目障りな集団
さて、あの国を滅ぼすためには・・・。
国から離れた俺はそのようなことを考えていた。
この作戦は頭をフル回転させ、慎重に遂行しなければいけなかった。
まず考えるのは、相手の国がどのくらいの戦力を持っているかだ。
仮にも相手国に勇者でもいようものなら俺が一人突っ走っても敵わないだろう。
理想は勇者クラスの仲間を手に入れること。
だが、それは叶わない。
勇者クラスの人間が存在しても仲間なんてもってのほかだ。
どうせ裏切られるならいなくていい。
仲間がいらないとなれば話は早い。
俺自身が強くなればいいんだ。
だが、ここら辺の湧いて出てくるモンスターは正直話にならない。
高モンスターが良そうな場所は・・・。
ふと視界の先に佇んでいた山脈が目に入った。
「あの山に登ってみるか・・・」
俺がこの国へ渡るために空を飛んで通過した山脈。
あそこなら強いモンスターが湧いて出てきそうだ。
そう踏んで山に向かおうとするが、ふもとの方は雑魚モンスターしかいないのは目に見えて分かる。
だったら・・・
「空を飛んでいくしかないか」
俺は漆黒の翼を顕現させて天高く舞い上がった。
山脈までどのくらいだ?
空を飛んでいると目的地までの時間が分からなくなるな。
しばらく飛行していること10分、山脈の中間地点で着陸した。
いきなり山頂で降りて、モンスターが強過ぎたら元も子もないからな。
「さて、モンスターを探すか」
自分の糧になるであろうモンスター達。
しかし、俺の力の糧になるモンスターは現れなかった。
というか、モンスターの気配を感じない。
そこらの木々には血が付着しているのだが。
「山頂の方に行ってみるか」
このままでは完全な時間の無駄だ。
モンスターの1匹でも見つけないと。
そんな矢先に見つけたのは、朽ち果てた看板だった。
そこには何かが記されていたようだが、全く読み取れなかった。
読み取れないものは無理に読み取る必要がない。
俺は無視して先に進んだ。
すると、そこには洞窟に扉が付いたダンジョンのような迷宮のような入り口があった。
何やら鎖で繋がれた鍵で頑丈に閉ざされている。
この先に何かあるのか?
手を伸ばしたその時だった。
「へへへ、そこのあんちゃん何してんだ?」
「ここは俺たちの領土だぞ?へへへ」
全く、余計な群衆に絡まれたようだ。
全部で8人と言ったところか。
こんなやつらに構ってやる時間はないんだが。
「へへへ、あんちゃん俺らと遊ぼうぜ」
「遊ぼうぜ。へへへ」
残りの6人もへへへと同じように笑ってこっちを見ている。
こいつらは「へへへ」をつけないと喋れないのか?
まあ、どうでもいいか。
邪魔するなら殺すだけだし。
「俺はお前たちと関わってる時間はないんだ。命が惜しければ消えろ」
「あんちゃん何言って・・・」
悪いが、脅しになるように生贄になってもらおうか。
別にお前じゃなければいけなかった理由はないんだがな。
先頭にいた一人の首が空を舞い、鈍い音を立てて地面に落ちた。
その際に発生する返り血を後ろにいた人間はたっぷり浴びた。
奴らが微動だにしないこの状況。
まだ理解していないみたいだな。
脅し成分がまだ足りていないようだった。
「お前ら、よく聞け。一人だけ殺さずに逃がしてやる。話し合って決めろ」
その提案は、もの凄い効力のある物だった。
こいつらは仲間割れを始めたのだ。
「俺は悪くない」だの、「お前のせいだ」だの。
責任転嫁が激しすぎて、まるで小学生だった。
いやー、絶景絶景。
だが数分もするとその熱は氷のように冷め、見苦しいものに変わっていた。
「あー、もう全員殺すでいいか?」
「もう少しだけ待っていただけませんか?」
「そうか・・・」
俺が待つ?
こいつらが俺に指図する権利があるのか?
いや、ないな。
そもそもこいつらに生きている価値があるのか?
いや、ないな。
そもそも、この俺でさえ無能呼ばわりされたのだから。
それ以下のこいつらは生まれたその時から価値なんてあるはずがない。
もう・・・殺すか・・・。
「じゃあお前ら殺すから」
「いや、ちょ・・・・」
弁明の余地もなく、首をはねられる。
「はい、まず一人。次は?」
「う、うああああああ!」
言葉を発したら殺す。
そう決めていたので、言葉を発したから首をはねる。
「はい、二人。次は?」
俺が他の奴らの方を振り返ってみると、逃げているではありませんか。
最初にも言っただろう?
一人だけ残れって。
その後は三人、四人と首をはねていった。
さて、最後に残ったのは・・・。
「さて、お前はえらいな?」
腰を抜かし、失禁している中年のおっちゃん。
全くダメじゃないか。
良い年こいたおっちゃんがお漏らしなんてしたら。
大人だから自分で処理できるよな?
「おい」
「は、はい」
「その小便。舐めて何とかしろ」
「え、で、でも・・・」
「いうことが聞けないのか?」
刀をちらつかせると、おっさんは大人しく自分の失態を処理し始めた。
最初は面白いかと思ったが、全く面白くない。
リアクションも何もない。
ただ、ベソを掻きながら泣いて舐めているだけ。
見てるこっちが不快になる。
もういいか・・・。
「もういい、じゃあな」
「え、ちょ・・・」
最後の残党の首をはねた。
本当に時間の無駄だったか。
だが、この扉の先に何かあるのは確かだ。
「この鎖、刀で斬り落とせるか?」
鎖に目掛けて刀を振ってみると、簡単に斬り落とせた。
鎖で繋いでいる意味ないじゃないか。
そして、静かに扉を開き、扉の先には地下に続く階段が続いていた。
「降りてみるか」
少しでも国の転覆に近づきたい。
その一心で俺は階段を下りて行った。