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ソウルディア戦記 ~魂歌の響く大地~(砦の魔女編)  作者: 槍の人。


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終幕:「涙還」

終幕豆知識

【マインサ・フレーメ】…フレーメ子爵令嬢。彼女は求められ、優しき王の笑顔と共に幸せな人生を送った。


終幕:「涙還」


◇新生王国暦5年 炎熱季76日



迷路の様な砦内を灯りに誘導されて進む戴冠式の参列者達。

曲がり角や分かれ道には必ず松明を持った兵が配置されており、壁にも一定間隔で火が灯されているが、それでも明るいとは言えない地下へと続く長い道。

聖堂への順路を外れぬ様に敢えてその他の場所へと至る灯りは消されており、そこかしこに先の見えぬ闇に吸い込まれて行くような道が存在する事がより一層この砦の特殊性を浮き彫りにさせる。

公都や王城と言えば聞こえは良いが、どう見ても辺境の防砦そのものであり、生活する為では無く戦う為に築かれた物だ。

だからこそなのだろう、地下へ地下へと進み続け、長い長い階段を下りた先、重厚な岩の扉をくぐると広がる聖堂の神秘性に圧倒される。

広く天井の高い空間が突如として現れ、壁や天井にまで施された彫刻が松明とは異なる魂芯灯の灯りに照らし出されて浮き上がっている様は王都の建物よりも壮麗だ。

ここは遥か昔から存在していたらしいが、聖堂と呼ばれ始めたのはファイルがこの場所の主になってからと歴史は浅い。

それ以前はシンプルに大部屋とか大広間と呼ばれ、実際数十年に渡りこの砦の管理を行っていた旧シーサック王国の第二騎士団では大広間で定着していたそうだ。

だが聖女が在り、その伴侶の英雄の物と合わせてここに2基の石の王座が設置されると、最初は使用人達が、次第に職人や兵達にも広がり、いつしか騎士達もここを聖堂と呼ぶ様になった。

正式な名称となったのは、どこかのタイミングでバーレットがこの砦の見取り図の最下層に「聖堂区画」と記したのがきっかけだと言われている。


その最下層、聖堂には花や旗、色鮮やかな布も飾り付けられ祝賀ムードを盛り立てていて、並ぶテーブルにはたっぷりと料理や酒が用意されていた。

トゥリス達が雷光によって穿たれた場所を飾り覆い隠し、デノン達が貯蔵庫を空にさせた結果で、どうやら緊急事態はしっかりと対処された様である。


「聖女さんはいつものお席へ、ファヴァルはドノヴァーさんの席な、それからファルタ王はこちらで…おいその椅子をこの横に持って来てくれ、フレオリッタ様はそこにお願いします」


予め参列者用の椅子はその力関係に合わせて並び順などを決めてあったのだが、現在進行形でデノンが頭をフル回転させて失礼の無い様に並び替えを指示している。

来賓で一番格が高いのは間違い無くシーサックのファルタ王だったのだが、その次はメイヤーナの女王マインサの予定であったのだ、だがファルタ王の妃でフォーセルの王女でもあったフレオリッタも参列しており、更にはエルドマのランドガも大国からの正式な大使である。

その他にもアズベリア貴族のラズバンやケルストウ騎士のフレージュ、元伯爵のモルグナなどをどう序列すればいいのか、頭の痛い問題であった。


「えっと待てよ、ファレーザ様はどちらに?フレオリッタ様の横でいいのか?」

「ああデノン君、ファレーザは気にしなくていいよ、アレはこの地下深い場所が余程お気に召さなかったらしくてね、式の後で挨拶はちゃんとさせるから」

「そういえば先程うちの飛竜達が随分と懐いていたな、一緒に飛んでいいかと聞かれたから振り落とされても責任は持てませんよと伝えたんだが、今頃本当に乗っているのかな?いや、そもそも“黒雲の竜の背に乗って東大陸まで来た”んだから無用な心配か」

「ああ…うん、そうだね」


何故か天井を仰ぐファルタとフレオリッタに首を傾げるランドガであった。



結局ある程度はデノンが悩んで決めた末、最後はファヴァルの「僕の公王即位をお祝いに来てくれた人は全員同じくらい大事」発言により、呼ばれるのを待っていた序列中位以下の者達が皆笑って自由に座ったのは後にファヴァルの人柄を示す好例として度々話題に上がる事になる。

そんな皆から愛されたファヴァルを誰よりも愛しているであろうファイルの言葉によって、戴冠式は始まった。


「それでは、これよりベリューク公国の創設とその初代公王たるファヴァルの即位戴冠の儀式を始めます。新生シーサックの王、ファルタ様」

「新生王国暦5年炎熱季の76日、旧シーサック王国領、現メイヤーナ王国領であるラグン地方を両国から独立した新たな公国領として定め、これを治める者としてシーサック王家の血を引くファヴァルを公王として認める」


「メイヤーナ王国の女王、マインサ様」

「新生王国暦5年炎熱季の76日、この良き日にメイヤーナはラグンの領権を手放し、この地を治めるレギエンのファヴァルより伯爵位の返上を受け、縁深いベリュークのファヴァルを新たな公国の公王として認めます」


「新生シーサック王妃、フォーセル王の代理人、フレオリッタ様」

「新生王国暦5年炎熱季の76日、シーサックの友たるフォーセルは、その王の提案する公国と推挙する公王を支持します」


「エルドマ王の代理人、ランドガ様」

「新生王国暦5年炎熱季の76日、エルドマ王家はエルドマの名を取り戻す為共に戦った戦友、連合王国軍の旗手ファルタ王の方針を全面的に支持致します」


「新生シーサック王国の公爵、ノード様…」


居並ぶ要人達による承認と支持の言葉は続き、招待客ばかりなので当たり前と言えば当たり前ではあるが異議や反対の声は上がらず、唯一アズベリアのラズバンが支持と同時に歌い出したアクシデントがあった以外は何事も無くすんなりと即位が認められたのである。

儀式の締めくくりとして、ファルタ王が用意し、女王マインサが祝福した王冠が聖女ファイルの手によってその頭にそっと載せられ、公王ファヴァルの戴冠式は万来の拍手に包まれ終わったのであった。




「いやぁ良い式でしたな、今後はエルドマとも国交を開き良い関係を築いて頂きたい」

「アズベリアは古来雪に閉ざされた閉鎖的な国でした、今の王は他国との交流を望んでおりますので是非とも我がアズベリアにも使節を」


式典は終わったが、その後の会食こそが本題とも言える。

国同士の交流や商談、情報交換などを行う重要な場であり、そこに重きを置く者も少なくない。

そんな歓談の場で、今しがた興ったばかりの公国の運命を危うくしかけないとんでも無い話が飛び出した。


「あー、ごほん、あー、我が友ファヴァルよ、公王即位めでたいな!」

「ゴルモさん!ありがとうございます!いっぱい食べて飲んで下さいね!」

「おう!あーそれはありがたいんだが、話があってだな、マインサ女王にもだ」

「まあダリーシュ子爵、どの様なお話でしょう」


あ゛ーとかう゛ーとか、次第に低くなって獣の唸り声の様にも聞こえる声を上げながら髪の毛をガシガシとかきむしるゴルモに、ファヴァルもマインサも近くの者達も頭の上に「?」を浮かべる。

やがて決心が付いたのか見ている方が思わず自分の頬を押さえたくなるくらいにバシッと両手で頬を叩くと、熊の様な巨体を深々と床に伏せ、こう頼んだのである。


「俺はファヴァルが気に入った!メイヤーナの王宮は肌に合わん!すまん!どうか俺の爵位を返上させてくれ!そしてベリューク公国に仕えたい!」


爵位を返上するとは言っているが、要するに国を捨てての鞍替えである。

騎士程度の階級であれば場合によっては無条件に許される事もあるだろうが、領地を持つ貴族ともなると話は簡単では無い。

隣接する他国への移籍は、元の国の内情や土地勘などを持った状態で行く事になり、戦争の火種になりかねないからだ。

ゴルモの大声もあって聖堂内の皆が話を止めその動向を気にしている、一体どうなってしまうのかと。


「…地大臣、牙大臣、ダリーシュ子爵領の税収と重要性は?」

「はっ?…金貨は我が領地の二十分の一程度、獣肉を主とする食糧供給が我が領地の十分の一程度、細かな数は城に戻りませんとなんとも…」

「特産品の蜂蜜や蜂蜜酒、“森の宝石”が惜しくはありますが…メイヤーナにとって致命的な損失にはなりません、陛下。本人の言う通りこの森の領主は今後も王宮に馴染む事は無いでしょう」

「おいレギエンの!それは…事実ではあろうがあんまりではないか!」


地大臣は何がどうなるのかとオロオロとしているが、ゴルモと旧知の仲である牙大臣のエキルは飄々としてマインサの意図に返答する。

出来過ぎた臣下に苦笑すらしながら、今度はファヴァルに問いかける。


「ファヴァル公王、この者は貴方を友と呼び貴方もそれに応じていました、攻略戦における功績なども踏まえどの様に思われますか」

「ゴルモさんは良い友です、一度は互いに軍を率いて対峙しましたが僕の命の恩人です。そしてゴルモさんが預けてくれたブノンズさんと森林兵の皆さんには本当にお世話になりました、彼らがいなかったらこの攻略戦での勝利は無かったと思います…そうだまだ褒賞の件が片付いて無かったや」

「ファヴァル様ぁ、あっしは嬉しいですぜ」


友よ!とファヴァルの手を取るゴルモと感涙するブノンズを見ればその絆は確かであった。

皆が見守る中、マインサは少しだけ緊張して深呼吸をして、これから大変になるであろう事後処理も頑張る決意を固めて…決断を下した。


「メルヴ地方を治めるダリーシュ子爵ゴルモ、貴方の直訴は確かに受け取りました、それではその爵位を受け取りあなたの身を国の義務から解放しましょう。そしてファヴァル公王、メイヤーナも人材不足で領主不在となるメルヴ地方に新たな領主を送る余裕がありません、ラグン地方と隣接しているこの地を代わりに公国で治めてはもらえませんか?」


慌てた地大臣が人材不足とは言えそこまで深刻ではとか、南部貴族達が私が兼任出来ますとか、にわかにざわつき始めた場にパシーンと良い音が響いた。


「そのお話、受けます!それじゃあゴルモさんはベリューク公国に来るって事でいいんだよね?褒賞どうしようかと思ってたけど、丁度いいから公国子爵の称号をあげるのでメルヴ地方の領主になって下さい!」


大笑いしながら抱き合うファヴァルとゴルモ、その突然で常識外な展開に多くの者が呆然とするが、ファルタやエキルはこれを拍手で評価するのだった。

こうしてベリューク公国の領土はいきなり倍近くの大きさになり、新たな臣下としてダリーシュ子爵が、借りている人材から正式な相談役になったブノンズがスホータムに残る事になり、その代わりに従騎士ブアンがテリンの待つアルダガ村の守備隊長として派遣される事になるのである。

後にベリューク公国の名産品として世界中に輸出される“森の宝石”の輸送箱には、騎士と村娘が木からその実をもぐ様子が焼き印として押され広く知られる事になる。


そして、このゴルモの勇敢とも無謀とも取れる行動に後押しされて、前モルグナ伯オレンとその孫娘も正式に仕官を名乗り出てこれを拍手で認められ、オレンは再びモルグナ伯爵を名乗り公国で地大臣を務めた。

後年、民からもニンジン夫人と呼ばれ愛されたオレンの孫娘は上級騎士となったデノンと結婚、夫と共に公国の発展に尽くし牙大臣夫人となってからも自ら畑に出て民と汗を流したそうだ。


ケルストウ騎士からベリューク騎士となったフレージュは、姉メリージュの功績によって空位となっていたバオニ村の守備隊長に任命され正式にカットガス女子爵として家名を復興させると、ファヴァルと地大臣オレンに一つの提案を行った。

