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中盤

帰宅する時まっすぐ家に帰る私にとってどこかに寄るという機会が来るとは思ってなかった。

どこか行く予定があっても一旦自宅に戻るようにしている。

自宅周辺にはだいたいお店があるのでそこまで億劫でもない。

それはそれとして今回の寄り道先がなんと友人(という設定)の家なのだから。緊張する。

友達がいた事のない私に務めるのだろうか…。

目の前を歩く真っ白な少女からの依頼だ。

「ところで、そのお父さんは家にいるの?」

まだお昼と言える時間。会社とかでは無いのだろうか?

「大丈夫だ。父は仕事してないからな。」

「無職ということ?」

「いや、父と言っても血の繋がりはなくてな…。いわゆる養子というやつなんだが。」

そこで区切ると少し目線が空へと向かう。

「子供たち…兄さんや姉さん達が大人になり1人で暮らすのが嫌になったんだろう。施設から私を引き取って二人で暮らしている。」

一番下が何歳で生まれたのか…。など条件によって異なるが多分ある程度歳のいった方なのだろう。最低でも四十後半、上で見れば60超えててもおかしくない。

「そんなお父さんに友達はいないのか?と聞かれてな。心配かける訳には行かないだろう?」

「そうだね。」

なんて、優しい子なのだろうか。シニガミさんなんて言われてるとは思えない。

この役目きちんとこなすぞ。



「でか。」

思わずそうこぼれてしまった。

なんというかこの子の家大きすぎる。

武家屋敷かとおもったわ。

…そういえば。

「名前知らないんだけど?」

「そうだな。そういえば名乗るの忘れてたな。私はしいなという。漢字で書くと詩に奈良の奈だ。」

「私は葉月。八月のあれね。」

それを聞くと彼女は首肯して

「では、よろしく頼む。」

そういうと彼女は扉を開いた。



広い庭を抜けて玄関にそこから廊下を進むと居間に入った。

そこには一人の老人がテレビを見ている。

彼が話に聞いた詩奈のお父さんか。

「おかえり。詩奈。おちらの方はもしや…。」

「あぁ。彼女が前に話した…。」

詰まるな。

「葉月です。よろしくお願いいたします。」

私は言葉を引き取って頭を下げる。

不審ではなかっただろうか?

顔を上げて様子を伺うと老人はにこにこしている。

歳的に言えば孫とも言えるくらいの娘が友達を連れてきたのが嬉しかったのだろう。

「なら、詩奈。友達と寛ぐがいい。私は奥の部屋にいる。」

「はい。分かり…。」

「私それより部屋見たいな。」

よくわかんないけど友達なら部屋で遊ぶものだろうと思ったけど詩奈とは意見が合わなかったようだ。

というより空気読めない子みたいになってるが大丈夫だろうか?

「それもそうだな。詩奈。お部屋に連れってあげなさい。」

そう彼が言うと少し嫌そうな顔をしたが直ぐにそれを消して

「そうしますね。では行きましょうか。」

と詩奈は部屋を出た。

私がそれを追おうとした時

「詩奈と仲良くしてくれ。」

そう言われた。

「ええ。仲良くさせてもらってますよ。」

そう返したがよくよく考えると仲良くしてくれって友達に言うだろうか?

仲良いから友達なのでは?

…考えすぎか。



詩奈の部屋はなんというかぬいぐるみ多すぎ問題な部屋だった。

「まあ、私が欲しいと言ったものは無いのだがな。」

彼女曰くお父さんが買ってくるのだそうだ。

女の子はこういうの好きだろ?と。

まあ、分からなくもないけどさすがに多すぎる。

「これでも減らしてるんだがな。」

そんな遠い目で彼女は言う。

溺愛されてるんだろうな。


特にやることもないのでしばらくぬいぐるみのことを話していたが矢張り会話は停滞気味だった。

とはいえ、1時間もたせたのは頑張ったのではないだろうか?

「そろそろ帰ってもいいかな?」

「そうだな。一応時間的には問題ないか。」

時計を確認して詩奈は言う。

「じゃあ、お父様に顔出しておくよ。」

「別にいいと思うが?」

「一応ね。」

私は部屋を出て今に向かう。

居間には先程の老人が見えた。

「やぁ。帰るのかい?」

そう問う老人に私は首肯して

「お邪魔しました。」

そう呟いた時だった。

一瞬視界が変わる。

ああ、またか。

そんな気持ちが過ぎる。

視界は同じく居間だが状況が異なる。

散乱した本に血を流して亡くなる老人。

テレビはつけっぱなしで指してる時間は朝の九時四十三分。

そこまで確認取れたタイミングで視界が元に戻った。

「どうかしたのかい?」

その言葉に適当に返すと私は家を出た。



自宅に戻ると私はソファにダイブする。

「連日とか勘弁してくれよ。」

私の言葉は誰に聞かれるわけでもなく消えていく。

私の目はおかしい。

たまに視界に入った人の死ぬ時の状況が見える。

と言っても死ぬのは翌日なので即死ぬ訳では無い。

視界に入ったというのが厄介で道を歩いていてすれ違った人のも見える時がある。

道を歩くだけで死体を見る可能性があるという事実は私を外を出歩かせないのに十分すぎるリスクであった。

とはいえ、死ぬとわかる人を見捨てるのも出来ない。

助けられる人は助けたい。

今日のバスケ部の部長もそうだ。

彼女は今日の放課後倉庫の棚が倒れてきて死ぬ予定だった。

なので、彼女に倒れる前に棚を倒しておいた。

一応彼女には今日倉庫来たら死ぬから、来ない方がいいよと言っておいたが信じて貰えないどころかキモいと言われた…。

まあ慣れっこだが。

今回は時間も場所も死ぬ理由もわかっている。

あと、家に入る理由だけ…。

少し眠くなった。

私は目をつぶるとそのまま夢の中に落ちていった…。


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