47 衛星兵器
おはようございます。コロナウイルスで混乱する状況ですが、外出できないときには物語を読んで楽しみましょう。
そんなわけで今回も3話の連投です。
ギルクローネ帝国での宣言から3日、既にセリアンスロゥプ中立国へと戻り次の準備を始めている。帝国ではまた例の遺物や鉱石等もある程度仕入れてきたので対悪魔兵器の開発も準備が整ってきた。
ちなみに領土については遺跡から東へ150キロ、南北に100キロ、西は海までの全てという細長い領土となった。ただこの領土内の9割近くは前人未到の魔獣の領域でもあるので、領土の全てで開発を行うのはまだまだ先の話でもあるし、現在の中立国の人口は250人程なので、人口に対して領土は広大過ぎるともいえる状態だ。
そして今は海にほど近い場所で魔獣達を一掃し、土地の整備を行っている最中だった。
「ところで蓮様、こんなに遺跡から離れた場所を開拓してどうするの?」
爆乳牛娘のカレンが作業の手を止めて聞いてくる。ちなみにここに連れて来ているのはいつもの親衛隊5人だ。この5人で差し当たって1.2キロ四方の場所を整地しているのだが、さすがは魔法の世界だけあって土魔法の魔石を使うことで総勢たった6人の人手で1時間ほどでその作業も終わろうとしていた。
「今後は他国からの干渉が有るかもしれないし、何より悪魔の動向も出来る限り把握しておきたいからね、その為の施設を作ろうと思っているんだよ」
「火乃宮様、それでしたら居住地である遺跡のあたりの方が何かと便利ではないですか?」
今度はパメラが同じような疑問を投げかけて来た。
「ここは中立国の領土でも南の方で赤道に近いからね。西側に離したのは騒音とかを気にしてだよ。」
今作っているのは軍事衛星を打ち上げるための施設の建造だ。衛星を搭載したシャトルを打ち上げるには赤道に近い場所ほど惑星の自転の遠心力で重力加速度が小さくなるので、重力加速度が小さいと同じ質量でも軽くなり打ち上げやすくなるというわけだ。
「はぁ、赤道ですか?それに騒音って、そんなにうるさい物を作るんですか?」
「まぁ騒音と言っても一瞬の事だけど。こんな施設を人が住む場所近くに作るものではないしね。」
「「はぁ、そうなんですね。」」
2人とも良く分かっていないような返事だが、この世界には科学という物がないので魔法文化に必要ない知識というのは研究されることもなかったのだろう。
「とりあえず、場所の整地作業も終わったし後は少し離れて見ていてくれ。」
2人と雑談をしているうちに他の子たちが作業を終わらせてくれたので、あとやるべきことは施設の建造だ。
「でも本当に蓮様一人で大きな建物なんで作れるんですか?」
作業を終えてくれた牛娘のポリー、メローラ、リジーたちが戻ってきて私に聞いてきた。
「私の能力の確認も兼ねてだけど、多分問題ないから大丈夫だよ。」
リヴァイアサンの討伐の後鑑定の魔石を使って確認した私の能力は以下の通りだった。
名 前:火乃宮 蓮
レベル:195 体力:63180 魔力:-----
スキル:知識創造(限定開放)(付与可能)(大規模創造可能)
万物封印(2/5) (封印サイズ中)(封印時間増加)
称 号:統治者 開発者 死神 異世界の理を持つ者 悪魔の怨敵
平凡な封印者 獣人の英雄 超越者
(大抵こういったレベルの上昇は高レベルになるにつれて上がりにくくなるはずだが、一気に35も上がるとはリヴァイアサンのレベルは相当だったんだろう。というか称号が少し変わっているが死神は一体誰にとっての事なんだか・・・)
今回のレベルの上昇に伴って最も注視したところは知識創造スキルの大規模創造だ。具体的にどの程度の規模まで可能なのかは今から試すとして、今までは数を作ることはあってもそれほど大きな物を作る機会が無かったので、これを機に創造の及ぶ限界も試してみたいと考えていた。
まずは衛星軌道上へ衛星や物資を送り出すためのマスドライバーの創造に取り掛かる。マスドライバーは惑星の衛星軌道上に物資を効率良く打ち上げるための装置で、地上から第一宇宙速度にまで加速させたコンテナなどを放り上げる物である。ちなみに現代科学上の理論ではリニアモーターカー軌道を十数キロ設置しなければならないが、人を乗せるわけでもないので先のレールガンの加速方式を応用して射出するので∑(シグマ)の解析結果からそれは全長1キロという規模で済むようだった。
ただ、大規模な創造物になるのでどこかに不具合が出ないとも限らない為、より精密に作り出すためスマホに表示した設計図を鮮明に脳裏に浮かべるよう目を閉じながら集中する。
(あれ、なんだこれ、やけに鮮明というか詳細に思い描けるぞ。)
レベルの上がった影響なのか設計図を思い浮かべようとすると小さな部品一つに至るまで思い描くことが出来た。
目を開けると眼前には思い描いたもの、スマホに表示された設計図と寸分違わぬマスドライバーがそこにあった。
「れ、蓮様!き、急に目の前に大きな物が現れました!」
パニックになっているのかカレンが言葉を噛みながら私にしがみついてきた。ふと振り返って見るとカレンやポリー、リジーも私の後ろに隠れるようにしている。ただパメラについては体格もあって全く隠れることは出来ていないのだが。
ちなみにメローラは口を開けたまま空に向かってレールが伸びているマスドライバーを見上げていた。
「お、落ち着いて、大丈夫、私の能力で作り出したものだから。」
「いえ、事前に聞いてはいましたが、まさかこんなに巨大なものが一瞬で現れるなんて想像できなくて・・・」