カットガスの民の牧羊と畜産の技術があればラグンの森に棲む野生馬の群れを飼いならせるのではないかと。

これは大草原で多くの駿馬を育て交易の主力としていたシーサックと競合する事無く、森林や山岳で真価を発揮する森林馬として後にベリュークの一大産業へと発展していく。



ファヴァルの人柄とレギエンでの経験やベリュークの血、叔父であるファルタ王等の協力もあり、小さな公国は大きく羽ばたき始めた。

そして、間違い無くそれを決定づけたのはファヴァルの勇気と行動力であったのだろう。

小さな英雄はやがて父と同じく英雄と呼ばれる様になる、詩人の詩はその英雄の始まりを茶化す様にこう歌うのだ。


“英雄は母の手を取り永遠を願う 終生共に在ろうと永遠を誓う 笑顔と共に英雄と聖女に永遠が来る”



「良かった、これでファルタ王との約束も果たせましたし、苦難の船出になると思ったこの公国の始まりも思っていたより希望が多い様です」

「そうですね、ですがダリーシュ子爵の件は本当に良かったのですか?子爵本人はともかくその領地まで…」

「後でエキル達に沢山怒られそうですけど、これが最良であると私が決めたのです。…少しだけ親バカだったかもしれませんが」

「ファヴァルの許に助けとなる人材が少しでも増える様にと考えて下さったのですね」

「私に出来る事を可能な限りあの子にしてあげたかったのです、でもファイル様が一緒にいるのですから余計なお世話だったかもしれません」

「いいえ、砦外に及ぶ私の力は限られ遠く離れれば何も出来ませんから信頼出来る仲間はとても大事です、私は共に在る事しか出来ません、話を聞き相談に乗り、もしこの砦に害をなす者があればそれを防ぐ事くらいは出来るでしょうけど…」

「ファイル様…」


多くの仲間に囲まれ蜂蜜酒を飲まされるファヴァルを見ながら、〝母〟と母は静かにその幸せな光景を見守る。

マインサはメイヤーナを離れ公王となるファヴァルに育ての母として出来得る限りの支援を行い便宜を図り、その上でゴルモとメルヴも託した。

今後は互いの立場や国内の忙しさを考えれば簡単に顔を合わせる事も叶わなくなるだろうからと。

そして何より、ファヴァルの横にその母ファイルが居る事が心強い、今や偉大なる者と呼ぶ者もいる伝承の聖女がここに居るのだ。

その美しさはマインサとは異なり実際的な力強さを伴っていて、その笑顔は見惚れる程に凛々しく優しく…物悲しい。


「ファイル様は今の状況を、その、幸せだと思いますか」

「我が子の成長を見守れる事は間違い無く幸せでしょう…けど」

「けど…?」

「ファノアは、ファヴァルの姉はここには居ません、夫と共に空で待っているのだと思います。それに共に在れても共に歳を重ねる事は叶いません、だからきっと、いつかは私がファヴァルを…」

「まだ、まだまだずっとずっと先の話です、その時こそ…共に還る事は出来ないのですか?」

「ありがとうマインサ様、私はきっと数千年の先もこの地で受け継がれる血の物語を見守り続けていると思います」

「そんな…何か、何か方法は」


「あ、あの!女王陛下!!」


他の誰もが近寄り難さを感じて、その空間を邪魔するまいとそっとしていた女王と聖女の会話に、空気を読まず全くもって無作法にも割って入った者がいた。

そう、我らがファヴァルである!!


「無礼な」

「配慮が足りませんよ」


恐らくいつものファヴァルであったなら「ひぐっ」などと奇声を上げていただろうし、仲間の誰かが拳を落とすなり蹴り飛ばすなりしていただろう。

だが余りの場の冷えっぷりに踏み出しかけた仲間達の足は凍り付き、それぞれに会話を楽しみ料理と酒を堪能していた参列者達も静かになる。

それでも自信に満ち溢れたファヴァルは止まらなかった、蜂蜜酒が相当に美味しかったらしい、ゴルモがそっと視線を逸らす。


「いいえ聞いて下さい女王陛下!私はずっと考えていたのです!先程陛下がその身を国に捧げると仰られた時から!いえ!それ以前からずっと思っていたのです!」

「ファヴァル公王?少し飲み過ぎなのではありませんか」

「いいえ、大丈夫です!それに私は公王などではありません!貴女のファヴァルなのです!」

「ドノヴァーはあんなにお酒に強かったのに、ごめんなさいねマインサ様」

「なぜ母さんが謝るんですか!むしろ祝って下さい!」

「ファイル様も私も貴方の事を心の底から祝っていますよ、さあほら皆も見ていますから、お水を飲んで落ち着きなさい私のファヴァル」

「…!!」


既に赤かった顔は熟れた果実の様に真っ赤になりギリギリ保っている呂律と真面目な顔は今にも崩れそうで。

二人の母に仕方のない子ねとばかりにあやされるファヴァル(公王・16歳)に笑いが起こるが本人は至って本気であった。


「では、では母さんも祝ってくれますか!」

「どうしたのファヴァル、もうずっと貴方のお祝いをしているじゃない」

「いいえ、“私とマインサ様を”祝ってくれますかと聞いているんです!」

「“私が貴方と一緒にマインサ様の事を”?」


いったいこの流れで何についてのお祝いをするのだろうかと、女王と聖女は頭を悩ませるがそれらしい心当たりが見当たらない。

だがエキルとエグレン、そしてデノンは額に手を当て、もしくは片手で顔を覆い、頭が痛そうなそぶりを見せながら内心でファヴァルを応援していた、いいぞ言ってしまえと。


「いいえ!違います!どうしてそうなるのですか!!」

「もう、そんなに大きな声を出さなくても聞こ…」


「私とマインサ様の結婚を祝ってくれるかと聞いているのです!!」


「は、い?」


多くの参列者が一斉にざわめき出す中、エキルとエグレンは拳を突き合わせ、デノンは「言いやがったぜあの野郎!」と叫ぶ。

フレオリッタやビューネを中心に集まっていた女性陣もキャーキャーと声を上げているが、そんなものは何も聞こえていなかった、マインサには。


「ファヴァ…何を言っているのですかいくら酔っているからってそ、そん、こらぁ!」

「酔っていません!!」

「そんな嘘で大人をからかうなんてそんな子に」

「嘘じゃありません!本気です!!」

「聞いてません!」

「今言いました!」

「何て事言うのですか!」

「ずっと言いたかったから言いました!大好きですマインサ様!!」

「いやぁぁぁぁぁ!?」


悲鳴なのか歓喜の声なのか、本人にも分からないような声を上げて後ずさると、マインサはそのままぶつかり倒れる様にドタンと椅子に収まった。

信じられないとばかりにもぞもぞと落ち着きが無いが、その目はファヴァルを捉えて離さず今やファヴァル以上に顔が真っ赤である。

ずっと「どうして」を繰り返していて女王の仮面と語彙力は完全に失われていた。


「さてさて戴冠式自体は終わっているとは言え、この場は未だ各国の要人が集まる公式な社交の場と言える訳だけど、これはベリューク公王によるメイヤーナ女王への求婚が行われたという認識でいいのかな?」

「待っ、お待ちくださいファルタ王!そのような話がある訳が…」

「はい!その通りですファルタ王!」


再びいやぁぁぁぁと叫び悶えるマインサは 何度も立ち上がろうとしては足腰に力が入らずより一層深く腰を下ろしてしまう。

その手はバタバタと空を掻きその瞳は訴え掛ける様にファルタとファヴァルを行き来する、果たして溢れる涙はどの様な意味なのか。


「お待ちくだ待ちなさいファヴァル!貴方は言ってる意味が」

「勿論です僕と結婚してずっと一緒に居て下さい!」

「ダメ!待って!貴方にはこれからいくらでも縁談が…それに私はもう34歳で貴方とは」

「マインサ様はお若いです!お美しいです!僕の理想の女性です!結婚してください!」

「あああああ!待ちなさい!私は!私はこの身を国に捧げる覚悟と覚悟を…!」

「聞きました!だから僕の公国にその身を捧げてください!結婚してください!」

「そんな!無茶な事を!あああ、もう何で…」


ついには大声で泣き始めてしまったマインサを、ファイルがそっと抱き締めその頭を撫でる。

優しく優しく、まるで思春期の娘を気遣う母の様に。

…兵が持っていた松明を壁に擦り付けその火を消し、テーブルクロスに黒の濃淡と果汁の淡い彩色のみで描かれたその時の二人の絵は、ランバレアの最高傑作の一つと言われている。


「マインサ様、僕はマインサ様がとっても優しい事を知っています、ずっと頑張って来た事を知っています、時折り泣いていた事も知っています、ずっと近くで見て来ましたから。だから…」


その美貌で妃に迎えられ、戦争によって家族を失い、敗国にあって文字通り決死の覚悟で国の未来を憂えて来た孤独な女王。


「僕はマインサ様にも笑顔でいて欲しいです、これからずっと、僕が笑顔にして見せます…何かを飲み込んでいる様な顔を見るのはもう嫌です」

「ありがとうファヴァル、やっぱり貴方はとってもお利口さんだわ…でもね、私は強くなったのよ、それにメイヤーナ王家を絶やす訳にはいかないの…」


そっと進み出たのはそのマインサと共にやって来たメイヤーナ一行、そしてゴルモが抜けた南部貴族達。

改めて女王の前で片膝を着くと、先頭のエキルは笑顔で言い放った。


「女王陛下に申し上げます、かねてより我らは陛下に縁談を勧めておりましたがその首を縦に振って頂けず歯がゆい思いをしておりました、この度の縁談は是非ともお受けして頂きたい。…それとも格下の公王で教育の足りないうちのファヴァルではご不満でしょうか?」

「そんなまさか、格下だなんてそんな事は、ファヴァルは良い子よ?エキルの良い所をしっかりと受け継いでいるわ」

「こいつは兄貴の良い所も悪い所も全部見てしっかりと育ってますよ。ああそれに陛下?陛下は子爵家から嫁いだ妃で前王との子も居ない、ああ責めてる訳じゃないんですよ?だがそれはつまり、メイヤーナ王家なんてのは既に途絶えてる様なもんでしょう」

「それ、は。でもだからと言って女王が居なくなってもいい訳が」

「エグレン殿にしては良い着眼点ですな、いやそう睨みなさるな。しかし実際問題、復興半ばとは言え国内は穏やかにまとまりつつあります、今ならば女王陛下が国を離れても国を捨てたなどと思う者は極一部でしょう、地大臣の立場としてはむしろ慶事として盛大に送り出せば王都の通りは民達の花と酒で溢れるものと試算致します」

「そんな簡単な話ではないでしょう?その後のメイヤーナはどうなるのです」


これに応じたのはゴニョゴニョと密談をしていたエーゲン、ドラットを始めとする南部貴族達。


「南部諸侯連合はエキル様を新たな王に推挙致します」

「おお!?それなら俺も兄貴を推すぞ、レギエンと牙大臣は俺がやってやってもいい」

「まあ妥当なところでしょうな、把握している限りでは7割程の領主がすぐにも賛意を示すでしょう」

「言いたい放題言ってくれるではないか。だが、それで陛下と息子が幸せになれるなら喜んで復興の続きを任されましょう」


自分は歴史ある一国の女王なのだから、と思っていた。

それがなぜこんなにも簡単に他国に嫁いで良いと言われるのだろうか、なぜ王権の移譲という重大案件がこんなにも簡単に決まってしまいそうなのだろうか。

分からない、分からないがどうやら自分は女王の役目を終えてもいいらしい、そう思った瞬間にマインサは何も考えられなくなった。

それまで落ち着きの無かった手足は糸の切れた操り人形の様に重力に抗うのを止め、その瞳はまるでガラス玉の様に何を見るでも無く目の前で進行する出来事を映し出している。


「…ンサ様?マインサ様?」


実際の所、この件についてファヴァルは何も根回しなどは行っておらず、エキル達も事前に話し合いなどを行ってはいない。

だがファヴァルに近しい者、長く行動を共にした者はファヴァルが女王を好いている事など分かっていたし、女王からのお茶の誘いを何だかんだ理由を付けて辞退する姿を見て「若いなぁ」と思っていた事だろう。

