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ソウルディア戦記 ~魂歌の響く大地~(砦の魔女編)  作者: 槍の人。


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第49幕:「日常」


第49幕:「日常」


◇新生王国暦5年 陽光季99日



先程まで自力で起き上がる事も出来ていなかったその男は、上体を起こして痛みに顔を引き攣らせながらも笑っていた。

真っ直ぐにこちらを見つめる黒に近い瞳の色はファイルと同じでシーサックの民に多く見られるもので特徴があるとは言えないが、その血と汗に汚れた艶の無いプラチナブロンドには見覚えがあった。

起き上がった今ならばよく見えるそれは、戦いが終わった後にドノヴァーが兜を外した時の様子ととてもよく似ているのだ。

そして先程まで「母」という単語に感じていた嫌悪感とそれによって湧き上がった雷光は、不思議と発現しなかった。

分からない、今日は本当に分からない事だらけだ、そんな気持ちも怒りでは無く疲れとして自分にのしかかり、結果的にファイルは母という発言をスルーして石の王座により深く、背もたれに体を預けた。


「…ババーレット、何か助言はありますすか」

「バーレッ…トと致しましては助言よりも感謝を述べたいのですが」

「いつもの事なので必要ありりません。人物評は」

「やり取りを見る限り客人の長はヴァル、言葉や身のこなし、年齢の低さとそれに見合わぬ他の者の扱いなどから想定されるのは国外の、恐らくはメイヤーナの貴族、それも序列の上位にある家系でしょう。ああ…」

「ああ?」

「なるほどヴァル坊、ヴァル、ファヴァル・レギエンか。他の男性2名も村人などでは無く騎士でしょう腕と頭が良すぎる、ファレーザはその名にあやかる傭兵と言った所でしょうか、アローネ同様見た目の年齢以上の実力の持ち主かと」


ファレーザについては流石に異質過ぎて納得できそうな落としどころを探した形だが、寝起きの様な頭でこれだけスルスルと言葉が出て来る辺りはやはりバーレットと言ったところか。

ファヴァル達の自己紹介を聞き、その内容を額面通りに受け止めていた訳では無かったが、ベリューク騎士としてのバーレットもそう言うのであれば口から出まかせの嘘とも言い切れない。

困った事にファイルの頭の中でもまるで自分が2人いるかの様に、成長したファヴァルが居るはずなど無いという至極当然の答えと、ファヴァルが帰って来たと人目を気にせず泣きたい感情がぶつかっている。

本当に今日の自分はどうしてしまったのだろうかと、とても素朴な疑問に答えが見えない。


七王国暦289年、いやあのデノンの話の通りならば新生王国暦5年、エキルの軍に敗れてから十数年、もしファヴァルがあの日を越え生きていたのならその年頃は…

改めてまじまじとその男を見る、年の頃は十代後半、目はシーサックの民の色、髪はメイヤーナの民に多い金色だがそれよりも色味が薄く淡い色合いはドノヴァーにそっくりだ。

私の知らない出会うより以前のドノヴァーはこんな容姿だったかもしれない、頭の中で繰り返し思い描いた彼の幼少期、子供時代、そしてサイズの合わない武具で懸命に戦う若き姿。

