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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第二章

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閑話一:形の無いプレゼント

「心寧、誕生日おめでとう」

「心寧さん、お誕生日おめでとうございます!」

「あかりーにまことー、ありがとー! 祝ってもらえるとは思ってなかったから……うちは今、心から嬉しい」

「心寧、清と星名さんに祝ってもらえてよかったな」

「うん!」


 そう言いながら常和に抱きつく心寧は、満面の笑みを咲かせていた。また、常和も笑みをこぼしているのは、見ていて嬉しいものだ。


 五月一日の本日、心寧の誕生日だ。


 常和から相談を受けた日の夜、灯に心寧の誕生日の話をしたところ『心寧さんの誕生日会を開催したい』、という意見の一致で今に至っている。

 心寧には日頃お世話になっている部分もあるため、祝って楽しんでもらえるのなら嬉しいものだろう。


 また、心寧は誕生日ということもあってか、フリルの付いた薄ピンク色のワンピースを着こなしている。普段は動きやすい服を着ているため、珍しさを感じさせてくる。


「そういえば、まことーの家の庭って……このテーブルとか前からあったの?」


 心寧は飲み物を口にしながら、不思議そうに首をかしげた。

 清の家の庭で開催していたのもあり、心寧は今まで無かった木製のテーブルや椅子に興味を示している。

 前からあったか、と言われれば否なため、不思議になるのも仕方ないだろう。


「このテーブルや椅子は、清くんが創成魔法で生成したものですね」

「……まことーって創成魔法まで使えたの!?」

「まあ、星の魔石ありきだけど、一応な」

「清ってなんだかんだ、合成魔法以外の難しい魔法は一通り使えるよな」

「創成魔法は流石に灯に協力してもらったけどな」

「いや、そもそも転送魔法陣とか使えるのを不思議に思えよ!」


 常和のするどいツッコミに、三人は笑いをこぼした。

 この四人は魔法のほとんどを使えてしまう。そのため当たり前だと思ってしまいやすいが、転送魔法陣や創成魔法の取得は困難を極めるとされている。

 管理者の介入は現在ツクヨのみだが、本来ならそういかないだろう。


 星の魔石や美咲家といった、全ての運命が重なって自由が約束されているようなものだ。

 だからこそ、この四人がここに楽しく集えている、と言っても過言ではないだろう。


「あかりーが料理はすべて作ったの?」

「そうですね」

「あかりー……すごくおいしいよ!」

「ふふ、お褒めいただき光栄です」

「これを毎日食べてるまことーが羨ましいくらいだよ」

「……何でニヤニヤしてこっち見てくるんだよ」

「うーん? べつに―」


 心寧にニヤニヤされているのは気になるが、心寧が本日の主役な分、清は苦笑いだけで留めた。本来であれば、理由を少しは聞いていただろう。

 実際は、この楽しい雰囲気の中に水を差す真似はしたくない、というのが本音だ。


 灯と心寧が楽しそうに話しているのを見ていれば、常和が嬉しそうに眺めているのが目に入った。


「良かったじゃないか、彼女の笑顔をたくさん見られて」

「ああ、あの笑顔は……俺の一生の宝物だからな」


 そうサラッと笑顔で言い切る常和は、全身からまばゆい光を発しているように見えた。

 常和が心寧のことを大切に思っているのは前々から知っていたが、まばゆいにも程がある。

 何気なくこちらにウインクしてくる常和は、お前も早くあの人と付き合えよ、とでも言いたいのだろうか。


(簡単に付き合えていたら……苦労してないんだよな)


