50 買収
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読みに来てくれた皆さんに感謝いたします!!
今回も3話の連投ですので、よろしくお願いします!
アッセンブリー評議国での会談の後、奴隷や物資、人員の輸送関係の調整もあるので1週間ほど滞在することになってる。
評議国側で用意してもらった宿に腰を落ち着けると会談の疲れからか大きく息を吐き出してしまった。
「大丈夫かにゃ?お疲れなのかにゃ?」
「今日はお疲れ様~。本当に蓮ちゃんが言った通りになったわね~。」
「さすがは火乃宮様です!全てはその掌の上の出来事でございます!」
ミリアムやルーシー、パメラが口々に体の心配や賞賛を伝えてくれる。
「ありがとう。少し気疲れしただけだから大丈夫だよ。」
「それにしてもエレノア皇帝の話では評議国の商人との交渉は大変だと言っていましたけど、なぜこれほどスムーズにいったんですか?」
みんなが感じているもっともな疑問をカレンが聞いてきた。
「簡単な話だよ、それはーーー
評議国へ行くとエレノアに伝えた時に仲介をしてくれないかと頼んだのだが、一癖も二癖もある商人はエレノアも苦手らしく会談の機会が持てるように書簡で要請することぐらいしか協力できないと言われてしまった。
その為、ギルクローネ帝国皇帝を前面に出した要求は難しいだろうと考え、差し当たって帝国側が知り得ている評議国についてあらかじめ教えてもらっていた。その中でも注目したのが10の商会が代表して国の指針を決めており、それぞれ商材も別々のものを扱っているという事と、それぞれの商会は協力関係というよりは互いに足を引っ張りあったり、隙あれば蹴落とすというような関係性であるということだった。
ただ、下手を打てば不利な内容での契約を結ばされ、骨の髄までしゃぶられてしまうので、文面をよく見ずにサインしてしまうことは絶対しない事と、自分にとっての不利になりそうな言質を取られないように気を付けろと注意されるほどだった。
そこで私はリヴァイアサンの素材とエレノアの書簡を持って武器を扱う第5商会にミリアムと2人で今回の会談に先んじて秘密裏に訪問していた。
当初は訝しげな視線で書簡を読んでいたロリ・デイルーズはリヴァイアサンの素材を見せると掌を返したような対応になり、続いて日本刀やテーザーガンをその場で創造してお近づきの印にと渡した。しかし彼女は急に商売人の表情となり「何が望みなの?」と警戒しだした。タダより高い物はないという事を理解しているのか、こちらからの要求を待っているようでもあった。
元の世界でもこういった交渉やプレゼンテーションは得意分野だったので、そこからはスムーズに進み、続いて横のつながりを辿って他商会への取次ぎもお願いした。第5商会のように相手の欲しい物をぶら下げつつ交渉していくだけなのだが、第一商会のギムルはリヴァイアサンの肉に関して取り乱したようになり、土下座しながら取引を申し出てくるほどだった。
なんでもリヴァイアサンの肉は一口食べれば1年長生きすると言われている伝説の食材らしく、どんな値段であろうと貴族は買っていくと言われ、こちらの言い値で売買契約を締結したほどだった。
その後奴隷を扱っている第六商会を買収することは可能かと聞くと、一応評議国ではトップの奴隷商会なので難しいのではないかという事だったが、今度はその場でスマホを取り出し離れた人物との通話を実演して見せると、第九商会が買収に関しては任せて欲しいと名乗りを上げて来た。当然情報を扱う商会にとってこのスマホの重要性は明らかで、なんとかして手に入れたいという思惑は透けて見えていた。
そこで第六商会を買収した後に、グループ商会として加入するならスマホなどを便宜しましょうと交渉したが難色を示されたので、もう一押し盗聴器という物も実演することで首を縦に振らせた。
結果として評議国の半数の商会とは協力関係を結び、私が運営できる商会も買収によって獲得することが出来たので、お忍び訪問の成果としては大成功だった。
それもあってあの会談は既に台本が出来上がった中での演出みたいなものだったので、要求がスムーズに通っていたという訳だった。割を食ったのは私が必要ないと切り捨てた商会の者達だけだった。
「ーーー良くも悪くも商人は契約には細かいし、必ず守る。何故ならそれは自らの信用問題になってくるからね。それに多少力でも圧力をかけた部分もあるしね。」
「あ~、あの暴漢達をねめつけながらぶん殴った時は私もびっくりしたにゃん。」
「えっ、暴漢って、どうしたんですか?」
「実は秘密裏に行動していたんだけど野党みたいな奴等に絡まれてしまって、威嚇の為に地面をぶん殴ったんだ。そしたら青い顔して逃げて行ってね。《《何故か》》その後に行った商会からはえらく低姿勢だったんだよ。」
