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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第三部
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第四十一話:君と新たな始まりの音

今話から第三部、始まりとなります!

 学校が再開する一月四日の本日、清はリビングで灯から制服の身だしなみを確認されていた。

 久しぶりに制服を着るのもあり心配だったが、灯が見てくれるのは好都合だった。


 また灯はいつも通り制服の上にローブを身に着け、首回りに白い付け袖を着飾っている。灯曰く、肌の露出を最低限に抑えているため、日焼けや赤外線対策は完璧らしい。

 お洒落に気を遣う女性の気持ちは、清には正直よくわからなかった。


「……特に問題は無いですね」

「そうか。ありがとう、灯」

「どういたしまして」


 微笑みながら言う灯を横目に、清は近くの椅子に座った。また、灯も近くに椅子を移動させた後、清と隣合わせになるように座っている。

 これにはやらかした、としか思えなかった。灯を先に座らせ、清が椅子を近くに持ってくるべきだっただろう。灯への気遣いの足りなさを痛感してしまう。


 内心で反省しつつも灯に視線をやれば、目と目が合う。

 ふと灯の表情を見れば、どこか不安そうな顔をしている。そこまで不安そうではないが、どこか落ち着かない様子、といったところだ。


「灯、どうかしたのか?」

「え……もしかして、顔に出ていました?」

「まあ、これだけ一緒に居ればそれくらい気づくだろ」

「……嬉しいです」

「そうかよ」


 灯の不安そうにしていた表情は和らぎ、いつも通りの優しい笑顔が戻っていた。


「清くんは管理者……ツクヨをどう思いますか?」


 真剣な眼差しで灯は見てきている。

 管理者をどう思いますかと聞かれても、ペア試験でしか会ったことがないため、印象付けていない。


 また灯が管理者の事を心配そうに聞いてきているのは、学校に登校すれば会うのが確実だからだろう。


「俺は別にどうも思っていないかな」

「そうなのですね?」

「ああ。俺としては灯が管理者を見た瞬間、魔法を向けないかの方が心配だからな」

「そ、そこは大丈夫ですよ!」


 灯は恥ずかしそうに、清の腕を優しくポコポコ叩いてきている。

 痛くはない、ただ……照れ隠しの為に叩いているのに隠しきれておらず、その可愛い一面が清の気持ちに対して弱かった。


 数分後に落ち着いた灯の頬は、未だにうっすらと赤みを帯びており、他人に見せたいと思えない。それは傍から見れば独占欲、というものに当たってしまうのだろう。

 ふと気づけば、灯は落ち着いたようで何故か凛としている。


「そういえば清くん。叶えてもらう願いは前に約束したのでいいですか?」

「灯はそれでもいいのか」

「別に構いませんよ。私も必要な物を現実世界に残したままですから」

「……本当にありがとう」


 灯に感謝をしつつ時計を見れば、長針が家を出る時間を刺そうとしていた。


「そろそろ時間だし、行くか」

「そうですね。清くん、ありがとう」


 何のことか知らんと言えば、素直じゃないですね、と灯に返されたのは言うまでもないだろう。




 灯と学校の校門に着く直前で、ある二人の姿が目に映った。灯が軽く驚いているあたり、恐らく内緒で待っていたのだろう。


「よっ、お二人さんおはよう」

「まことーあかりー、おはよー!」

「おはよう」

「古村さんに心寧さん、おはようございます」


 挨拶を返せば、心寧がジロジロと清の顔を見てきていた。この様子には心寧の隣に居る常和も気づいたらしく、困ったように苦笑している。

 特に変わったことは何もしていないため、見られているだけで居心地の悪さを感じそうだ。


 清は心寧の奇妙な行動に対してだいぶ慣れてきているが、この状況はいつになっても慣れないのだ。

 気づいた時には心寧は標的を清から灯に変えて、灯に抱きついている。


 外でも周りの目を気にしない心寧の行動は、清からしてみれば才能でしかない。


「清、心寧がすまないな」

「なら見てないで止めろよ」


 常和を細目で睨めば、笑って誤魔化されたのだ。


「心寧がああやって楽しそうにしてるの……俺は嬉しいんだ」

「そうなのか?」

「あれ、清に話したことなかったか?」

「……何をだよ」


 常和から心寧の事は基本聞いたことが無いため、清は呆れたような表情をするしかなかった。

 清の言えた口ではないが、心寧はこの四人の中で一番謎が多いと言える。魔法や行動、観察力の高さなど、例を挙げれば切りが無いほどだ。


 少し考えていれば、常和が清にしか聞こえないほどの小さい声で話しの続きを始めた。


「心寧はさ、俺の前ですらずっと笑顔が無かったんだ。生まれが魔法世界だからしょうがない……俺も過去はそうやって思ったよ。でも、お前や星名さんに会えてから楽になったんじゃないかな」

「それ、俺に話してよかったのか?」

「大丈夫だ。あいつは特に気にしてないからな」


 常和は笑いながら誤魔化しているが、目が笑っていないあたり、本当は辛いのかもしれない。

 それでも心寧の過去を知っているのは常和だけで、部外者である清や灯が立ち入っていい問題ではない。

 常和が清の忘れた記憶に深入りしなかったように。


「ま、時間も時間だし、心寧を星名さんから離して教室に向かおうぜ」

「……というか灯、未だに抱きつかれていたのかよ」


 心寧を灯から引き離した後、四人で話しながら教室へと向かった。

 移動している時に常和が「管理者は放課後なら確実にいる」と場所も教えてくれたため、放課後に会いに行くこととなった。

 なぜ常和が知っているのか疑問に思ったが、ペア試験で呼び出された時に聞いていたらしい。


 教室に着いて準備していれば、灯が近づいてきていた。


「清くん、久しぶりの学校ですね」

「そうだな」

「……願い、絶対に叶えましょうね」

「ふん、当然だろ。灯と現実世界でやり残したことを無くしたいからな」


 清がそう言い切ると、朝の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。


この度は、数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございました。

第一章の最終部、第三部始まりました!これも読んでくださる読者様方のおかげです!本当にありがとうございます。

今話は次の四十二話に続く形となっております。また皆様とお会いできることを楽しみにしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ第三部の始まりですね。 謎のツクヨについてかと思えば心寧の過去が。 この四人ともそれぞれ何かを抱えていて、だからこそお互いをかけがえのないものとして見ているのかな、と思いました。…
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