60 動き出す世界
最近家庭菜園を始めようと準備しています。外に出れないので何かやることはないかと検討した結果ですが意外と用意するものがいりますね。
夏にはプチトマトがしっかり採れることを願って、植えていきます!
オーラスト王国からの帰りのオスプレイ機内、エレノアとギルムに詰め寄られてしまった。
「お主どういうつもりなのじゃ!?世界征服でも始めようというのか?」
「火乃宮殿、わざわざ王国内の対立構造を鮮明にしたのは王国を手中に納めようとする準備ですかな?」
2人は顔を近づけてきて、エレノアは焦った表情を、ギルムはこれから大きなお金が動く予想をしたのか興奮した表情をしていた。
「世界征服ではないですよ。言うなれば世界協定を結ばせると言ったところでしょうか。」
「世界協定じゃと?」
「つまり、王国・帝国・評議国・公国・中立国による相互不可侵及び経済条約です。」
「そこには教国は含まれないのですね?」
「教国としては中立国を認めるのは困難でしょう。獣人を認めるように教えを変更することが可能であればですが・・・そんなことをすれば教国内で暴動が起きかねません。」
外部からの脅威で宗教の教えをころころ変えていては、信仰心を嘲笑うようなものだ。それでは宗教国家としての国の基盤が揺らぎ、いずれ内部から崩壊してしまうだろう。そう考えれば、教国が私と会談の場を設けてくれたとしても話は平行線のままで何も進展は無さそうだと考えて最初から協定から除外して考えている。
「・・・それで、お主は教国に対してどう行動に出るつもりなのじゃ?」
「話し合いで解決できるならそれにこしたことはありませんが、王国でのやり取りを考えると信者の方が納得する事は難しそうですね。」
そう伝え、意味ありげな表情でニヤリと笑った。
「その怖い笑顔は止めんか!まさか、王国で発言していたように教国を滅ぼすつもりか?」
「・・・帝国はどうしますか?エレノアは皇帝としてどちらにつきますか?アスタルト教か私か?」
「・・・国家の指導者としては国が亡びるような選択肢を取ることは出来ぬ。いや、帝国の建国理念を考えればお主の考え方の方が合っているかもしれんがな・・・。はぁ・・・毒を喰らわば皿までか・・・私がお主に再三世界を征服するような行動の本意を聞いていたのはな、その戦禍にユーリが巻き込まれるかもしれんと不安だったからじゃ。戦いが始まるならお主の国に火の手が上がることは避けられまい。そこに住まう私の娘が巻き込まれるのではとな。」
一人の親として自分の子供の事を心配することは当然の事だと思うし、彼女が何度も世界をどうするかを聞いてきたのも納得がいくと言うものだ。戦禍に巻き込まれた結果子供を失うという事は、親には耐えられないという事は知識として分かっている。
「エレノアの心配は当然でしょうが、そこまで戦火が拡大する前には手を打つつもりですよ。まぁ悪魔の動向も気になりますが、そこを気にしても今はしょうがないでしょう。」
「ふふふ、さすが火乃宮殿ですね!協定までの道筋を既に見出だしているようですね。しかも、戦争も辞さないとは!」
人の争いにはお金が動く。人の移動、兵の徴収、食料、武器の準備、拠点の設置など枚挙に暇がないほどだ。商人である彼にはこれから始まるかもしれない争いは格好の商機と映っているのだろう。
「願わくはお主の目指さんとする世界が平和であるように祈るばかりじゃ。」
「そうですね、そうなるように努力するつもりですよ。」
「では火乃宮殿、今後はどのように動きますか?それによって私共も動かねばなりません。」
「現状は悪魔に動きがないので、今度はフロリア公国へ向かおうと思います。ギルムさんは評議国に戻ったら各商会の会頭に準備を始めるように伝えて下さい。」
「かしこまりました!期間はどの程度を想定されていますか?」
「長期的にするつもりはない。長くて一週間だ。つまり準備段階で最大限利益を上げられるように、今から各商品の囲い込みをする必要がある。」
「理解しております。公国は食料の豊かな国でもありますし、私も商いで顔が利きますので、その際には同席しましょう。」
