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辛すぎる

お酒が抜ければ、桜賀(おうが)さんは、俺に何でいるのと言うのがわかっていた。


また、眠った。


疲れたのかな?


布団をかけてあげて、病室をでた。


「帰るの?」


「いたら、何でって言われるだろ?」


病室の前に、(めい)が居た。


「言われてもいなよ」


「俺、夕陽と別れたあの人にキスしにいっただろう?何でとかごめんとか言われたし、嫌な顔もされただろ。だから、素面のあの人には会えないよ」


俺の言葉に(めい)は、腕を掴んだ。


「朝陽が、女の子ならよかった」


「それは、こっちも同じ」


「ごめんね。なれなくて」


「別に、気にしてない」


「朝陽、それでもいなよ。私もいるよ。紗羅の傍に…。苦しくても悲しくても。朝陽もいてみなよ」


「また、同じ顔されたらどうすんだよ」


「その時は、私が抱き締めてあげるから」


(めい)が、笑った。


「わかった。どうせなら、二度と会わないぐらいにまたなるよ」


俺は、(めい)に笑いかけた。


「じゃあ、もっかい仮眠してくる」


「寝れなかったの?」


「うん、紗羅から電話きてたから」


「わかった。じゃあな」


俺は、そう言って水を買って戻った。


桜賀(おうが)さんは、幸せそうに笑って寝てる。


夕陽に愛されたんだもんな。


俺は、辛くて、悲しくて、寝ていた。


「夕陽」


ガタン


大きい音がして、目が覚めた。


ビックリした顔をした桜賀(おうが)さんが座ってる。


水を落としたんだな。


「はい、どうぞ」


「朝陽君、何でいるの?」


「嫌、(めい)に呼ばれて来ただけ」


(めい)ちゃんは、せせらぎ病院の人だったんだね」


ほら、やっぱり嫌な顔してる。


「うん。ま、酔い覚めたなら良かったよ」


「夕陽は来てた?」


「さあ、俺が来た時にはいなかったけど」


来るわけないよ。


俺は、夕陽にも両親にも10年間、一度も会ってない。


「そうか…」


「俺より兄貴がよかったよね?ま、元気になったなら帰るわ」


「いや…。そんなつもりじゃ。朝陽君は、何で来てくれたの?」


「心配だったからに決まってるでしょ。まぁ、じゃあね」


俺は、もうここに居たくなかった。


「よかったら、今度barに来てよ。(めい)ちゃんと一緒に…。お礼をしたいからね」


そう言って笑ってる。


「どこだっけ?」


「名前言ったらいいよね。Venus(ヴィーナス)だよ。待ってるね」


「はい、失礼します」


俺は、病室を出た。


「もう、上がり?」


「うん、待ってた。」


(めい)が待ってた。


「barに来てってさ」


「明後日休みだから行けるよ」


「じゃあ、それで」


俺は、病院から出て自転車を押す。


「嫌な顔されたんだね。」


「うん。夕陽がいたと思ってたしね」


「もう、10年でしょ?会ってないの」


「家族みんなで、南の島に行ったから」


「お嫁さんの実家だったよね」


「うん、一回も帰ってこないし。来るのは、年賀状だけだよ」


「ご両親は、朝陽の事心配してないの?」


「してないよ。夕陽の方が好きだったからついて行ったわけだし」


「そっか…」


「連絡もとってないから。」


そんな夕陽を今でも好きなんだよな。


「じゃあ、ライバルはいないわけじゃない。桜賀さん、振り向かせられるかもしれないよね」


「無理だよ。俺には、わかる。あの人は、酔っぱらって俺を夕陽と間違って抱いてくれても、俺自身を愛してくれはしないよ。(めい)だってわかってるんだろ?」


「うん。わかってる」



「それでも、いいから会いに行きたいって言ったら笑う?」


(めい)は、俺を抱き締めてくれた。


「笑わない。私も、紗羅を抱き締めて眠るんだよ。愛される事なんてないのに」


(めい)、辛いよ」


「わかってるよ」


(めい)は、俺の髪を撫でてくれた。


「じゃあ、明後日ね」


「うん」


駅前で、さよならした。


俺は、自転車に乗った。

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