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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
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43 悪魔、その正体・・・

連投最後です。

 悪魔が憑依したというリヴァイアサンを間近かで見るとその大きさを実感する。それは以前見たことがある海上自衛隊の護衛艦ほどの大きさに感じられるほどだ。そんな生物が私に顔を近づけてくるというのは、生物の本能として恐怖を抱いてしまう。


 そして、悪魔の私に対する憎しみは相当なものなのだろう。ステータスに見た悪魔の怨敵おんてきという称号に、実際に目の前にしてたっぷりと憎しみを込められて言われた言葉にそれは表れていた。


(一体私が何をして悪魔にここまで恨みを持たれたんだ?)


 答えの出ない疑問だが、本当に心当たりもなく理解できなかった。その考えが表情に出ていたのか、リヴァイアサンが口を吊り上げた。その様は動物であるはずの魔獣に理性を感じさせ、悪魔が憑依していることを理解させられる。


「理解できない時の顔をしているな。まぁそうか、奴に聞いていた通りだな。」


 その言葉はリヴァイアサンの口からではなく、テレパシーの様に脳裏に直接響いてくるような感じだった。その口振りは私の事をただ知っているだけでなく、恨みを持つにたる何かが私との間に有ったことを思わせるものだった。


「いったい何の話だ。なぜ私を憎んでいるんだ?」


「くくっ、憎んでいるね・・・。そうだな、憎んでいるさ。お前さえいなければ俺の人生は全て順調だったはずだ。女も、仕事も何もかも全て。だからお前は俺に痛め付けられ殺されなければならんのだ。俺が満足するためにな。」


 悪魔から一方的に告げられる恨みつらみ。だがまるで心当たりはない。そもそもこの世界において私が関わって来た人々はかなり限定されるので、その中から思い返してみても殺したいほどの恨みを買うような行動をしたとは考えられなかった。

 そもそも相手は悪魔、接触の機会自体無かったので唯一考えられるのは王国での魔獣を一掃したことぐらいだ。


(自分の計画を邪魔されたからその事に恨みを抱いたのか?いや、そんな一度の出来事の話し方ではなかった・・・何なのだ一体?)


「分からないか?お前でも。まぁそりゃそうだろうな。この俺でも最初は信じられなかったからな。」


「最初は信じられなかった?どういうことだ?」


「くく、良いなぁ。お前が知らないことを俺が知っているという優越感。お前はいつもこんな感じだったんだな。」


(・・・いつも?・・・っ!?いやいやありえないだろ!あまりに荒唐無稽こうとうむけいだ!それにそれでは時系列もおかしい。)


悪魔の物言いに一人の人物が浮かんでくるが、そんなことはあり得ないと自分の考えを否定する。

しかし、浮かんだ人物を思い返せば思い返すほど悪魔の物言いに合致してしまう。


「まさか・・・魁人カイトなのか?」


「くく、まぁこれだけヒントを出せばその答えに辿り着くか。しかし、いつからそんな口の利き方になった?俺の事はもっとうやまえと教えていただろう?」


「どうやってここに・・・悪魔が魁人?」


悪魔の正体が兄などとは、私の想像の埒外だった。ありえないという混乱が私を襲う。


(私と同時期に召喚された?いや、なんで魁人は悪魔になってるんだ?ラリサの話だと何年も前から居たかのような話だ。時系列がおかしい・・・元の世界と行き来出来るのか?訳がわからない・・・)


「くく、さすがのお前も自分の理解の範疇はんちゅうを越えればそうなるのか。まったく、奴が俺をこの世界に呼んだことに感謝したいものだ。」


「さっきから出てきてる奴とは誰の事だ?」


「お前が知る必要はない。お前はただ俺にいたぶられて死ねば良い。」


称号にあった悪魔の怨敵はこういう事だったのだろう。悪魔があいつなら十分理解出来ることだった。


 もともと兄弟としてあらゆる事で比べられてきた。小さい頃は兄である魁人が私よりも優れていたが、成長するにつれて私の方が頭脳でも、運動でも圧倒するようになっていった。

