5.入学式
入学式!
教頭の開式の辞にて入学式の幕が上がる。
そして、新入生入場!
今年の新入生が続々と体育館に入ってくる。
可愛い女子がより取り見取り。
黒髪や金髪、髪の長さもショートからロングヘアーまでいろいろ。
雰囲気も箱入りお嬢様からギャルっぽい子まで属性多数。
うちの高校は髪を染めたりすることには寛容だしね。さすがに行き過ぎると怒られるけど。
留学生も取り入れているようで、海外の子っぽい姿も見受けられる。
なにやら見知った顔もあるような……。
その後、歌を歌ったり校長先生の長話を聞いたり。
無事に式が進行していく。
そして、生徒会長と風紀委員長からの新入生への歓迎の言葉。
私が1番、楽しみにしていたイベントシーンである。
登壇する銀髪の生徒会長と金髪の風紀委員長。
そのお姿は、まるで月と太陽。
素晴らしいスチル!
雰囲気もクールで威厳のある生徒会長と穏やかで柔らかな雰囲気の風紀委員長でバランスもばっちり。
やはり、学園で最高のカップリング!
入学式じゃなかったら黄色い声援を送るところである。
名前をなぞらえて、学園の月姫と陽姫と呼ばれるだけはある。
「今年度から生徒会長に就任した五月川沙月です。新1年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生一同、心より歓迎申し上げます。みなさんと一緒に学生生活を送れることを、とても楽しみにしていました。私も2年前、皆さんと同じように不安と期待に胸を膨らませ、緊張しながら入学式を迎えていました__」
「今年度から風紀委員長に就任した晴海陽音です。新1年生の皆さん、ご入学おめでとうございます__」
2人の挨拶も終わる。
次に新入生代表挨拶ということで、新入生の代表が呼ばれる。
去年、私も挨拶したっけな。
懐かしい気持ちになる。
「新入生代表、舞園麻衣。登壇をお願いします」
なにやら聞いたことのある名前が聞こえてくる。
やっぱり、さっきのは見間違いじゃなかったか。
舞園麻衣は、私の中学の時の後輩である。
中学の時は、私のことをお姉さまとか言って慕ってくれていた。
香澄とはそりが合わなかったらしく、よくケンカをしていたけれど。
一見すると黒髪の清楚系美少女。
テスト主席で新入生代表になるくらいにはスペックも高い。
そういえば最近、忙しくてあんまり連絡をとってなかったな。
同じ高校に入学したなら連絡くらいしてくれても良かったのに。
「あたたかな春のおとずれと共に、私たちは椿森学園高等学校の入学式を迎えることができました。本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼申し上げます__」
新入生代表の挨拶も終わる。
あまり緊張した様子もなく、なかなかにそつなくこなしていた。
今度、機会があったら校内でも案内しよう。
その後、閉会の辞などがあり入学式が終わる。
***
教室に戻ってきた私たち。
ロングホームルームの時間が始まる。
「えー、そうだな。もう朝のうちに自己紹介してもらったし、教科書配り終えたらさっさと帰っていいぞお前ら」
それでいいのか奈々ちゃん先生……。
まだロングホームルーム始まったばかりなんだけど。
教科書を受け取った人たちがだんだんと教室を後にしていく。
「そうだ、鮎川は少し話がある。こっちに来い」
先生からの呼び出しがかかる。
「奈々ちゃん先生、何ですか?」
「また面倒ごとを頼まれてな。今度、私の頼まれごとを手伝え」
「またですか……。今度は何を頼まれたんですか?」
私はたまにこの先生から頼まれごとをする。
「ちょっと、不登校児のお世話をな。鮎川はそういうのに向いてるからな。まあ、詳しいことはまた今度話すが」
「まあ、いいですけど……」
「そんな不満気な顔をするな。またいろいろ融通してやるから」
そうなんだよな。
私がこの学校で自由に執筆活動とか許可してもらえてるのは、この先生の口利きによるものが大きかったりする。それ以外でも、いろいろ助けてもらったりしている。
奈々ちゃん先生はそういうのが上手いんだよな。
人を頼ったり、頼みごとをしたりするのが。
奈々ちゃん先生が問題解決。そして、貸しを作る。その貸しをうまく使って問題解決。
