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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第二部

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第二十五話:秘密の買い物と相談

「……常和」

「お、なんだ?」

「こんなところまでよく知っているな」

「何で引き気味なんだよ! お前が連れて行けって言ったんだろうが!」


 今日は常和と二人で、昼過ぎからある場所に来ていた。ある場所とは、知る人ぞ知るようなところにポツリと建ったアクセサリー屋だ。

 常和がよく心寧のパシリとして、可愛い物が置いてあるお店を回っていると聞いていたが、ここまで来るとは思ってもいなかった。


 ここら辺一体の地域にある近隣店をすべて把握し、全制覇しているらしい常和の行動力には驚かされる。


 来た目的としては、灯に秘密裏にクリスマスプレゼントを用意したく、常和にお店を教えてもらい連れてきてもらったのだ。教えるだけでなく案内までしてくれる、そんな親友思いの常和には頭が上がらないな、と清は思った。


 常和が「立ち話もなんだから入ろうぜ」と言ってきたので、それもそうかと思い、お店の中へと入る。


 お店の中に入ると目を疑った。

 店内は広々としているとこだけは普通だ。だが、真ん中のスペースは可愛い装飾、左はレトロ感のある雰囲気、右は近未来風の内装をしているのだ。混沌、と言う言葉がこれほどまで似合うのはないだろう。

 外見だけを見れば普通のお店なのに、店内の破壊力ある印象には息を呑むほどだ。


「先に心寧に頼まれた買い物済ませたいから付き合ってくれ」

「別にそれくらい構わないさ」


 常和は右の方へと迷いなく進んでいったので、おとなしく付いていくことにした。

 最近発売されたアクセサリーが置いてあるコーナーで、常和は足を止めた。


「そういや、心寧に何を頼まれたんだ?」

「あー、髪飾りだよ」

「……また壊しかけたのか」


 常和が黙ってうなずいたとこを見るに、間違っていないらしい。

 心寧はショートヘアで、ビーズの髪飾りに右の髪を軽く束ねている珍しいタイプなのだ。

 古い習わしが好きだから、と心寧は言っていたが真相は不明である。

 常和からしてみれば、心寧の魔力に耐え切れず、髪飾りが壊れてしまうのが悩みの種らしい。

 コーナーを見つつ、似合うものを漁っていた常和が話しかけてきた。


「清は星名さんに、どんな物を買うのか決めているのか?」

「……あー、ヘアゴムをプレゼントしたいなって」

「ほー、それはまた唐突だな」


 常和は疑問気に返しつつも、なぜか呆れたような目でこちらを見ている。

 実際、ヘアゴムを灯に贈るなんて考えはなかった。だが、いつも同じようなヘアゴムを使っていたので、少しくらい良い物を使って欲しい、と清は思ったのだ。


(別に喜んでほしいわけではない、初めて行うちゃんとしたクリスマスだから)


 だが、クリスマスは丁寧なまでにペア試験と重なっている為、プレゼントだけでも渡してあげたいのが本音だ。


「……灯の髪がボロボロになったら嫌だろ。……だからだよ」

「俺はその気持ちがあるのは良いと思うぞ! 似合う物、選んでやれよ」


 否定せずに励ましてくれる常和に「ありがとう」と、気づけば小さく返していた。

 呟き程度だったのに常和は気づいたようで、真剣な目でチラリと清を見た後、ビーズの髪飾りへと再び目を戻していた。


 同じコーナーを見てみると、ヘアゴムも何種類か置かれているようだが、灯にプレゼントしたいと思える物は見当たらない。


 その間に常和は選び終わったようで、こっちに来い、と手振りで合図をしているようだ。

 断る理由もないので、常和の後を付いていくことにした。

 真ん中のスペースに戻っているあたり、先ほど話したヘアゴムのところに案内してくれているのだろう。

 多く言葉を交わさなくとも、親友思いの常和の事はなんとなく分かってしまうのだ。


(言葉すら交わしていないのに、不思議だ……)


 そう思っていれば、常和は一つのコーナーで足を止めた。


「ほら、清。ここがヘアゴムの一番置いてある場所だ」

「ありがとう、助かるよ」

「ああ、その代わりに悔いのない選び方はしろよな」


 そう言うと、常和は違う場所を見に行ってくるようで、その場を後にしていった。

 一人にしてくれたのは、雑念が混ざらないようにしてくれる常和の優しいところがあるからだろう。


 棚に目をやれば、リングタイプやシリコンタイプ、シュシュタイプ、飾りつきタイプなど様々な種類が置いてある。また、魔法世界独特な物が置いていないのは救いだった。

 魔法世界独特なのは灯が嫌がる、とだけわかっている。だからこそ、さらに意識外にできるのはありがたい。


 選ぼうにも灯がどのような物が好きなのかは、灯との記憶を思い出しても、何故か未だにわからないのだ。

 嫌な物がわかっても、好きな物が分からないのは清のセンスからして辛いものだ。


(……前みたいに直感を信じてみるか)


 軽く静かに呼吸をし、ゆっくりとヘアゴムを見ていく。


 ――その時、飾りつきタイプのヘアゴムに目を引かれた。

 優しく触るように持つと、なんとなくでも灯に似合うと想像できる。


「……これなら灯に似合うよな」

「お、決まったか?」


 深く集中していたため気づかなかったが、常和が近くまで来ていたらしい。


「ああ、これにするよ」

「なるほどな。俺も用が済んだし、会計済ませて店出るか」


 ……昼過ぎから来ていたはずなのに、外に出てみれば日が落ちかけていた。

 選んでいる時間が相当長かったのだろうか、もしくは会計を済ませた後、常和が買い忘れを思い出したのが原因だろうか。


 常和とは途中までは帰り道が同じため、一緒に歩きながら同じ帰路を辿っていた。また、灯と結局どんな関係なのかを聞かれたのは、言うまでもないだろう。

 人気のない分かれ道に着いたとこで、真剣に常和を見つつ、清の方から話をした。


「常和……前にお前から相談された例の件、覚えているか?」

「……俺が相談したんだ。当たり前だろ」


 出会った最初の頃に、清は常和からある相談を受けていた。

 最初に聞いたときは、御伽話おとぎばなしや神話の話にしかない、と清は思っていたが、最近になってから考えが変わったのだ。


 常和の事を思えば、無理に話すべきでないのは間違いない。だが、一つだけ見つけた答えを――共有したいと思った。

 もちろん、絶対的な確約ができないのも承知の上だ。


「願いが何を指しているのかまではわからないけどさ、光がアレを指すのだとすれば……納得がいくと思うんだ」

「……俺もなんとなく察しているさ。もう一度アレを見たとしても、どうすればいいかわからないだろ?」

「それもそうだよな。ごめん」

「いや、俺の方こそごめんな。それに、良い親友を持てて幸せ者だよ……俺は」


 常和の言葉は優しくも、何処か一人でさ迷っているようにも思えてしまう。

 雲の隙間から覗いていた夕日は、一段と常和を隠すように差し込んだ。常和の体に光を当て、柱の影だけが顔を隠している。


「ここで別れだし、そろそろ帰るか。また今度、じゃあな」

「常和……じゃあね」


 常和に手を振り別れた。その際に、差し込んでいた夕日は雲の中へと完全に隠れていった。

この度は、数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございます!

今回は常和と心寧に偏った感じで書かせていただきました。

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