55 首都創造
連投最終話です。
評議国での予定を消化し終え、新しい国民となる獣人の移住のために3日間に分けてオスプレイをピストン運用することで完了した。
また、人間の知識奴隷については評議国に駐在して私との連絡係兼各商会とのセッション役になってもらう為、会頭代理という役に据える事で話は決まった。元々はフロリア公国の貴族家でメイド長をしていたらしいが、仕えていた主人のセクハラに耐え兼ね手を上げてしまい、逆上した主人に奴隷として売られてしまったということだった。見た目は30半ばの落ち着いた容姿の女性で、知識等もしっかりしており良い人材と考えて雇うに至った。
彼女には食品関係を輸送する手配や遺物、他国支店における獣人奴隷の情報などの連絡を密にするように言い伝えてある。
セリアンスロゥプに戻りマリアに状況を確認すると、私の不在の内に首都の予定地である、あのリヴァイアサンを倒した運河に程近い平野の整地が終わったとの事だった。
新しく連れてきた仲間達はルーシーと親衛隊に案内してもらい、とりあえず遺跡の集落での暮らしを見てもらって自分のやりたいことを決めてもらうようにした。
「さて、マリア達に渡しておいた法律の草案だが確認できているか?」
今この会議室にはこのセリアンスロゥプの中心的存在のマリア、防衛を担うジェンナ、諜報を担うミリアム、そしてアドバイザーとして皇帝付メイドのシエラがいる。
「はい、概ねはこの通りでよろしいかと思います。ただこの憲法と言うのは法律とは違うのですか?」
私の渡した草案は日本の六法を元に必要項目を限定して抽出した簡易版と言える。ちなみにこの抽出作業は帝国の法律にも明るいシエラに任せ、私が確認したものだ。
「憲法とは簡単に言えば国を導く者が国民に対して守るべき約束だよ。みんなが国の発展の為に頑張る代わりに命を守ったり、飢えさせないようにしたりとかね。」
「なるほどにゃ!それは素晴らしいにゃ!」
「・・・守るという事であれば防衛隊の隊員は全員その憲法を守るのですね!」
ミリアムは素直に賞賛し、ジェンナは若干こちらの意図する事とはズレて理解してしまっている。
「いや、憲法はあくまで国民を導くものが負うべき責任で、一国民である隊員はその範疇にないよ。今のところ防衛隊で言えばジェンナが遵守するということだ。当然この席にいる全員は遵守して欲しい。」
「なるほど、分かりました。・・・シエラさん、この憲法というものは帝国や他国でも存在するのですか?」
マリアの疑問にシエラが答える。
「い、いえ、私も初めてお聞きします。どこの国でも良くも悪くも自分の力次第なのです。成功すれば栄華を極めた生活が、失敗したり働かなければ最悪死を覚悟するような生活が待っています。」
この世界の国々と私の世界の国との違いはセーフティーネットだろう。日本では健康上の理由で働けなくなったり、自己破産等で経済的に立ちいかなくなったとしても生活保護により最低限の生活が保障されている。良い方へ考えれば挑戦的な経営や投資が出来るし、万一病に罹っても安心という事だが、裏を返せば働かなくても生活は出来てしまうという事だ。
「無条件で守るという意味ではないぞ。国民として国を発展させるという義務を果たした者には手厚い保護を約束するということだ。」
「分かったにゃん!働かざる者食うべからずということにゃん!」
「そ、その通りだね。あと一応確認しておくけど、人間だからって恨みに任せて問答無用で手を出せば今後は国際問題になるからしっかり周知しておいてくれ。」
「・・・そ、そうですね。セリアンスロゥプ中立国の国民として今後は国を背負っているという自覚を持った行動が求められますね。」
「ジェンナ、勘違いしないで欲しいが、相手が敵対的行動を取ってくるなら反撃してくれ。まずは話合いが出来るか問い掛けて、決裂すれば武力行使という事を防衛隊の皆にはよく伝えておいてくれ。」
専守防衛に専念した結果が、こちらに被害が出るのでは意味がないのでその辺りはしっかりと言い含めておく。
「では施行の際には分かりやすい文章となるように修正しましょう。」
最終的にはマリアが細かい表現まで作成したものを私が検印することになった。
「次に首都についてだが、土地の整備は終わっていたね?」
「はい。運河から2キロ地点に10㎞×10㎞の正方形での整備は終わりました。」
「予定より早かったから、大分無理をしたんじゃないか?」
「いえ、みんな自分の新しい国、家が出来ることが楽しみのようで張り切っていました。」