だから本当にファヴァルが、しかもこのタイミングで求婚したというのは想定外であったが、常日頃から考えている理想の未来図からすれば想定内であったのだ。

そしてマインサが良き女王となるべく努力していた事はメイヤーナ王宮の誰もが知っていたし、その教えを乞う対象として最も信頼していたのが牙大臣エキルである事も、それはつまり現時点では国を動かしているのが実質エキルである事も知っている。

故に女王マインサの夫としてエキルを迎え国政を支えさせるという案を推す国内貴族の多くが、この話にもきっと賛同するだろうと思われた。


「女王陛下?」

「マインサ女王!」


責任感なのか開放感なのかそれとも他の感情なのか、今自分が滔々と涙している事さえ理解出来ていなさそうなマインサは自分の名を呼ぶ臣下達を夢でも見ている様な心地で眺めていた。

実際の所、本当に話の展開が早すぎて感情が追い付いておらず、まるで現実味が感じられていない状態で。

臣下どころかファヴァルやファイル、ファルタなどが呼び掛けても虚ろで反応の無いマインサに次第に心配や困惑の声も上がり始めたのを見て、エキルは「ふむ」としばし考え込んだ後、唐突にこう呼び掛けてみた。


「フレーメ子爵令嬢」

「…は、はい!?」


マインサにとってそれはとても懐かしい名前だった。

懐かしく、既に滅びて久しい家名だ。

そういえば婆やは元気にしているだろうかと別れを告げた日に杖を贈った相手を思い出す、戦後に再び王宮へ招く手紙を送ったが返事は返って来なかった。


「この度、貴女には国王よりの婚姻の申し出がありましたが、勿論受けられますな?」


この男は…と、エキルを睨んで見せるが悪びれる素振りすらなく憎々しい、分かっててやっている分、質が悪い。

その昔フレーメにやって来た使者も似た様な口上であった、断れるはずの無い国王からの申し出という名の命令、要するに確認では無く通達である。

夫となった前王は「その笑顔を俺の為に見せろ」と言った。

さっき私は何と言われたか、「僕が笑顔にして見せます」?

(ふふ、まるで物語の中の台詞みたい)

そうどこか遠くの出来事の様に思い、しかし昔はそんな台詞に憧れていた事を思い出す。

自分も昔は、特別な期待などされていなかった小領主の娘だった頃の自分は、本の中で語られるお姫様や騎士達の台詞に心奪われていたではないか。


16歳で成人を迎えると同時に王に確保された私に、王妃となる事への憧れが無かった訳では無い、むしろ期待していた部分もある。

だが想像を超える煌びやかな王宮で待っていたのは、心躍る様な物語の一幕では無く、野性味の有る20歳近くも年上の眼光鋭い王と、居並ぶ貴族達の品定めをする様な視線。

夫の行動は荒々しく、周囲の者達は信用出来ず、父や兄弟の言葉を鵜呑みにし、私はダメで嫌味な女だった時代だ。


やり直したい、やり直せるだろうか、やり直していいのだろうか。


スホータムは王宮と呼ばれる事にはなったが辺境の砦であり煌びやかさなどまるで無い、昔住んでいたフレーメの館の様だ。

だがここに居る者達は信用出来る自信がある、皆の笑顔と私を心配するあの顔を見ればそう確信出来る。

そして20歳近くも年上の私を求めてくれる者がいる、まるで本から出て来た様な姿と台詞の目の離せない、でも憧れていた王子様や騎士様とはちょっと違う感激より先に母性が出て来てしまう様な者が。

今も心配そうに、心と魂を射貫く真剣な眼差しをしっかりとこちらに向けて…。



「はい、王の申し出、謹んでお受けいたします」



スホータムはその日二度目の大歓声に包まれ、その場でファルタ達によって略式の承認まで行われてしまった。

まるで最初からそうなる様に計画されていたのでは無いかと疑う程に次々と話は進められ、臣下達によって既に婚礼の日取りや祝いの品についての話し合いも行われている。

マインサはぼーっとそんな夢の様な、今でも夢なのでは無いかと疑っている世界を、各国要人に頭を下げるファヴァルを、我が子から夫になってしまった男を見ていた。

その笑顔を見て浮かんでくるのは若干の気恥ずかしさと気まずさと、それ以上に微笑ましさで。

やはり自分は妻では無く母として共に在る方が良いのでは無いかと思えてしまって、その心配がニコニコしながら側にやって来たファヴァルについ口を衝いて出てしまう。


「あの、ファヴァル?やっぱり公妃は別の方を探して私は後見人として貴方を…」


ファヴァルは唇を塞ぎ最後まで言わせなかった。

囃し立てる様に声を上げたデノンとゴルモには拳と蹴りが飛び、女性陣の一部は溶けて崩れ落ちた。

マインサにはこの場所に笑顔と幸せが約束されている様に思えた。

いや、絶対にそうじゃないといけないと思った。

だから。


「女王陛下、どうかそんな事を言わないで下さい」

「…もう言いません、言いませんから、だから貴方もそんな風に言わないで」

「そんな風?」

「もう女王ではありません、名前はマインサですよ、私のファヴァル」


あれだけ強気に話を進めて、強引に唇まで奪っておきながら、いざ名前で呼ぼうとすると緊張でガチガチになっている小心者を皆が笑う。

皆が笑い、皆が笑顔で、皆が幸せそうで、その中で一人だけがそれを約束されていない。

ファヴァルと共に生きる事を決めたマインサは家族の事を想う、先程この愉快な夫に邪魔されてしまった大事な話の続きを、この砦に暮らす家族の事を想い自らの幸せを犠牲にしてしまった義母の事を。


「マ、マイ、ン、マインサッ…さまぁ…」

「ファヴァル、やはり何か方法は無いのか考えましょう」

「マインサ様!?まだそんな…本当に幸せにしますからぁ!!もう絶対に離しませんからぁ!!」

「ええ、絶対に幸せになっていただかないと、って少し離れなさいな!」

「嫌だぁぁぁ!なんでそんな事言うんですかぁぁ!絶対離さないっ!!」

「こ、こら!何、何、何、なんですか!?」

「好きだぁぁぁマインサァァァ!!」

「………バカァァァァァ!!」


顔を真っ赤にして固まるマインサから拳と蹴りによって引っぺがされたファヴァルはなおも何かが吹っ切れた様にマインサの名前と愛の告白を連呼していたが、流石にうるさすぎてトゥリスに肉の塊を口に突っ込まれ大人しくなった。

その後も汚れてしまった礼服の件で使用人達から文句を言われ、他国の王や大使の前でみっともないと騎士や兵士達から非難を浴び、マインサからも「今では無いでしょう」とバシバシ引っ叩かれ、やっとしょげて落ち着いた様だ。

そんなファヴァルのいつも通りの姿とマインサの意外な一面を、微笑ましく、本当に幸せそうに見守っていたファイル。

だが幸せそうだからこそ、それが永遠であってはならないのだ。




「ですが、やはり方法は…この体は今の私の想いとは別に生前の私によってここに在りたいと願われ作り上げられたものだから」

「どうしても還れないのですか、今そう願っていても…」

「…ダメね、自分が溶けるイメージも散るイメージも思い描いてみたけれど」


攻略戦の後、白い騎士も兵士も消え去ったがファイルだけは消える事は無かった。

他の魂は聖女の祈りや黒雲の竜の加護で引き留められていたに過ぎず、本来は還るべき状態であったからだ。

だが聖女の磨き上げられた魂は何も無くともソウルキーパーとしてこの地に留まれるだけの輝きを有していて、それでも本人が望まなければその時に還っていたはずだった。

しかし強く強く、まだここに居たいと、皆と共に在りたいという願いと共に肉体を失った魂は、極めて強い輝きを放つ偉大なる者をこの地に生み出してしまった。

その呪いの様な白き聖女は、ここに在る事こそが存在理由であり、最早自ら望んでも還る事は叶わなくなっている。

黒雲の竜の加護が失われれば聖女も還れると思っていたファヴァル達にとって唯一の誤算であった。


「これまでも一緒に色々考えてはみたんだよ、でもどんな方法もダメで…」

「それこそ戦って霧散した白い兵もいたからさ、聖女さんに協力してもらって一か八か物理的に散らせないか試したりもしたんだがなぁ」

「ダメでやしたね…仮に聖女様の魂が数千年分あるとして、あっしらの攻撃程度じゃ頑張っても一日にも満たない数刻程度の寿命を縮められたかどうかってなもんで」

「ファレーザさんがね、攻略戦の時に割と本気で攻撃してたらしいんだけど、それでも母さんの感覚的には削られたのは一季節から良くて数年分くらいの輝きだって」

「ファレーザに言われてしまいました、実体が無く砦から出ない私は面倒くさい女だと」

「流石黒雲の竜、凄い言いっぷりだぜ…なんかこの岩山ごと吹っ飛ばしていいならもっと大きな攻撃も出来るらしいけどな」

「現実的ではありやせんね、それにそれでも繰り返しやらなきゃ無理だろうって話でやしたし、岩山どころかこのラグン地方が穴ぼこだらけになっちまいやすね」


石の王座の片方にファイルが、もう片方にはファヴァルの代わりにマインサが、他の面々は各々に椅子を持って来たり床に座り込んだり周囲に立ったまま腕を組んでいたりと様々だ。

聖堂は即席の軍議室の様相を呈し、目下話し合われているのはファイルの魂の帰還作戦である。

だがこれまで既に何度も話し合われ、様々な手段を試して来たが全く成果の上がらなかった議題でもあった。


「ふむふむ、そういえばアレ…新たな黒雲の竜には魂の輝きが見えていたのだったか」

「そう言ってた、人間には見えないんだっけやーいやーいざーこってデノンが言われてたし」

「そこまでは言われてねーよ!」

「まあアレは後で叱っておくとしてだ、やはり魂の事については偉大なる者に聞くのが良いのではないか姉さん」

「私もそう思ってファレーザに聞いてみたのだけれど、そんな面倒な魂の扱い方なんて分からない、と」

「アレはまだまだ子供だからな、黒雲の竜とは言え人間に例えればまだ成人前だろう、こんな時にズィードが居てくれたらな」

「まだ微かに光を感じる事もあるけど、声は聞こえなくなってしまったわね」


ファレーザとの区別の為に最近では古き黒雲の竜と呼ばれる様になったズィードの魂は、あの攻略戦の中で最後の輝きを放つかの様にその声を響かせ、その後は沈黙していた。

完全に居なくなった訳では無さそうだが、恐らくその本体と呼ぶべき魂は魔女と共に還ったのだろうと言われている。

今はその残滓が、魂の宿主となったファイルやファレーザ、魂器の雷鱗を持つファルタの許に微かに残るのみである。


「以前は魂器があれば会話も出来たのに、惜しい事だが空へ還ったのであれば良かったと言うべきか」

「お別れも出来ず急に声が聞こえなくなってしまうなんて悲しい事だと思います、私もある日突然ヒュライラーの声が聞こえなくなったらきっと悲しい」

「それもそうだな、確かにしっかりとした別れの言葉は掛けて…フレオリッタ?」


キョトンとするフォーセルからの妃は、今更何をと言った顔である。

確かに古き黒雲の竜の残した鱗、雷鱗を持つ王族はその友の声を聞く事が出来ていた、それは雷鱗が魂器の役割を果たしており、その上で両者の魂に繋がりがあったからだ。

そうであれば同じ様に魂器たる物を所持しており、その魂に縁があれば声が聞こえていてもおかしくは無い、何も黒雲の竜とシーサック王族だけに起こる現象では無いのだ。

フレオリッタがそっと手を重ね大事そうに撫でるそれは、正直に言ってあまり綺麗とは言えない鈍色の腕輪であった。


「貴方のその雷鱗を私が持っても何も聞こえない様に、私のこの腕輪に他の誰が触れても声なんて聞こえたりしないんでしょう?」

「その腕輪は魂器だったのか、道理でどんなドレスや装飾品を用意されてもその腕輪だけは付け替えない訳だ、てっきりフォーセルの古い工芸品か何か、思い出の品なのかと思っていたが」

