45 事後処理
連投2話目です。
翌朝目を覚ますと既に日は昇っていた。体を起こして周りを見るとウサ耳、ネコ耳、イヌ耳の美女たちが静かに寝息を立てていた。未だぼんやりとしている意識が段々とはっきりしてくる。
(あ~そうか昨日は・・・)
「う~ん・・・あら~おはよう蓮ちゃん~。昨日は凄かったわ~。あんなに溜まっているならもっと早く言ってくれれば良かったのに~。」
そう言いながらルーシーは裸のまま私にしな垂れかかって来た。
「い、いや、その・・忙しくてね・・・それに君達は魅力的だから。」
「あら~、嬉しいわね~。じゃあ今日も頑張ろうかしら~。」
ルーシーは私を押し倒しながらその柔らかい唇を押し付けてくるがその時、扉をノックして誰かが入って来た。
「おはようございます火乃宮様!昨日はお疲れと思いお身体の無事を伺えませんでしたが・・・」
軍人のような姿勢ではきはきと話すパメラと目が合い、周りの状況から私が何をしているか察したのか言葉に詰まっていた。
「も、申し訳ありません!そ、その、あの最中だったとは知らずに!・・・でも、言ってくだされば私だって・・・あ、でもこんな大柄な女は人間はあまり好きではないと・・・で、でも私だって寵愛が・・・あぁ~!!!」
一人でパニックに陥っているパメラに何をどう言おうか迷いながらも声を掛ける。
「あ~、パメラ。何か用事があったのでは?」
「はっ、あ、そうでした。あの、火乃宮様ラリサの件でそのーーー」
パメラの言いたかったことは、ラリサの話で私が不都合になるようなことはせずに、真実をみんなに伝えてはどうかという事だったが、私はそれを昨日マリア達に話したことを理由に否定した。
そして、その決断をパメラたちにも納得して欲しいとお願いしたのだが・・・。
「まぁ、こんな格好で言っても説得力も何もないかもしれないけど、今は皆が一つになって進むべき時だから納得して欲しいんだ。」
今の私の姿は下半身は布団で隠れているものの、上半身は裸で、そこに同じ姿のルーシーがしな垂れかかっている状態だ。私が相手の立場だったら、ふざけるなと言いたくなるがパメラは違った。恭しく片膝をつきながら首を垂れる。
「いえ、それが火乃宮様の決断ならば我々は従います!どうぞ思うがままに!」
「そ、そうか。ありがとう。・・・今日もやるべき事は山のようにあるからよろしく頼むよ。」
「はっ!仰せのままに!」
場がせっかく落ち着いたというのにルーシーが横合いからからかう様に私にお願いしてきた。
「ねぇ~蓮ちゃん。パメラちゃんもどうかな~?ああいう子はダメ~?」
「えっ、いやいやダメではないよ。」
私の返答に目を輝かせながら、パメラが跳びあがる様に反応した。
「ほっ、本当ですかっ!!!?わ、私でもいいのですね!で、では早速寵愛をーーー」
そう言いながらいそいそと服を脱ぎ始めようとするので慌ててスマホで時間を確認しながら待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待って!時間は・・・もう9時だから、さっき言ったようにやることもあるし・・・夜ではダメか?」
「はっ、申し訳ありません!あまりに嬉しかったのでつい先走ってしまいました。で、では、そ、その・・夜に・・・お、お願いします・・・」
パメラは大柄で筋肉質な肉体の中にも出るところはしっかり出ている。その顔はきりっとした涼しげな美人でサディスティックな印象なのだが、そんな子が顔を赤らめながら喜んでいる様は大きなギャップを感じて可愛かった。
「ふふ、良かったわね~。」
この状況を作り上げたルーシーは一人にこやかな笑みを浮かべていた。
・・・・・・・・・・
朝のひと騒動の後にセリアンスロゥプの皆を集めて今回の戦いの情報を周知する。
魔獣との戦闘による重軽傷者については発表までの間に回復の魔石によって全員が既に回復していることを確認していたので、周りを見渡すと皆明るい表情の者が多かった。
