縛られた女の子
あの鎖で繋がれた鍵を壊して入った洞窟。
その先に地下に繋がる階段があったわけだが、
「一体何段あるんだ?」
どのくらい降りたかもわからない。
タワーマンションを階段で降りている気分だ。
だが、タワーマンションとて必ずゴールは存在する。
今できることは、ゴールに向かって歩みを続けるだけだった。
「まあここまで深く作るわけには何かしらの意味があるはずだから、今は降りるしかないな」
その発言から20分後、ようやく階段を降り切った。
だが、次に待ち受けていたのは、
「長い階段の次は長い廊下か」
見るからに延々と続いている廊下。
まあ、平面ならまだマシか。
そんなことを考えていた矢先、事は起きた。
蝙蝠のようなモンスターの出現だ。
「ようやく、モンスターが出てきたか」
モンスターに飢えていた俺にとって絶好の機会。
刀を取りだし、モンスターに攻撃を仕掛けるも苦戦することなく一撃で終わってしまった。
「・・・話にならん」
ここには高モンスターはいない。
地上へ帰還しようと踵を返そうとすると、異変は起きた。
今まで歩いてきた道は封鎖され、新たな道が解放された。
まるで、何かに誘導されているようだった。
何かのボスか?それなら都合がいい。
そいつを倒して糧にしてやる。
俺はその安い挑発に乗ることにし、新しく開かれた道を進んでいった。
だが、一向にそれらしきものは見えてこない。
「ったく、そろそろどうでもよくなってきたんだが・・・」
一体この洞窟でどれだけの時間を使ったんだ?
考えるだけでも、もったいない気がしてくる。
それからしばらく歩き続けると、またしても封印された扉が現れた。
めんどくさいな・・・。
その扉に近づこうとした時、1匹のモンスターが頭上から姿を見せた。
そのモンスターの特徴は、青い鱗に覆われていて背中からは立派な羽が生えていた。
それから、長い尻尾にワニのような顔立ち。
間違いない、こいつは・・・・。
「ここでドラゴンとはな」
「ギュオオオオオオ!」
こいつが扉の番人ということだな。
だったらやることは一つだ。
素早く刀を取り出す。
俺のその姿を見たドラゴンはさらなる威嚇を試みる。
以前の俺ならビビっていたところだろう。
だが、今の俺は違う。
「ギュオオオオオオ!」
「ふん、それじゃあ、やるか」
ドラゴンが炎ブレス攻撃を仕掛けてくるも、難なく回避。
というか攻撃モーションが遅いような。
その回避の流れでドラゴンの懐に一撃を食らわす。
すると、ドラゴンは奇声を発しながらその場に倒れ込んだ。
さあ、次の攻撃は・・・
俺は警戒態勢を取るも一向に攻撃が飛んでこない。
それどころかドラゴンはピクリとも動かない。
まさか・・・・
そう思い、ドラゴンに近づくと綺麗に消え去っていった。
やっぱり・・・
ドラゴンだからと期待していたが、この程度だったとは。
「俺が強いのか、モンスターが弱いのかよくわからないな」
とりあえず門番は撃退した。
さて、報酬の中身はっと。
封印された扉に近づき、扉に力を入れると簡単に開いた。
これ封印している意味あるか?
中に足を踏み入れるが何も見えない。
俺が入ったのを確認したかのように扉は急に閉ざされた。
「なんだ?」
それと同時に辺りが明るくなっていくのがわかった。
これはあれか?この後にボスが登場するみたいな。
地面から音を立てながら何かが昇ってくる。
刀を再び構える。
何が来ようと受けて立つ。
だが、そこに現れたのは鎖であちこちに縛られた紫色の髪の女の子だった。
・・・は?
俺は理解できなかった。
まず、なんでこんな奥地に女の子がいるのか。
それに加えて、なんであんなに縛られているのか。
というか服はどうしたんだ?
鎖で縛られているが、その綺麗な肌に見惚れてしまう。
いや、これは何かのトラップに違いない。
慎重に近づくと、気配を察知したのか女の子はゆっくり目を開いた。
そして、彼女が最初に発した言葉は・・・
「ここは?」
そんなものこっちが知りたい。
彼女自身も良くこの状況を理解していないらしい。
「お前は一体誰だ?」
「私・・・」
「そうだ。お前だ」
「私は・・・」
いいから早く答えてくれ。
こっちは一分一秒無駄にしたくないんだ。
お前がボスと言わないなら殺さないでやろう。
だが、お前がボスというのなら即刻殺す。
こんなことを言われれば結果は同然。
「私はボスなんかじゃない・・・」
「じゃあ何なんだ?」
「私は・・・」
一向に話が進まない。
もういいや。
時間の無駄だ。
ったく、完全な無駄足だったか。
「わかった。それじゃあな」
「え・・・」
彼女に見向きもせずに入り口へと向かっていく。
「待って!」
「待たない。正体もわからんやつを助ける義理はない」
「待って!私は・・・・」
振り返ってみると、意を決した彼女の瞳には涙が浮かんでいた。
「騙された・・・騙されたの・・・」
「どういうことだ?」
すると彼女は、思い出話を始めたのだった。