といったような、無限ループが出来上がっている。
だからこそ校長とかにも気に入られている。
いろいろ頼みごと解決してくれるからね。
「まあ、話はそれだけだ。今日は風紀委員活動もないし、また明日な」
「またね、奈々ちゃん先生」
私も帰るか。
帰宅の準備をする。
「歩美、一緒に帰ろう」
「待っててくれてありがとね、香澄。帰ろうか。どこか寄っていく?」
「そうですね。午後がまるごと空いているから軽くどこかに行ってもいいわね」
午後の予定を香澄と話していると、教室のドアからご来客。
「あゆ先輩! あなたの愛しの麻衣ちゃんが来ましたよ」
「あ、麻衣じゃん。入学おめでとう。椿森に入学したなら教えてくれれば良かったのに」
受験終わったくらいの頃に連絡した時には__
『そういえば、受験終わったの?』
『無事受かりました! あとはあゆ先輩からの祝福のキス待ちです』
『……』
『( *¯ ³¯*)っ~♡』
『……』
『素っ気ない先輩も素敵! まあ、楽しみにしててください』
なんてやり取りをした覚えがある。
メンタル強いなこの子。
そういえば、受かった高校を聞いてなかったな。
楽しみにしててくださいってそういうことかと納得。
そして、なぜかこの子の私に対しての好感度がカンストしてるんだよね……。
「驚かそうと思って黙ってたんですよ。驚きました?」
「うん、すごく驚いたよ」
「惚れちゃいました?」
「いや、別に」
「そんなっ!? あゆ先輩の大好きな清楚な後輩キャラですよ」
自分でいうものではないと思う。
それに、清楚キャラというものは見た目だけで決まるものではない。
見た目だけなら清楚キャラではなく清楚系である。
例えば、清楚系お嬢様と清楚系ギャルでは天と地ほどの差がある。
まあ、私は両方好きだけれども。
「あら、あなたは相変わらずの調子ね。清楚の意味を辞書で調べなおして来たら」
「あ、香澄先輩もいたんですね。気付きませんでした」
「そう、ちゃんと目見えてる? 鳥目、鳥頭は大変ね」
「心配していただかなくても大丈夫ですよ。少なくとも頭は香澄先輩より良いですから」
「「……」」
にらみ合う2人。
昔から相性が悪いのか会うたびにけんかをしている気がする。
2人の中は今日も悪い。なして?
「あゆ先輩、良かったら今から2人で遊びに行きませんか?」
「残念だけど歩美は、今から私と遊びに行くの。またね麻衣さん」
「香澄先輩は毎日、一緒にいるじゃないですか。今日は私に譲ってくださいよ」
私は、どうやってこの場を納めようかと考えを巡らせる。
…………うん、何も思いつかない。
なんとかなるようなら中学のときに何とかしている。
その間にも、口論はだんだんとヒートアップしていく。
こういう時に私が口をはさんでも、火に油をそそぐようなことになるだけなので静観。
揉める2人。それは実は互いのことを思ううえでの愛情の裏返し。
冷静になったあとで、ふとした拍子に気づく相手への想い。
そんな百合もいいとは思いませんか?
「あゆ先輩は、私と2人で行きたいって顔をしてるじゃないですか? 察してくださいよ」
そんな顔、私はしてないよ。と心の中で麻衣に突っ込む。
「そんな顔してないじゃない。幸せすぎる思考ね。あなたのスカスカでハッピーな頭の中には脳みその代わりにハッピーターンでも詰まっているの? ハッピーパウダーをキメちゃってるの?」
香澄によるハッピーターンへの熱い風評被害。
ハッピーパウダー(ハッピーターンについてる粉)をキメるってなんやねん。
あの粉、中毒性はすごいけど。
「あゆ先輩は、久しぶりの後輩といつも一緒の香澄先輩のどっちと遊びに行きたいですか?」
「……いや、普通に3人で遊びに行くんじゃ駄目?」
それか2人で行ってもらって愛情、もとい友情を深めてもらうのも私的にはあり。
そうして話し合っていると、私たちにとある声がかけられる。
「やあ、探したよ歩美。約束通り、これからランチでもいかがかな?」
沙月先輩とそんな約束した覚えはないんですが。
ハッピーパウダーでもキメてるのかな?
そして、余計な、もとい新たな火種が追加された。
キャラ設定メモ④(作者用)
・舞園麻衣/黒髪/ミディアム/あたし/後輩/ポジティブ、ポンコツ