「そうにゃん、びっくりしたにゃん。なんたって地面がべっこーんて凹んじゃったのにゃん!それからちょっと前に渋っていた商人達が返事を聞きに行ったら凄い協力的だったにゃん。」
「・・・火乃宮様、やはりお忍びとは言え今後は私達を護衛に付けるべきです!」
「ありがとう。ただそれだと目立ってしまいそうだから・・・いい方法を考えるよ。」
今回の会談の裏話が一息ついたところでルーシーが奴隷について聞いてきた。
「ところで~蓮ちゃん、獣人の奴隷の子達は良いとして~、人間の奴隷も少なからず居るはずよ~。どうするの~?」
第六商会の扱っている奴隷の内訳は、7割は獣人だが、残りは犯罪者や借金のかたに売られたような人間の奴隷もいる。
ルーシーの心配事は、この人間たちの処遇だろう。
「獣人の奴隷は全てセリアンスロゥプへ連れて行くようにする。人間の奴隷については犯罪者でない者で学のある者は買収した商会の運営を行ってもらおうと考えている。」
「学・・のある者?は分かったけど、無い者はどうするにゃん?」
「すべての存在に平等に権利があるわけでは無いからね。この世界は不平等だろ?奴隷という商売が成り立つ以上需要や必要性がある。獣人が集まれば保護するが、犯罪者や売られた者については今まで通りの商売をするようにしようと考えているよ。」
「そう~、ありがと~。やっぱり私達にとって人間には抵抗があるから~。」
聞けば犯罪者の奴隷については鉱山での仕事や魔獣の討伐を担う仕事場に率先して売却され、損耗率もかなり高いらしい。劣悪な環境での仕事場や死亡率の高い職業に強制的に就かせられるのでそれも理解できる事だった。
また、借金のかたに売られた者で見た目の良いものは娼館に売られたり、知識がある者は上手くいけば貴族の文官として働くことも出来るらしい。
これからのセリアンスロゥプの運営について人口が増えることや食料、住居についてどうすべきかなど、やるべき事や仕事がどんどん増えていく事に溜息を吐く思いを感じながらその日は過ぎていった。
評議国との会談から3日後、第六商会の買収に対して従業員の混乱も多少あったが手続きは滞りなく進んだ。現在扱っている奴隷の人数を報告させると、獣人250名、人間60名(犯罪者45名、それ以外15名)がこの評議国の首都で管理されているということだった。当然他の都市や国に出店している支店も合わせると100倍近い人数がいるとのことだが、そこまで一気に運べないので徐々に他支店に通達していき獣人を最優先でセリアンスロゥプへ連れて行こうと考えている。
(別にケモナーという訳ではないんだけど、いつの間にかケモミミ王国が出来ようとしているな・・・)
様々な状況や要素が絡み合って現状へと至っているのだが、最終的にはここでどうするべきか、何を成し遂げていくのか常に考えながら生活する必要がある。
既にこの世界の人々にとって私という存在は大なり小なりの衝撃を与えている。その中心にいる私はどう行動するかでこの世界が変わっていってしまうだろう。この先の未来は人々にとって良くも悪くも私の行動に影響されるということだ。
(王制を敷いている国はいわゆる社会主義国に近い形態だし、そこに資本主義の考え方を浸透させようとしても難しいだろうし・・・でも私の能力を使うと社会主義は成立するだろうし・・・)
自らの思考に沈んでいると、ノックと共にミリアムが入ってきた。
「蓮様、おはようにゃ!奴隷となっていた獣人の子達の顔見せの準備が出来たと連絡があったにゃん。第六商会に顔を出して欲しいと言われたけど、今から行くかにゃ?」
「おはようミリアム。じゃあ用意するから今から行こうか。」
「了解にゃ!みんな準備は出来てるからよろしくにゃん!」
「・・・やけに機嫌が良いね、どうしたの?」
「新しい仲間が増えるから当然にゃ!しかも一度に200人以上も助け出すことが出来たのだから誇らしいのにゃ!」
どこの国でも獣人の奴隷の扱いは酷いものだったという。それはオーラスト王国でもその一端を見ていたから理解できることだ。
あの首輪で自由意思のない道具のような扱いから解放してあげることが出来るというのはミリアムの言う通り誇らしいことなのだろう。
「そうだね、ただ一度にそれだけの人数は運べないから日数が掛かるし、セリアンスロゥプの受け入れ体制も出来てないから・・・帰ってから忙しくなるけど平気かい?」
「にゃははは!蓮様はまだまだ獣人の力を分かってないにゃん!その気になれば3日寝ずに働けるし、仲間のための忙しさならどおってこと無いにゃ!」
頼もしい言葉に頬を緩ませるが、同時に今まで人間が彼女達にしてきた事が同じ境遇に陥っているであろう仲間を助けたいという想いをより強烈にさせたように感じた。
ミリアムの言動からも新たな仲間を増やしたときに心のケアが必要になりそうだと感じ、後でルーシーへの相談事項として覚えておこうと頭に留めておく。
「さぁ、新しい仲間の所に行こうか!」
続きます。




