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おはようございます。最近文字数を確認したら20万文字を超えていて結構書いたなぁと感激していました。今は外出がしづらいので、家の中で読む小説の一つに選んでいただければ幸いです。
「―――痛っ!!!な、なに!?何したのっ!?」
この世界にはハンドガンのようなものはなく、遠距離攻撃手段と言えば弓矢か魔法となる。それはどちらも実際に攻撃するまでに多少の時間を要するもので、弓矢なら矢をつがえて引き絞るし、魔法は杖を構えて魔法名を口頭もしくは脳内で発声する必要がある。
チームで戦う場合には自分がどんな魔法を使うか仲間にも伝える為に言葉にするのが一般的で、フレンドリーファイアを防ぐのが目的だ。
だからこそこの世界の人々の戦い方、特に対人戦については一々無駄な動きが多い気がしていた。攻撃するまでのタイムロスがあるのでしっかり相手を見据えていればある程度戦闘に慣れた者であれば避けられるからだ。
コーダッチの誤算はこちらに遠距離攻撃の手段は無いと見誤ったことだろう。獣人に魔法を使える者はかなり少なく、使えても触媒となる杖が必要だが誰も持っていない。となれば自分をどうこうするには接近して取り押さえるしかないだろうと想定したのだろう。
「お前が知る必要の無いことだ。どうせお前達はもう動けないだろう?」
銃声と共に動きの止まっていた襲撃者が私の言葉に我を取り戻し動こうとするが、封印のスキルで動けないでいる。
「「「な、なんだこれは!動けんぞ!!」」」
「ミリアム!」
「分かってるにゃん!」
この封印のスキルで縛っているのは衣服だけで、魔法は普通に使えてしまう。そのため混乱している今の隙に魔法師の無力化をミリアムに急がせた。
動けない人間などミリアムにとっては良い的だが、衣服は封印されてダメージは通らないので、ピンポイントに顔面を狙う必要がある。
しかしそれも造作もない事だったのか僅か数秒で残りの魔法師の無力化が終わった。パメラ達も動けない敵をあっというまに無力化していた。
襲撃者の掃討が終わったところで首謀者であるコーダッチにゆっくり近付いて行った。右手を撃ち抜いたのでその手を押さえながら蹲っていたが、足音に気づいたのか、恐る恐るといった感じで顔を上げてこちらを恐怖のこもった瞳で見てきた。
「ひっ、ご、ゴメンなさい私が悪かったわ!!何でもするから助けて!!お、お金ならいくらでもある!あなたの国に出資してもいいのよ!!」
(この期に及んで命を金で買うのではなく、出資とは・・・。商人根性ここに極まれりだな・・・)
「いくつか聞きたいことがあるが、今回の襲撃はお前の単独か?」
「・・・え、は、はい!そうよ!」
この世界の人間に対してより明確に危機感を抱きやすいナイフを作り出し、体が動かないでいるコーダッチの首筋に当てながら質問を重ねる。
「本当だな?」
「ほ、本当です!他の商会からは助力を得られなかったの!」
「あの男たちは何者だ?」
「わ、私の私兵です!」
「最後にお前が持っていた魔具はなんだ?獣人達の首輪の魔具はコダールが持っていたが?」
「こ、これはマスターキーで全ての首輪に連動して操作可能な特別製なの!」
「なぜお前が持っている?」
「こ、これは会頭である私しか知らない場所に保管してたから・・・」
「そうか・・・ミリアム!」
「了解にゃ!」
ミリアムに目配せし弾き落したマスターキーの魔具を拾うように指示を出す。そうこうしている内にルーシーやカレン、パメラ達が私の側へ来て全員がコーダッチを見下す様に睨みつけている。奴が獣人に対してやったこと、やろうとしたことを考えればその気持ちも分からないでもない。
「ね、ね、今回の事は私も混乱してたのよ!いきなり商会を取られたんだから・・・。やっぱりあなたには才能があるのね!なんたって国を作ったんですもの!私は役に立つわよ!何でもするから!」
(こいつをあまり喋らせるとルーシー達の機嫌が悪くなりそうだな・・・)