だがそんなはずは無い、しかし、そうだ…



「…アローネ、覚えていますすか、この砦に来たばかりりの頃を」


歌をその身に受け、そしてファヴァルの回復を見て喜びを噛み締めていたアローネは突然振られた自分への声掛けにも動じる事は無かった。

ふとファイルに声を掛けられる、呼び止められる事などこの砦の日常の一部だったのだから。


「当たり前です、入れ替わりで王都に向かったエランゲル将軍達がしっかりと整えていてくれたけど、如何にも武骨で如何にも実用的で」

「アストガルが自分には居心地がいいけけど姫様の住む様な場所じゃなないって憤慨して」

「バーレット様とバントレオ様は目を輝かせて改善改良を繰り返して」

「ドノヴァーは何故かか岩山の中が、洞窟の中が安心すするって活き活きしてて」

「グノッサリオもベルニオンもルダンもすぐに何処かへ行ってしまって」

「…そしてアローネネ、貴女は私と一緒に眠ってくくれたわ」


その顔も、その声も、あの頃の様に優しく穏やかで、思い出そうと思わずとも浮かんでくる思い出達はとても色鮮やかで。

取り戻したい日常とはつまり、こういう事なのだ。


「ねねえアローネ、あの時寝物語に聞かせてくれた…」

「ドノヴァー様が最初にくれたのは剣でした、その次が服、靴、そして言葉。やっぱり何回思い出しても順番間違ってますよね?」

「でも、それががとてもドノヴァーららしかったのでしょう?」

「はい。底抜けに明るく前向きで、でもちょっと不器用で、少し困ったように眉を下げながら笑うのがあの人でした」

「でもそそんな表情からは想像出来ないくらいに勇敢でで、英雄と呼ばれる程に多くの偉業を成し遂げげた」

「どう見ても英雄とか将軍って感じじゃなかったのは間違いないですね、でも成し遂げた偉業で一番は英雄になった事でも将軍になった事でもなくて、王女様と結婚した事だったと思います」


キョトンとするファイルが可愛いのは今も昔も変わらないなと思った。

こんな時間が永遠に続けばいいと願ってしまったファイルの気持ちが、とても良く分かった。

でも自分達の時間はもう終わっているのだ、だから想いと願いを託してここを去らねばならない。

幸いにも託すべき相手はここに居る、ファヴァルになら自分もファイルも、砦の皆も喜んでその先を託すだろう。

そうだ、誰かさんが前に良い事を言ってた気がする、そう、私達の紡いだベリュークの糸はそう簡単には切れないんだから。


「でもアロローネ、とても今更な話なのだけれれど、貴女は私がドノヴァーと結婚ししてしまって良かったのかしら」

「本当に今更ですね…勿論良かったに決まってるじゃないですか、ドノヴァー様は私にとって年の近い養父です」

「でも…」

「いいですか、もしファイルが恋敵だったらわざわざパーティの招待状なんて送りません、ファイルの為のドレス選びなんて手伝いません、不器用で一歩を踏み出せないでいたあの人の背中を押したりなんてしません」

「ほ、本当に信じていいでですか」


ここに居るのはファイル、私の大切な友達で家族のファイル、王女でも、聖女でも無い、一緒に笑って一緒に泣いて一緒に生きた女の子。

私の剣は自慢だけど鋭い、まるで銀で作られた縫い針の様に、その針孔にはベリュークの糸が結ばれている、後はファイルに見える様にこの糸で刺繍をするだけ。


「ファイルは家族が欲しかったんだよね」

「そうです」

「それは私も同じだったよ、幼い日に親に売られてずっと闘技場で育った私が欲しかったのも家族」

「…」

「でもね、闘技場には鞭や棍棒を持ったこわーい人達が居て、たまに優しくしてくれる人も居て家族が出来たと思ったらすぐに居なくなっちゃうの」

「…」

「だからずっと一緒に居てくれる人が欲しかった、ドノヴァー達はずっと一緒に居てくれた、誰も居なくならなかったし、そうならないように私が守らないといけないと思った」

「…」

「私のちゃんとした年齢は分からないけど、ファイルよりは上だと思う、だからドノヴァーが養父って事になってる私にとってファイルは養母っていう事にもなるんだけど…」

「それはは本当に形式上の事で、私は貴女ととは友達だと」

「私はね、ファイルみたいな妹が欲しいなって思ったの、それで私にとっての家族は血の繋がりでも関係性でも無くてずっと一緒に居られるって事だから、だからうだうだ言ってたドノヴァー様を引っ叩いて貴女の許へ送り出したの。どう?大正解だったでしょ?」


