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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
50/61

49 手札

3話目です。

 ビジネスの商談において主導権を握るためには相手の欲するものを持っているかどうかだ。

相手の欲しい物が既に顕在化していれば簡単な話で、それをちらつかせながらこちらの要望を相手に飲ませていけばいい。仮に潜在化していたとしてもこちらの技量の問題となるだけだ。


そして最も単純で、最も簡単な主導権の握り方がもう一つ・・・。


「では改めてようこそアッセンブリー評議国へ。こちらにいらした目的は帝国皇帝の書簡にもありましたが、何か探しているものがあるとのことでしたな?」


ギムルと名乗っていた進行役がさっそくといった様子で本題に入ろうとする。

気を利かせてなのか評議国の各人の前には商会名と名前が分かるようにプレートが置かれているので、自己紹介など無くても誰がどんなあきないをしているのかが分かるようになっていた。


(商人は時間を大切にするということかな)


「ええ、おっしゃる通りです。お聞きするところによるとここは商人の国というだけあってあらゆる物が集まり、どんな物でも手に入ると聞きましたので帝国の皇帝陛下に取次ぎをお願いしたのです。」


「そういえば帝国の皇帝陛下とご婚約されたとのことですな、おめでとうございます。」


「ありがとうございます。彼女からも評議国であれば何でも揃うと助言していただきましたので。しかし貴国を上空から見させてもらいましたが、様々な色を使ったカラフルな都市には驚いてしまいました。先程の部屋も高価な調度品が所狭しと飾ってありましたので、貴国は随分と羽振りがよろしいのですね?」


「ははは、建物の外壁の色はそれぞれの商会を表す色が塗られておりますので、過去に出店競争で商店が乱立した折にこんな統一性のない都市になってしまったのですよ。それにここは商人がしのぎを削る国ですからな、高価な物を持つことが出来るという事はそれだけ儲かっている商会だというアピールになります。」


「なるほどなるほど、勉強になります。私も先程申し上げた通り国を作ろうとしている最中ですので、大変参考になるお話ですね。」


「おぉ、そうでしたな。火乃宮殿は新しい国を作るとか。どうでしょう、我々の商会とお取引下されば新しい国は飛躍的に発展いたしますぞ!」


「火乃宮殿、是非とも私の商会とも取引をしていただければ、貴方の言う通りお互いにとって利益になりますわ!」


話に割って入って来た人物のプレートを確認すると第五商会のロリ・デイルーズという美熟女が力の籠った目で身を乗り出して話し掛けて来た。


「ロリ・デイルーズ様ですね。貴方の第5商会は確か・・武器を主に扱っているとか?」


「はい。当商会のネットワークを使えば、火乃宮殿が作り出す武器を始めとして、討伐した魔獣の素材を使用した武器・防具に至るまで世界中で販売することが可能です。火乃宮殿の作り出す武器の質は一級品と聞いておりますので、莫大な財が入ってくる事は間違いないと考えておりますわ。」


「お待ちください!それでしたら当商会では魔具を扱っておりますが、火乃宮殿が討伐したと言われる魔獣の素材で魔具を作って販売すれば、単に武器に加工して販売するよりも利益率は格段に増します。」


自分の商会をアピールしていた第五商会に対して数少ない青年でイケメンの第四商会のクルシュ・フリューゲルも身を乗り出してアピールしてきてくれた。


「ご提案ありがとうございます。しかし私には一つ懸念事項がございまして。」


「はぁ、いかがされましたかな?」


「実は少し前に教会と少々いさかいを起こしてしまっておりまして、それが取引するにあたってあなた方の迷惑になる可能性もあるのではと考えているのです。」


「お気遣い感謝いたしますわ。ですが心配は無用です。何故なら我々が信じるものはお金と言っても過言ではないですから。こう言っては不敬かもしれませんが、私が日々アスタルト様にお祈りを続けているのも我が商会の繁盛を願ってですから。」


「なるほど、ロリ・デイルーズ様は実に商人らしい方の様でおいでだ。」


「ふふふ、それは火乃宮殿もそうでしょう?」


意味ありげな笑みを浮かべるロリ・デイルーズに評議国側の人間の3人ほどがいぶかしげな視線を送る。


「さて、そろそろ本題に入りましょうか?」


「おぉ、そうでしたな。では何なりと申してください。」


「まず一つは遺物の定期的な納品をしてください。先日伝えた通り使用の用途不明なものが面白そうですのでそれを優先するように。次に悪魔に関する情報とこの世界の歴史をより詳細にまとめた物を文章にまとめて提出するように。量が膨大になると思いますので、出来た物から順で構いません。」


