最初のターゲット
見間違えだろうか?
いや、そんなことはない。
だが、このステータスは・・・
攻撃:10500
防御:10040
素早さ:10009
魔法:0
テクニック:15000
魔法値は相変わらず0なんだな。
そんなことよりも他のステータスだ。
全て1万を超えている。
完全な化け物じゃないか。
「ん?何か下の方に書いてあるな」
意識をそこに集中させると、それは拡大して表示された。
「特殊スキル?」
特殊スキルとは、戦いを優位に運ぶために用意されたスキルのことである。
この世界にもこんなものがあるのか。
今まではそういうのはなかったということだな。
「研ぎ澄まされた憤怒?」
説明書きではこう書かれていた。
<<研ぎ澄まされた憤怒>>
自身の全てのステータスを3倍にし、その代償に自身の命を食らう。
自身のステータス3倍ってやばい能力かと思いきやそういう単純なものではなさそうだ。
この特殊スキルは使い道がなさそうだ。
「仕方がない、地道にステータスを上げていくか」
俺は目的地のない旅路を再び歩き出した。
「なんだ・・・この雑魚たちは・・・」
襲いかかってくるスコルピオ・ナイトを一撃で倒す。
「憤怒」の暗黒騎士になる前までも一撃で倒していたが、それとは桁違いだった。
風圧だけでも消し飛ぶこの威力。
まさにチート。
こんな力を、魔人族が持っていていいのだろうかと思うが、こんな世界はどうなったっていい。
世界を滅ぼす。
邪魔する者は殺す。
それだけだった。
「にしても腹が減ったな。何か食える物は・・・」
すると、何やら休憩中の冒険者が目に入った。
これは都合がいい。
「おい、そこのお前ら」
「あ?」
「なんだよ」
「食料を全部置いてけ」
「おい、舐めたこと言ってると・・・」
すかさず距離にして1キロメートル先にいるスコルピオ・ナイトを風圧で倒す。
その光景を冒険者はしっかり見ていた。
「痛い目みるってか?それじゃあ殺し合いしてみるか?」
「「ひ、ひいいいい!」」
約束通り冒険者は食料を置いていった。
それどころかバッグも金も全て置いていった。
「まあいい。全部もらっとくか」
置いてあったおにぎりを一口食べてみるが、あんまり美味しくなかった。
これならどこかの国に入って飯を食ったほうがマシだ。
だが、どこにも国は見当たらない。
というかこの砂漠はどこまで続いてるんだ?
空でも飛べたら楽なんだが。
すると景色は、砂漠ではなく綺麗な景色へと変わった。
向こうには山が見える。
あそこには海が見える。
一体どうなっているんだ?
なんだか、地面の感覚がない気が・・・
ゆっくり下を見ると、遥か先に砂漠が見えた。
そして、自分の背中からは漆黒の羽が生えている。
「暗黒騎士は空も飛べるのか」
なんでもありだった。
まあこれで食料に食いつけるわけだが。
「とりあえず、山越えてみるか・・・」
山を越えるためにサタルドスは移動を開始した。
風がとても気持ちが良かった。
まるで鳥になった気分だ。
「さて、山までもう少しだな・・・」
無事に山を通り越し、その先には何やら王国が佇んでいた。
流石にこの状況を人に見られるのはまずい。山を少し越えた先で着陸した。
「なんとか着いたな」
「ギィエエエエエエエ!」
「なんだこの気持ち悪い声は」
声の方を振り返ってみると、そこには可愛らしい猿がちょこんと座っていた。
こいつじゃなさそうだな。
目を猿から離そうとした瞬間。
「ギィエエエエエエエ!」
やっぱりこいつか。
にしてもマジで気持ち悪い。
さっさと殺して黙らせるか。
欲望のまま生きる。
俺が刀を構えた瞬間、猿は飛びかかってきた。
「ふん!」
「ギィイイイイイイ」
猿の消失を確認。
アイテムストレージに何かが追加された。
「卵・・・?」
これはあれか?
孵化させたらあの猿が生まれるとかか?
いや、猿はそもそも哺乳類だから卵から生まれないわけで・・・
考えを重ね、出した答えは、
「どうでもいい。先へ進むか」
国に向かって歩き続ける間にも猿に襲われ斬り殺すが、卵を入手することはなかった。
「さて、ここが入り口か」
門を抜けた先には賑やかな街並みが広がっていた。
以前の俺ならこの光景を見た瞬間に胸を膨らませていただろうが、今の彼は何も感じなかった。
只々、武器屋を目指して歩いていった。
「くそ、うるせーなー」
お前らはパーティーピープルか。
その賑やかな街の中をひたすら歩き続ける。
そしてようやく武器屋を見つけた。
「いらっしゃい」
「換金を頼む」
「お客さん、見ない顔だねー」
そりゃそうだ。
ここには初めてきたからな。
それより早くしてくれ。
今まで溜め込んできたアイテムを片っ端から売り飛ばした。
卵だけを残して。
「全部で金貨30枚ってところですね」
「そうか、いいから早くよこせ」
「は、はい・・・」
態度の悪い客。
この店主はそんなことを思っているのだろう。
どう思われようが知ったことじゃないが。
そんなことを思いながら金貨30枚を受け取りすぐさま出て行った。
「さて、飯にすっか」
だが、どの店も客で満員だった。
ある程度空いてれば良かったのだが、こんな低知能の連中と密にはなりたくない。
そうなれば屋台で買う他なかった。
「このサンドイッチくれ」
「銀貨2枚な」
先程、金貨30枚の収入があったのでその中の1枚を店員に差し出した所、悪態をつかれた。
「おい、銀貨2枚ないのか?」
プツン・・・・・
サタルドスの中で何かが切れた音がした。
ターゲットは決まった。
この国から滅ぼそう。
「もう釣りはいらねぇ。またな」
サンドイッチを片手にサタルドスは作戦を練ることにした。