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ソウルディア戦記 ~魂歌の響く大地~(砦の魔女編)  作者: 槍の人。


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第20幕:「軍議・中編」

第20幕豆知識

【バントレオ】…バントレオ・ロバンツ。旧シーサック王国の上級騎士。王女ファイルがベリューク家に嫁ぐ際に同道した従者のひとりで補給線の責任者だった。

【バンフル】…バンフル・ロバンツ。旧シーサック王国の従騎士。王女と共にスホータム砦に異動した父バントレオを追い従騎士の叙任と共に自身も異動を申し出た若き騎士。


第20幕:「軍議・中編」


◇新生王国暦5年 陽光季98日



「身元の保証、ですか?」

「はいその通りです、先程一人の村人が砦内で拘束されましたが聞けば当砦に所属するソルクスという剣士の関係者が、バオニ村より報告書を持ってやって来ているとか、あなた方もその一行なのでしょう?」


…聖女様、ありがとう…!!バーレット様のヴァル坊への興味が逸れました!

ってあれ、どこかで行き違いがあったのでしょうか、現れたこの物腰の柔らかい騎士様が仰ってる内容は少し変です。

それに彼女、と言うと潜入メンバーには私以外ショアナしか女性はいません、きっと彼女のことを言ってるんだと思うのですがヴァル坊じゃあるまいしショアナがそんなミスをするでしょうか。

これは何か怪しい気がします、この騎士様は何か目的があってわざとこんな聞き方をしているのではないでしょうか、だとしたら慎重に…


「違いますよ!白き…貫弓手ソルクスは剣士じゃなくて射手です!それにソルクスさんの魂はディオニの空にいます!バオニの空ではありません!この砦のすごい兵士なのに間違えるなんてさては貴方新米騎士ですね!」


何故…、何故指摘するにしてもそんな余計なことまで言ってしまうのですか、何故わざわざ喧嘩を売るんですか領主様ー!?

ブノンズさんも半分腰を浮かせたまま固まってるじゃないですか、他の騎士様たちも目を点にしてるじゃないですか、聞いた本人に至っては拳を震わせて顔が引きつってるじゃないですか!!

もうダメです、終わりです、バレるとか云々以前にこのままだと斬られてしまいそうです、痛いのは嫌ですよ…


「ほ、ほう…?私は…」

「いいですか、ソルクスさんは貫弓手の異名を持つ優秀な射手さんなんですよ、そういった人は戦いの要になり得るんですからちゃんと把握しておかないとダメじゃないですか!」

「分かっ…」

「だいたい拘束ってなんですか、このシーサック王国が誇る我らが無敵のスホータム砦に侵入者がいるとでも?貴方たちの守りはそんな甘くないでしょう!」

「その通りです、しか…」

「もし侵入者なんていたら外の門を守っていたアストガルのお爺ちゃんの責任問題ですよ!大丈夫だよねお爺ちゃん!」

「も、もちろん、じゃあ?」

「ほーらお爺ちゃんもこう言ってるじゃないですか!さあすぐにショアナさんを解放してください、ショアナさんなんでしょ!」

「ええ、確かに彼女はその様に名乗っていまし…」

「やっぱり直接ショアナさんと話してるんじゃないですか!ショアナさんがディオニとバオニを間違えるはずもないしさては試しましたね!?」

「いえ、これは確認のた…」

「せっかく領民が貴重な貴重な報告書を危険な危険な戦場を駆け抜けて持って来たのに!そのためにデノンは聖女様に頼まなければならない程の怪我を負ったというのに!」

「分かりましたから少し…」

「嘆かわしい!嘆かわしいですよ!聖女ファイル様と英雄ドノヴァー様が聞いたら何と言うか!」


「…その様に軽々しくお二人の名前を使わないでもらいましょうか?」

「…そうじゃの、儂らよりあの主夫婦と近しい者もおらぬでな?」

「…ああ、嘆かわしいのはその言いようだ、まるで礼儀がなっとらん」

「…そうね、怒る気持ちは分かるけど言い過ぎね。坊、や?」


途中まではすごく良かったと思うんです、少しカッコイイかもって思ったんです、流石領主様って、でもやっぱりヴァル坊でした。

勢いに圧されてたじろいでいた騎士様たちが今はヴァル坊を取り囲み、その白い体はまるで陽炎のように揺らいでいます、きっととても怒っていらっしゃるのだと思います、ええ、とっても。


