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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第二部

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第二十八話:ペア試験一日目、波乱の幕開け

 十二月二十三日、ペア試験当日。

 この日は天候が怪しく、陽ざしの差し込む隙間が無いほど……空は黒い雲で覆われていた。

 そんな天候の中、校庭集合というのはいかがなものなのだろうか。


「灯、校庭ってこんなに広かったか?」

「いえ、狭かったはずです」


 久しぶりに登校するのもあり、見間違い、と思ったがそうではないらしい。

 結界の見直しも含め、校庭の広さすらも改修されているのは驚きだった。

 だが、驚きよりも心配なのは、灯の警戒心が朝から高いところだろうか。そのため、何をしでかすのか分かったものじゃない。


「まことー、あかりー、おはよー!」

「よ! お二人さんおはよう!」

「常和に心寧、おはよう」

「おはようございます」


 教室に居なかった常和たちが、気づけば近くまで来ていた。

 こうして四人で集まるのは、何気に久しぶりなものだ。

 心寧が何かを気づいたように、灯をジロジロと見ているようだ。観察力が高いため、灯が警戒心高いことに感づいたのだろう。


 心寧は特に何かを言うつもりは無いみたいで、灯を見るだけで特に言葉を発していないのだ。

 そんな二人のやり取りは微笑ましいものを感じる。

 四人で話していれば、校庭の中央前に突如として、朝礼台が現れたのだ。現れたというよりも、魔法で作られたが正しいだろう。


 その時『生徒の皆様は、朝礼台前にお集まりください』と放送が流れたのだ。


 朝礼台前に、生徒全員がペアで固まりつつ集まったころだろうか――突如として、朝礼台を深く濃い霧が囲い込んだのだ。


『生徒の皆さん、初めまして。私は魔法世界管理者代表の一人、ツクヨという者だ。以後お見知りおきを』


 現れるや否や管理者のツクヨと名乗る者は、黒いフードに全身を隠し、赤く光る瞳をした仮面が、中から覗き込んだ姿をしている。不審者の完成版とでも言うのだろう。

 仮面の影響だろうか、とても重みのある声が出ており、性別判定が不可能に近い。

 ふと、隣に居る灯を見れば何故か震えていた。


「……灯、大丈夫か?」

「だ、大丈夫、ですよ」

「……無理、すんなよ」


 小さくうなずく灯を見て、妙な胸騒ぎがするのは何故なのだろう。

 今わかっているのは、管理者の存在感がヤバい。それだけだ。

 清も自身の手を見れば、知らず知らずのうちに震えだしているのだ。直感がそれだけヤバいと判断している。


『本日の試験である、魔法射撃……生徒の皆様の魔法をしっかりと、この場に居る職員と私に見せるのだ。そして、魔法世界で、魔法が何たる意味を成しているのか知るように』


 今の言葉だけを聞けば、深い意味はないと判断していいのだろうか。

 魔法が何たる意味、という言葉に清はどこか引っかかるような気がした。


『最後に。優秀な成績を修めたペア一組の願いは、魔法世界の管理者側が叶えると決まりました』


 その言葉を聞き、周りの生徒は大きな盛り上がりを見せた。

 曇りの中でも晴れたような声は、少数なのにうるさくもこだまし、熱さを増しているかのようだ。

 管理者は挨拶を終えるや、朝礼台から降りようとした。


 これで安心、と思ったのも束の間だ。気づけば、灯が右腕を前に上げ狙いを定めていたのだから。

 清が止めようとした時には、既に間に合わなかった。


「……今度こそ、逃がさない。無制限合成魔法――複合式【ふくごうしき】――」


 灯の目の前に複数展開された魔法陣は、有無も言わせない速度で管理者をめがけ魔法を放つ。


 驚きなのはそれだけではない。灯が今まで抑えていた、と理解できる程の合成魔法を様々に展開しているのだ。

 管理者に最初の一つが当たってしまった、とその場に居た誰もが思っただろう。


『星名君。前にも言っただろう……私に魔法は無意味だと』


 管理者は向かってきた魔法に腕を伸ばし、魔力の粒にして打ち消してしまったのだ。


 灯の魔法は並大抵の魔法とは違い、軽々しく打ち消す管理者の動作そのものに言葉が出なかった。

 魔法が効かないのにもかかわらず、灯は感情任せに魔法を打ち続けている。

 それが続き、会場である校庭は騒ぎに包まれていた。

 灯は魔力を上げ続けているようで、水色の髪と瞳が輝きを増していた。


限界オーバー負荷フロー……これ以上は流石にまずい!)


 そう思い、清は灯の腕を優しく下げるように掴み、自らの魔力を灯に逆流させ魔法を止めさせた。


「灯、大丈夫……俺が、隣に居る」


 今の灯を抑えるためには、この言葉しか言うことが出来なかった。


「清くん、私……」

「それ以上言わなくていい。だから、今は静かに隣に居てくれ」


 そう言うと、灯は小さくうなずき、静かに抱きしめてきたのだ。

 周りの視線以上に、近くにいる常和たちにニヤニヤされるのが困ったものだ。

 落ち着こうとすれば、拍手する音が聞こえてくる。周りを見れば、音の出どころは管理者だった。


 こちらに近づいてきたのを見て、灯を庇うように清は警戒心を強めた。


『何もしないから安心したまえ。ところで、要注意危険人物の君たちが、何故この学校で平穏に暮らせているか、考えたことがあるかね。黒井君』


 発言通り、何かをしてくる様子はないようだ。

 警戒はしつつも、何故なのかを考えてみた。言われてみれば、要注意危険人物が、危険人物のみ集まるような学校に通うなんて聞いたことすらなかった。


 平穏、つまりは監視の薄さを意味しているのだろう。


「いえ、特に考えたことは無いです」

『そうか、では少しだけ教えてあげよう。この学校に要注意危険人物は二人しかいない理由を』


 管理者はそう話し、軽く一呼吸を置いた。

 また、要注意危険人物が二人しかいないと知った周りは騒ぎ始めている。


『星名君が君のためを思い、彼女が魔法世界に来る際にこちらと約束したのだよ。その代わり――』

「ツクヨ。それをあなたが言う必要は無い」


 管理者の言葉を遮り、灯は口を挟んだのだ。

 その言葉は棘よりも鋭く、誰も寄せ付けない強い意志が宿っていると捉えられる。

 だが、過去に何かあったのは事実だろう。

 本人が拒む以上、模索はしたくない。


『ああ、そうか。生徒の皆さん、この後は予定通り、魔法射撃を始める』


 管理者はそう言い残すと、観戦席へと向かっていった。


 それを見計らったように、常和たちが心配そうに近づいてきた。


「ところで灯、あの人との関係って」

「……前に会ったことがある人、それだけです」

「まあ、清。今は魔法射撃の準備が大事、だろ?」

「それもそうだな」


 常和の言葉は、今の状態では的を射ている。

 灯が管理者に対して怒る理由、魔法世界本来の意味、管理者が魔法を打ち消す、この数十分間の出来事は更なる謎を呼んでいた。また、要注意危険人物が本当はどういう意味なのか。


(簡単には終わってくれなそうだな)


 こうして、波乱の幕を開け、ペア試験の一日目は始まった。

この度は、数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございました。

今まで温めてきたペア試験、ついに開幕です!今回含め、第六話構成を予定しておりますので、最後までお付き合いしていただけると幸いです。

※試験のこともあり、イチャつきは少なめです。ご了承くださいませ。

次回、魔法射撃編でお会いできるのを楽しみにしております。

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