「そうか、お前は役に立つか・・・。残念だけど私の国には必要ないよ。かといって生かしておけばお前のようなタイプは必ずろくでもない事をしてくるからな・・・」
「し、しないわ!わ、分かった!もう二度とあなた達の前には姿を見せな―――ヒュ・・あ、ごっ・・・」
命乞いをするコーダッチの首筋にナイフを逆手に持って振り下ろした。
肉を切り裂き、頸骨を砕く嫌な感触がナイフを持つ手に伝わり顔をしかめそうになるがそれを表情に出すわけにはいかない。
(新しく国民になる獣人の子達に私の立ち位置を鮮明にしなければならない。彼はそのちょうど良い見世物になる・・・)
虫の息になっているコーダッチに回復の魔石を使用して死なない程度に回復させる。
「・・・ゲホッ、ごほっ・・・な、なんで?どうして・・回復させた・・の?」
死の淵から這い出してきたように血の気の引いている顔で、理解できない存在に怯えるようにたどたどしい口調でコーダッチが聞いてきた。
「お前が役立ちそうなことを考え付いたんだよ!」
私は努めて企んでいますといった笑顔を彼に向けて、懐から首輪を取り出し動けないでいる彼に装着した。
「こ、これは・・・そんな、奴隷の・・・」
「いつも見ているからすぐ分かるか。そう、これはお前が獣人達に付けている首輪と同じものだよ。そしてこれがその対となる魔具・・・お前の命その物だ。」
彼に見えやすい様に眼前にしゃがみ込んで、これ見よがしにその魔具を動かして見せつける。
「な、何をするつもりなの?私を殺したかと思えば、わざわざ回復させて首輪を付けるなんて・・・」
「いやなに、そろそろ頃合いだと思ってね。君達そろそろ動けるようになっただろ?」
そう言いつつ周りの獣人の子達に声を掛け、動けるようになったか確認を促した。するとみんな困惑気味に手足を動かし体の動きを確認し始めた。
「「「う、動ける!」」」
みんなが動けるようになったことを確認して一つの質問を投げかけた。
「さて、君たちに聞くがここにコーダッチの首輪の魔具がある。・・・誰か欲しい者はいるかい?」
私の質問の後、辺りは静寂に包まれたように沈黙が支配した。最初に口を開いたのは自らに過剰に肉体強化を施していた子だった。服の隙間から覗く首筋や手の甲には赤い鱗が見え、その尻尾は腕の様に太く床につくほどの長さがあった。
(・・・たしかリザードマンの獣人だったかな?)
事前にコダールから渡された資料の中には各種族名や特徴が記載されていた。その中の一つに思い至った。その彼女が私に近付いて力強い瞳を向けて来た。
「わ、私にそれを下さい!そいつは私の里のみんなを奴隷にして、言う事を聞かないからと弟を殺したんです・・・。これ以上仲間を殺されないために従っていましたが、もう我慢する必要がないなら・・・それを私にください!!もちろんあなたの国でどんなことでも手伝います!」
彼女の叫びを聞きながら周りの獣人達に目をやると、みんな彼女の言葉に固唾をのんで見守っていた。
(なるほど、彼女がこの獣人達を束ねているリーダーなんだろうな)
「良いでしょう、君の名前は?」
「・・・ヴェラと申します!」
「ではヴェラ、君の自由に使いなさい。」
彼女に魔具を手渡し、事の推移を見守るためその場から少し距離を取った。
そのやり取りに焦ったコーダッチが声を荒げる。
「ちょ、ちょっと待ってあなた達。い、今までの事は謝るから、お金もあげるし解放もするから・・・た、助けて!」
コーダッチは顔中涙や鼻水などでその様は哀れなほどに見にくい有様だった。
「はっ、お前が私に命乞いとは笑えない冗談だね!どうだいお前が散々見下して、ゴミの様に扱っていた獣人に命を握られている気分は?」
「ぐ、ぐぎ・・・。獣人如きが―――ごっ・・」
コーダッチの恨み言に被せるように彼女は体を回転させその逞しい尻尾で顔を打ち据え、憎悪の籠った顔で見据えている。
「よくも弟を仲間たちを・・・お前だけは絶対に許さん!!泣きながら醜く死ね!!」
「ま、ま゛っで!ゆ、ゆるじで!お゛ねが―――」
魔具が起動して『シュッ』という風の音と共にコーダッチの頭が宙を舞った。同時に首からは大量の血液が噴き出し、近くに居たヴェラ達を赤く染めていた。
今回も3連投です。