「どうやらディオニからの一行と言うのはあのショアナという娘を含めて貴方たちで間違いないようですね、それが確認できて本当に良かったです、全くもって想定外の形にはなりましたが」

「えーっと、じゃあショアナさんは…」

「ええ、後ほど一緒に迎えに行きましょう、入れ替わりで貴方が牢に入ると言うのも面白いかもしれませんね?」

「いやそれは、遠慮したいかなーって…」

「そうですか、とても残念です。では軍議を始めたいと思いますので勝手な発言もご遠慮下さいね?」

「はい…」


はい、調子に乗ったヴァル坊は騎士様に完全に敗北しました、今はピッチリと膝を揃えて背筋を伸ばし、椅子の上で石像みたいになってます。

当たり前ですが、所々ですごい才能を見せるヴァル坊も、やはり熟練の騎士様たち相手には分が悪かったようです、何というかこう、ヴァル坊のすごいって思える瞬間が長続きすればいいのになって。

それにしても騎士様たちの意識の切り替え、団結、そして忠誠心には感動しました、これが旧領主様の精鋭だったのかと思うと少しだけ誇らしい気持ちです。

もしこの方々が今も生き延びてこの地を治めていたのなら、きっと私は父さんと一緒にこの砦に居たのではないかと、そう思えてきます。勿論兵士としてではなく他の一般的な仕事でだとは思いますが。

…なんだかこの砦の中を忙しく走り回る自分を想像したら楽しくなってきました、きっと同じあの部屋で毎朝父さんを起こして、調理場でパンを焼いたり、水場で兵士の皆さんの洗濯物を洗ったり、箒を持って砦内の砂埃を外へ掃き出したり、持ち場を離れられない方にお食事を届けたりもするかもしれません。

叶わぬ夢ですが、もし、もしヴァル坊たちの計画がうまくいって、そして新たにこの砦で働く者を募集する事が有ったなら、またここへ来てみるのもいい、かな。



「さて、それでアストガル殿、緊急の召集でしたがどのような案件でしょうか」

「うむ、先ほども少し話題に出ていたがの、北へ偵察に向かわせたソルクスがディオニまで戻りそこで還ったそうじゃ、遺した報告書などをほれ、ソルクスが溺愛しておったこのアニスが有志の村人たちと共に運んで来てくれたという訳じゃ」

「少しだけ拝見しましたが、間違いなく我が部下ソルクスの字です。…だいぶ色褪せ傷み、その苦労が伺えますね」

「これは…国境を越えた先、アルダガ村の見取り図ではないか、確かあの村の詳細な情報は無かったはずだ、仮に王都から我らに反撃の指示が出た場合、あの位置にあるこの村は橋頭保として有用だ、でかしたぞソルクス」

「そうじゃのう、大軍の移動には不便な地のようじゃが、整備された畑や果樹園があるのは良い、補給拠点として押さえたい村じゃな、兵50もおれば事足りるじゃろう、その後は【バントレオ】が輜重隊を駐屯させて…」

「アストガル様、バントレオ様は…」

「そうじゃったな…我が友よ安らかに。【バンフル】は実戦経験こそ無いがあの父に付いて輜重隊と長く行動を共にしておるし、立派に後任を果たすじゃろうて」

「バントレオは補給と備蓄の管理だけしっかりとやってくれていれば良かったのだ、剣などからきしなのに無理に物資を守ろうとしおって!」

「今度はお主が声が大きいぞバーレット、しかしその通りじゃのう、あの無駄の無い輸送と備蓄管理の才、惜しい、実に惜しい」


「そう言っていただけて、父は幸せ者です」


また一人、新たな騎士様が来ました。

この顔ぶれの中では明らかに若い騎士様です、着慣れている風ではありますが鎧もピカピカで傷やへこみなどは見当たりません、あと数年したらヴァル坊もこんな感じになる、のかも?