それは彼の自尊心を大きく傷付けたのだろう、時が経つにつれて、兄の私に対する態度は苛烈なものへとなっていった。


 兄との比較は社会人になってからも続いた。就職先は親の経営している会社なので当然なのだが、周りからは常に出来の良い弟と凡庸な兄と揶揄やゆされていた。それは兄の耳にも届いており、ますます彼の性格を変質させていった。


 そして兄のフラストレーションは私に直接振りかざすことは周りの目もありしなかったのだろうが、所属する部署への圧力や私の婚約者の選定などでの嫌がらせと思える人選などなど枚挙にいとまがないほどされてきた。


「なるほど、魁人であれば私を殺したいほど憎んでいることは驚くほどの事ではなかったな。元の世界で人殺しは出来ないが、この世界では自分の身の安全を気にせずできるし、そもそも悪魔という存在に成ってるならもう試してみたんじゃないのか?」


私はさも当然そうだろうという口調で、兄が既に人を殺しているはずだと指摘する。私の記憶にある兄はそれほど屈折した考えをしていたのだから・・・。


「ほぅ、さすがに弟だけあって俺の事が分かるのか?こんな力を手に入れたんだから、試さないのはおかしいだろう?まぁ、この世界でだけというのも違うが。」


「・・・いつから悪魔とやらになったんだ?」


「悪魔ねぇ、まぁこの世界に来たのはもう10年近くになるかな。お前が来るまでの時間も貰ったし色々楽しませてもらったよ。」


「その10年で私に勝つ準備は出来ていると言うことかな?」


「もちろん、お前に逃げ場など無いぞ!今経験した通り何処にでも俺の目があるからな。俺が命令すればお前はこうなるということだ。」


「そうか・・・分かった。それで今、私を殺すのか?」


「くく、それも良いがもっと苦しめてからだな。周りの誰も信じれない状況で怯えながら過ごすがいい。」


 まったく度しがたいほどに兄の性格はひねくれているようだ。じわじわ真綿で絞め殺したいらしいが愚策、あまりに無能。

敵は殺せるときに殺すべきだ。殺せなければその原因を解明し次に活かすため即座に撤退する。経営でもそうだ、全てはタイミングの見極めなのだ。その眼がこの兄にはまるでない。だから凡庸などと言われるのだ。


「・・・なんだその目は?ふざけるなっ、なぜこの状況で俺を見下しているような目をしている!?」


優越的位置にいることへの傲慢ごうまんが透けて見える。


(この兄は昔から変わらないな。会社での立場や肩書は私より上という事だけで自分の能力も私より上であると勘違いした挙句に空回りをして自滅していたな。そのフォローは私がやっていたのだから何とも迷惑な事だった。)


何も言わない私に苛立ったのか語尾を荒げながら怒鳴りつけてくる。


「ぎぎ、良いだろう、お前の立場というものを分からせてやる。手足がもげるくらいでは死なんだろう、レベルが160はあるんだったか?レベルが高かろうが手足が吹き飛べば痛いでは済まされんぞ。はははっ、精々見苦しく痛みにのたうち回ればいい!」


そんな言葉が聞こえた後に眼前のリヴァイアサンがのけ反り、大きく口を開ける。


(はぁ、もうこの場で聞ける情報は聞き終わったな。)


 兄とて馬鹿というわけでは無い。凡庸ではあれど、下手に相手に情報を与えてしまえば自分にとって不利な状況を招いてしまうという事は理解しているはずだ。一番知りたい情報は兄を呼んだという黒幕についてだが、さすがにそれをぺらぺら喋るほどの無能ではないだろう。


そしてこれ以上大人しく地に伏している必要性も感じない。であればーーー


「指示入力、発射!」


 直後リヴァイアサンが後方に大きく吹き飛ばされれ、その少し後に遅れて衝撃波と爆音がとどろく。地面に倒れ伏している態勢だった私は多少飛ばされるも、高いレベルのおかげもあるのか耳鳴りがするだけで身体は無傷の状態だった。