「思い出の品なのは間違いないけどね、これはヒュライラーの虹色の鱗で作られているの。ヒュライラーの虹鱗は時間が経つとこうして美しさを失ってしまうのが残念だけど」


七王国の中でシーサック王国とフォーセル王国には共通点がある、それはいずれの国も偉大なる者を友とし共存している点である。

黒雲の竜が強大な力を持ち見るからに脅威であるのに対し、湖の巨大魚は大人しく普段は湖底に沈み攻撃性も無い。

だがその棲み処を荒らす者がいればその行為を後悔する事になるのは同じである、ヒュライラーは水に引きずり込んだり水害を起こしたり、もしくは幻や不安といった精神干渉で自らに害成す者を排除するのだ。

そんなヒュライラーには死者を蘇らせる力があると言われていた時代があった、その誤解から無駄な争いや命を失う者もいたフォーセルの苦い歴史である。

今はその噂の元となった力がどの様なものなのかも伝わっており、安易に死者との邂逅を望む者も居なくなったが…。


「ヒュライラーは水で創り出した仮初めの器に散った魂を呼び寄せる程に魂の扱いに長けていると言うが、姉さんの状況を伝え助言を求める事は出来ないのかい?」

「あのね、その魂の輝きとか光の渦とかって言うのが見えないしファイル様の体の説明も出来ないのに、どうやったら私が聞けると思う?」


どうやらファルタとフレオリッタの関係はだいぶ妻に分があるらしい、小言を言いながら詰め寄る妻に慌てふためく夫の姿は、これが本当に世界に平和をもたらしたと謳われる涙還王なのかと疑ってしまいそうだ。

だがその涙還王に関する膨大な詩や記録を紐解いてみても、その武勇についてはあまり語られておらず、その友情や信頼に多くの文字数が割かれている。

涙還王はその剣によってでは無く、その心と声によって世界を平和に導いたのだと彼を知る者は口を揃えて答える、つまりそういう事なのだろう。

同じ血を引くファヴァルにもその片鱗が見えるが、今はまだ幼さ故の愚かさの方が勝る残念な逸話が多く、偉大な王に肩を並べる日はまだまだ先の話になりそうだ。


「その、フレオリッタ様?その腕輪を母さんに貸していただく訳には…」

「ファイル様になら喜んでお貸ししますよ?だって私にとっても義姉で家族な訳だし、でもさっきも言った通りヒュライラーと魂が繋がっている者でないと声は聞こえないと思います、面識のあるファルタにだって聞こえていないんだもの」


そう言って腕輪を慎重に外すと、両の手のひらの上に載せてファイルの前に差し出す。

元々は虹色だったと言われても確かに誰も信じないかもしれない鈍色の腕輪は、作りも簡素で表面にも微細なヒビが入っており、由来を知らなければ古道具として捨て値で売られていても買い手が付かなさそうだ。

水棲の鱗を加工する技術など無く、ヒュライラー程の巨大魚の鱗だからこそ腕輪に仕立てる事が可能であったというだけで、普通の魚の鱗ならとうの昔に乾燥して割れるなり砕けるなりしていただろう。


「ありがとうございますフレオリッタ、なんだか壊してしまいそうで怖いわ」

「大丈夫ですよお義姉さま、なんだかんだずっと身に付けたまま戦いも経験して来ましたけど壊れませんでしたし」

「いやいやそれが魂器だったと聞いて私は今更胃が痛くなって来たよ…もし壊れてしまっていたらフォーセル王に申し訳が立たない…」

「だから大丈夫だったって言ってるじゃないこの小心者!」


妻にバシバシと叩かれまくるファルタの姿を見なかった事にしている者も多い中、フレオリッタさんいいぞもっとやれとのたまったファヴァルはマインサに次いで今度は床にキスをしていた。

シーサックの血にはこの様な扱いを受ける定めでも織り込まれているのだろうか。

マインサも驚きこそすれ、地に伏すファヴァルを抱き起こすのでは無くそのままの状態で頭を撫でている辺り着々とその愉快な空気に呑まれている様だ。


受け取った腕輪を両手でそっと包み込み、祈る様に願う様にヒュライラーに呼び掛けるファイル。

その姿にシーサックから来た一行から感嘆の声が上がる。

今でこそ王都に造られた“祈りを捧げる聖女ファイルの像”の存在によってその祈りの姿は知れ渡っているが、実際にその姿を見ていた者の多くが砦と運命を共にしており今もなお生きている者はほとんどいないのだ。

聖女とは伝承の中で語られる存在であり、聖女が聖女たる所を間近に見た者達の感動はファヴァルと並んで床にキスをしているのではと思うほどの深い礼拝となって現れた。

その中心にいるのが聖女であればこそ感動的な光景であるが、そうでなければ異様と表現する者もいそうである。


「お義姉さま、どうですか…?」


しばし祈りの姿勢のまま目を閉じ黙していたファイルの頬を涙が伝う。

だがその跡は真っ直ぐ顎へは向かわず緩やかな弧を描いて外へと流れ落ちた。

その涙が悲しみや失望で無い事はその笑顔が物語っている。


「ヒュライラーの声が聞こえます、私にはこの方との繋がりは無かったけれど、私の中のズィードが私達を繋いでくれています、ああズィードもここにいるわ…」



 “ 私の声に耳を傾けて頂きありがとうございます 遥か東の偉大なるヒュライラー ”


  “ いいえ こうしてお話出来て嬉しいわ 遥か西の眩い貴女 ”


 “ 私の名はファイル 貴方がたには遠く及ばないただの人の 人でした ”


  “ 今の貴女はあの元気なお嬢さんと同じなのかしら あのお嬢さんも既にその身を失っていたみたいだけれども ”


 “ それはきっとファレーザの事ですね 新たな黒雲の竜 貴女の良く知るズィードの娘 ”


  “ そう あの竜は名と子を得ていたのですね あの暴れん坊さんが ”


   “ 黙レ イイから教えロ 溶けヌ体ノ溶かし方ヲ ”


  “ まあ怖い 貴方は相変わらずせっかちね でもそうね 貴女達が何を望んでいるのかは分かったわ ”


 “ 出来ますか この身を空へと還す事が ”


  “ 貴女の生まれた理由は分からないけれども 貴女ほどの光が自ら還れないと言うのであればきっと還れないのでしょう ”


   “ 使えヌ ソノ湖に雷ヲ落としテやりたいガ 今ソコに居ナイ事を喜ベ ”


  “ まあ酷い 還る為の方法は無いかもしれないけれども その魂を使い果たせば還る事になるでしょう ”


 “ その 貴女程にはこの力の事を理解していないかもしれませんが 私の感覚ではまだまだずっと先になりそうなのです ”


  “ その光は確かに強い だから自分の為に力を使っても 大した変化は無いことでしょう ですが ”


   “ 言え トットト ”


 “ こらズィード ヒュライラーに失礼でしょう ごめんなさいね ”


  “ ふふ ふふふ 暴れん坊の黒い竜は 草原の人の子に懐いたと聞いたけれども ふふふ ”


   “ ググググ 再び海ヲ渡り ソノ湖ノ水が無くなるマデ雷ヲ落と ”


 “ ズィード!! ”


  “ 「まあ怖い」 ふふふ それでは私のとっておきの技を ファイルに怒られる前にお教えしないとね ”



「そんな、ヒュライラー!そんなつもりじゃ!もうズィードのバカ!」


目を閉じ何も喋らず、しかしその顔はころころと喜怒哀楽を変え一体どの様な話が、いや偉大なる者三者による崇高な話し合いが行われているに違いない、と思って見守っていた一同はその唐突過ぎる言葉に開いた口が塞がらない。

今聖女はズィード(黒雲の竜)のバカと言っただろうか?いやそんなはずは無い、決して無い、断じて無い、無いったら無い!

と、誰一人として声を出していないのに誰もが何かを語っている群衆の表情を描いたランバレアの作品には、「崇拝と憧憬と忖度」と言う不名誉な名が付けられた、その中にファルタやファヴァルに良く似た人物が描かれているのは偶然であると後の画商は忖度している。


何とも言えない表情で目を開けたファイルは、虹鱗の腕輪をギュッと握りしめたままファヴァルとマインサを見た。

ファヴァルの行動力とマインサの優しさがあれば、この砦には平和で幸せな、何でも無い日常がずっと続く事だろう。

落ち着くまでにはまだもう少しだけドタバタとしそうではあるが、巻き込まれるであろう臣下や視界に映る隣人達も含め、それすらもきっと彼等にとっての幸せの一部なのだから。


「フレオリッタ様、これを。ありがとうございました」

「どうでしたか、ヒュライラーは何か方法を?」

「ええ…どうやら私も還れそうですがその前に。フレオリッタ様?」

「え、あ、はい?何でしょう…」


ファイルが還れる方法が見つかった、と言うのはどう考えても最優先事項で喜ばしい事であるはずなのだが、ジト目で詰め寄られたフレオリッタは冷や汗が止まらない、それに勝るマズイ事を自分はしてしまったのかと。


「ヒュライラーが嘆いていましたよ、その腕輪をそんなにもボロボロにしてしまって」

「いや、その、ね?大事な物だから肌身離さずと思ってたんだけど」

「その結果、ファルタと一緒に高山や渓谷、雪山に海を越えてずっと戦ってそうなってしまったのですね?」

「少しずつ…いつの間にか…」

「その鱗は熱と乾燥、そして急激な温度変化に弱いそうです、あと物理的にもそれほど強くありません、ですが定期的に水に浸す事で再生するそうですから今後はたまに外して水の中で休ませてあげて下さい」

「え、それだけでいいの?」

「それだけでいいそうです」


気まずそうなフレオリッタが受け取った腕輪をはめ直そうとすると、水がなみなみと注がれた器が差し出された。

エキルが酔っぱらった息子の上でひっくり返す目的で用意させていた物だが、この様な使われ方になって本当に良かったと思う。

ちゃぽんと良い音を響かせ器の底にその身を横たえた虹鱗が嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。


鈍色の偉大な先達に心の中で感謝を述べ、ファイルは聖堂を見渡す。

全ての瞳が彼女の全てを見逃すまいと凝視しているがそれもそうだろう、先程還れそうと言ったのは皆にも聞こえていただろうから。

中でも最前に居るファヴァルとマインサの顔は対照的で、ファヴァルは悲し気に、マインサは微笑みながら、しかしいずれも泣いていた。

他の者達の表情も様々だが、全てに共通しているのは惜別であろう。

皆がファイルの帰還を望んでいた、同時に皆がずっとここに在って欲しいとも望んでいた、頭のどこかで方法が無いのだから仕方ないという理由でファイルがこの砦で普通の生活を送っている事を肯定していた。


「皆さん…いえ、まずは外郭へと場所を移しましょう」


そう言って空に近い場所へと歩き始めたファイルに、自然と人垣が割れ道が作られる。

ゆっくりと、しかし着実に歩を進める聖女の後ろには王も騎士も兵士も使用人も関係無く、全ての者がただ無言で続いた。

細い通路を微かな灯りを頼りに行くその慎ましくも壮麗な長い列は、葬列の様にも見えた。



戴冠式が終わるやいなや社交には参加せず軍議室に戻っていたアンデントや道中各所に配備されていた兵達も何事かと一行を迎えそのまま現行の役目を解かれて列に加わり、更には戴冠式にも勝る大事な儀式が行われるとして砦内に居る全ての人々へ外郭集合の伝令が走る。