「おお、バ~ンフル!待っておったぞ座れ座れ、軍議はまだ始まったばかりじゃ、いや正確にはまだ始めておらなんだが」

「アストガル様、バーレット様、ベルニオン様、アローネ様、お待たせして申し訳ありません、伝令が私の部屋に来た際、地下水脈の汲み穴へ行っていて遅くなりました」

「気にするでない、まだグノッサリオもルダンも来とらんわ」

「水に異常は無いか?」

「はい、水脈の流れにも水質にも問題はありません、まさかこの砦の下を地下水脈が走っているとは思われていないでしょうし」

「そうであろうが、油断は大敵だ、万が一あの流れに繋がる川を堰き止められたり毒など流されたらこの砦は干上がる」

「そうですね、地味な確認ではありますがバントレオ殿が欠かさず行っていた作業です、今後もしっかりとお願いします」


食べ物は事前に長期保存の利く物が大量に運び込まれていたらしいですが、水は壷などに貯めておいてもやがてそのままでは使えなくなってしまいます、一部が雨水を採り込む構造になっていたみたいですが何百人もの人たちが常駐した砦をそれだけで支えるのは難しいでしょう、それが地下水脈が砦の下を通ってるなんて…

そっと視線を向けるとヴァル坊もブノンズさんも少しだけ目を見開いています、どうやらこれは知られていない情報だったみたいですね、もちろんディオニ村でもそんな話は聞いた事がありませんでした。

隠れた水源のある天然の岩山を利用した見晴らしの良い山頂の砦、メイヤーナ王国との国境線を睨むという立地だけでなく、その堅牢さやそれこそ最後の砦となり得る場所であることを考えれば、ここに王国の最精鋭と呼ばれていたベリューク軍が居たのも納得です。

まさか当時のシーサック王国の人たちも国を外部からの侵略ではなく内部から崩壊させられるとは思っていなかったでしょうし…西の皇帝許すまじ!ってもうとっくに国と共に滅んでるんですけどね。


西の皇帝によって家族を奪われ王都を追われた涙還王一行は、当初姉と精鋭のいるここスホータム砦を目指したそうです、しかし砦はエキル将軍の軍により焼け陥ち、迫りくる西帝国軍とメイヤーナ領に挟まれ退路を断たれた涙還王たちは残された僅かな船団で東大陸へと脱出を試みました、涙還王の苦難の旅の始まりです。

やがて多くの国や土地を巻き込み、東帝国と東大陸を、そして故郷に戻り西帝国と西大陸を平定し、今に繋がる平和を築かれました。

まだ幼く深い森の中にある村のいち少女でしかなかった私は、世界中で戦いが起こっているということを知らず、14年前にこの砦で繰り広げられた戦いも、6年前に涙還王の連合王国軍がこの地を通った意味も、よく理解していませんでした。

ですが、今私の目の前に居るのは当時のベリューク軍、そしてその攻略を目指すのは当時のメイヤーナ軍の将軍の息子、そして私は今、その時代を生きた兵士ソルクスの妻アニスとしてここに居ます。

運命の悪戯なのでしょうか、それともこれが運命だったのでしょうか、まるで過去の歴史として語られる物語の中へ入り込んでしまったかの様です…。



「ところでバンフル殿、次の隊商はいつ頃来ますか、香油を切らしてしまったのですが」

「申し訳ありませんアローネ様、昨季のメイヤーナ軍襲来の際に、安全が確保されるまで当分来るなと父が手紙を…」

「そう、ですか、しかしそれは仕方ありませんね、早く戦争なんて終わればいいのに」

「まあその通りじゃが、お主などは戦争が続く方が武勲を上げる機会が増えて嬉しいのではないか?」

「アストガル様!私は戦うのが好きな訳ではありません、剣奴として育てられてそれしか能が無いだけで戦いたい訳じゃないんです!」

「まあそう言ってくれた方が正直嬉しいの、儂も戦争は嫌いじゃ、早くボケて解任を言い渡されて、のんびり薬草園でも造って過ごしたいもんじゃな。しかしお主のその台詞、読者が聞いたら騙されたと怒るのではないか、むははははは!」

「アストガル様はきっと最後の最後まで矍鑠としていて、姫様に頼りにされていることと思いますよ。ところでその読者が聞いたら怒ると言うのは?」

「ベルニオン様、これですよこれ、私もその読者ですが確かにこの本の中の誰かさんは“早く戦争なんて終わればいいのに”とは言わなそうなほど勇猛でした」

「ああああああ、なぜその本がここにある!!しまえ!いや渡せ!このっ、そんなもの燃やしてしまえっ!!」


バンフル様が机の本の山から抜き出したのは、さっきも見た「剣ど騎士~英雄の剣~」です。ああ、剣どって剣奴の事だったんだ。

あれ、剣奴で騎士で英雄の剣、アローネ様は元剣奴で王国の騎士で英雄ドノヴァー様の…嘘、この本アローネ様の物語!?読んでみたい!