「よろしく頼む。さて、今後世界が大きく動く事になる。歴史は勝者が決めるものだが、後の歴史の汚点にするつもりはない!争いは最低限の犠牲で、最大限の成果を上げるぞ。」
「ふ、もうその為の布石は打っているのであろう?」
王国を出立する前に、あのぽっちゃり第2王女のベルベッティに会えたのは行幸だった。彼女には手紙を渡していて、私の手駒に出来ないかと考えている。
「あとは公国がどう出るかで決まりますね。」
ある程度どんな形に収めるかは考えているが、まだ行ったことも、会ったこともないフロリア公国首脳陣がどのような考えなのかを確認しなければならない。
そんな話を帝国、評議国としていると、ミリアムが疑問に思ったのだろう、聞いてきた。
「私達獣人に新しい居場所を蓮様はくれたにゃん。蓮様はどんな居場所が欲しいのにゃ?」
「・・・居場所か。」
そうミリアムに言われた時に、なぜか唐突に私の初恋相手だった彩芽との最後の食事を思い出していた。
(あの時違う言葉を掛けていたら、未来は違っていたのかな・・・)
「・・・蓮様?」
ぼ~っと過去に考えを捕らわれていると、彩芽に似ているミリアムが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「あ、あぁゴメン。そうだね、幸せを邪魔されない場所かな」
「今は邪魔されてるのかにゃ?」
「まぁ、そっとはしてくれないだろうね。教国からも悪魔からも」
「そっか!蓮様の為に私達はもっと頑張るにゃん!!」
「ありがとう!」
エレノアとギルムをそれぞれの国に送り届けて、セリアンスロゥプへと戻った。フロリア公国への会談要請についてはオーラスト王国の時と同じく2ヶ国からの連名での書面で申し立てをしてもらう。
返答が来るまではこちらも準備を整えておく必要があるので、マスドライバー施設へと足を向けてもう数基の衛生を打ち上げていた。
2週間程で公国からの返答があり、今は作物の収穫時期と重なってしまっているため、1月後ということで日程が決まった。その間は新たな国民である獣人達も増えつつ国力は高まりを見せ、公国との会談の後にいよいよ世界に向けて建国の宣言をすることを決めたそんな矢先に事態は動いた。
セリアンスロゥプ議事堂の執務室にいる私のスマホの着信音が鳴り響く。
「お父様、大変です!帝国と評議国との国境沿いに多数の魔獣が確認できました!数は今把握できているだけでも一万は下りません!周辺からもさらに終結しつつあります!」
焦った様子でユーリが衛星から送られてくる画像の分析結果の詳細を伝えてきた。
「分かった。それだけの数となると相手はやはり・・・」
「はい!悪魔の可能性が高いです!それと、どうやら教国も動いているようで、大量の飛空挺を準備しています!」
「・・・そうか、ありがとう!引き続き監視をして、魔獣と教国について変化があれば逐一報告してくれ!」
「任せて!お父様!」
どうやら公国行きは延期になりそうな状況になってしまったようだ。すぐに帝国、評議国の両国に現状を報告して臨戦態勢をとってもらった。評議国から話を聞くと、ここ最近少しづつ食料や武器などの売れ行きが上がっており、もしかしてと感じていたがさすがに買い付ける量が私から聞いた規模に比べると少な過ぎるとのことだった。
評議国には今後は出来るだけ値段を吊り上げて売るようにということと、どこの国が欲しているかの情報をまとめることを指示した。
(もしかすると悪魔の魔獣を使った挟撃を仕掛けてくるかも知れないな・・・最悪話し合いの余地なく開戦するかもしれないな)
教国とは最初は話し合いの場が設けられれば、こちらの戦力の一端を明かすことで戦意を削ぐことも可能かと考えていたが、相手を獣人として、教えに反する存在の討伐ということで有無を言わせず戦いになりそうだった。
数日後、魔獣の数は二万を越え、評議国からもたらされた情報から教国と王国は協調してこちらに攻め込む準備をしているとのことだ。そのお陰で、しっかり儲けさせてもらっているが、やはり全体の動きから比べても買い付ける食料が少なめと言っていた。
そして、教国からの宣言でもっていよいよ戦いが始まろうとしていた。あちらの言葉を借りるなら『聖戦』が。
次回更新予定はちょっと未定です。