満面の笑みで胸を張るアローネは凛々しく美しく得意気で、好きな人の話題で盛り上がる気の置けない親友の様で、しっかり者の姉の様で。

まるでドノヴァーの様に眉を下げながら笑って泣くファイルの姿は、身に付けた美しいドレスが不釣り合いに思えてしまう程に1人の少女で、可愛い妹だった。


「…ありががとう、アローネ…お姉ちゃん?」


アローネの目が泳いでいるのも、口がむずむずと動いているのも、手を握ったり開いたりしているのも、仕方の無い事だろう。

彼女は一足先に取り戻すべき日常のその先へ行ってしまったのだから、思い出の続き、あったかもしれない未来へ。


「…それででね、お、あ、アローネ、寝物語に聞いいたお話のドノヴァーとルダンの思い出なのだけれどど」


引き続きお姉ちゃんと呼んでくれるかと思ったアローネはちょっとだけ落胆したものの、自身も何も感じないはずの体がむず痒く思えて安堵感もある。

そして可愛い妹が何を聞きたいかも把握した、とても大事な話だし、もう少しだけファイルと話を続けられると思ったら嬉しくてたまらなかった。


「あのルダンの話なんでどこまで信用出来るかとても怪しいですが、あいつが10歳になるより前からドノヴァー様と一緒だったのは本当だと思います」

「王都の北たの漁村の出身なのよよね」

「はい、でも聞きたいのはそこでは無いんですよね?」

「そう、ね」


床にペタリと座り込んだままこちらを見つめていたファヴァルと目が合った。

側頭部や肩の怪我はまだ痛々しいが血は完全に止まっている、重傷だった左手はデノンとブノンズが布を巻き付けて縛り上げた様だ。

アローネは無造作に手を伸ばすとクシャクシャと兜に押さえつけられて固まりかけの髪をかき回した、血の付いた部分は本当に固まってしまっていてイマイチ綺麗にならなかったがさっきよりはマシだろう。


「ご存知の通りその数年後には稼ぐ為に王都へ来て、16歳になる頃には2人揃って正式な剣闘士になっていたそうです、当時はまだ無名の、でもがむしゃらに挑み続けてその歳まで五体満足で勝ち残って」

「ルダンもああんな性格だけれど、ドノヴァーに負けず劣ららずの努力家だものね」

「あいつは…使う武器や戦い方に条件のある大きな剣闘大会では成績が振るわなかったらしいけど、何でもありの試合や傭兵としては凄かったらしいですね」

「“騎士としては無能、兵士としては凡庸、戦士としては有能”だだったかしら?バーレット」

「は、騎士としての責任感や道義は足枷でしかなく、兵士として従わねばならぬ立場は才能の無駄遣いであり、戦士や傭兵として個や仲間と肩を並べれば本領を発揮しましょう。…遊撃隊が最良で最大の譲歩でした」

「そのルダンの剣闘士時代、ドノヴァー様の容姿は同年代のルダンよりも幼く見え、共に居れば必ずと言っていい位ルダンの方が兄貴分と見られていたそうです。きっと、こんな雰囲気だったんじゃないでしょうか」


皆の視線を集めたファヴァルは成る程、今年16歳で成人を迎えていると知らない初見であればもっと低い年齢を予想するかもしれない。

その威厳と名望を備えた国の未来を担う大貴族、とは程遠く愛嬌といじり甲斐のある幼顔は、よく似た特徴と雰囲気を持つドノヴァーの若かりし頃として想像するに足るものであった。


グノッサリオもベルニオンもルダンも似ていると言った、アローネも似ていると思っている、その言葉を聞いてバーレットもそうであろうと総合的に見て判断した。

ならばファイルの心も確実に揺れ動いていると確信出来る。

ならばあと一押し、だがその一押しがアローネには思いつかないのだ、情に訴えるだけではまた失敗してしまう、もっと違う何か、ファイルを納得させ得るだけの何かが。



「仮に…、ですが…」


後ろから聞こえたバーレットの声は彼にしては珍しく歯切れが悪く、いつまで待っても続きが聞こえて来なかった。

続きを促す意味も込めて振り返ってみれば難しい表情のままもごもごと口を動かすバーレットが居た、本当に珍しい事だ。


「仮に…仮に…、そうだアローネがドノヴァー様やファイル様の下を離れるはずなど無いのだから、だから殿下が、殿下?あの男が、あそこに居るのがドノヴァー様であったならばあの様な言葉も仕草も表情も全てに納得が行く、だがあれはドノヴァー様では有り得ない、時間や人の成長が過去に戻る事など有り得はしない常に進むのは常識、つまり…」


意識して耳をそばだてて初めて聞き取れるかどうか、そんな呟きに答える者が居た、数歩の距離に居るファイルがやっと聞き取った言葉に遠くから答える者が。


「バーレットさんは本当に変わらないね、小さな頃も、お城に居た頃も、それにさっきの軍議室でもここでも、ちゃんと見えてるしずっと考えてる」

「まるで私を以前から知っている様な発言ですが、これまでお会いした記憶がありませんな」


「そう?ずっとお腹の中で聞いてたし、さっきも言ったよ。バーレットさんはいつも陛下陛下、王妃様王妃様、ファイル様ファイル様、殿下殿下って忙しそう」

「…それが私の生き甲斐ですので」


「そうだよね、じゃあ私の代わりに考えて、この面倒くさい状況を早めに片付ける方法を」

「ふむ、貴女に言われずともそのつもりですのでご心配なく」


互いに不敵な笑みを浮かべる2人は本来の調子を取り戻したと言わんばかりに饒舌になっていく。

そんなバーレットとファレーザのやり取りを聞き、内心焦っているのがファイルだ。

もし、仮に、万が一、あのファヴァルを名乗る男が本当にファヴァルであったとして、それは信じられない程に喜ばしい事だがそれでもメイヤーナの軍全てを信じる事と同義では無い。