彼女たちの気持ちも良く分かる、私自身が作り出しておいてなんだが、目を閉じて開けた時には巨大な建造物が忽然と現れていることに驚かないわけがない。
続けて隣接する場所に衛星等を管理、コントロールする5階建てのビルのような制御棟、衛星等を作り出す倉庫の様な大きさの研究棟、クレーンなどを作り出していった。
「はぁ・・・、凄いです火乃宮様、メローラは驚きました!遺跡の様な建物があっという間に・・・やはり救世主様、いえ創造を司る神様なのでね。」
口を開けて見ていたメローラが手を胸の前で組み、跪きながら神に祈りを捧げるような姿勢と見開いた瞳で見つめて来た。この勢いのままだと能力を使うにつれ狂信者が生まれるのではないかという危惧すら覚えるほどだ。
「いやいや、私は神では無いからね。ただ創造のスキルがあるだけだから。」
「はい!メローラは分かってます、分かってます!」
メローラは身長はカレンより少し大きい位なのだが、その顔は童顔でしかも茶色の髪を三つ編みにした髪型をしていて少し背の高い小学生くらいにしか見えなかった。そんな見た目の子が分かっていないだろうという返答をしながら、私を崇めてくるのは居心地が悪い。
一通りの施設の創造が終わり次に細かい設備を次々作り出してカレン達にそれぞれ運搬をお願いする。制御棟には寝食が出来るスペースも準備しているので相当数のベットやテーブル、椅子、クローゼットから調理設備に至るまで作り出した。
更に制御棟のメインである衛星をコントロールするためのスパコンやモニター、各種計測器などを作り出し調整していき、ある程度終わる頃には気付くと外は既に暗くなっていたらしい。らしいというのもパメラが作業に熱中していた私に声を掛けて気付かせてくれたのだ。
「火乃宮様、既に日も落ちておりますので、今日の作業はここまでにして食事になさいませんか?」
「あぁ、もうそんな時間なのか。レベルのせいか全く疲れを感じなくなってしまって。皆は疲れているだろうから食事をとって休もうか。」
「はい!かしこまりました。そ、それで、よ、夜はーー」
パメラがもじもじしながら小声になって話しているとカレンが走ってきていた。
「あー、またパメラ隊長が抜け駆けしようとしてる!ダメですよ、今日は私が最初です!」
あの夜の出来事から既に何度目かになるか分からないデジャブのようなやり取りをパメラとカレンが繰り広げる。毎夜のようにルーシーやミリアム、パメラ、カレンが求めるので順番でお願いと言ったのだが、日をずらすのではなく時間をずらすだけで最終的にはみんななだれ込んで来るのだ。
(幸いなのかどうか分らないが無駄に体力があるので全員相手でも大丈夫なのだが・・・まさか私が小説の中でしかありえない状況になるとは・・・)
「あのあの、今夜はメローラが最初じゃダメですか?」
2人の言い争う中、第三の登場人物が名乗りを上げて来た。その言葉はこの状況に更に混沌を巻き起こすと溜息を吐いたのだが・・・
「そう、メローラが・・・まだ子供だと思っていたのに・・・分かったわ。」
「メローラちゃんまで・・・そう、分かった。」
「ありがとう!パメラさん、カレンさん。メローラ頑張ります。」
なんだか私がいないところで夜の話がスムーズに進んでいくのだが、カレンとパメラは何に納得したということなんだろう。
釈然としないものもありながら3人を相手に夜は更けていった。
(そう言えばカレンは最初の方は純情で恥ずかしがり屋だったのに、今じゃあのキャラはパメラに取って変わられてるな・・・)
・・・後日談だが、ミノタウルスの獣人は初めてを済ませることで成人と認められるらしい。それと同時にミルクも出るようになると説明された。ちなみにこのミルクも自分の認めた相手とまぐわうかどうかで味が格段に変わるらしい。思い返せばカレンのミルクも渡された時の物と、あの後では格段にコクが出ていて美味しくなっていた。
そんなメローラとの進展もありながら一週間ほどかけて設備を完全にAIでコントロール可能にして、周囲をぐるりと5メートルの高さの強固な塀で囲んでいる。そして軍事衛星を一基衛星軌道上に打ち上げることに成功させた。この衛星には地上監視の役割の他に衛星軌道上からの質量弾による攻撃も可能としている。現代で言えば神の杖と呼ばれる兵器だ。
現代科学ではまだ実現に問題点も多いのだが、その一つとして質量体が大気の断熱圧縮により融解してしまうことだ。そこでこの世界ならではのアダマンタイトでコーティングしたチタンを採用した。この世界での鉱物の情報とを合わせて分析すると十分に断熱圧縮に耐える物になったはずだが、打ち出しにレールガンを使って射出するので、元々の計算でも核爆発に匹敵する威力が更に増幅すると考えればそうそう試すことは難しいので、悪魔に対する切り札として温存しておこうと考えている。
「よし、これでこの星の地上監視がより簡単になったな。もう少し遺物が手に入ればもう何基か打ち上げたいが、今はこれが限界だな。商人の国である評議国にあれば良いが・・・」
制御棟のコントロールルームで監視衛星から送られてくる地上の画像を見ながら評議国の品揃えに期待を寄せていると扉が開いてパメラが顔を出した。
「火乃宮様、評議国への出立の準備が整いました。昨日エレノア陛下から・・スーマホ?から連絡が来まして帝国経由での評議国への入国と会談の段取りが付いたとのことです。」
「分かった、ありがとう。では行こうか、商人の国アッセンブリー評議国へ。」
続きます。




