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2/11

1:転生

※プロローグだけというのも何ですので、本日2回目の更新です。明日からいつも通りの更新となり、次話は明日の18時前後更新予定です。

「ふぁ…ッ!!?…あ゙ぁぁあああああーーー!!!」

 急に首根っこを掴まれたような強い痛みに、あたしは叫び声をあげながら目を開けた。どうやらかなり重度の酸欠状態のようで、思いっきり空気を吸うとチカチカと世界が光って見えた。


 まだボンヤリとしている視界の中にはキラキラとした小さな精霊達が舞っていて、どうやら世界はまだ滅んでいないようだった。


 流石になんかよくわからない兵器であたしが世界を滅ぼしたとあっては寝覚めが悪いし、とにかく精霊王と対面してよく生きていたものだと胸をなでおろした後、続いて皆は無事だろうかと辺りを見回そうとしたのだけど……どうやら首根っこを強く掴まれているようで、頭が動かない。


 少しすると焦点が合ってきて、あたしを抱き上げているのが燃える様な赤髪のイケメンで、それはそれで驚いて、相手もあたしの顔を覗き込んでから驚いたような顔をして、このゴツい体格をした強面の男性は、胡散臭そうな顔をしながらあたしから手を離しかけた。


 何とも言えない浮遊感、周囲の精霊達が驚いたように動いたところで、他の誰かの手が伸びてきてあたしは支えられ、尻もちをつくのは免れたみたいだった。


「旦那様!抱える場合は首はそんなに強く握らずとも!あとお尻はしっかりと支えてください!」 


「あ、ああ……すまん」

 バタバタと数人に支えられる形であたしはそのイケメンの手から取り上げられたのだけど、何か自分の周囲の状況が上手く理解できない。


(そもそもあたしはどうなったんだ?何で生きている?いやそれより皆は?)

 体はまだまともに動かないものの、体調と言う意味では生まれ変わったのではないかと言う程近年まれに見ないくらい絶好調で、気味が悪いくらいだ。


 パチクリと瞬きを繰り返していたのだけど、不思議な事は他にもあって、どうやら周囲にいる人達はあたしよりかなりデカかった。


 大きさはあたしの身長の3倍とか4倍前後で、寝ている間に新兵器としてオークとかオーガとのハイブリッドでも生み出されたのだろうかと思ったのだけど、どうやら違うようだ。


(えと…?)

 改めて周囲を見てみると、この集団の中心に居るのはあたしを抱き上げていた赤毛のイケメンで、その人はなんていうか、歴戦の傭兵というかスタントを得意とする俳優といった強面の20代中盤の男性で、その顔や体には特殊メイクとは思えない傷があちこちにあり、刈り上げられた短い髪があたしの目にはパチパチとした燃え上がる炎のように見えた。


 巫女以外の人間には普通の赤髪に見えるかもしれないのだけど、あたし達量産巫女には精霊が見えるので、この人に火の精霊とか、たぶんそんなモノが宿っている事が分かった。


 かなり曖昧な言い方なんだが、人に宿った精霊なんて魂と混じり合っているのが普通で、フランのようなベテラン精霊術士でもない限り人や動物に宿った精霊獣の種類を判別するのは不可能だった。


 と言うのも基本的に人や動物に宿り始めた精霊というはその辺りに居る精霊と同じくらいのもので、かなりあいまいな存在だった。

 それが宿主の成長と共に成長し、意思やら考え方やらを学んでいくのだとフランは言っていた。

 つまり生き物に宿りたての精霊はかなりしょっぱい存在で、そんな力のない精霊からすると、意思や考え方が弱い、というよりも無いといってもいい生まれる前の魂にくっついた方が色々と都合がいいらしい。

 こうして生まれてくる段階ですでに魂と精霊が混じりあっている状態になるので、どこからどこまでとか、この精霊はなんの精霊でというような存在でなくなっているのが普通だった。


