表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/258

第三十一話:ペア試験三日目、親友の願い

「常和……負けてやらないからな」

「清、俺に勝てるとでも?」

「あかりー、男二人は勝負になると熱いねー」

「ふふ、そうですね」


 ペア試験三日目、魔法勝負最後の幕を飾るため、四人で空間魔法の結界内に立っていた。そこは、魔法射撃と同じ空間になっているようだ。

 常和と向き合い、お互いに負けを譲らないという強い意志を醸し出している。


 ある一つの違和感を除き。それは、空気を壊すかのように、真ん中には何故か黒いフードを着た人物――管理者のツクヨが立っているのだ。

 常和に聞いたところ、二日目も開始宣言役として立っていたらしい。

 灯が睨むような視線を向けているのは、気にしない方が身のためだろう。


 数分後、管理者が手を上にあげた。


『お互いに準備はできたかね? ……ペア試験三日目、最後のペア勝負開始を今ここに宣言する』


 空間の外へ管理者が抜けるのを見てから、四人は魔力シールドを展開した。

 展開した後、即座に常和が動きだしたのだ。


「清、先手はもらう! 風の生成魔法――風剣【ふうけん】――」


 風剣を出した常和は姿勢を低くし、突撃してきたのだ。


(距離は……まだある。これなら出せる)


 目を閉じ、神経を集中させた。

 目を開けば、そこは全ての魔法が流れるような空間。そして、一つの光輝く剣へと清は手を伸ばした。


 現実へと意識を戻せば、常和が寸前にまで近づいている、と視認できる距離だ。

 常和の剣の振りに合わせ、清も手を振った。その瞬間、手からは光の柱が溢れだし、風剣を受け止めた。


「願いの光――星剣【せいけん】――」


 清が前回見た剣を出したことに、常和は驚きつつも少し後ろに下がった。


(まだ終わらない。星剣に、空間魔法――失われた魔法【ロストオブマジック】――)


「灯頼む!」

「心寧さん、少しだけ封じさせていただきますよ! ――つぐなえないさびしい過去かこ――」


 清の合図と共に、灯は心寧を氷の牢獄へと封じ込めたのだ。


「あかりー! なにするのよー!」


 心寧を封じ込めても、常和との距離は近いままだ。だが、それは狙い通りだ。

 すかさずに常和の風剣をめがけ、勢いよく剣を振るった。


「常和、ここからが本番だ!」

「お前さ……何を企んでいるんだ! っ!?」


 空間魔法をまとった星剣が、風剣とぶつかった瞬間――剣の間から空間が歪み始め、すぐさま二人を黒い世界へと飲み込んだのだ。


 黒い世界の空間には、見えない足場があるらしく、浮いているようにすら思える。また、周りでは星のような光が輝いている。

 空間を引き起こしたのは、灯に聞いていた通りだ。そして、目の前には常和だけがいる。

 またここまでの一連の流れ全てが、実は計画通りに進んでいるのだ。


(……ここからはアドリブか)


 計画はここまでだ。空間を生み出せるかは一種の賭けだったのだから。

 常和が風剣を構えなおすのを見てから、星剣を近くに寄せるようにしつつ、清は片手で構えなおした。


「清、なんでだよ」


 常和はそう言いつつ風剣を振ってくる。それに対し、風剣を狙うようにして星剣を軽く振った。剣がぶつかった瞬間、重い風が生まれ、光の粒が宙を舞ったのだ。


「前にも言っただろ――お前の魔法は受け止めてやるって」

「っ! だったら、もう負けてくれよ!」


 常和は何度も剣を振るってくる。それでも、反撃をせずに何度も星剣で受け止めた。

 前回の勝負とは違い、剣を振るたびに温かく、希望に満ちた力を感じるのだ。考えている際にも、縦に横に斜めにと、風剣は重く振るわれる。


(常和に『自身の風魔法を本格的に使うには、願いの光が必要なんだ』って相談された理由、今ならわかるよ)


 光の粒は星剣を包むように、今もなお、輝き続けている。また、風剣と当たるたびに輝きを増しているのだ。

 お互いに魔法という小細工を使わずに、剣だけを強く、熱く、風が起きようが当て続けていた。


 常和は周りを動かすほどの行動力と、誰にでも接することができる才能というのを持っている。だけど、自分自身を大切にしていない。そう思えてしまう程、周りを優先しているのだ。