 運河の方を見やると、遠くに水柱としぶきが見える。なるべく私に影響が来ないような砲撃だったので、当たり所が浅くなる心配があったが、どうやらしっかりとリヴァイアサンに命中した様だった。

 そんなことを考えながら見ていると、不意に身体の拘束が解かれたようで動けるようになった。立ち上がり辺りを見渡すと、離れた場所に血が点々と続いており、その血を目線で追っていくとラリサが大きな岩に叩きつけられているのが見えた。


「生きてるか?」


 その様子は目を覆うほどの状態だった。手足はあられもない方向へ曲がっており、顔を含めて体中が傷だらけだった。獣人としての特徴的な翼は折れ曲がり、今にも取れてしまいそうなほどだ。おそらく立っていたことと、翼が衝撃波をもろに受け止めてしまいこの様な惨状を招いてしまったのだろう。さらに彼女がはりつけのようになっている岩の下には、何かの魔具の様な物と私の()()()()()()()()()()()()()バラバラになって落ちていた。


「ぐ、あ・・、な、ん、で?」


息も絶え絶えと言った感じのか細い声で疑問を聞いてくる。


「策は第一に最善、次に次善と用意しておくものだよ。」


「ごふぅ、はぁはぁ、せっかく人間に復讐、出来ると、がはっ・・・」


彼女は口から鮮血を吐き出しながら己の想いを吐露していく。


「誰かに何か伝えたいことはあるか?」


「・・・み、み゛ん゛な、に、が、がん、じゃをづだ、え゛、で・・・(みんなに感謝を伝えて)」


「ああ、伝えよう。」


「あ゛あ゛、じに゛だく、な・・い・・・・・・・」


 彼女の目から命の光が消えていくのが感じられる。死にたくないとの言葉を最後に彼女は静かに眼を閉じた。

彼女がどんな人生を歩んで、なぜ悪魔の協力をしていたのかは分からないが、何となく彼女が今際いまわきわに零した復讐という言葉に最後まで取りつかれていたのだろうと思った。



「れ、蓮~!貴様、よ、よくもやってくれたな!!」


脳裏に響くその言葉に運河の方を見やると、全体的にぼろぼろで一部の肉が大きくえぐれた姿のリヴァイアサンがゆっくりと近づいてきていた。


「はぁ。指示入力、チャンネル無人機に切り替え、全機発進。射程圏に入り次第しだい1号から3号まで攻撃開始。」


耳に掛けている一見補聴器の様なハンズフリーマイクに向けて、遺跡に待機させているミサイルを搭載した無人偵察機を呼び寄せる。すると10数秒でミサイルの巡行音が聞こえて来る。と次の瞬間にリヴァイアサンに次々着弾していく。


「ぐ、が、くそ。こんなもの!」


苛ついた声が聞こえるが、以前の威力偵察の時のようにまるで無傷という感じではなかった。


(最初の着弾で防御能力が低下したのか?わざわざラリサにカウントダウンさせたのはレールガンの威力に防御が耐えれる自信が無かったという事か?)


相手の防御能力が低下したと仮定し、手近な岩に封印を施しその陰に身を潜ませーーー


「指示入力、チャンネル屋上に切り替え。発射!」


直後先程よりは少ない衝撃波が辺りを襲う。確認の為に岩から頭を出すとそこには、頭部がどこかに吹き飛んでいるリヴァイアサンがゆっくりと崩れ落ちるところだった。


「まだだ、まだ終わっていない。必ず貴様を絶望のうちに殺してやる!誰が裏切っているか不安を抱きながら過ごすんだな!」


 脳裏に聞こえたその言葉を最後にふと魁人の存在が消えたような気がした。どんな原理で憑依をして、憑依した対象が死ぬとどうなるかは分からないが、先の口ぶりから魁人が消滅したわけではなさそうだ。

ただ、今は今後のことを考えることよりも先にやることがある。


「さぁ、リヴァイアサンは排除したから次は残りの魔獣達だな。全く我が兄ながらどこに行っても迷惑な。」


身内への愚痴を零しながら残敵掃討のためにスマホを取り出し、みんなと連絡を取り合った。


次回更新は3月7日の予定です。

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