48 アッセンブリー評議国
連投2話目です。
side 評議国
アッセンブリー評議国の会議室、今この会議室の円卓には10の商会の長達が重苦しい雰囲気の中一堂に会している。
この重苦しい空気の原因は異世界から召喚された火乃宮 蓮なる者の一連の行動の結果から来るものだ。
召喚された直後に王国で2000を超える魔獣をたった一人で討伐したことから始まり、そのスキルで武器などを材料もなく作り出すことが出来る。さらに帝国ではリヴァイアサンの討伐に新しい国の建国と話題には事欠くことがない。各国の商人からの情報網を使うまでもなく彼の情報は集まってくるほどだった。
「それでどうする?帝国からは火乃宮 蓮の来訪を取り計らうよう要請が来ておる。目的は我らが扱う商材と情報らしいが受け入れるかね?」
食品を扱う第一商会の会頭が口火を切って他商会の長達を見渡しながら問いかけた。
「断るという選択肢など取れんだろう。一応は帝国皇帝の婚約者で、新しく出来たセリアンスロゥプ中立国の王という立場の者になっているのであろう。その来訪依頼を断ることは他の国々に対して評議国は彼を拒絶する方針だと取られかねない。」
「そうだ。我が評議国は今のところは静観という事になっているのだ、彼と敵対行動と取られる動きは避けるべきだろう。もれなく帝国も敵に回してしまうことになる。まったく厄介な状況になったものだ。」
土木を扱う第二商会と、資源を扱う第三商会の長がそれぞれ来訪について渋々ながらも了解の意思を伝える。
「というかあの天災と言われるリヴァイアサンを倒したんだ、招かない手は無いだろう。」
「そうですわね、大きさを考えればその素材の価値は計り知れないわ。是非我が商会と取引してもらいたいものだわ!」
魔具を扱う第四商会と武器を扱う第五商会も自らの商会の取引相手に良さそうだと賛成を投じた。
「きひひ、美味い事彼の国の獣人達を譲ってくれるとうちにとっても利益になりそうなんだが難しいかね~。」
「それよりか彼を使って帝国にもっとうちの商品を流したいさね!」
「それならうちもその話に乗りたいね~。最近他国でも娼館の売り上げが落ちてきているし、まだシェアの少ない帝国のマーケットは魅力的でね~。」
「そうそう、彼の国は新しい飯の種が多そうだ。今でも彼についての情報の問い合わせは各国から入っている。根掘り葉掘り聞かせてもらいたいよ!」
この国の裏側を取り仕切る奴隷商会の第六商会、麻薬を扱う第七商会、男女の娼館経営を扱う第八商会、表から裏までいくつもの情報の売買を生業とする第九商会もこの機に乗じて己の商会の私腹を肥やしたいと考えての発言だ。
「では評議国としては彼を招くものとして帝国経由で返事を送るという事ですね。代表からは今は静観せよと受けておりますので、彼には悪印象のうちは会談の際は欠席させていただきます。」
第十商会の代理人は、自らが出席する事で不和をもたらす可能性を考慮して会談を欠席すると告げた。
「そうですな、既にそちらは彼と事を構えてしまったようですし。しかし本当に魔法が彼の能力によって使えなかったのですか?」
「間違いないですね。当の本人からの報告です。あのレベルの魔法を使いこなす者が手も足も出ないとなると・・・対応策が整うまで何も出来ないですよ。」
第一商会の質問に第十商会は困り顔を浮かべながら返答した。
「女はどうするね~?綺麗どころをうちが用意しておくかい?」
第八商会が彼の世話役の女性の用意について確認する。当然この世話役は夜の世話も含めての事だ。
「一応用意はしてもらえるか?彼が受け入れたらそれでよし、ダメなら不興を買わぬように引けばよい。」
「それもそうね~、了解よ~。」
「皆彼と取引をしたいとは思うが程々にな。頭も回るとの事だ、逆に揚げ足を取られるなよ。」
「誰に物を言ってるんだい?ここは商人の国。ぽっと出の坊やに負けるつもりはないよ!」
「分かっているなら安心した。今のところあの者が彼を処分できなかったのだから最大限利用するしかあるまい。ではよろしく頼むぞ。」
会議は滞りなく終わったが、各商会長たちはいかに他の商会を出し抜いて利益を得ようかの算段を立てるのに忙しかった。