「ええ、その本アローネさんの物語なの?うわぁ読みたい読みたい読みっ…あぐぅ」


たぶんここに居る何人かの代弁をしてくれたヴァル坊はアローネ様に拳骨を落とされて頭を抱えています…大丈夫かな、かなり本気で殴られてたけど。



後に調べてみたら、18年くらい前にシーサックの王都で発売されて大人気だった本だそうです。

なんでもその強さと美しさで娼館、豪商、貴族からの買い取り希望が多かったとある剣奴の少女の持ち主が、更に儲ける為に少女への挑戦権に高額を設定し、勝った者に購入権を与えると煽っていました。

少女は身を守るため送り込まれる代理剣奴や兵士、そして自ら乗り込んで来る騎士などを打ち負かし続けましたが、ついに当時頭角を現していた剣士に敗れました、持ち主は剣士に購入権を与えましたが、その金額は相場の数十倍であったとか。

そう、少女の持ち主は儲けの種を手放す気は無く、法外な値段を設定してやり過ごそうとしたのです、しかし剣士はその金額を用意し唖然とする持ち主から少女を買い取りました。

その後、新たな持ち主となった剣士は少女や仲間の協力を得て更に名を揚げ、戦いの褒賞金や大会の賞金で仲間たちへの借金を返し、なお名声を得て王国一の剣士と呼ばれるようになり、英雄はついには王女を娶るのです。

そしてその活躍の傍らには、常に先頭に立って斬り込む元剣奴の少女と、剣士仲間たちの姿があった、と。

法外な金額を払ってでも少女を買い取り、女としてでは無く戦士としての才を自分のものにした剣士と、その期待に応え剣士を英雄へと導いた少女、本の最後は“この物語は未完である、なぜなら今なお少女は英雄の剣として輝き続けているからだ”と締めくくられていました。



「だいたいその本は、誇張が過ぎるというか、そもそも脚色されすぎているというか、挿絵なんてファイル様みたいに綺麗だし、とにかく嘘だらけです!嘘しか書いてありません!」

「いや、挿絵はお前にそっくりだろう、ほれ、なあ?」

「バーーーーーレット様あああああ!いやああああ!!

「こら、待て、分かった、落ち着け、とにかく、その剣を、しまいなさい」


「なるほど~これが英雄の剣」


とっさにアストガル様が引き倒してくれました、流石の判断です、おかげで斬られたのはヴァル坊が座っていた椅子だけで済みました。

でも床岩にははっきりと分かる溝が出来ていて、白い英雄の剣の剣先は一時的に衝撃で霧散していました、アローネ様、本気、だったんですね…。



「なんとも賑やかだな、私も交ぜてもらおうか、アローネの昔話ならばいくらでもあるぞ」

「やめて下さいグノッサリオ!もうこんなデタラメ本の話は終わりです!」

「デタラメでもなかろう、特にアローネの剣技の美しさを長々と書き連ねている件など良く見ているものだと作者に感心したものだ」

「読んだんですか!なぜ読んだんですか!読まなくていいでしょう!」

「部下から薦められてな、それに私も登場すると言うから興味深く読ませて貰ったよ、ああそうだお前も出てくるじゃないか」

「おや、私も登場するのですか、それは是非読まないといけませんね」

「読まなくていい!」

「やっぱり剣奴の少女を買うためのお金を貸したりその後も仲間として登場する剣士たちってグノッサリオ様やベルニオン様なんですね」

「黙れバンフル!“これ以上血の雨を降らせたくなければその口を閉じろ”!」


「あ、それ命乞いをする盗賊の頭に向かって放った台詞ですね!確か本の丁度真ん中あたりの」


バンフル様の指摘に何か言い返そうとして固まり、そっと剣を鞘に戻して手で顔を覆ってしゃがみ込んでしまったアローネ様がとても可愛いです。

たぶん生前の姿だったならそれこそ耳まで真っ赤だったんじゃないかなと、何か「ん~ん~」って悶えてますし。

後で機会が有ったらあの本の挿絵を見てみたいですね、ずっと一緒だった仲間の人がそっくりと言った挿絵を。


「グノッサリオ、ベルニオン、それにバンフル、後で覚えていろよ」

「怖い怖い、英雄の剣殿にこれ以上睨まれては敵わぬ」

「恐縮ですが生憎と物覚えが悪いもので」

「私も輸送計画の立案に忙しく…」


なんだかまた言い合いになってますが、見ていて思い浮かぶ感想はやっぱり仲が良いんだなって。

こんな方々と一緒に過ごす日々は、きっと笑顔に溢れていて、楽しいんだろうなって思えました、もちろん戦いの日もあるでしょうし、それで魂を還す人も決して皆無ではないのでしょうけど。

