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君と過ごせる魔法のような日常  作者: 菜乃音
第一章:第二部

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第二十二話:君のかすかな変化

第二部初の四人ですので、初めて読む方の為にも改めてフルネームを記載させていただきます。

黒井清【くろい まこと】 星名灯【ほしの あかり】

古村常和【こむら ときわ】 美咲心寧【みさき しおん】

 翌日、出かけるための準備をしていたのだが、灯の様子がどこかおかしかった。


「灯、何でそんなにそわそわしているんだ?」


 先ほどから落ち着かないらしく、右へ左へと歩き回っているのだ。

 今日は前から約束をしていた、常和と魔法勝負の日だ。灯が落ち着かないのは、多分、それが原因なのだろう。


「だ、だって……あんな出来事があってから、初めて会うのですよ」

「そんなに心配するなよ。常和だってわかってくれているはずだ」


 灯の心配をやわらげつつ、お互いソファに座った。

 座っても、瞳をパチクリさせつつ、両手の指を絡め、灯はそわそわしている。また、少しだけ視線が手に向いたままなのだ。

 この状態で常和に会わせれば、確実にその場で空回りするかもしれない。

 多少なりとも、落ち着かせてあげたいものだ。

 あまりしたくはなかったが、灯の頭に、清は右手を軽く乗せ、ゆっくりと撫でてあげた。


「灯、大丈夫だから落ち着け。それに、何かあっても俺がどうにかしてやる」

「……いきなり頭を撫でて、かっこいいことを言うのはダメですよ」

「別に言ってない」

「清くんが分かっていなくても、無意識に言っているのです!」


 優しく撫で続けていれば、灯の頬は赤みを帯びていき、表情が柔らかくなっていた。

 撫でていた清の方が恥ずかしくなりそうだ。


「灯……時間に遅れるから、もうそろそろ行くか」

「そ、そうですね。清くんありがとう」


 ありがとう、と言われ「そうかよ」と返せば、灯は微笑みながら手を握ってきた。

 この時の灯は幼い子供のように可愛らしく、灯を誰にも渡したくない、と思えるほどだ。

 この後、お互いに落ち着くまで少し時間を使うこととなった。


 魔法スタジアムに向かうと、待ち合わせ場所の近くに見慣れた二人が立っていた。

 清たちよりも早く着ていたようだ。


「常和、心寧、待たせてすまない」

「いや、俺たちもちょうど今来たとこだ」

「やっほー、あかりー! ……あの後、具合とか大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ。あの件は本当にごめんなさい」