ここは商人の国、利用価値があれば最大限利用し、価値がなくなればゴミのように捨てるだけ。一つの商会を除いてこの場にいる誰もがその競争を勝ち抜き、他者を蹴落としてこの場に座っている。
そしてこの場にいる誰もが今まで通り自分は利用する側だと信じて疑っていなかった。
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アッセンブリー評議国、別名商人の国。
空から見るこの国は周りの草原の緑が目に優しい場所に首都ビズリーがあった。
周りは緑豊かなのだか、首都にある建物はカラフルなものが多く、あまり見つめていると目がチカチカしそうだった。
また、どこの国でもそうだが、首都には堅牢な外壁がそびえ立ち、近くにいるであろう魔獣や不審者の侵入を防ぐように兵隊が目を光らせている。
それはここアッセンブリー評議国も同じで、この世界では見慣れない乗り物が上空からゆっくりと下降している様子を見ると門兵が慌て出していた。
「火乃宮様、評議国に到着しました。間もなく門兵がやってきそうですので私共で対応いたします。」
「ありがとう。日にちは向こうの指定だったから来ることは分かっているだろうし問題無いと思うけど、エレノアから預かった書簡を忘れないようにね。」
「はっ!お任せください!」
パメラから到着の連絡を受け、対応を任せる。そもそも日付を指定したのは評議国側なのでスムーズに案内してくれると思っているが、もしかすると対応するパメラが獣人という事で何らかのトラブルもあり得る。どのような状況になっても即座に対応できるようにその様子を伺う。ちなみにこの国へはいつもの近衛隊5人とルーシー、ミリアム、私の8人での来訪している。
しばらくすると対応していたパメラが足早に戻って来た。
「お待たせしました火乃宮様。相手の準備は既に出来ているという事で、すぐに案内するとのことです。」
「分かった。では行こうか。」
ビーグルに揺られて30分ほどで大きな建物へと到着した。評議国には王という存在はおらず10の商会の長による合議で国の指針が決められている。そのため城という物は無く、会議場と言われる建物に集まって色々なことが決められているという事だった。
会議場の待合室に通されるとそこは私の世界でいう所の成金趣味の高価そうな品物が統一性なく飾られていた。この国の首都を上空から見た時から感じていたのだが、商人の国の特性なのかみんな自分の主張したいものを他者よりも強調させることに腐心しているようだ。
しばらく待つと準備が整ったという事で大会議室の間という所に案内された。
入室するとそこには艶のある大きなテーブルに9人の人物が窓を背に立ち上がってこちらを出迎えていた。この世界に上座下座の概念があるかは知らないが、面接を受けるような圧迫感が感じられる。
(あるいはそれが狙いなのだろうか・・・)
「ようこそお越し下さいました火乃宮様。いえ、セリアンスロゥプ中立国国王陛下。私は本日の会談において進行役を仰せつかっております第一商会のギムル・バージルと申します。お会いできて光栄です。」
「初めまして、火乃宮 蓮です。本日はお忙しい中お時間を割いて下さって貴国のお心遣い、感謝の念に堪えません。この会談の時間がお互いにとって有意義なものになるようにいたしましょう。それと、セリアンスロゥプはまだ国として建国の準備中ですので陛下という敬称は不要ですよ。」
「おぉ、そうでございましたか。では火乃宮殿、立ち話も何ですのでどうぞおかけください。」
着席を促されると、私とルーシー、ミリアムが座り、パメラ達近衛隊は私の席の後ろにいつでも動けるよう整列して待機した。
眼前の顔ぶれを確認すると対面に座っているのは9人だった。話では評議国には10の商会の長が居るはずなので一人足りないことになる。
その顔ぶれは半数は老獪さを覗わせる初老の男性達、少数の聡明そうな青年、妖しい笑顔を浮かべる美熟女が2人、男性の顔をして女装してる変人が1名だった。
(やはり商売人達がしのぎを削る国だけあって全員が全員とも一癖も二癖もある人物が揃っているようだ)
今から始まる主導権の取り合いに気を引き締め直して会談の口火を切る。
続きます。