 軽く笑いながら常和を見れば、常和はどこか不思議そうな顔をしていた。


「常和? どうしたんだ?」

「あ、いや……すまん、少し考え事してた」

「あまり深く悩みすぎるなよ」

「はは、わかってるって!」


 親友だからといって深く干渉しすぎず、しすぎない程度の距離感を保っている。だからこそ、気軽に相談できて、話しやすいのだろう。

 その時、常和が急に立ち上がって心寧の方に近寄っていった。

 常和の行動には灯と心寧も驚いたようで、不意を突かれたような表情をしている。

 そして、灯は何かを察したようにこちらの方へと移動してくる。


 常和が心寧の前に立った時、太陽の光が二人を包みこんだ。

 小さな世界で照らされてゆく中、常和はゆっくりと心寧の前に手を出し、口を開く。


「心寧」

「うん」

「改めて、誕生日おめでとう。そして、これは俺から心寧に送る誕生日プレゼントだ……受け取って、くれるか?」


 心寧の前に差し出された常和の手には魔法陣が現れ、光の粒と共に小さな箱を形成していく。

 青いリボンの付いた小さな箱が完全に形成されれば、心寧は小さくうなずき、箱を手に取る。そして、リボンをほどき中身を見ている。


 中身を見ていた心寧の瞳から、小さな雫が静かにこぼれ落ちていた。


「とっきー……うんうん……古村常和、ありがとう。うちは今、生きてきた中で一番嬉しい」

「そうか、美咲心寧に喜んでもらえて何よりだ。最高の笑顔をありがとう」


 そう言って、常和は心寧を抱きしめた。

 心寧の身長的にすっぽりと常和の胸に収まり、心寧は嬉しそうに目をつぶって感じているようだ。


 そんな二人を見ていれば、横で小さく拍手していた灯が服の袖を引っ張ってきた。


「清くん、仲がいい親友の二人を見るのは……いいものですね」


 微笑みながら言う灯に、そうだな、とだけ清は返した。

 他人の幸せを妬まず心から祝福できるのは、とても優しい証拠だろう。



 感動的な雰囲気が落ちついたころ、清は灯と共に心寧に近づいた。


「心寧さん、私達からの誕生日プレゼントなのですが――」

「え! まことーとあかりーもくれるの!?」

「そのだな……」

「もったいぶらずに教えてよー」


 心寧は焦らされていると思ったのか、ワクワクしたような表情で期待の眼差しを向けてくる。

 清は灯と顔を見合わせ、お互いにうなずく。


「灯と話し合って決めたんだけど、心寧の好きなことを一緒にしてあげる、っていう形の無いプレゼントなんだけど……どうだ?」

「うちの好きなことを一緒にしてくれるの!?」


 心寧は嬉しそうな顔をして、清と灯の二人を見てくる。

 正直嫌がられると思っていたので、心寧の反応は意外だった。

 内心で驚いていれば、灯がワンテンポ遅れて言葉を口にした。


「ええ、そうです。形あるプレゼントは後日、私の方から心寧さんに渡しますので」

「二つももらえちゃうって……うちは本当に、幸せに恵まれているね」

「清と星名さんから二つももらえてよかったな、心寧」

「うん!」


 常和がそう言うと、心寧は潤んでいた目を手で拭い、小さく呼吸をした。


「実はね……一つだけ四人で一緒にしたいことがあったの」

「なんですか?」

「えっとね、魔法合宿の時にしたいことなんだけど……その時でもいい?」

「私は構いませんよ。ね、清くん」

「ああ、もちろんだ」


 心寧は笑顔を表情に宿し、灯に抱きついた。

 なぜ灯に抱きついた、と清は言いたかったが今はそっと見守る。


 ふと常和の方に目をやれば、なぜか泣いていた。


「常和、なんで泣いているんだ?」

「これは泣いてるわけじゃ、ない。あれだ、嬉し泣きってやつだ!」

「それを泣いているって言うんだよ」


 清は思わずツッコミを入れてしまったが、お互いに顔を見合わせて笑みをこぼした。

 常和は笑い終わった後、思い出したかのようにあることを聞いてきた。


「清、一つ疑問なんだけどさ……なんで形の無いプレゼントを? 二人で相談したんだろうけど、そこが疑問でさ?」

「あー、いずれ教える」

「ま、そうだよな。全部教えてもつまんないしな」


 そう言って笑う常和は、未だに灯に抱きついている心寧の方に目をやる。


(なぜ形の無いプレゼントを、か……)


 形の無いプレゼントを案に出したのは、清自身だ。

 案を出した当初は流石の灯も不思議そうにしていたが、理由を伝えて納得させることに成功している。


 形の無いプレゼント……心寧を主軸にした四人での思い出を作る、という記憶の一ページに刻めるプレゼントだ。


 四人は他人同士だが、過去の境遇はどこか似たり寄ったりした者同士のため、なんとなく欲しいものが分かっているのかもしれない。今の心寧の喜び方が、その意味を物語っているだろう。

 形あるものは後日、灯と買いに行く予定になっている。


 ふと気づいたとき、心寧が全員の方をグルっと見ていた。


「ねえ……うちはこの四人で居られる今の時間が、一番楽しいよ。ありがとう、清、灯。そしてうちの一番の彼氏、とっきー」


 心寧の言葉に、三人は盛大な拍手を送った。

 その後も誕生日会という名の、いつもの四人が送る日常に笑顔が絶えることは無かった。

この度は数多ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございました。

本編は現在調整中のため、閑話を挟む形を取らせていただきました。次回も閑話になる予定ですが、本編を最高の形になる調整であることをご理解いただけますと幸いです。


今回の閑話でサラッと触れましたが、魔法合宿で心寧のやりたいことが判明します。

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