 常和は「俺もすまん」と言い、灯と前回の出来事について話し始めていた。

 気づけば、清は傍観者、となっていた。その時、清は心寧からジロジロ見られていることに気がついた。

 まるで、知らない人を見るような目で、心寧は見てきているのだ。

 謎の圧に怖さを感じるのは気のせいなのだろうか。


「心寧、なんでそんなに見てくるんだよ……」

「いや、ほら、まことーの顔つきが変わったなーって思ったの」


 答えを聞いても意味が分からなかった。

 特に変わった事をしていないし、なんなら、灯から服装を足されそうになる程だ。

 自分で思うのもあれだが、良くも悪くもない人間が、そう簡単に変わっているはずがない。


「そんなにからかうなよ」

「からかってないよー。そう思うから、まことーはあかりーの気持ちをわからないんだよ?」

「……何でそうなる」


 呆れながらに言うも、心寧は知ったことか、といったような顔をしていた。

 心寧からしてみれば、清が灯の気持ちを全く分かっていない扱いなのだろう。間違っていそうで、間違っていないのが辛いところだ。

 灯の気持ちを理解できていたら、こんなにも苦労していないのだから。


「清くん、何を話していたのですか?」


 常和と話終わったようで、灯が近づいてきていた。

 キョトン、と不思議そうな顔で尋ねてくる灯に、どう誤魔化して説明すべきなのだろうか。


「あ、あれだよ、顔つきが変わっているって心寧に言われただけだ」

「そうですか。にしても、動揺しているように見えるのですが?」

「気のせいだ」


 灯は笑いながらに「そうしておきます」と言って、その場はどうにかやり過ごせた。

 常和に、心寧をどうにかしろ、と言う意味で睨んだのだが、心寧の頭を撫で、いちゃつき始めたので意味がないようだ。

 心寧が嬉しそうにしているので、止める真似はできない。

 灯と一緒に見ている、こちらの身にもなってほしいものだ。

 ふと、灯に視線をやると、ニコニコしている顔が目に入った。


「……清くんも撫でますか?」

「やらないからな」

「ふふ、冗談ですよ」

「心臓に悪い冗談はやめてくれ」


 とても優しい裏に隠れた、小さな小悪魔には困ったものだ、と清は心から思った。

 凛としていて、とても優しい灯が周りからモテないのには疑問を抱きそうだ。しかし、魔法を目当てでやってくる男は、今でも湧いているらしい。


 落ち着いたとこで、未だにいちゃついている常和たちを横目に、灯と一緒に魔法スタジアムに入ることにした。

 隙を逃さんとばかりに、灯から手を繋がれるのはしょうがないのだろうか。

 隣で水色の髪をなびかせ、ゆっくりと一緒に歩く姿を、今だけは独り占めしているようだ。


 スタジアムの勝負場に入ると、前に入った場所とは違っていた。

 平べったい石の上が勝負場になっている、と言ったところだろう。

 空間には草原の場所しかない、と思っていたのだがそうでもないらしい。


「清くん、頑張ってください!」

「ありがとう、灯に変なところは見せないから」


 灯は照れたようで、頬を赤くしていた。

 隣でそのやり取りを見ていた心寧と常和が、ニヤニヤした顔でこちらを見ていた。


「相変わらず、あかりーに甘いね。あ、とっきー、まことー、いい勝負期待しているよ!」

「心寧、今絶対に要らない発言あったよな」

「可愛い二人に応援されているんだ! 清、さっさと準備しようぜ」


 本来の目的は話すのではなく、勝負をしに来たのだ。常和が言っているのは間違いないだろう。

 聞き出そうとしたものの、常和に手を取られ、勝負の位置に行くことになった。

 灯と心寧から少し離れた位置で、常和は何故だか歩く足を止めた。


「あのさ、清」

「どうした急に?」

「どうやって星名さんを、あそこまで変えたんだ?」


 常和から聞かれた言葉は驚く内容だった。また、普段は見ない、冷たいような表情をしている。

 まるで、いつもの常和とはどこか違うようだ。

 常和からすれば、灯を清が変えた、とでも思っているのだろう。しかし、清からしてみれば、それは否だ。


 灯が変わったのは過去の話をしてからであり、お互いに信頼をさらに深められたから、と考えている。

 しかし、お互いが最初に出会った頃よりフラットになったのも事実だ。

 常和の聞いている質問に、正しい答えは存在しないだろう。


「……俺が変えたんじゃない、灯は元からあんな感じだ。ただ、自分を偽り、隠していて、実際は孤独で寂しいだけだったんだよ」

「そうか。すまないな、嫌なこと聞いて」

「気にしないでくれ、俺も灯の事は全くわかってないから」

「なら、俺との勝負で証明しないとだな!」


 なぜそうなる、と言いたかったが、これも常和なりの優しさなのだろう。

 いつもみんなのために中間でバランスを取ってくれている、とても良いやつで、親友であるのがもったいないくらいだ。

 そんな存在であるからこそ、清自身も心から安心して親友でいられるのではないか、そう思っていられるのだ。


 記憶という名の過去を忘れていたにも関わらず、傍で支えてくれた親友だからこそ、多くの言葉を交わさずに理解できるのだろう。

 とても優しい雰囲気は、どことなく灯に似ている感じがある。


「……常和」

「なんだ?」

「今回は負けないからな」

「いや、今回も俺が勝つ!」


 常和と話をしていると「二人とも早くー!」という心寧の声が聞こえてきた。

 お互いに顔を見てうなずき、距離を取るように勝負位置へ着いた。


 地面を確認すれば、足の感覚的にやはりというか、とても固く頑丈で、今までに味わったことが無い感覚の地面だ。

 また、障害物が無いので、地面を魔法で吹き飛ばし、視界を奪いつつ不意打ちを仕掛けた方が良いのだろうか。


(多分読んでいるだろうから、いっその事、常和の魔法を真っ向から迎え撃つ方が得策か)


 そんな考えをしていれば、常和の方も準備ができたらしく、目が合った。

 お互いに準備万端のようだ。


「清、前みたいな手加減はするなよ」

「……前も手加減してないからな」


 常和は「そうだな」と言い、右腕を横に振った。


「いくぞ! ――魔力シールド解放」

「常和、今の力を見せてやる! ――魔力シールド展開」


 お互いに魔力シールドの展開を宣言するとともに、透明な魔力が身を包み、魔法勝負が始まる合図となった。

この度は数ある小説の中から、私の小説をお読みいただきありがとうございます。

次回は魔法勝負になります! もしかしたら、次の都合により投稿が遅くなるかもしれません。

出来る限り、最高の魔法勝負をお届けできるようにいたします。

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