 勿論世の中には最初からくっついている精霊だけという訳でなく、ある程度力をつけた精霊が特定の人間や動物の事が気にいり力を貸す形で融合する場合もあるらしいのだけど、これはもうほとんどおとぎ話とかのレベルで「心の清い女性に力を貸す精霊」とか「選ばれし勇者に力を与えた精霊」とかそういうレベルの話で、そんな清らかな人間や選ばれた人間なんているのかよ嘘くせーっていう話だ。


 つまり大多数の精霊付きの魔法使いや巫女というのは生まれた瞬間から魔法使いであり巫女であり、どこまでが精霊でどこまでが人間の魂かなんていう判断は素人目にはわからない。


 パチパチと燃え上がるような赤髪なのでたぶんもとは火とかそういう系統の精霊だったんだろうとは思うんだが、それがどんな力を持っている精霊なのかはあたしにはわからなかった。


 因みにくっついてくる精霊とは逆に、嫌気がさして離れていく精霊もいるのだけど、『穴』という強制的に定着させる技術のあったあたし達の国では殆ど観測されていないので、抜けたという人は見た事がなかった。


 まあそんな事はいいとして、更に周囲を見回すと、この部屋にはゴツいイケメンと、数人の女性と、そしてベッドで泣き崩れている女の人が居るらしい。


 二番目に目を引くのは、ベッドで項垂れる紫水晶のような綺麗な髪をしている女性で、物凄い美人だったのだけど……その顔はゲッソリと痩せこけており、なまじ美貌があるせいで幽鬼のような有様で怖かった。


 どうやら体調を崩しているのかまともに口もきけない様子で、その周囲には精霊が心配そうにフヨフヨと浮いているのが見えたのだけど、その女性には精霊が見えていないようだ。


 この人を見ていると胸が締め付けられるような感覚と、何とかしたいという思いが湧き上がってくるのだけど、体の動かないあたしに出来る事は無くて、出来ないどころか何故かそのまま巨人達に体を洗われ、フカフカした布で全身を包まれ意識がそっちに持っていかれてしまった。


「ぉぁぁああーーぁ」

 その布の柔らかさと温かさと言ったら!いや、あたし達(量産巫女)が作っていた精霊術品と比べるとガサガサしてはいたんだが、今までずっと金属の床の上にゴロ寝していたので勘弁してほしい。

 思わず変な声がでてしまったのだけど体は動かないし、状況がわからないし、何とか動けないかと両手両足を動かそうと藻掻いてみたのだけど……ぜんぜんだな。


(ふっ…はっ…とー……くそっ)

 ここまでくると筋力を強制的に0にする拘束術式でもかけられているのかと疑ってしまうくらいで、手をまともに握る事すらできない。


 何とかその術式に対抗しようと精霊術を編もうとするんだけど、体内の精霊があの爆発でどこかに吹き飛んで行ってしまったのか、全然術が発動しなかった。


 あたしはあたしで孤軍奮闘しているうちに、周囲は周囲で修羅場になっていたようで、もう息も絶え絶えと言う有様なのに、ベッド上の綺麗な女の人がゴツい男性を詰めているところだった。


「貴方は我が子すら愛せないのですか!」

 この混乱に乗じてあたしがわちゃわちゃ体を動かして……いや待て「我が子」って言ったのか?誰が「我が子」だ? 


 あたしは視線だけを動かし周囲を見回しながら、該当する人物を探そうとするのだけど……どう考えてもそれに該当しそうな人物が、一人しかいなかった。


「ぉ…あ……?」

 もしかして、あたしか?


 何とか布の拘束を振り切り、自分の手のひらが視界の中に入って来たのだけど……その手は玩具のように小さく、まるで赤ん坊の手のひらのようだった。

※転生して0時間児の時点で意識がしっかりしている主人公ですが、これについては精霊が関係してきており、一応次話で少しだけ説明されています。


 まだまだ前世の記憶が強いので性格や考え方もそちら寄りですが、成長と共にルーナとして落ち着いていきますので、長い目でゆっくりとルーナの人生を楽しんでいただけると幸いです。


※父親の年齢がこの時24歳で、四捨五入したら「20代前半」なのですが、24を前半と言っていると若く思われるかなと思ったので「20台中盤」と修正しました。(10/27)

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