そうしてファイルが外郭の開けた場所へ姿を現す頃には数百人が集まっていた。


「母さん、これからすぐに何か始めちゃうの?今日じゃないとダメなの?」

「ええ、今日ならばすぐにもここで始められそうだから、突然でごめんねファヴァル」

「ファイル様、これから沢山話したい事がありました…ですがもう行ってしまわれるのですね」

「ええ、私も貴女とはいっぱいお話ししたかったです、その分ファヴァルといっぱいいっぱいお話しして下さいねマインサ」

「姉上、この砦で姉上と再会し共に過ごした数日を私は生涯忘れません」

「私も貴方ともう一度会えて嬉しかったわファルタ、ファヴァルとマインサをよろしく。フレオリッタさん、ファルタをよろしくお願いします」

「…お任せ下さい!」


言葉を交わし、抱擁し、一通り別れを告げるとファイルは慣れた動作で櫓に上った。

半ば朽ちかけていたその櫓は一度解体され新たに調達した丸太で作り直された物であったが、以前と変わらぬ形と高さでそこにあり、以前と変わらぬラグンの景色をファイルに見せる。

空にはどんよりと暗い雲が広がっていて青空を隠してしまっているが、それはまるであの日、空を覆う矢が降り注いだ日を思い起こさせた。

そんな見上げる曇天と、眼下に広がり森を沈める雲海に力を貸してと願い祈る、在りし日の姿を想像し創造する。


櫓上で祈り始めた聖女に、最初は誰もその意図を察する事が出来なかった。

しかし次第に空が低くなり、森を包む霧が押し寄せる波の様に砦を襲い始めると誰かが言ったのだ。


「このままでは砦が沈むぞ」と。


霧が立ち込め、空との境界が無くなり、白く染まった視界は数歩先の人影すら霞ませる。

既に櫓上の聖女は見えず同道していた仲間や同僚の兵士の顔も白いカーテンの先にあり定かではない。

そこに居たのは誰だったか、今目の前を通り過ぎたのは誰なのか、今声を掛けているのは誰なのか…。

やがて人々は異変に気が付いた、数百人もの人が集まっていたとは言えこれ程までに多かっただろうかと。

どこかで騎士の一人が部隊の人員を確認する為に点呼の声を上げれば、他の騎士達も次々と声を上げ始めそれに兵が答える。

だが領内三村に守備隊を派遣し、更に街道整備にも人員を割いている今、砦に残るベリュークの戦力は100人程、式典参列者がそれぞれに連れて来た兵を合わせても200を超えないはずだが点呼の声はそれを遥かに超えている様に聞こえる。

怯えた貴族がすぐ横に居た人影に従者の名で呼び掛けるも反応は無く、伝令を出そうとした古参兵士は自分の部下だと思って叩いた肩が水面の様にバシャりと音をたて困惑する。



「奥方様、この霧では流石に何も見えません足元にお気を付け下さい、この後は如何なさいますか」

「ありがとうランザーク卿。もう大丈夫そうですね、お借りした力を空と森へ返しましょう」


聖女が感謝と共に再び祈れば、ザーッと波が引いていく様に霧が流れ、砦を包んでいた雲も散ってゆく。

視界を取り戻した人々が見たのは、在りし日のベリューク軍の姿であった。


その髪や鎧の細部、指先のしなやかな動きまでどこからどう見ても人のそれであり、そこにいるのは水で創られた人と言うよりも人が水になったと思った方が自然なくらいで。

ソウルキーパーが白い霧の塊の様であったのに対し、それはどう見ても透き通る水なのだが、各々あまりにも滑らかに意思をもって動いており、そこに人の魂が在る事は明白であった。


「戴冠式へお越しの皆さま、申し訳ございませんが少しだけ庭の中央を空けて下さい」


ファイルの呼び掛けに誰もがそそくさと移動する、聖女の希望だからという意味合いと、水の兵に囲まれている状態から逃げ出したいという気持ちの両方であろう。

水で創られた兵達は綺麗ではあったが、やはり異質であった、彼等の常識では水が落ちず流れず浮いて動くなどという事は有り得ないのだから。


「ベリューク軍の…いや、旧ベリューク軍の皆は櫓を中心に集合してくれ、各隊の指揮官は兵達の整列を、職人やその他の皆は僕のところへ」


皆の前に進み出て号令を出したのはドノヴァー、ファヴァルがその姿を見る事が出来ていなかった父がそこに居た。

背景の透けるその体ではファヴァルと同じと言われたプラチナブロンドの髪は見れないが、その顔立ちも雰囲気も武器庫で見た絵とそっくりで自然と親近感が湧く。

チラッとファヴァルを見るとニコリと笑い、その人柄が垣間見えた。


「ベルニオン、俺の兵も頼む、近衛は全てベルニオンに従え」

「はっ、かしこまりましたグノッサリオ様」

「だから様は要らぬとあれほど…」


「ほれ、遅いぞ!とっとと並ばぬか!」

「そんな風に言うから兵から怖がられるんですよ、まったくこれだから頑固爺さんは」

「なんじゃと小娘!儂らは姫様の兵なんじゃからこれぐらいしっかりと…」


「輜重隊整列!整列!」

「ほほう、様になっているでは無いかバンフル」

「ち、父上!?まさか父上までお越しとは、それなら指揮は父上が…」


「いや~賑やかなこった、この砦にこんだけ人が居るのを見るのはいつぶりですかね」

「我等が第二騎士団と交代する為に両軍が揃った時以来だろう、つまり19年ぶりだな」

「いや、そんな細かい事を聞いた訳じゃ…」


当たり前の様にそこに在り、そしてまるで日常の続きの様に動き出す水のベリューク達。

今の彼等は何にも縛られておらず、ファイルの招待を受け取り遥か彼方の空から帰って来て自らの意思でその招待席に座っている。

ファイルの記憶から創り出された水の招待席、彼等の生前の姿と寸分違わぬその水の体は、まるで生きていた時と変わらぬくらいにその魂に最高の座り心地を提供した。

魂が自分の体と錯覚する程の仮初めの魂器、ヒュライラーの編み出した生前の姿を映す水の芸術。

ヒュライラーが自らの棲む湖の水を利用して創り出したそれを、ファイルは地域一帯を包む雲と霧を集めて創り出して見せたのだ。



「すごいや、バーレットさんもアローネさんも…ベリュークの人達が皆いる…」

「これを奇跡と呼ばずして何と呼べばいいのでしょうか、これは…お義母様…」


未だ気味悪がっている者も居ない訳では無い、それほど水のベリュークは異質で、常識外れで、奇跡であった。

聖女の伝承は数々の奇跡の様な物語で構成されているが、それは今なお続いている。

嘘でも比喩でも誇張でも無く、聖女は今もそこに在り、黒雲を呼び霧を操り、死した者達を再びこの地に呼び戻した。

ランバレアやラズバン、そしてバーレットの知識にも、過去にこの様な事を成した偉大なる者の記録は無い。


「それでファイル様、我等は何をすれば良いのでしょうか」

「何も、いえ好きな様に行動して下さいバーレット、皆さんも好きに動いて構いません、ただしこの砦からは出ないで下さいね」


そう聞いてワッと砦の内部へと走って行く者も居れば、さてどうしたものかと悩む者もいる、砦内へ向かった者達はきっと当時の自室や持ち場へと走ったのだろう。

そのまま手近な階段から壁上の通路に上った者はそこを守っていた外郭の兵だったのだろうか、急に話しかけられた透けていない兵が戸惑っている姿も見える。

各自自由行動と言われ多くの水のベリュークが動き、邂逅し、そしてそこには新たな物語が花咲いた。



「さて、僕がファヴァルとこうして話をするのは初めてになるのかな?」

「そうだと思います、小さい頃の思い出は何だかぼやけて不確かで、ドノヴァーさんと会話した記憶も有るのか無いのか曖昧で…」

「おいおいファヴァル、父さんだぞ?そんな呼び方は無いだろう」

「うふふ、だってドノヴァーの中のファヴァルはほんの小さな子供で、ファヴァルの中のドノヴァーは絵の中の姿なのよね」

「ううむそうか、そうなのか。だが折角だから父さんと呼んで欲しいな、ファイルの事は母さんと呼んでいるのにズルいじゃないか」

「ズルいとかそう言うんじゃ…まったく、父さんは英雄らしく無いですよ!」

「あはははは!よく言われたんだそれ!やっぱり僕には英雄なんて御大層な肩書は似合わないんだよ、そう言う訳でお前にやろう、英雄ファヴァル!」

「は、はぁぁああ!?」


親子だとは分かっていてもお互いに距離感を掴めずにいた父と子は、しかし話してみれば互いに愉快な性格で馬が合う様だ。

早速始まった煽り合い揚げ足の取り合いにはファイルもマインサも苦笑するしかない、果たしてファヴァルが背伸びしているのかドノヴァーが幼いのか。

どちらにせよ良く似た親子である事は間違い無かった、ファヴァルは容姿だけでなく中身もドノヴァーの血を色濃く引いたのだなと見守る誰もが思う。


「殿下、ドノヴァー様の悪いところばかり真似しなくてもいいのですが?」

「べ、別に真似してないし!」

「ドノヴァー様、ファヴァルに変な事を教えないで下さいね?」

「待て別に変な事は教えていないだろう!」


親子揃ってバーレットとアローネに叱られる所までそっくりで、必死に否定する愉快な親子の無駄な抵抗はしばらく続くのだった。



「よう大将、随分と早い再会になったもんだな」

「おう継ぎ接ぎの、元気そうで何よりだ」

「おいおいこれが元気って正気かよ、まあ元気だがこれだぞ?ちゃぷちゃぷ言ってやがる」

「うむ、なんとも不思議な感覚じゃのう、じゃが以前と大して変わらんわい」


自身の透ける手を雲間の青にかざしてお道化て見せるルダンは、今の状況を楽しんでいる様だ。

アストガルも手や足を動かしその感覚を確かめているが、慣れない小綺麗な服や飾りの多い靴を身に付けさせられた時よりマシだなどと言いこれといって驚く素振りは無い。


「なんだ突然現れてこっちはそれなりに驚いたってのに、なんだか損した気分だな。どうだまた一勝負してみるか?」

「…いや、残念な事に剣もこの通り鞘から抜けるが、物理的には本当にただの水だなこりゃ、これならまだ木剣とか飾り剣の方がマシだぜ」

「へっそれじゃあ仕方ないか、勝ち逃げとか言うんじゃないぞ?」

「あの勝負はどう見てもどっちも全力だったじゃろう、折角悔いの残らぬ良い勝負をしたんじゃから要らぬ水を差すでないぞ、…水だけにな!」


バッと両手を広げて見せる老騎士をエグレンもルダンも指差して笑い、周囲の兵達も透けてる透けてないを問わず笑い転げた、今度はアストガルが笑いすぎじゃと文句を言い始めるくらいに。


「賑やかだなここは、死んでもなおそれだけ元気とはさすが死にぞこないのアストガル殿だ」

「なんじゃと!お主こそとっとと死によってからに、この阿呆めが!」

「父上!アストガル様!双方言い過ぎですよ!」

「はん!こ奴にはこれぐらい言ってやらぬと気が済まんわい、バカみたいに真面目に荷を守りよって」

「荷を守れぬ輜重隊など何の意味があるのか、それが分からぬとはやはり耄碌しておるな」


こちらはこちらで楽しそうに喧嘩を始めてしまうアストガルとバントレオ、仲が良すぎるが故の笑顔でのぶつかり合いに、仲裁しようにも息子で後輩のバンフルは手を出しかねて頭を抱えてしまう。