でもこの砦で、ここに集う人たちと一緒に、皆が慕っていた主夫婦のために一生懸命に務めを果たす父の姿がありありと思い浮かびます、そして想像の中で父は、いつも笑顔なんです。



「ところでグノッサリオ様、体調の方はもういいので?」

「うむ、何かこう寝起きの様にボーっとしている瞬間があるのだが、問題は無かろう」

「ええっ、ドノヴァー様やファイル様の居る地下聖堂への門や、大切な“雷鱗”なんかが保管されている武器庫の門を管理されている近衛騎士長様なんでやすから、無理はなさらないでくださいや」

「心配をかけて済まぬな、お前のような者なら是非ともこの砦に欲しいものだが、どうだ、アストガル殿に鍛えて貰うというのは」

「ええ、あっしがですか?そんな畏れ多い、でも…」


「そういえばバー…ットさん、祈祷室の方は大丈夫なんですか、ベッドにその、人がいっぱいいましたけど」

「バーレット、だ!全くどいつもこいつも…。ああ、あちらはそうだな、もう私にできることは無い、残念だがあの兵たちはもう助からん、四肢や内臓へのダメージ、それに出血が多すぎるのだ…」

「でもそれなら聖女様に」

「聖女様とて人、偉大なる者では無い、あのお力はまさしく聖女だが、それでも失われた腕や足、あるべき場所に無い臓器、そして流れ出た血を元に戻す事は出来ぬ、あそこで眠る兵士は、そういった者たちだ」

「それじゃああの場所は、祈祷室というのは治療を行う場所じゃなくて」

「いや、もちろん治療は行っている、軽傷の者は私が祈り癒して送り出す、重傷の者は私が判断し聖堂へと運ばせる、だがそうだな、それ以外の者は…痛みを和らげ落ち着かせ、空と守護竜に見守られながら眠るのだ」

「少しでも安心してもらって、痛みや恐怖から遠ざけて、還る時を迎えさせてあげているんだね…」

「…私に出来るのはそれくらいだからな」

「だからかな、きっともし、この砦にソウルキーパーが現れるような事があっても、あの場所には居なかったんだろうね」

「相変わらずお前の言葉は美しくない、言葉は正確に使いなさい」

「…はぁい」


どうやらショアナは牢に入れられてしまっているらしいので、今いる3人間での取り急ぎの情報交換がさり気なく行われました。

ブノンズ様からは聖女と英雄の居場所、何か重要そうな品物がある武器庫の存在、そしてその場所への門を管理しているのが実は近衛騎士長だったグノッサリオ様だという事が。

ヴァル坊からは空が見える位置にある祈祷室の存在、そこを管理するのがバーレット様であること、そしてそこにはソウルキーパーたちが居ない事が。

後はショアナとも情報交換が出来るといいのですが、先ほどの口ぶりだとまずは軍議が先のようです。

そしてどうやらアストガル様が軍議のために召集をかけていた最後の一人が来たみたいです。


「いやぁ走った走った、お待たせしました、疲れたなぁ、おやみんな揃ってるってことは、ま、まさか俺が最後ですか!?」

「はあ、そのわざとらしい演技は止めたらどうじゃ、全く遅いぞルダン!どこをほっつき歩いていたんじゃ!」



優しき声、それは家族を想い、友を想い、仲間を想い、臣下が主を、主が臣下を想い紡ぐ声。

どんなに厳しくとも、どんなに突き放そうとも、そこに信頼があればそれは優しき声となる。



「いやそう言われましても、ほっつき歩くのが遊撃隊の仕事でして」



◎続く◎


ベリューク軍の面々による軍議の続き、基本的に有能だけどどこか頭のおかし…柔らかい人たちの集まりです。

アローネさんはもうあの人だけで外伝一本作れるんじゃなかろうか、いやそもそもこの物語が外伝なんですが。

そんなこんなでベリューク軍の人たちに感情移入が止まらないトゥリスさんは、果たして辺境伯軍を裏切らずに済むのか、円満解決な未来は待っているのか…?

次回、をなるべく早く更新出来るようにします(;´∀`)

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