早々に邪魔者をこの砦から追い出し平和な日常を取り戻す、もしそこに我が子も居るならそれ以上の幸せは無い。

メイヤーナにこの砦を譲るつもりは無いが、本当に我が子なら後を任せてもいい、それが互いに決定打の無い現状においてファイルが考えられ得る最新で最大限の譲歩だった。

だがその交渉において頼りにしていたバーレットは、魂をコチラ側に取り戻したはずなのに積極的な排除に動いてくれず、あのにっくきファレーザとはまるで魂が通じ合っているかの如く共鳴している。

どうしてこうも思うように行かないのか。


「バーレット、良い案は思いつつきましたか、あの者達をこの砦かから排除する為の案です」

「そうですな…大事な確認が一つ抜けていた様です」

「大事な、確認?」


「ファイル様はどうしてあの者達を排除したいと思われているのですか?」


そんなのは言わずとも当たり前の事では無いか、だって彼等はこの砦を攻め落としこの地を制圧する為に南下して来たメイヤーナ王国の軍なのだから。

忠臣バーレットからの思わぬ質問に答えようとして、しかし言い澱んだ。


どうして敵なのか?それはこの地の平和を乱す者達だからだ。

どうして敵なのか?それは最愛の息子と同じ名を名乗る不愉快な者が居るからだ。

どうして敵なのか?それは始祖と同じ名を名乗る不遜な者が居るからだ。

どうして敵なのか?それは…私の眠りを妨げる者達だからだ。


そのどれもが頭の中にある想いだが、どれも回答として相応しくない気がした。


確かに彼等はこの地の平和を乱している、だがその先には新たな平和の形を望んでいる、そこに思案の余地は無いのか。

確かに彼はファヴァルを名乗った、そして私を母と呼んだ、あの声に返すのはただ拒絶の光でいいのか。

確かに彼女はファレーザを名乗った、そしてズィードの娘だと言う、ならばその名の繋がりは私とズィードよりも強いかもしれない。

確かに私は眠りたいと思った、静かに深く全てを背負い1人で、だがアローネは一緒に笑いたいと言う。


「よもや気に入らないとか、思い通りにならないからなどという理由で敵対している訳ではありますまいな?」

「何を馬鹿なな…!そんななはずは、そんんな、はずではは無いけけれども、だだってて彼等は敵きで…この砦にこ攻撃を…!」

「思えば、彼等は村を焼いておりません、村人を殺しておりません、姿を現した時先手を打って矢を放ったのはこちらだったとか、今もかの軍は攻撃と言うにはあまりにも愚かしい行動を取っております」

「でですが国境をふ不当に越えまました、兵を連れれてき来たのは戦意があるるかららでしょう!」

「その通りですが、…そうでは無いかもしれません」


そう言ってバーレットは彼等の方を見る、何を言っているのか、何を言い出すのか、ファイルは自分の信じる考えが揺らぎ怖くなり始めた。

一番の理解者だと思っていたバーレットが味方をしてくれない事がこんなにも怖いなんて、と。

こんな風にバーレットが理解してくれず否定もしないが肯定もしてくれないのはとても久しぶりだ、子供の頃に我儘を言った時以来かもしれない。

そう思うと途端に自分が子供時代に戻ってしまった様に感じた、結局バーレットが折れる事は無く、大泣きして疲れて眠って、起きると頭がスッキリとして昨日の自分が恥ずかしくなる。