次々に要求を突き付けてくる私にあっけに取られた商会の長達はぽかんとした表情でこちらを見つめ、逆に理解している者たちはせわしなくメモを取っていく。


「あ、あの、何を言って・・・」


「それから、新しい国の造成作業が山のようにありますので人員の派遣と、それに伴う食糧事情の変化を考慮して食料物資もお願いします。」


「はい、おまかせください。」


「お、おい、何言っているんだ?」


第一商会から第五商会と第九商会の長たちは血走ったような目でメモを取り、時々返答し内容が間違っていないか適宜確認していた。その異様ともいえる状況に第六商会から第八商会の長たちは混乱しているようだった。


「最後に、セリアンスロゥプ中立国は獣人が中心となる国にするつもりですので、第六商会が扱っている奴隷・・・特に獣人の奴隷は全て私が受け入れます。手筈が整い次第順次輸送していきますので早急に準備をしてください。」


そう私が発言すると、奴隷を扱う第六商会の女装男が立ち上がって抗議の声を上げてくる。


「な、なに言ってるのよう!そ、そんな事出来るわけないじゃない!もう飼い主が決まっている者だっているのよ!あなたに売却するにしてもこちらだって信用ってものがあるのよ!」


額に青筋を立てながらまくし立ててくるが、女装した変態男という認識しか持てないので迫力に欠けるなぁという関係ないことを考えながら彼を見ていた。

言い終わった彼に対し両肘をテーブルに乗せながら手を組み顎を乗せて彼に語り掛けるように伝える。


「語弊があるようだが全て()()と言っている。あぁ、心配しなくても君の仕事はちゃんとあるよ、奴隷たちの人数管理と輸送するまでのお世話だ。」


「だ、だから何言ってるのかって言ってんの!無理よそんな事!」


彼は更に興奮し、テーブルに手を打ち付けて抗議する。


「そんな事は無いんですがね。ねぇみなさん?」


「はい、既に第六商会は火乃宮殿の持ち物として各種準備は出来ております。最後にここに両者のサインを頂けば商会の譲渡は完了です。」


第一商会のギムルが差し出してきた2つの書類を見た瞬間、変態男が目を見開いて絶叫する。


「そ、それはうちの商会の権利書じゃないの!!なんで・・・ここの金庫は世界一安全じゃなかったの!!!?」


「ふふ、いやはや安い買い物でしたよ。」


私は彼を見据え、挑発するように嘲笑う。


「う、嘘!一体いつ、どうやって・・・」


「はは、商人としてしのぎを削って来た人物の発言とは思えませんね。そんな事より早くサインして最後の仕事をお願いしますよ。」


「い、嫌よ!せっかくここまで大きくして、国の代表にもなれる商会まで育て上げたというのに・・・。な、なんであなたみたいなぽっと出の奴に!!」


「コーダッチ諦めろ。既に手続きはほぼ完了して後はお前と火乃宮殿のサインで終わるのだ。」


ギムルが諭すように彼に語り掛ける。


「そ、そうか、あなた、いえ、あなた達裏切ったわね!この卑怯者!!!」


コーダッチの叫びが大会議室に木霊するが、それはまさしく負け犬の遠吠えともいえる叫び声だった。怒りや絶望、悲しみ、無力感、絶望などの様々な感情がその叫びに込められているようだった。


「さて、時間は有限です。みなさんよろしくお願いしますよ!」


「「「はっ!かしこまりました!!」」」


 その言葉と共にコーダッチを羽交い絞めにしながら無理やり書類にサインさせ第六商会の私への譲渡が他の商会長が証人となって無事に完了する。

事ここに至って取り残されている2つの商会長達は6つの商会が裏切り自分たちは取り残されたのだと理解し、焦りの表情を浮かべながら私に話しかけて来た。


「あ、あの、我々はどうなるのですか?」


「ふふ、どうなると思いますか?」


意味ありげな言葉を残し、後の作業は6つの商会の人間に任せると伝えてこの部屋を後にした。

健康でも経済でも大変な状況ですが、こんな時こそ読み物を!!

次回更新は3月21日です。よろしくお願いします。

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