しかし、唯一の犠牲者であるラリサについて、悪魔との戦いで私を庇って犠牲となってしまったと伝えると、みな一様に沈んだ表情となってしまった。特にラリサは、ワイバーンを従魔とする能力が高く、セリアンスロゥプの内政を司る5人の内の1人だったので、皆の衝撃は大きいものだった。
中には私に対して、「側に居たのに助けられなかったのですか?」ということも言われたが、「リヴァイアサンの攻撃に対処するのに精一杯でどうにも出来なかった」と釈明に終始した。私からの提案としてラリサの事を英雄として祀ってあげたいとお願いし、みんなもそれを受け入れ後日セリアンスロゥプ全体での慰霊祭を行うこととした。
(みんなの心の内は分からないが、最大限配慮してまずは心を一つに国を作り上げていかなければ・・・)
そして昼食の後に討伐したリヴァイアサンの亡骸を利用できないかと考え、遺跡近くまでオスプレイを使って運搬したが、獣人の鍛冶職人曰く鱗や皮、牙などとんでもない価値がある物だが残念ながら加工する技術がないと頭を下げられてしまった。
そもそもリヴァイアサンとは出現すること自体が極稀で、討伐できたことさえない。過去撃退の際に剥がれ落ちた鱗数枚でお城が立つ程の価値が付いたそうだ。今回丸ごと手に入れた結果、上手く捌けばまさに大規模な国を一から作り上げてなお釣りがくるほどだ。特にセリアンスロゥプはまだ人口が極めて少ないので、潤沢な資金で国家運営が可能になる。
とは言え、今のところ加工技術も販路もないのでこの事については一旦後回しにして、帝国へリヴァイアサン並びに魔獣討伐の報告に向かうこととした。
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時刻は午後4時過ぎ。
皇帝エレノアのメイドであるシエラに私との会談の場を設けてもらう様に先触れをお願いする。さすがに2度目ともなれば門番の守備隊も驚きの色もなく淡々と職務を遂行してくれた。前回と違って今回は門近くにある待合室に案内されている。高貴な身分の人物の為なのか待合室の中は豪華で広々としていた。
今回の同行者は前回のメンバー+パメラとなっている。これというのも、レールガン準備の手伝いをしてくれた牛娘5人組は対外的に私の近衛隊とすることになり、パメラが隊長として就任したからだ。
それは別に構わないのだが、先触れの返事を待っている間に朝の一件のことでパメラとカレンが何やら言い争いをしておりその内容も私にとってはため息が出るものだった。
「なんでパメラさんが先なんですか!私の方がずっと一緒に居たし、そ、その、私のミルク美味しいって褒めてくれたもん!」
「ふっ。長く居れば良いというわけでは無いだろう。ミルクは単に私のを飲む機会が無かっただけにすぎん!」
「む~。でもでも、人間の男の人は自分より大きな人は好まないはずじゃ・・・」
「ふふん、火乃宮様をそんな器の小さな男と一緒にするとは、お前の忠誠心もその程度か。」
「ぐ、ぐぐ。な、なら私の事も今夜一緒にーーー」
巻き込まれたくなかったので、遠巻きに聞いていただけだったが、段々と不穏な予感がしてきた時に良いタイミングで待合室の扉がノックされた。
「お待たせしました火乃宮様!皇帝陛下がお会いになるそうですので帝城へご案内いたします!」
「分かりました。お願いします。」
後ろからカレンの悲痛な叫びが聞こえるが、今は無視して案内に従って帝城へと向かう。
「よく来てくれた!シエラから報告は受けておるがリヴァイアサンを討伐したというのは本当か?」
絢爛豪華な玉座の間にて、エレノアはいつもの特徴的な赤いドレスに身を包んでいた。
急な訪問のためか、側に控えているのは宰相と軍務大臣の他は数人の近衛兵だけだった。
そんな中エレノアは唾を飛ばすような勢いで、シエラからの報告の真偽を確かめるべく身を乗り出して私に問い掛けてきた。
「ええ、当初の予定とは多少異なりましたが、リヴァイアサンをはじめとした魔獣は討伐しました。その証拠にリヴァイアサンの鱗をお持ちしましたのでご確認下さい。」
後ろを向いてパメラに目配せすると、あらかじめ布に繰るんで持ってきた鱗を近衛兵に渡す。