そして結局、バーレットは正しいのだ。



「あの、ちょっといいですかね?」


おずおずと手を挙げていたのはデノンであった、その腕は肩口までの袖が無くなっており言われて見ればただの村人とは思えぬほど逞しい。

そういえばファヴァルの傷付いた腕を覆う為に使われていた布はそういう事だったのか。

さてどうしようかと悩む間もなくバーレットが続きを促した、補佐官として珍しい事では無いが、私に口を挟ませまいとした様にも感じる。


「聖女さんは国境を不当に越えたって言ってましたけどお忘れですか、もうここはメイヤーナの領内なんですよ」

「あ…」

「そしてファヴァルはこの地の新たな領主候補として辺境伯に任命されてます、現メイヤーナ女王マインサからの正式な命令によって、です」


バーレットはそのまま続ける様にと目を閉じ軽く頷き、ギュッと唇を引き結ぶファイルの反応を静かに見守る。

彼の頭の中は現在進行形で大混乱であり、同時に状況を見極めるべく全ての可能性を一つ一つ考え潰す作業が行われている。

ファイルはバーレットに隠している事がある、会話とその反応を見ればそれは疑いようがない、だが二人の間に信頼関係が無くなってしまったのかと言えばそんな事も無い。

そうであればその隠し事とは何なのか、後ろめたい気持ちがあるのか、それとも誰かとの約束を破りたくないのか。


(そういえば昔もこの様な事があったか、結局あの時は…中止になった庭でのパーティを開催する様にと無理を言って…)


「おい、元気になったんなら少しは働け」

「人使いが荒いなあ、僕さっきまで重傷だったんだけど」

「自業自得な上に任務放棄かぁ?いつかこの物語をランバレアさん辺りが詩にしたとしておまえの出番無いじゃん」

「それはマズイよ、実績、何か実績を!」

「やめろそのテンションじゃどう考えてもヘマする未来しか見えねぇ。はぁ、…ファヴァル様、新任の領主としてこの地の古き権力者にご挨拶と安定統治の協力を取り付けねば、これは領主にしか出来ない仕事です」

「お、おお…うんそうだよね、その通りだ、正にここが僕の、ファヴァル・レギエンでベリュークの活…」

「あと無駄な力抜け」


久しぶりに蹴り飛ばされた感覚に、何故だか妙な安心感と感慨深さを覚えるファヴァルであった。

ブノンズが色んな意味でオタオタと心配をしていて、ファレーザはゲラゲラと盛大に笑っていて、アローネも苦笑しながらポンと背中を押す。

そのとても不思議な、残念で幸せそうな光景にどうしたらよいか分からないといった微妙な表情をするファイルを見て思うのだ。


(どうしてそんなにそのパーティに拘ったのか調べて見れば、ファイル様の好物を用意すると約束していた料理人や、ファイル様の好きな花を植え込み庭の手入れをしていた庭師達、浮かれるファイル様の為にテーブルやティーセットの入念な準備をしていた侍女達の努力や約束を無駄にしたくなかったから)


変わっていないのだ、何も。昔も今も。

急遽賊討伐の為に騎士団の出撃が決まりパーティどころでは無くなったのだから、どう言われようと開催は無理であった。

だから後日、近衛騎士の1人の誕生日祝いを口実に私の執務室で宴を開いた、約束の料理を並べ、花を飾り、王女とその侍女をゲストとして招き。


(何か隠しているのであれば、調べて、把握し、そして解決して差し上げれば良い、それだけの話だ)


昔も今も、やる事が変わらないのはバーレットも一緒なのだ。

例え状況が違えど、立場が違えど、彼がやる事はファイルの為、その笑顔を守る為に最善を尽くす事。

ならば今この時この場所この状況において、自分が成すべきは何か。


(ふむ、面白くなってきた。さて聞かせて貰おうでは無いか)



大詰め、それは物語の収束、旅路の果て、最後の一幕。

複雑に絡み合った歴史は収束し、長く険しい旅は終わりを迎え、魂は最後の輝きを残しあるべき場所へと還る、やがて全てが終わる。



「さて、ファヴァル・レギエン殿は何を聞かせて下さるのか、よく言葉を選ばれよ。魂が震える程の演説を期待しましょう」



◎続く◎


働き者のバーレットさん、働きすぎ(出番多すぎ)問題について脳内議論を行いました結果、

だって他のキャラじゃ代理務められないしやっぱりこの人じゃないと色々説得力無いし、等々の意見が出され、

そのまま進める運びとなりましたとさ。


さて本編は残すところ…たぶん2~3話で解決し、物語の結末でもう1話、その後に後日談的なエピローグがもう1話になるんじゃないかと思いますが予定は未定、闇の中。

そんな感じでもう少しだけお付き合いいただけますと幸いです。


…むしろ問題はその後にソウルディアの他のエピソードに着手するか否かかかかか

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