「そうか。シエラに任せていた首都の大まかな地図は出来ているな?」
シエラにはこれから作る首都の完成想定図のような地図を作ってもらうよう頼んであった。それはみんながどんな国を形作りたいかの希望も取り入れて欲しいと少々無茶なお願いをして。
「一応みなさんの意見も聞いて最大限反映しつつ、行政地や農耕地、商人街、居住区などを分けて利便性や往来しやすいよう考慮しているつもりですが・・・いかがでしょうか?」
そう言ってシエラが広げた地図は、中心に行政地があり、そこを起点として碁盤の目のようにきっちりと整理されたものになっていた。言うなれば平安時代の京都の様になっている。
「これなら分かりやすいし、管理も楽だろう。みんなはどう思う?」
「これなら迷い難いので良いと思いますよ。」
「他の町や村なんかはもっとごちゃごちゃしてるけど、すっきりしていて良いですね。」
「なんだか整頓され過ぎて落ち着かないにゃん。」
多少微妙な意見も有ったが、取り敢えずこの地図を元に作ることに決定した。
とはいえ、これだけの整備された広さであれば10万人が住めるような大都市も作れるが、今は500人程度しか居ないので、行政地だけは完璧にして、残りは人口増加に伴って建物を増やしていくこととした。
・・・・・・・・・・・・・・・
場所を首都予定地に移し、シエラの作った図と見比べながら辺りを見渡す。
先程の会議のメンバーが見守るなか、スマホで衛星からの画像を確認し、城壁の起点となる門をどこに作るか考える。
(運河からの方向・・・遺跡からの道を作るとしてこの辺りが妥当かな)
凱旋門のデザインを参考に高さ15m横10mの首都の玄関口となる門を創造する。扉には軽くて丈夫なチタン合金製を左右に作り出して、門の創造は終わった。
続けてこの門を中心として左右に5㎞づつの壁を作り出す。金属の中では最も融点が高く、非常に硬度が高いタングステンを材質にする。比重が大きく高い硬度を持つため砲弾や対艦船用の徹甲弾に用いられるほどで、魔獣が闊歩する場所の外壁としては十分な防御力があると考えてのことだ。
創造しようと集中すると、脳裏には四方を一気に囲むように作り出せる事に気づき、数秒の後目の前には門と同じ高さの巨大な壁が現れていた。
(この規模も一気に作れるのか・・・我ながら恐ろしいな・・・)
周りを見れば以前マスドライバーの施設を作った時の親衛隊の様にみんな口を開けながら外壁を見上げていた。
「さて、一気に囲ってしまったのでおそらく城壁の内側に魔獣を閉じ込める形になっているだろう。まずはその掃除からしようか。」
「は、はい!では人手を呼んできましょうか?」
我に返ったジェンナが防衛隊の増援を呼ぶか確認してきた。
「いや、衛星からの映像ではせいぜい100匹程度だから、無人偵察機に機関砲を取り付けて掃討しておくよ。群れているし、その残骸の掃除くらい5人で大丈夫だろう。」
「き、機関砲・・?ですか?そ、そんな魔獣の数まで分かるのですか!?」
魔獣の数を把握している私に驚きの表情でジェンナが聞いてくる。
「そうだね、空に目があるという感じかな。じゃあもたもたしてると日が暮れちゃうから早速始めよう。」
1時間ほどで外壁内の魔獣の掃討も終わり、死骸を集めて火魔法の魔石で燃やし尽くして処分した。
そして、この首都の中心を衛星から確認していよいよ行政地の建物を創造していく。
「さて、首都の中心である此処に、この国の様々な事を決める建物から作っていこう。」
イメージするのは学生の頃に社会科見学で行った国会議事堂から始まり、役所などの行政に必要な建物を、場所などマリア達と相談しながら次々と作っていった。
日が傾いてきた頃には、行政地や住宅街が出来上がり、生活が出来る前段階には準備が出来た。
「そ、それにしても本当に半日足らずで一つの都市が出来るなんて・・・」
「凄いにゃ!あっという間に町が出来たにゃん!」
「もう火之宮様の事では何があっても驚きません。」
「ふふふ、流石ですね!」
ジェンナから始まり、ミリアム、シエラ、マリアが口々に驚きと賛辞?を伝えてくれる。
「今日はここまでにして、明日は家具を作っていくからみんなの力で一気にやってしまおう。早ければ明日には此処で生活できると周知しておいてくれ。」
「分かりました。直ぐに移住できる者については準備するよう戻ったら伝えましょう。」
鍛冶などをしている職人についてはまだ施設を作っていないので、本人の希望を聞きながら作るつもりなので、その事も伝えて欲しいとマリアに頼んでおいた。
次回更新予定は4月4日です。