「お前も大変そうだな、ところで俺はエグレンと言う、お前の名は何という?」

「バンフルです、バンフル・ロバンツ。あそこでアストガル様と言い合いをしているのは父のバントレオです」

「そうか、バンフルか、お前のその顔と鎧に見覚えがある気がするんだが、砦のどこを守っていた?」

「?、私は輜重隊所属の為決まった場所は無いのですが…それが何か」

「ううむ、砦の奥のどこか、だいぶ深い所に床に穴の開いた成形されていない天然の小部屋があったと思うんだが、知らないか?」

「それは…地下水脈の汲み穴ですね。輜重隊が管理する場所ですが、そうですね、確か最後に私はあそこへ…」


バシャンとバンフルを抱擁しその背中をバシャバシャと叩くエグレンに、バンフルは色んな意味で慌てる、水の体が壊れてしまわないか、エグレンが濡れてしまわないか、突然大男に抱き締められてる、痛い痛い痛…くない、今これはどういう状況なんだ…。

若干混乱しながらされるがままになっていたバンフルは、しかし自らの新しい体の表面で弾けるのが衝撃でしぶく自身だけでは無い事に気付く、ポタポタと肩に流れ落ちた雫が自身と混ざり合う事無く飛び散り消えてゆく。


「あ、あの、エグレン殿?」

「よくやった、よくやってくれた!そうか輜重隊か、なるほどな、流石じゃねえか!」


訳も分からず固まるバンフルにまくしたてる様に語られたエグレンの言葉、それが途切れると二人顔を見合わせ叫ぶようにまた泣いた。

縁の下の力持ち、大事な仕事だが目に見えずらい成果、目立った戦功の無い従騎士、父の跡を継いで輜重隊を率いたバンフルにとってそれは最大の戦功であった。


「のうバントレオよ、お主の息子は立派に育ったのう」

「ええ、長らく会っていませんでしたが、私の期待以上の…とにかく自慢の息子ですよ」


バンフルが最後に運んだ“荷”は、一人の男児だった。

次々と立派な鎧を着込んだ騎士や近衛が倒れてゆく中、若く軽装のバンフルは主の声を聞いた最後の人物であり、朦朧とする意識と戦いながらこの砦で唯一の水源へと向かった。

だがその足取りは覚束ず、やがては地を這い、そのまま視界は暗転した。

だからその後の事は、自身の死後については知らなかった。

どうやら自分は最後の仕事を無事にこなせていた様だと、大事な“荷”を引き継いでくれた男と共に、褒めてくれた尊敬する父と共に、その後も泣き続けた。


「まったく、バンフルは儂より良い騎士じゃのう」

「ほう、老将アストガル殿に褒められるとはあそこで泣いている騎士は余程良い仕事をしたのかな?」

「儂は助けるべき赤子を助けられませなんだ、騎士としては最高の仕事を…んん?お、おおお、ノード公!の、嫡子であったあの方であろうか」

「いや、初めてお会いするが私は祖父によく似ていると言われるよ、アストガル殿と縁があったのはその祖父で、恐らくその嫡子が私の父だ」

「成る程左様で、どうやらノードも安泰の様で何よりですわい」

「…そう言ってくれて嬉しい、祖父はよくファイル王女の側近となった貴殿を褒めノードの誇りだと言っておったが、きっとノードに良い思い出は無いだろうとも言っておったのでな」

「その様な…確かにノードの騎士として戦っておった時代に妻も子も戦友達も失いましたが、それはノード公のせいではありますまい」


共に昔を懐かしむような遠い目の二人は、若き騎士達の姿を肴にしばし昔話に花を咲かせる。

それは聞いた事の無い祖父の若き日の話であったり、ノードの騎士が去った後の港町ノードでの出来事であったり、そんなありふれた日常の思い出が涙が出る程に楽しく興味深く、ノード公とノードの騎士の話題は尽きる事が無かった。



「ああ、グノッサリオさん、それにベルニオンさんもこちらに」

「ふむ、記憶が正しければお初にお目にかかると思うが、もし記憶違いであれば申し訳ない」

「いえいきなりですみませんでした、私はアンデントと申します以後お見知りおきを」

「丁寧なご挨拶をありがとうございます、私達の紹介は必要無い様ですね、しかしアンデント様ですか…もしや」

「やはり以前にどこかで会っていただろうか、ベルニオンと違って私は人の顔と名を覚えるのが苦手でしてな」

「確かにグノッサリオ様にはもう少し気を配って頂きたいところではありますが。その名はデルゲント家の方ではありませんか」

「光栄ですベルニオンさん、当家のバーレットが生前お世話になっておりました」


生前も何も、自分達も同じ様に還っているんだがなぁと近衛の二人は思う。

言葉使いこそ丁寧で貴族然としているが、その如何にも文官といった雰囲気は自らも兵を率いて戦場に立ったバーレットとは異なり、顔立ちも似ておらず、何よりちょっとヌケて…おっとりとしているしゃべりは説明されなければかの名将の縁者とは思わないだろう。

だがその常にニコニコとして人懐っこそうな人柄は、厳しい顔を見せる事の多かったバーレットより人との距離を縮めるのは速そうである。


「それでグノッサリオさんベルニオンさん、早速なんですが耳寄りなお話しがありまして」

「ふむ、我等に?一体どの様な話かな」

「ファルタ王と共に王都からやって来た同僚がこの砦に素晴らしい商談を持って来ていまして、ただ商談相手の地位や仕事の規模が中程度の為より上位の者達に睨まれているそうで…」

「商談ですか?それはつまり王都ズィルドヒルとこの砦との間での商談という事でしょうか、しかしそれなら私達に出番など…」

「今このスホータムはとにかく人材と物流を欲しています、ですが商業基盤も報酬も十分とは言えません、将来性を考えれば恩を売っておきたいが今は利益の薄いこの取引の話を、大商会などが独占的に保留状態でキープしているのです、それで話が進まない」

「ではその話が進む様に我らがファイル様を通じてファルタ王に早期解決を望めば良いのかな?勿論構わぬがそれならばファヴァル様を通じて…」

「例え薄利でもこの公国の為に商売をしたい、この地に移住しても構わないと申し出ている者達がいるのです、王都のベルニオン商会とランザーク鍛冶工房です」


共に家を離れて既に20年以上の時が経過している、その間手紙を送った事は何度かあったがその便りも途絶えて久しい実家の名に二人は驚いた。

家業を捨て飛び出して行った商人の子と鍛冶屋の子が最後に辿り着いた地で、成功するかも分からない商売を一から始める覚悟でやって来ると言うのである。

だが国境を越え他国への移住となる為に正式な国の許可が必要になる、そこを発言力の強い大商会に押さえられてしまっていて上手く行っていないらしい。

必要なのは国との繋がり、大商会を飛び越して直接国と交渉出来るだけの。


二人はファイルとファヴァルに申し出て、ファルタとの交渉の席を得た。

この地での商売はきっと苦労の連続となるであろう、それでもやると手を挙げてくれた実家に、放蕩息子達に出来る最後で最高の恩返しをする為に。

“聖女ファイルと公王ファヴァルの信任厚い騎士”からの推薦を受け取ったファルタは、王国から公国への支援の一環として商人と職人の派遣移住を決定、その対象はギルドを通さず自ら指名した。


ベルニオン商会は後に“森の宝石”と“森林馬”の独占交易権を得て急成長、世界にその名を知られる大商会へと成長する事になる。

ランザーク鍛冶工房は後にメイヤーナ式の金属加工技術とガサルザン式の金属精錬技術を得、世に質の高い名品を送り出す事になる。



聖女に願い招かれ、創られた体を得た水のベリューク達の多くは生前自分が多くの時を過ごした場所へと戻って来ていた。

ある者は聖堂へと続く大階段へ、ある者は監視台へ、ある者は調理場へ、ある者は鍛冶場へ。

そしてこの男は自室へと戻って来ていた、岩を削り造られた小さいながら整えられたその空間に、男にはどうしてもやり残した事があったからだ。

だがその場所は綺麗に清掃され家具も真新しく、最後に見た記憶とは大きく異なっていた。

それもそうだろう、あれから長い時間が経過し既に部屋主も変わっているのだから、そう落胆しかけた男の目に留まったのは奥のテーブルに被せられたこの部屋に似つかわしくない精緻な模様の布と、その上に飾られた馬のぬいぐるみ。

それは男が妻の為に用意していた王都の美しい布、娘の為に用意していた柔らかく手触りの良いぬいぐるみ。


「おかえりなさい父さん、まさかこの台詞を三回も言う事になるなんて」


振り返った男、ソルクスの目には妻に贈る予定であったドレスを、今冷静になって思えばこんな田舎でいつこんなにも立派な物を身に付ける機会があるのかと思う様な美しいドレスを身に纏った、成長した娘の姿があった。

そういえば今日はこの砦で公王の戴冠式が行われていたのだったか。


「あ、そうそうこれでしょ?このドレス、丁度良かったから借りてるね、母さんに似て美人に育ったから似合ってるでしょ?」


そんなの当たり前だろうと思うが、そんな事恥ずかしくて言えやしないではないか。


「それから、そうそうその布はテーブルクロスにさせてもらった、あと食器類は一部を残して砦の皆用にしちゃったけどありがたがられてるから許してね」


行商人から購入した木皿や石皿とは質が全く異なる金属製の食器は妻の憧れだったのだが、そうか、ありがたがられてるならいいだろう。


「あと、ありがと。それね、それ。ふかふかでかわいい」


一番届けたかった物はちゃんと娘の手に届いて、大事にされていた。


「あ、後はこの部屋!ここ、使わせて貰ってる。私と、あ、私結婚したよ、お隣の家の、覚えてるかな…」


そうか、トゥリスはあの少年と結婚したのか、そうか、それは良かった、良かった。


「後は、後は…」

「ん、どうしたんだいトゥリス、部屋に誰か…お義父さん!?」


「誰がお義父さんだ!俺はまだお前を娘の夫とは…!」



多くの水のベリューク達が砦の各所で思い思いに過ごす中、いち早くファイルの元へと戻って来た者も居た。

ベリュークの近衛兵の鎧を身に纏ったその女性はファイルの前で跪くと、申し訳無さそうに終わりを願った。


「ファイル様、こうして私達をお呼びになったのはきっと何か理由があるのかと思います、皆もこの機会を喜び私も旧知の友たちと話し改めて別れを告げる事が出来ました、感謝しております。ですがそろそろ還りたく思います」

「まあ、貴女がそう望むのであれば無理に引き留める事は出来ませんが、本当にもう良いのですか?」

「はい…私の生家は王都で両親や兄弟も皆王都におりましたが、帝国を経て今は皆、共に空に居ります」

「そうでしたか…。この度は私の願いに応じてその姿を見せてくれた事、嬉しく思います」

「私も、あの元気なお子様の立派になられた姿を見れて嬉しかったです、どうかご壮健で、ファヴァル様」


記憶に無い、見ず知らずの近衛兵の言葉に何と返せば良いのか分からず、けれども自分が愛されていた事をしっかりと感じたファヴァルは無言でその手を取り、震える水面にキスをした。


「お還りなさいワールカ、王都の巡視官、武器庫の門番、貴女の的確な判断によって救われた命を忘れません」


その光は極めて弱く、間近で無かったら気付けなかっただろう、だが見送るファヴァル達には確かに空へと還り行く魂の輝きが見えた。

これまで見る事が叶わなかったその輝きは、霧を纏い淡く筋を引いて空を目指し、やがて解れて消えた。

どれだけ空を見ていただろうか、ファヴァルの足元には濡れた地面だけが残り、その輝きを見送った多くの者が未だ空へと聖女の祈りを捧げていた。



多くの者達がそれぞれに再会を喜び、別れを惜しみ、目の前の奇跡に祈りを捧げる中、ファイルの許には新たな来訪者があった。

先頭のビューネとは既に知己を得ているが、続くフレージュとショアナはまだその名しか知らない。

だがいずれも芯の強さを感じる凛とした佇まいで、折角こうして会えたのにすぐに別れを告げなくてはならないのが残念に思えた。


「ファイル様、お時間をよろしいでしょうか」

「ええ勿論です、紹介して下さるのでしょう?」

「はい、二人の紹介とそれからお願いもございます」


横に下がったビューネに目で促され進み出た騎士と兵士、そのうち弓兵のショアナは攻略戦の直後に見かけた事があり、その活躍も聞き及んでいた。

しかしケルストウから来た騎士のフレージュは初見であり、しっかりと挨拶をして今後のベリュークの事をお願いしようと思っていたのだが。


「私などには勿体ないお言葉です、公国の騎士として全力を尽くしたいと思います。それで、その…」

「お願いがあると言うのはフレージュですか?」

「はい、ファイル様はこうして空へ還った人々を呼び戻されていますが、この砦で亡くなった者は全て呼び戻せるのでしょうか、私の姉メリージュもこの砦で最期を迎えたのですが…」


