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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
53/61

52 親衛隊

連投最後です。

 広間の壁をブチ破って現れたのは、元第六商会の会頭コーダッチだった。雪崩れ込んできた男たちが獣人達の間をすり抜けて壇上に迫ってくると同時に、パメラ達親衛隊が私を取り囲むように男達の前に立ちはだかった。


親衛隊の隙間からコダールを覗き見たが、視線が合った彼は高速で首を横にふるふると動かし、必死な形相で自分は無関係であるとアピールしていた。


「近づくな!!それ以上近付けば火乃宮様へ危害を加えるものと見なします!」


「くくく、よくもやってくれたわね。私が育てた商会を・・よくも!殺してあげるわ!泣いて許しを叫ぼうがもう許さない!」


 襲撃者は3メートルほどまで近付いてこちらを取り囲み、所持している武器や杖を向けると、血走った眼をしたコーダッチが護衛に囲まれながら叫び出した。


(随分恨みを買ったもんだ・・・。元の世界でも敵対的M&Aでよく嫌がらせがあったが、この世界ではもっと直接的な行動になるのか。しかもこの統率の取れた動きを見るにライバル商会にも同じことをしていた感じがするな・・・)


「この国のトップ商会の一つを仕切っていた人物とは思えない行動だが・・・そちらも覚悟があってのことだと理解していいのかな?」


「あはは、吠えるじゃないの!リヴァイアサンの討伐なんてどうせ大量の獣人達と帝国の武力を使ったに決まってるわ!そもそも個人でどうこう出来る存在じゃないもの!だから・・・おい、獣共!あのクソ野郎をぶち殺したら約束通り首輪を外してあげるわ。逆らったらどうなるか・・分かっているでしょうね!」


コーダッチがそう言うと獣人達がこちらにファイティングポーズをとってきた。

身体に魔力をみなぎらせているのか、体格が一回り大きくなったようだ。


「火乃宮様、ここは我々親衛隊にお任せを!ルーシーさんとミリアムさんは残って下さい。カレン、ポリー、メローラ、リジーやるわよ!!」


パメラが指揮を執り、それにしたがって素早く動き陣形を整えていく。


(獣人同士で闘わせる訳には行かないから動けなくしておくか・・・)


「パメラ!後ろの獣人の子達は気にするな、飛び込んできた男達だけに集中しろ!危なくなったら手を出すから存分にやれ!」


「はっ!ありがとうございます!お任せください!」


 兼ねてから指摘されていたのだが、私のレベルや能力では危機的状況において他者の手を借りずに窮地きゅうちを脱出することが出来てしまう。せっかく新設された親衛隊の出番は今まで皆無で、リヴァイアサン討伐の時でさえも一人で何とかしてしまったほどだった。

 その為親衛隊の存在意義に係わると言われてしまい、彼女たちの活躍の場があれば守られていることも仕事だとクマ獣人のマリアに言われ、今後はよほど危険な状況におちいらなければまず親衛隊に頼ることを約束させられたのだった。



「見なさい!奴は獣人共の後ろにコソコソ隠れているわ!リヴァイアサンを単独で倒したなんて嘘なのよ!さぁやっちゃって!」


コーダッチの叫びと同時に取り囲んでいた襲撃者達の中で杖を携えていた者達が魔法名を呟くと突風と共に先端の尖った槍のような岩が床を突き破って親衛隊に襲い掛かって来た。


(突風自体にはそれほどの殺傷性は無いな・・・目くらましで本命は足元からの土魔法による攻撃か・・・?)


 体格の良いパメラやポリー、リジーは正面から拳で岩の槍を砕き、逆に体格に恵まれていないカレンやメローラは素早い動きで回避して敵魔法師に肉薄していくが、それは武器を持った他の襲撃者達が許さないとばかりに3人一組となってカレンとメローラを分断するように攻撃を加えている。


 残りの襲撃者達も岩の槍の横合いからパメラ達を襲撃するがヒット&アウェイの要領でパメラ達は襲撃者達に決定打を与えられず、じりじりと傷を負わされていた。


4人の魔法師達との連携もよく取れており、風使いは目つぶしをしながら時折かまいたちのような切り傷を付ける攻撃魔法、土魔法使いは近距離で攻防する7人の襲撃者達が有利になる様に位置とタイミングを気にしながら岩の槍を出している。おそらく並の者では数分でやられるだろう。それを圧倒的数的不利にも関わらずしのいでいるのだから、獣人と人間の基礎能力の差に驚かされるものだ。


そんな攻防に目を奪われていたが。コーダッチは獣人達に怒声を浴びせていた。


「なにやっているのけもの共!お前たちも加勢してさっさとあいつらを殺しなさい!」


「そ、それが・・・体が・・う、動かないんです!!」


「なに馬鹿なこと言ってるの!?私を裏切るならどうなるか分かってやっているの!!?」


「ほ、本当なんです!」


「本当です!う、動けないんです!」


「し、信じてください!わ、私たちは裏切るなんてことしません!」


私が衣服に封印のスキルで行動を縛っている獣人達は口々に裏切りの意思はないと声高に叫んでいる。


「はぁ?一体なんなのよ!獣共が!役に立たないならあのクソ共を殺しても解放なんてしないわよ!」


「ま、待ってください!ぐ、ぐぅぅ・・ぎぎぎ・・・」


 檀上にほど近く、一番私に突っかかって来た体格の良い獣人がなんとか体を動かそうと魔力をみなぎらせているのか、更に体が一回り膨れ上がったように見えたが、動けずにただうめくばかりだった。