 だからこそ、最高の親友を……この手で、魔法のように救いたい。


「清、もういいよ。これで終わりにしてやる。風の生成魔法――暴風剣【ぼうふうけん】――」


 常和は暴風剣を出すなり、力強く振るってきたのだ。

 合わせるように星剣を横に振るい、受け止めには成功した。だが、受け止めたのは、剣だけだ。

 暴風剣から吹き荒れた斬撃は、魔力シールドをかすめるように当たったのだ。


「常和、少しだけでいい……話を、したい」


 清は剣を地に刺すように、見えない足場へと離した。


「暴風剣解除」

「ありがとう」


 星のような粒が輝く黒い空間で、二人は立ち、話すことを選んだのだ。

 常和にはどうしても伝えたい気持ち、それは親友だからこそ思うことがある。

 清は軽く深呼吸をし、口を開いた。


「常和は、もう諦めているのか? 魔法にできる願いを――」

「諦めているわけないだろ!!」


 清の言葉を遮り、常和は強く言葉を発した。

 常和の手をみれば、何故か震えているのだ。まるで、何かを恐れているように。


「俺はさ……もう、俺の魔法で誰も傷つけたくないんだよ。だけど、怖いんだよ。願いの光でも魔法が魔力を帯びず、相手を傷つけてしまうんじゃないかって」


 常和の震えるような声は、相手を思いやるが故に、過去の恐怖を感じているのだろう。人を傷つけてしまったという、過去を。でも、それは清も同じだ。

 記憶を失ったとしても、傷つけた過去は残っていた。だからこそ、同じ過ちを持つ親友……常和を救いたいと思っている。


「ならさ、俺がお前を救ってやる」

「……どうやってだよ」

「だってさ、俺たちの未来への希望は今も動いているんだ。だから、その希望を俺が見せてやる」


 希望を示す言葉と共に、地に刺さっていた星剣は共鳴するように輝きだした。そして、光の粒は一つにまとまり、剣に吸い込まれていくのだ。

 何も言わずに、清は両手で剣の柄を持ち、抜いた。


 抜かれた星剣はさらに輝きだし、黒い空間を照らしながら光に染めていく。


(そうか! 願いの光である星剣よ――今その力を星の光に変え、夢と希望の未来に染まり導いてくれ)


 心からの願いを星剣に伝えた瞬間、剣は光の塊となり、清の両手の上で浮いている。


「常和、これを受け取ってくれ。今までの感謝を」


 両手を常和の方に向ければ、光の塊は導かれるように向かっていった。

 常和に近づくなり、光の塊は輝きながら包み込んだのだ。

 輝きが収まると、常和は姿を現した。そして、ゆっくりと口を開いた。


「ありがとな清。もう大丈夫だ!」


 その瞬間、常和の目からは小さな雫が舞っていたのだ。思いが伝わったのだろう。


「ふん、常和、ここからが本当の本番だからな」

「そう言われなくとも、手は抜かないからな」


 二人を包んでいた空間にヒビが入り崩れ始め、壊れゆくパズルのように光が差し込み始めたのだ。

 パリン、と音がすると同時に割れ、灯達の待つ空間へと戻ってこられたのだ。


 地面に着地すれば、すかさず灯が近寄ってきた。


「無事だから安心しろ。それより、時間はどのくらい経った?」


 灯は安心したように息を吐きだし、答えてくれたのだ。


「数分間くらいですよ。多分、あの空間の中は時の流れが遅いですから」


 灯には全てお見通しなのだろう。聞きたいことを予め答えてくれるのだから。

 常和達の方を見れば、心寧を封じていた氷の牢獄は消えており、お互いの安否を確認し合っているようだ。


 常和と心寧はこちらに気づいたようで、改めて距離を空け、向き合う形を取っていた。

 ふと灯の方を見れば目が合った。お互いに考えていることは同じなのだろう。そう、ここからが魔法勝負本番なのだから。


「清、星名さん……二人には敬意を込めて、俺の本当の魔法を見せてやるよ」


 常和は右腕を前に出し、魔法陣を生み出したのだ。


「これこそが、魔法の風で生み出された剣。 創成そうせい風魔法かぜまほう――風剣【ふうけん】――」


 風を剣にしていた風剣は無くなり、魔法の風で構築されているようだ。つまりは、魔力シールドにも影響するようになったのだ。

 これが本当の闘いというものだろう。


「灯、やれそうか」

「やれそう、じゃないですよ」

「ああ、やりきるだな!」


 灯を後ろに、清は足を前へと一歩踏み出した。

この度は、数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございました。

ペア試験も終盤の三日目に入りました!読んでくださる読者様の応援があってのおかげです。本当にありがとうございます!

常和を救えた清くんですが、魔法勝負の本番はここからです。次回は、四人が魔法を使いぶつかり合う、ペア試験の魔法勝負ラストとなります。

試験の話数は残り二話となってます……最後までお楽しみいただけるよう、誠意を込めて制作していますので、今後もよろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 男同士の熱い気持ちのぶつけ合い……いいですね。 みんながみんな真剣に戦い、真剣に想いあってる。 技名や魔法名も物語に馴染んでいていいですね( ´ω` )/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