自分の魂の輝きを全て使ってでも皆の願いを叶えたいと思っていたし、ファイルにはそれが可能だと思っていた。

だが叶えられない願いもあった、そしてそれを告げるにはとても勇気がいる。


「貴女のお姉さんは当時のメイヤーナ軍に居たのですね、これは決して敵だったからという訳では無いのです、ですが私にはその願いを叶える事は出来ません」

「ファイル様、メリージュの魂は確かにこの砦に在りました、それもつい最近までずっとです、私は彼女と話もしました、それでも無理ですか」

「ごめんなさいフレージュ、ショアナ。私のこの力は私自身の想像の力、想像の及ぶ範囲でしか願いを叶えられません…メリージュさんの声も容姿も分からない私では力になれないわ」


唇を噛みしめたのはただただ悔しさから、ついさっきまで長すぎて持て余す程に強い力だと思っていたのに、なんて無力なのだろうかと。

落胆されるのは辛いし怖い、ファイルは多くの人に笑顔を届けたいと思ったが全てが上手く行く訳では無い事はこの14年で嫌という程に知っている。


…だから、この明るく強い三人の女性が公国に残りファヴァルの側に居てくれる事がとても心強いと思った、きっと心配事などファヴァルごと蹴り飛ばしてくれるだろうから。


「な、だから言っただろうフレージュ、ファイル様なら出来るなら最初からやっているって」

「やっぱりダメかぁ、ま言わずにもしかしたらあの時って後悔するより聞いちまってスッキリしただろ、な?」

「本当にもう、これでも一応すごく勇気を出して聞いたんですからね?もう少し余韻と言うか…あ、ファイル様ごめんなさい無理を言ってしまって、大丈夫です、本当に会えたらいいなとは思ってましたけど、お別れはもうずっと昔に済ませていたんですから、これでも私、武勇の国メイヤーナの生まれなんですよ?」


勇気を出したのは相手も同じだったし、何より勇気を貰ったのは自分の方であった。

女性ばかりの楽し気な話し声につられる様にフレオリッタとアローネも加わり、ファイルを囲む華やかな宴はまだもう少しだけ続く、あともう少しだけ…



少し離れた場所からファイル達女性陣の楽し気な会話や、他の様々な邂逅を眺め満足そうに頷いていたバーレットにも来客があった。

彼の孫と、面識のあるファヴァルの副官達である。


「グノッサリオとベルニオンを巻き込んで何やらやっていた様だが?」

「ちょっとした商談ですよ、どうやら上手く行きそうでホッとしています」

「それは何よりだな、それで砦の改修の方は上手く行ってるのかね」

「そちらも順調に、と言わないと怒られそうですが実はちょっと困ってます」

「問題点は」

「防砦として無駄無く造られた結果、公都公城としては長すぎる通路の整備や客室用の部屋を増改築しようにも場所が無く構造上の耐久に不安があります」

「なるほど確かに、これ以上に大きく削れる場所が残されておらぬか。デノン君ブノンズ君、公城内の兵の配置予定数は」

「おわ、はい?いやどうなんすかね、すみません最近は村の方ばっかりで…」

「公国の人口なんてすぐに増えるもんじゃありやせんし、当面は村とか街道の整備を優先するらしいんで、多くても50人かそこらじゃないでやしょか」

「なるほど、防砦としての役目も終えたと言えるであろうし、通路についてはそもそも迷路のように入り組んでいるのを繋げられそうな場所同士で壁に穴を開け繋げてしまってはどうか、それと各所にある守備兵の待機場所と待ち伏せ用の兵の伏せ場ももう要らぬであろう?」

「確かにその通りですね!それでは新たな直通ルートを考えて…」


「なあブノンズさん、あいつら祖父と孫の間柄なんだよな、それも物凄く久しぶりに再会した」

「アンデントさんはバーレットさんの事を小さい頃にたまに会った怖そうだけど尊敬するおじさん、て言ってやしたね」

「それでアレかぁ?もうちょっと何かあんだろ普通、おお孫よ立派になったなぁとかさ」

「見る限り姿は似てやせんが似た者同士って奴ですし、つまり二人揃って普通じゃないって事でやしょう」


「おいデノン君、殿下から配置予定の兵の数の詳細を、ああ暫定で良いからその数を聞いて来なさい、ブノンズ君は砦内の見取り図を持って来てくれ、すぐに必要事項を加筆修正しておこう」


慌てて散る現役の副官達、やる気に満ちた既に旅立ったはずの副官はこの貴重な時間を無駄にするまいと頭を使う。

アンデントは内心少しだけ残念であったが、その再会の喜びよりも尊敬する祖父のその尊敬すべき仕事ぶりを邪魔してはいけないと思った。

話に聞くバーレット・デルゲントの手腕はどれもそんなバカなと思う様な内容ばかりであったが、なるほど全て事実だったのだ、頑張っているつもりだが自分などまだまだ足元にも及ばない。

その現実を目の当たりにし、最高の手本を見せられてはより一層努力するしかないと奮起する新たな軍議室の主。

結局デルゲントの呪縛から逃れる事は出来ずに、デノンとブノンズは文句を言いながら方々を走り回る事になる、その最後の時まで。

とても満足そうに頷いたバーレットは後事を副官達と孫に託した。


「引き続き何かあればデノン君とブノンズ君を使いなさい、アレは使える」

「それは、褒めてらっしゃるんですか?」

「ああ、そうだな。其方も今のまま忠勤に励む様に、そのままデルゲントに相応しくあれ」


キラキラと目を輝かせる孫に背を向け、バーレットは足早に主の許へと向かうのだった。



「その風の様な剣技、戦って見たかったな」

「腕に自信があるみたいだけど、その細腕と足では私に敵わないと思いますよ」

「うわ言ってくれるじゃない!王妃にも忖度無し!?」

「忖度も何も、私だって王女の娘ですが?」


良い笑顔で火花を散らすフレオリッタとアローネだが止める者は居ない、いやむしろ私も私もと名乗りを上げそうな武闘派揃いの女子会である。

つい先程まではファイルがアローネに攻略戦時の出来事を謝り、お願いだから止めてくれと互いに譲らぬ泥沼な頭の下げ合いを行っていたのだが。

そんな愉快で剣呑な雰囲気に割って入ったのはフレオリッタの夫ファルタ、その手に持つ器は虹彩を放っている。


「ほらほらそんなに怖い顔をしていたら可愛い顔が台無しだよ」

「怖くないいつでも可愛いから私!」

「これだから貴族や王族の娘は」

「あんただって王女の娘って言ってたじゃないの!」

「あらやだ私義理の娘だったわ」

「なんって都合の良い!」


再び睨み合いを始めるとても可愛い二人にやれやれとばかりに溜め息を付き、その視界を遮る様に器を差し出せば流石にその虹彩の存在感は無視出来なかった。


「嘘、何これ水が虹色に光ってる?」

「どうやら腕輪が本来の彩を取り戻した様だよ、まだ表面はボロボロみたいだけれどね」


取り出した腕輪は全くの別物の様な輝きを放ち、滴る水滴すらも美しく感じる。

感動とこれまでの扱いへの反省をしながら身に付ければ、再び虹色の巨大魚の声が聞こえた。


  “ 反省の気持ちがとても良く伝わって来ますよ もうあんな悲しい色になってしまう事は無いわね ”


 “ う ごめんヒュライラー 今後はちゃんとするから ”


  “ お願いね さてと 西の眩いお嬢さんは凄い光ね これだけの輝きを見たのは初めてだわ ”


 “ えええ 湖からでも見えるの 今目の前にいるけど全然光ってなんかいないよ ”


  “ 魂の光は見るものでは無く感じ取るものよ 本当に 凄い光 こんな光を見られるなんて ”


 “ へー ヒュライラーとファイルさん どっちが凄い? ”


  “ 私など足下にも及ばない程に ”


 “ …は? ”


  “ この光は魂を焦がして燃え上がる光 私はずっとずっとこの世界を眺めていたいから 真似出来ないわ きっと今この瞬間 世界中のお友達がこの光を見てる 目に焼き付けてるでしょう ”


フレオリッタのすぐ側で優しく笑うファイルは、白い事を除けば人である。

ソウルキーパーである事はとても普通とは言えないが、それでも人の形をしていて、人としての記憶を持っていて、今も一緒になって笑って話して同じ時を過ごしている。

そんなファイルを世界中のヒュライラーの友達、偉大なる者達が見ていると言うのはどうにも実感が湧かない。


  “ 私の技はね その体を創り出すにも 維持するにも そこに魂を呼び寄せるにも 大きな力が必要になります ひとつの命がそこに在る為に必要な全てを肩代わりしているのですから ”


 “ それじゃあファイルさんは今 ”


  “ ええ お嬢さんが一人で 数百の命を支えている どれ程の想いがそれを可能にしているのか 私には想像も付かないわ ”


(ああこの人は本当に聖女なんだ)

フレオリッタはこの砦にやって来てからの数日、当たり前の様にそこに居て生活をしている白き聖女に、驚きこそすれ心中にあったのは感激と親近感だった。

ファヴァルとのやり取りは何処にでも居そうな母子のそれであったし、何より砦の者達が普通に接していたのが大きい。

だが今初めて畏怖の感情を抱いた、それと同時に無理を言ってでもこの戴冠式に付いて来た自分を褒めちぎりたい気分でいっぱいになった、涙が止まらぬ程に。



そして、近付く足音は終わりの時間を迎えようとしていた。


「ファイル様、恐らくそろそろ」

「…バーレットは、本当にバーレットね」

「勿体ないお言葉です」

「引き継ぎは如何ですか」

「万事抜かりなく、後はアンデントやデノン君達が上手くやってくれるかと」

「とても評価が高いのね」

「彼等なら“ベリュークの騎士”を名乗っても良いでしょう」


それはバーレットが“姫付きの臣”と呼ばれたのと同じくらい大事にしていた呼び名である。

どうやらファヴァルの側近達は先達のベリューク騎士からその後継として認められた様だ。


「アローネはどうかしら」

「万事抜かりなく!砦の…あ、公城の防衛計画と人員配置、兵の訓練等についてはビューネに全て託しました、フレージュも良い仕事をしてくれると思います」

「仲良くなるのが早いわね…」

「貴族然とした奴らじゃなければ!」

「もう、それは大声で言う事じゃないですよ」

「いいじゃないですか、どうせもう時間だからバーレットが来たんでしょう?だったら言いたい事は言っておかないと、お高くとまったお貴族様なんて大っ嫌いだー!」


恐らく普通であれば公城でそんな事を叫んだ日には処罰ものなのだろうが、何と言ってもここはベリュークの公城なのである。

それはつまり愉快な公城であって“普通”の定義が他とは異なり、罰を下すファヴァルを筆頭に国のトップは軒並み愉快な者達で、もしこの発言でアローネを罰するなら公国のほとんどの人間が同罪で罰せられる事になる。


