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8.

話をくっつけて整理したので、話数が減ってます。


 映画を見終わった後、私と沙月先輩は映画館に併設しているモール内のカフェに来ていた。


「まあ、そんな気にしないで下さいよ。誰でも眠たくなることくらいありますから」

「本当にすまないな。そう言ってもらえたら助かる」


シアター内で寝てしまったことを謝罪する沙月先輩。

……そんなに気にすることないのに。


「映画は大丈夫でした? まったく、ホラー苦手なら言ってくれれば違うの選びましたよ」

「い、いや、別にホラーは苦手なんかじゃないんだ。……ただ少し幽霊とかグロいものが苦手なだけで」


いや、それを苦手って言うんだって。

 なんで変なところで強がるかな、この人は。


「そんなに強がらなくていいじゃないですか。怖がりなくらいが女の子らしくてポイント高いですよ」

「歩美もそう思うのか?」

「まあ、そうですね。一般的にそうじゃないですか?」

「でも、がっかりしたりとかはないのか? これでも普段の私は物怖じしないクールでかっこいい生徒会長で通っているからね」


 その通りだけど、自分で言うんかい。


「……自分で言いますか。まあ、普段とのギャップはありますけど、いわゆるギャップ萌えってやつですよ」

「そうなのかい?」

「中には常にクールでかっこいい沙月先輩でいて欲しいって人もいるかもしれませんけどね。大抵の人は沙月先輩の新たな1面、きゃーかわいいで終わりますよ」

「歩美もそう思ってくれるのかい?」

「うん、まあ、そうですね。惚れはしませんけど」


 むしろ、そういうギャップは大好物である。


「そういえば、まだ聞いてないことがありました。沙月先輩はなんで私に告白したんですか?」

「好きになったからだが?」


 今更、何を聞くんだといったような顔をされる。


「違います。そういうことじゃなくて、なんで好きになったのかですよ」

「歩美があゆあゆ先生だと知ったからだけど?」

「それはわかってるんですよ。その先です!」


 ……話が進まない。

 私が知りたいのは私を好きになった理由である。


「そうだね……話せば長くなるね」

「あ、なら大丈夫です」


 沙月先輩は自分語りを始めそうな雰囲気。

 これを聞いてしまったら、いよいよ面倒くさいことになりそう。


 普段の私なら飛びつく話題ではあるけれど、聞いたら告白を冷たく断るのに支障をきたすかも。

 私は、この手の話に弱いからね。


「じゃあ、短く話すよ」

「……あ、はい」


 聞かない選択肢ないんかい。



   ***



【沙月視点】


 私とあゆあゆ先生(歩美)との出会いは、私が高校1年生の時。


「鬱です……」


 そう言って、自宅でベッドに飛び込む私。

 この時の私は、今よりも女の子っぽい口調をしていた。というより、そうあろうとしていた。

 

 今から学校の宿題やらそれ以外の習い事の課題やらやらなきゃいけないことがたくさんある。

 だけど、なかなか体を起こす気になれない。

このまま、少しだけ仮眠をとろうかな。


「……少し疲れました」


 私は、そう呟やくとそのまま寝入ってしまった。


 ___

 __


 

「おーい沙月、聞こえてる? というか部屋にいるー?」


 誰かが部屋をノックして、呼びかける声で目を覚ます。 

 私は、まだうとうとと微睡(まどろ)みがらも体をベッドから起こして部屋の扉を開ける。


「もしかして寝ちゃってた? 珍しいね」


 部屋の前に立っていたのは、私の姉の五月川美雪。

 

「すいません、姉さん。何かの用事ですか?」

「いや、なんか最近の沙月は疲れてるように見えたからね。大丈夫かなって、心配になって」

「……そんなに疲れてるように見えますか?」


 そんなに表面に鬱々としたオーラを出さないようにしていたんだけれど。

 これでも表面を取り繕うのは得意としている。


「疲れてるというよりは、なんだか楽しくなさそうに見えるかな?」

「楽しくなさそう?」

「うん、なんだか昔より積極的に物事に取り組んでないような感じ? もちろん、慣れてきたっていうのもあるかもしれないけど」


 確かに積極性は失ってるかもしれない。

 最近は、やらなきゃいけないであろうことを作業的に片付けるだけになっていた気がする。

 自分から何かをしようとすることはほとんどなくなっていた。


「そうですね、では少し相談に乗ってもらってもいいですか?」

「うん、いいよ。どんとこい!」


 せっかくなので、相談を持ち掛けてみることにする。


「最近、本当の自分って何かなって考えることがあって……」

「OH……思春期にありがちな感じの悩み」


ふざけた感じのが返事が返ってくる。

 確かにありがちかもしれないが、私だってそれなりに真剣に悩んでいるんだと、少しだけむっとしてしまう。

まあ、姉の性格的に場を(なご)ませようとしただけなんだろうが。


「馬鹿にしてますか?」

「いやいや、馬鹿になんてしないよ。お姉ちゃんを信じて。それで、何でそんなことを考えるようになったの?」


 姉から優しく問いかけられる。


「最近、自分が自分でいることに疲れてしまって……。結局、私はどうしたいんだろうって」

「んー、好きにすればいいんじゃないかな?」

「へ?」

 

 私の割とシリアスな悩みに帰ってきたのは、適当に思える返答。

 思わず面食らってしまう。


「沙月はまだ世界がせまいんだよ。だから、とりあえず本でも読んで世界を広げよう。ちょっと待ってて」


 その後、姉が数冊の本を持ってやってくる。

 そうやって、手渡された本の中にあったのが歩美が書いた本。

 その本をきっかけに私は変わることが出来て、いつしか作者への尊敬の念は恋慕へと変わっていったのであった。



   ***



「ここまでが歩美との出会い編だ。次に、変化編、恋人編、婚約編に続く」


 後半2つほど妄想が混じってません?

 他にもいろいろと気になる点はあるけれど。


「なんかいいお姉さんですね」

「そうだろう」


 自慢げな顔の沙月先輩。案外シスコンなのかな。

 もしかして姉妹百合ワンチャンあるのか。


「とりあえず、続き聞かせてくれません?」

「聞かせたら恋人になってくれるかい?」

「それはなりませんけど……」

「まあ、いい。続きを話すね」


 そう言うと、沙月先輩はまた話し始める。

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