表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無意識  作者: 利木 糸会
5/6

05「卵」

 慣れって、すごいんだなと思った。


 あんなに辛いと感じていた生活が、別に苦ではなくなっていった。

 慣れっていうか、麻痺?

 どっちでもいいか、耐えられるなら。


 そんな調子で、多忙生活もだいぶ板についてきた。

 それは、喜ばしいこと。

 結構不安もあったんだけど、何とかなって良かった。

 頑張ったぞ、私。



「ねぇ、ここ間違ってない?」

「え、あ、すみません!」

「いいのよ、無理してもらってるものね。お休みあげられなくて、ごめんね」


 大丈夫と思った矢先、普段ならしないミスを犯した。

 重大なものじゃないけど、ミスはミス。

 気を引き締めていかないと――頑張ろう。


 ミスのないように。

 頑張ろう。



 そう思う程、失敗が重なった。


 普段できることが、できない。


 今までできていたことが、できない。


 身体が、思うように動かない。



 ――何だ、コレ?



 本格的に、休息取らないとまずいかな。

 今日は少し早く寝て、身体を休めよう。



 ――ぐしゃっ!



 嫌な音。


 頼まれていた卵は、私の手をすり抜けて落下した。

 咄嗟に袋を掴むことすらできなかった。

 無残な姿をさらす卵を、しばらくじっと見つめる。

 

 別に何を思っていたわけでもない。

 ただ、見てただけ。


 真冬の風に全身を切り刻まれながら、私はそこを動かなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