鱗と言ってもその大きさは一枚で1メートル程はあるのだが、重さは羽のように軽く、生半可な武器では傷一つ付けることも出来ないものだった。
見た目に反してあまりに軽かったのか、兜の内側から驚きの声が漏れていた。
丁寧な動作で皇帝の御前で跪いて布を広げると、薄い青色に輝く鱗を見てエレノアは感嘆のため息を漏らしていた。
「おぉ~。これが伝説級素材のリヴァイアサンの鱗か・・・素晴らしいのじゃ!」
伝説級素材というのは聞き慣れない言葉だったが、セリアンスロゥプの職人が言っていた通り相当価値があるのだろう。その話を裏付けるように、エレノア以外の周りの反応もその鱗に釘付けになっていた。
「これでリヴァイアサン討伐の証明になりましたか?」
「う、うむ、そうだな。妾も文献でしか見たことがなかったが、これはまさしく記されていた通りの物じゃ。しかしまさか天災級と言われる怪物すら討伐してのけるとは・・・お主の能力は凄まじいのぅ。」
「お褒めに預かり光栄です。そこで一つお願いがあるのですが?」
話の流れからここだというタイミングを計ってこちらの《《ある要求》》を通そうと考えた。
「な、なんじゃ?お主の願いであれば無理難題でなければ聞いてやれるが・・・」
エレノアは私の要求に最大限の警戒感を示すような答え方だった。
「そう警戒なさらずに。それほど無理難題ではないはずですが・・・。実は割譲していただく領地をもう少し広げて頂きたいのですよ。」
そう伝えた瞬間ざわめきと共に宰相や軍務大臣が身を乗り出し、鋭い視線を私に投げかけ次いでエレノアの反応を見やった。
「お、お主もしやこのギルクローネ帝国を飲み込むつもりか?」
危機感を露わにしたエレノアが玉座から立ち上がり私の発言の真意を確かめようとする。
「そんな事は考えていませんよ。今後の対悪魔の防衛のために少し広大な場所が必要になったものですから。」
「そ、そうか。・・・どの程度必要なのじゃ?」
落ち着きを取り戻し、若干安堵したような表情で玉座に腰を下ろす。
「シエラから聞きましたが、遺跡より東側300キロまで都市はありませんし、西へ100キロも移動すればそこはもう海です。そしてこれらの場所は森深く、多くの魔獣が闊歩する帝国にとっては開発不能地帯でしょう?」
「・・・じゃから領土をよこせと?」
エレノアが鋭くこちらを見据えてくる。
「もちろんタダでとは言いませんよ。そのリヴァイアサンの鱗についてもある程度融通しましょう。」
「・・・それは魅力じゃが、そちらにはこの素材を扱えるだけの技術者はおらぬのではないか?」
「正直に申し上げればその通りですが、帝国の皆さんの反応を見る限り素材として捌くだけでも引く手数多の様ですからね・・・」
「・・・妾を・・帝国を脅すつもりか?」
「まさかそんなことありません。ただ、帝国の産業の一つは武器の輸出もありましたね・・・。他国の方が質の良い武器が出来てしまうと・・・何とも困ったことになりそうですね。」
エレノアは苦虫を噛み潰したような表情に趨勢は決したと考え言葉を続ける。
「そんな顔をなさらないでください、美人が台無しですよ。大丈夫です。帝国が他国から侮られることのない様にしっかりとフォローいたしますよ。」
「お主の性格は分かっているつもりだったが、これから縁を結ぼうという相手にここまで容赦ないとはな。もう少し妾に対して優しく扱ってくれても良いと思うのだが?」
「失礼しました。そんなに可愛い性格だったとは思わなかったので。」
エレノアは溜息をつきながら、目の前にいる人物は自分では扱いきれないのだと観念したようだった。
「まったく、よく口が回るものじゃ。では詳細については後日詰めるとして、妾との婚姻の発表じゃが、これほど早く討伐が終わると思わなんだゆえまだ準備が出来ておらん。3日後に帝城のバルコニーより大々的に宣言するつもりじゃがどうじゃ?」
「それで大丈夫ですよ。」
「では今日はもう遅いし準備をさせるので泊っていくがよい。」
「そうですね・・・分かりました。ではそうさせてもらいます。」
エレノアには彼女の娘の状況の事も伝えるべきと考え滞在することにした。
続きますよ。