「いけないにゃ!」


その彼女の行動に私の側に控えていたミリアムが叫ぶ。


「どうしたミリアム?」


「あの子、肉体強化を過剰に掛けているにゃ!このままだと体がもたないにゃ!」


「・・・ミリアム、この膠着こうちゃく状態を打破したい。私の護衛はルーシーだけでいいから、あの魔法師達の無効化を優先しろ!」


「分かったにゃ!任せるのにゃ!!」


 ミリアムはブラックパンサーの獣人で、その特徴としては気配を立って素早く相手に忍び寄ることを得意としているらしい。そこでこの均衡状態を崩すため後方支援の要である魔法師を無力化すれば一気に流れを引き寄せられると考えミリアムに指示した。


乱戦している親衛隊の場所は通らないようにかなりアクロバティックな動きで壁や天井を使って魔法師へ接近していたが、激しい動きにも関わらずミリアムから物音は一切聞き取れないのだから凄い。


(そういえばミリアムの手や足の裏は肉球の様に弾力のある柔らかさだったな。それにカレンやメローラはあれだけ激しく動いて、その胸部もダイナミックに揺れているのだが・・・痛くないのだろうか・・・)


 全く危機感のない考えを巡らせているのはこの状況に私自身危機感や焦燥感といったものが感じられないからだろう。高レベルになったことの弊害へいがいか、彼女達なら大丈夫だろうという信頼か、それともいざとなれば私が全てくつがえす程の力を持っているという傲慢ごうまんか・・・。


私がそんな思考にふけっているとミリアムはあっという間に魔法師の元まで辿り着き、そのミリアムの動きに気付いていない魔法師はあっさり横合いから殴り飛ばされて気を失ったのか動こうとしなかった。

仲間の一人が吹き飛んだ事に注意がそがれたのか、カレンとメローラを分断して囲んでいた男達はその隙をつかれ一人ずつ吹き飛んでいた。


カレンとメローラの小柄な体格を活かした攻撃手法なのか床が破壊されるほどの踏み込みから頭突きで相手を吹き飛ばしていた。


(モーションが大きいし攻撃が直線的だから相手に隙がないと使えなさそうだが・・・やられた相手を見るに喰らいたくはないな・・・)


 吹き飛ばされた相手を見ると鳩尾みぞおちにヒットしたのか胃の内容物を撒き散らしながら息もできないようで苦し気にうめいている。更に無力化すべく残りの襲撃者に肉薄するが、魔法師が防ごうと杖を構える。当然それを許さないミリアムがまた1人を無力化する。するとパメラ達への魔法攻撃も薄れたのでこちらの均衡も崩れた。邪魔な風や岩が途絶えた隙につかず離れず取り囲んでいた襲撃者を捉え、顔の形が変わるほどの威力で壁まで殴り飛ばしていた。


(・・・さすが素でもパワーがあるパメラ達だ。強化した状態だと人間がスーパーボールの様に飛んでいくのか・・・)


ミリアムの参戦で均衡が崩れ、一気にこちら側に有利な流れになって来た。このままの状況であればもう数分もすれば制圧できるだろうが、それを大人しく見ているコーダッチでは無いだろうと彼に注意を向けるとーーー


「何やってるのあんた達!高い金払っているのよ!くそっ!・・・獣人に守られてる臆病なクソヤロー!この獣人達の首が飛ぶ姿を見たくなかったら動くんじゃねぇ!これからあんたの国の国民にしようとしてるんでしょ。まさか見殺しにしないわよね!」


「ま、待って!か、必ずお役に立ちますから殺さないで!」


「た、助けて!お願いします!何でもしますから!!」


必死の形相で助命を乞う獣人達の様子から、コーダッチのゲスな言動に正直吐き気を覚えるほどだが、ありがちな展開に嘲笑ちょうしょうしてしまった。


「な、なに笑ってんのよ!獣人共を見捨てる気!?ほらっ、これを見なさい!」


そう言うと懐からコーダッチは首輪と対になっている魔具だろう、取り出してアピールするように高々と掲げて見せた。


「ルーシー、良いね?」


「ええ~、しょうがないわ~。あの子達の命が掛かってしまったから~。」


そんな私とルーシーの会話を降参と取ったのかコーダッチが嫌らしい笑みを浮かべる。


「ふふふ、そうそうそれこそ獣人の救世主としての行動じゃないの~!良い?動くんじゃーーー」


 直後『パンッ!』という乾いた音と共に高々と掲げていたコーダッチの腕が後方へ弾かれ手に持っていた魔具を落とした。

冷たい視線を向けながらハンドガンを構えている私はゆっくりと腕を下ろしコーダッチを睨みつけた。

次回更新予定は3月28日です。

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