「いいぞアローネ、僕もお高くとまったお貴族様なんて大っ嫌いだぞー!」


ベリュークの旧トップであったドノヴァーもこう言っているのだから間違い無いだろう。

ファヴァルは追従しようとして流石に口を抑えられた、現役の生きてる公王が言うには少々問題があるからだが、今現在に限って言えばこの国に該当する様な貴族は居ないだろう。


そんな自由な雰囲気と共に帰って来たファヴァル達の腕には様々な物が乗っかっていたが、いずれも使い古された思い出の品の様だ、どうやらドノヴァーと砦内へ行っていたらしい。

聖堂にある家族の寝室からは既にファイルの確認の下、ファヴァルとドノヴァーの物は新たなファヴァルの居室へと移動され、姉ファノアの遺骸や関連する品も運び出され埋葬されていたが、ファイルの品だけはそのままになっていたのだ。

死してるとはいえファイルは今なおここに在り、いつか別れを告げられるその日まで彼女の部屋として使用される予定であったが、今日、訪れないと思っていたその日がやって来た事を果たして家族はどう思っているのか、その心中は計り知れない。

だが別れが訪れたならば家族は共に在るべきなのだ、城外の埋葬地へ、父ドノヴァーと姉ファノアが騎士達と眠るその場所に、母も。


「すまないが僕はこの砦からは出られないらしいからね、これを“僕の所”へ持って行ってくれ」

「はい、父さんの隣に…あ、それだと姉さんが寂しがっちゃうから姉さんを挟んでその隣に」

「それがいいわね、そうしてちょうだい」

「あれ、そうなると僕の場所は…」

「こらファヴァル、貴方の事はまだ考えなくていいのよ」

「そうですよ、それにファヴァル?貴方は私の隣でしょう?」


優しく、でもしっかりとファヴァルの手を握るマインサには決意が見て取れた。

夢見た物語の世界に足を踏み入れた令嬢は、しかし夢の続きを読むのではなく自らの手で書き記す事にしたのだ。

女王として得た短いながらも確かな知識と経験を活かし、彼女は望んだ未来を歩み始める。


「貴女が居れば安心ですねマインサ、どうかベリュークを導く聖女となって下さい」

「私が聖女などおこがましいにも程があります、私とファイル様では何もかもが…」

「人は私を聖女だと呼んだけど、本来聖女に定義などありはしません、そもそもこの言葉自体が曖昧なもの、つまり…」

「つまり…?」

「言ったもの勝ちです」


聖女とは思えぬ悪戯顔に、皆笑うしかなかった。




誰かが号令を掛けていたのかもしれないし、自然と終わりの時間を感じ取ったのかもしれない。

気付けば各所へと散っていた水のベリューク達が再び外郭へと集合していた。

その数およそ600人、500人程の王国第四軍とそれを支えた職人や使用人達、まるで生きている様なその顔も姿も雰囲気も、全てファイルの魂と思い出によって形作られている。

それが、溶けようとしていた。


「皆様、本日は我が子ファヴァルの為にお集まりいただきありがとうございました、どうかこの国をよろしくお願い致します」


そういえば今日は戴冠式の為に来ていたのだったと、改めて思い出した者も居ただろう。

それくらいにその後に起こった事が衝撃的であり非現実的過ぎただけなのだが。


「ファルタ、エキル様、エグレン様、マインサ、この日を用意してくれてありがとう」


ファヴァルにベリュークの名を取り戻させラグン地方を公国化するなどというとんでもない計画を実行した首謀者達である。

だがその結末はどうやら当初の計画からは想定外の、本人たちも予想だにしなかった場所へと辿り着いた様だ、想定外で想定以上の場所へと。


「招待に応じてくれたベリュークの皆さん、それぞれの思い出と共に、今日この日の事も私は忘れません」


聖女がそう言っている、ならば間違い無い、間違いなど有ろうはずがない。

彼等彼女等の記憶は、聖女の伝承と公国の歴史と共に語り継がれるだろう、このラグンの空が続く限り。


「それからファヴァル、私のファヴァル…」


涙ぐみ声に詰まるファイルに夫が駆け寄る、白き聖女と水の英雄、滲み始めた白と溶け始めた透明は混ざり合わずともしっかりと抱き締め合い一つになった。


「ファヴァル、マインサさんを幸せにしなさい、これは父さんとの約束だ」

「大丈夫、絶対そうする…」

「ファヴァル、マインサさんと幸せになりなさい、これは母さんとの約束ですよ」

「大丈夫、絶対そうなる…」


多くの魂が証人として二人を見守る中、新たな聖女と新たな英雄は手を重ねて永遠を確かめ合い、父と母に誓う。


そして…。



「我等は行きます、殿下、ご命令を」


既に泣き崩れ人の形を失いつつある聖女と英雄に代わり、旅立つベリュークへの号令を求められたファヴァルは言葉を紡ごうとして、しかしバーレット達の優しい笑顔に崩れ落ちた。

そんな公王には聞こえぬ小さな声で「殿下はそれで良いのです」と呟いた名臣は、彼の旧主の子、涙還王へと向き直る。


「国王陛下、どうか我等に最後のご命令を」


頷いた王は若き公王の頭を軽く撫でると、きっとファヴァルが言いたかったであろう“カッコイイ台詞”を贈った。


「シーサック国王ファドライアが子、ファルタが命ずる、王国第四軍はこれよりラグンの空へと進軍し、永久に彼の地を守護せよ!」


おおおぉぉ!と滲む歓声を残し、彼等は旅立った。

次々と体は形を失い、霧を纏う淡い光が空へと昇ってゆく。

寄り集まった数百の輝きは光りの柱となり、スホータムと空とを繋いだ。


この奇跡の様な光景を、詩人はベリュークの光が世界の空を支えていると表現し、ベリュークが滅びれば空が落ちるという言葉を生んだ。

実際、遠く離れた地からも観測されたこの奇跡の光は伝説として人々の記憶に残り、ベリュークを精神的不可侵の地として永久に守護する事になる。



その奇跡を真下で見上げるファヴァル達はただただ圧倒され、誰も言葉を発さずその様子に魅入っていたが、ふいに声が聞こえた気がした。

声が降って来たと表現する方が正しいかもしれない。

それは聖女の祈りであり、聖女の願いであり、聖女と共にある者達をも巻き込んだ希望の詩。

それぞれが何でもない日常の中で起こったちょっとした幸せな出来事を歌っただけの、どこにでもある平和な歌。

空を震わせる希望のリフレインはやがて地上で見送る者達をも惹き付け、歌詞など分からずともルルルラララの大合唱を生む。

1000を超える魂の声は希望に満ち溢れ、響く魂歌はラグンの地に明日を届けるだろう。


そして声の海を泳ぐように光る柱と共に飛び、空への旅を見守る影があった。

遠く散った雲間から現れた黒雲の竜と飛竜達の群れである。

まるで導く様に、戯れる様に光と共に飛び空高く舞い上がってゆく。


その悠々と飛ぶ姿は見惚れる程に美しく、見上げる空はどこまでも続いている。

それはファイルの愛したラグンの青い空であった。



陽光、それは待ち望んだ終焉、待ち侘びた日常、待ち焦がれた地上の光。

降り注ぐ優しさは生きる糧となる、降り注ぐ悲しみを討ち払う活力を与える、そして最後の輝きと共に再び空へと還るのだ。


また明日も、何でもない日常が待っている…



「ねえ!せっかく気持ちよく飛んでたのに!私の黒雲返してよー!!」




ソウルディア戦記 ~魂歌の響く大地~


『砦の魔女』 完


さて、と。

終幕です、お待たせしました、そしてありがとうございました。

果たして望む様な未来は叶えられましたでしょうか…?

少しでもお楽しみ頂けましたなら、読んだ時間を無駄では無かったと思って頂けましたなら幸いです。


ふわぁぁぁぁ終わったぁぁぁぁうおぉぉぉ~。


さて、と。

もし「ちっ言ってやりたい意見があるぜ」とか、「まあ30秒だけなら感想に時間割いてやるよ」等ございましたら、何でも頂けると今後の糧になります~よろしくお願いします。


---

そして以下、筆者のなが~いグダグダ後書きがありますのでご注意下さい!

(スルーしてもいいんじゃよ!)


と、言う訳で。

初期投稿からだいぶ長い休眠を経てじりじりゆっくりと書かせて頂きました。

まぁ流行り病さんのせいでリアルボロボロだったんよね…


今作ですが、原案が出来たのはもうだいぶ前になります、勿論その初案からは変更になった点も多々ありますが、最後の終わり方だけは最初から決まっていました、マインサとの結婚とファイルの帰還です。


そして今作を読んでて恐らく多分maybe、視点や場面がコロコロと変わって読みづらい、把握し辛い所があったかと思います、力量不足で申し訳ない。

が、それには私なりのこだわりがありました。

それは、本作が徹底して群像劇であったという点です。


あくまでも私の好みの問題なのですが…

・無双やチートな主人公が好みでは無い

・便利すぎる魔法や設定が好みでは無い

・少年少女が長い訓練と経験を積んだ熟練者をあっさり凌駕する表現が好みでは無い

・性格歪んだ悪意に満ちたキャラが沢山登場するドロドロな内容が好みでは無い

・しっかりと登場人物達のその後が知りたい(行方不明的な演出は別

等がありまして…。


特に本作を書き始めた頃は流行と上記の好みが相反し、なんだかなぁと思っていたのでだったら自分で好きなの作っちゃえばいいじゃんと、そんな動機で始めた訳なのですよ、よよよよよ。

あ、ゴブリンスレ○ヤーとか大好こでした。


なので、登場キャラはそれぞれにしっかりとした背景や活躍、そして後日談があり、

その比重は主人公ファヴァルと大きな差はありません。

ファヴァルは一人では無双出来る様なスペックはありませんし、また物語の進行に必ずしもファヴァルが絡む訳でもありません、平行してそれぞれのキャラ達が行動し、全員で紡ぐ物語、そんな物が作りたかったみたいですよ?

ほら、シミュレーション系ゲームで1ユニットめっちゃ強いキャラ居ても一人では味方本陣防衛と敵本陣攻撃を同時に行えず味方ユニットと役割分担しないと勝てない的な。


本作でチート級の能力を持っているのはファイルとファレーザくらいですが、

ファレーザは数百年生きた黒雲の竜の知識や経験値を受け継いでいる竜で、

ファイルは高い素養+鬱屈とした成長期(の反動)+強い憧憬による高成長からのソウルキーパー化というコンボの結果、化け物になりました、という設定です。


その他のキャラの中では熟練のエグレンやバーレットなんかが特に強者感ありましたね。


さてさて、取り留めもなく語りましたが、砦の魔女はここまでとなります。

この後は数日かけて初期投稿(前半の幕)が文章密度が高く読みづらかったので適宜改行だけ入れる修正を行って、この作品の更新は終わりです。


その後は…ソウルディアの他の物語を始められればいいなとは思うもののはてさて需要と気力があるかどうか。


ちなみにですがソウルディア世界の大きなお話は以下の通りです。


・七王国暦276年~涙環王ファルタによる亡国と流転と復興の物語

・遥か昔、若き飛竜の王女との友情を得て初めて世界一周と世界地図の作成を行った男の物語

・帝国戦争の少し前、因縁の敵との和平の為に戦い語った北の姫君の物語

・七王国暦の出来る少し前、エルドマの民との交流を描いたフォーセルの娘と虹色の巨大魚の物語

・七王国暦の出来るもう少し前、部族の生きる場所を探し火山の主を訪ねた鎖の乙女の物語

・帝国戦争の始まりの頃、救援を信じ田舎城を守ったとある少女騎士の物語

・帝国戦争の終わりの頃、救援に行けなかった事、生き残ってしまった事を悔いる領主や旧第二騎士団員達の物語

・霧の谷に住む最後の巨人と行商人の女の物語

・帝国戦争の後、廃砦を守り続ける砦の魔女とかの地を訪ねる少年騎士の物語(砦の魔女)


予定は未定、さればまたのご縁がございましたなら…


2023/07/27 槍の人。


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