表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/258

四十八テン八話:今日くらいは甘えとけ

※四十八話のその日の夜を描いた話となっております

 ふと目を覚まして机に置いてある時計をみれば、十九時を過ぎていた。目を軽くつぶったつもりだったが、夜まで眠ってしまったらしい。

 手の方を見れば、眠っている灯が優しく握ったままだ。

 少しだけ手を離そうとした時、甘えるかのように清の手を寄せ、自身の頬を手の甲に当ててくる。

 離さない、と言わんばかりの、そんな頬擦り。


(……可愛い。でも、反応に困る)


 この状況をどうしようかと悩んでいれば、灯の潤んだ瞳が薄っすらと姿を見せる。

 灯は焦点がぶれた水色の瞳で、清を見てきた。正確には清の方向を見てきている。

 起きそうなのかわからないくらい、ぼやけたように小さく喉を鳴らしているが……起きる様子はない。


 しばらくすれば、灯は起き始めてきたのか瞼のカーテンを開け始める……。


「うー、うーん……まこと、くん」

「灯、大丈夫か?」

「え、あ。ご、ごめんなさい」


 灯は自身が何をやっていたのか理解したようで、恥ずかしそうに頬から清の手を離した。


「え、なんかすまん。それより、体調はどうだ?」

「えっと、少しだけだるいです」


 灯の顔色を見るに、普段見ている白さになってきているので嘘ではないだろう。

 ほっとするよりも先に、まずは灯に聞くことがある。


「灯、またお粥食べるか?」

「……うん」

「わかった。あと、着替えはどうする?」

「……えっと、着替えてきますね」


 灯はそう言った後にベッドから足を出し、立ち上がろうとしている。

 無理はさせたくないな、と清は静かに灯の背中と膝裏に手を回して持ち上げた。

 朝と同じように抱いて寄り掛からせれば、灯は服をぎゅっと掴んでくる。

 灯はもう普通に歩けますよ、と言っていたが、今日くらいは甘えとけ、と清が言ったことで静かに甘えた様子を見せた。


(スポーツドリンク、灯に言われるまで忘れていた……)


 灯を部屋に運んだあと、清はキッチンに立っていた。

 お粥くらいなら簡単に作れるが、わざと時間をかけている。灯の着替えや汗を拭く時間を考えれば、合理的で妥当な判断だろう。

 桃は体調を崩した体に良い、と灯が言っていたのでそれも加えるつもりだ。灯もそうだが、清も桃が好きなため缶詰が最低限常備されている。


(これくらい時間が経てば大丈夫だよな)


 少し時間が過ぎた後、お粥が食べやすい温度になったため、清は自室へと用意したものを運んでいた。

 お粥を用意している時、二階から微かにドアの音がしていたので、灯が清の部屋に戻っているのは確実だろう。


 静かにドアを開ければ、灯が上半身を起こしていた。

 清は机にお盆を置きつつ、灯にスプーンとお粥を手渡した。

 お粥を受け取った灯は眺めたまま食べようとしない。


「灯、俺が食べさせてやろうか?」

「じゃあ、食べさせてもらってもいいですか?」

「……え?」

「食べさせてやろうか、と言ったのは清くんですよ。……それに、今日くらいは甘えとけって言ったのも。だ、駄目でしたか?」


 灯はスプーンと器をこちらに差し出してきている。

 茶化すつもりでわざと言ったのだが、本気にしている灯の気持ちを無下にしたくない。

 そして透き通る水色の瞳で真剣に見つめられている以上、引き下がるわけにもいかないだろう。


「わかったよ」


 清は灯から受け取った後、お粥をひとすくいし、灯の口許へと差し出した。

 灯が与えられたお粥を恥ずかしがらずに小さく口に含み、幸せそうな笑みを浮かべてくるのだ。

 灯の方が先に恥ずかしがってやめると思っていた為、こちらの方が恥ずかしくなってくる。


(この笑顔、心臓に悪すぎだろ)


 食後に桃も食べられる、と言われて食べさせた後、一息ついていた。


「灯、今日はこのまま寝ていた方ほうがいい。治っていたとしても、自身を大事にしてくれ」

「……わかりました」


 灯の事を心配して言ったのだが、水色の瞳は寂しげに見える。

 そっと手を伸ばし、灯の小さな手を包み、ゆっくり枕もとの方へと近づけた。


「安心しろ、今日はずっとそばに居てやるって言っただろ」

「清くん、ありがとう。おやすみなさい」

「おやすみ灯。良い夢を」


 しばらくすれば、灯から小さく寝息だけが聞こえてくる。

 いつも一緒に過ごしているのからこそ、元気が無い姿だけは見たくない。そう思えてしまうのはエゴなのだろう。

 灯との距離感が近くて遠いからを理由に、心配にならないわけがない。


(……君との時間はかけがえのない大切な記憶だよ)


 清は灯が寝入ったのを確認した後、ふとした睡魔に負けて目をそっと閉じた。


この度は、数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございました。

限界負荷の話が絡んでいなかったらの、魔法のない魔法のような二人の日常でした。


ちゃっかりと判明しておりますが、二人揃って桃好きです。そして、プリンもお互いに好きという……なんで未だに付き合ってすらいないのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いちゃいちゃ回、ごちそうさまでした。 大変おいしゅうございました。 好きな子にお粥作ってもらって看病してもらって。さらにお姫様抱っこ!! 幸せでいいです! きっと清くんは半殺しな気分…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