


 心寧はそう言って、不思議そうに首をかしげている。

 清は灯から、無制限合成魔法は灯の持つ星の魔石の力、というのを以前聞いていたこともあり、そこまでは理解できている。

 しかし当初は、無制限に合成できる魔法と認識していたので、人の事をとやかく言える立場ではないだろう。


「……これから話すのは、あくまで私が努力と実力で無制限合成魔法はこうゆうもの、と認識して理解したものになります」


 灯は黙々と語り始めた。


「無制限合成魔法自体、無数の魔法及び魔力の集まりです。言うならば、私の持つ星の魔石の魔力の源……その本体が無制限合成魔法の形とすら言えます」

「魔力の源って……」

「ええ、私と清くんの魔力の源はそれぞれ別にあり、魔法自体も違います」

『星名君、少しだけ言葉には気を付けた方がいい』


 ふと気づけば、場が凍り付くような低い声でツクヨは灯の発言を制止した。


(魔法自体。やっぱり……)


 肌に伝わる張り詰めた感覚からも、清は自身の忘れていた記憶に確信を持てる。


 ――忘れていたのではなく、目を逸らしていたのだ。


 今は灯が話している為、清は思い出した事を心にしまい静観することにした。

 その時、常和は黙って清の肩に手を置いてくる。常和が清の考えを察して、気持ちを落ちつかせくれているのだろう。


「言ってしまえば、無制限合成魔法は星の魔石により目覚める第二の力」

「つまりはあれか、星名さんの主属性である氷に、無制限合成魔法が更にプラスされている感じか?」

「古村さんの言う通りですね」


 灯が魔法陣を再度展開すれば、星の輝く空間は光に染まって場面を変えていく。


「話の続きになりますが、私の魔力の源は――分裂と収縮、光となり誕生、魔力の源に帰るを無制限に繰り返しています。私はそれを総称して【無制限合成魔法】と呼んでいます」


 灯の発言と共に、空間の光は分裂と収縮を繰り返し、光を発する星を生み出している。そして、輝きを失った星は、一つの源へと帰還されていく。

 人は一を生み出すことは出来るが、本質そのものを生み出すことが出来ないを意味しているようだ。


 灯の無制限合成魔法を清は何となく理解できた気がした。理解できたというよりも、灯が教えてくれるからわかる、が正しいだろう。


「灯……無制限合成魔法は一として生まれたわけではなく、零として存在している、でまとめて間違いないか?」

「清くん、よくわかりましたね?」

「え、じゃあ……あかりーは普段から無制限合成魔法を打ち出しているってこと?」


 灯は心寧の質問に、少し違いますね、と言ってから話を続けた。


「複合式及びに単発式等は、無制限合成魔法の魔力を帯びた合成魔法です。そして、清くんに以前打った零式が、無制限合成魔法そのものを打ち出していると言えます」

「清、よく直で食らって無事だったな」

「ああ、俺も生を本気で実感しているよ」


 無制限合成魔法を全て理解できていないにせよ、今まで謎に包まれていた灯の魔法が分かるのは嬉しいものだ。

 また、星の魔石それぞれが魔法を持つのであれば、忘れている記憶は魔法で間違いないだろう。


 灯に何気なく使われていた魔法も、遠かったものを近くに感じとれるように思える。

 ふと気づけば、灯の空間魔法は幕を閉じ、湖のほとりが姿を見せた。


「あかりー! 今まですごい魔法を使っていたのに、何で内緒にしてたの……すごい努力の結晶なのに!」

「心寧さん、ごめんな――きゃっ!?」


 灯は急に心寧に抱きつかれ、驚いた声をあげつつもどこか嬉しそうな顔をしている。


「星名さんの魔法もわかったことだし……清、次はお前が頑張る時だな」

「ああ、そうだな」


 常和はやはり見抜いていたのか、平然とした声でそう告げてきた。

 清はその言葉に安心しつつも、常和の相手を見抜く力には内心驚かされる。

 その時、静かにしていたツクヨが手を上にあげた。


『互いを知るというのはいいものだろ? これからも、互いに互いを知り、己を知り、さらに高みを目指す。よき仲間を大事にするんだよ』

「はい」

「そうですね」

「もちろん、うちはそのつもりだよ!」

「当然だ! 俺らは仲間であり、世界の垣根を超えた家族でもあるからな!」


 この四人でよく一緒に居るが、お互いを知れていなかったのは事実だ。

 ツクヨがこのクラスの担任のおかげで、こうして灯の魔法を知り、魔法世界にも触れられた。ツクヨが担任になってくれてよかった、と清は心から思う。


 葉音を立てながら風が吹き、水面が緩やかに揺れた時、ツクヨが言葉を口にした。


『二日間の勉強会、四人共よくやったよ……本当にお疲れ様。この後は各自自由に過ごすといい。遊ぶなり、謎を追求するなり、魔法を使うなりね』


 四人で、ありがとうございました、とツクヨに感謝を述べた後、一旦校庭の方へと戻ることにした。

 灯達に誘われて校庭に戻ろうとした時、清はツクヨに呼び止められる。


『黒井君、今日の夕方……君と話したことがあるのだが、いいかね?』

「夕方ですか? 構いませんが……」

『ありがとう。その時になったら、私の方から出向くよ。くれぐれもだが、星名君には内緒で頼むよ』

「わかりました」


 ツクヨの感じから察するに、灯に聞かれたくないが正しいだろう。灯に聞かれても大丈夫なら念を押してこない筈だ。

 何を話したいのかは不明だが、信用する他ない。

 ツクヨがうなずいた時、「清くん、行っちゃいますよ?」と灯に呼ばれ、清はツクヨに一礼し、湖を後にした。

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