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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
43/61

42 裏切り

連投2話目です。

 レールガンから打ち出された砲弾が外れた直後にその異変は起こった。


(なんだ!?体が動かない?)


 それはまるで私が以前に自らの服に封印を施したように身体が動かなくなってしまっていた。顔は動くので周囲を見渡してみると、ラリサがいつの間にか私の背中に触れているようだった。


「ラリサさん何をっ!?」


パメラが叫び私に駆け寄ろうと動き出すと、ラリサはテーザーガンを彼女に向け躊躇ちゅうちょなく引き金を引いた。予想外の出来事に目を見開いたまま撃たれたパメラは地面に転がってしまう。


「「「なっ、何で?」」」


 カレン達は何が起きたのか理解できないといった様子で何もできずにいた。次の瞬間、ラリサは素早い動きでカレン達に近づき懐からスタンロッドを取り出し、みんなを次々に昏倒こんとうさせていく。そして、こちらを振り返ったラリサは鋭い視線を私に向けていた。そんな彼女に私は極力平静を装って話し掛けた。


「裏切っていたのはラリサさんだけですか?」


「さぁ、どうかしら。」


素っ気ない返事と、ワイバーンの獣人特有の目から中々真意を読み取らせてくれない。


「・・・驚かないのね?」


「いえ、十分驚いていますよ。動けないことも、あなたの行動も。」


 彼女が裏切っていたのであれば先程のレールガンはかわされたのだろう、あのカウントダウンによって。


「悪いけどここから移動してもらうわ。そのスマホは私が預かるわ。」


そう言うと彼女は私が握っていたスマホを強引に取り、口笛を鳴らす。すると近くに隠れていたのかワイバーンが飛んできた。動けない私を担いでそのワイバーンに乗せると、彼女は自らの翼で飛んで行こうとする。


「ま、まって・・・ラリサさん、どうして・・・こんな・・・」


地面に横たわっていたカレンが弱々しい声でラリサに理由を聞く。


「あなたには分からないわ。獣人として生きることに満足しているあなた達にはね。」


「・・・・・・」


冷たい視線を同胞にも向ける彼女にカレン達は誰も何も言えなかった。




「私をどこに連れていくつもりですか?」


「あら、大方予想は出来ているのではないのですか救世主様?」


ワイバーンに乗せられて大空を飛びながら、顔だけを動かして隣を飛んでいるラリサに聞いたが、皮肉な言い回しでこんな返答をされてしまった。


「悪魔から同胞を売るに足るだけの条件の提示ていじがあったという事ですか?」


「・・・何とでも言えば良い。私の目的は最初から最後までそこにある。仲良しごっこの為に生きている訳じゃない。」


そう言う彼女の横顔は憎悪に染まっていた。


・・・・・・・・・・・


side ラリサ


 私の人生は苦痛でしかなかった。


 私の母親は普通の人間だった。そんな母がある日ワイバーンの獣人に襲われた結果、望まれない子として私は産まれたらしい。

思い返してみても、小さい頃の記憶はそんなにないが、母親が子供に向ける愛情らしい愛情は与えてもらえなっかたと思う。何となく覚えているのは、いつもきゅうきゅうお腹を鳴らしていたことくらいだ。


時は流れ、物心ついた頃には奴隷商人に私は売られていた。最後に覚えている母親の言葉は、「もっと高く売れると思って育てたのに!」というまるで不要品を処分するような言葉だった。


 奴隷商人に連れていかれた場所には私の他にも多くの幼い獣人達が居た。そこでまず首に黒い首輪を着けられた。そして次に連れてこられた幼い獣人たちを部屋に集めた。そこには壇上に何かを手に持った奴隷商人と私達より少し年上に見えるミノタウルスの獣人の少女が同じ首輪を着けて、うつむきながら涙を流していた。

そんな少女を一顧いっこだにすることもなく隣の商人はでっぷりとしたその体形通りの野太い声を張り上げた。


「全員よく聞きなさい!この獣人の娘は売られた先で主人の命に逆らい、事もあろうか怪我をさせて逃げ出したのだ!これは断じて許される事ではない!お前たちもその事をよく理解しておくことだ。そんな事をしでかした者の末路を!」


次の瞬間、壇上に居た少女の首が飛んでいた。周りからは耳をつんざくような悲鳴と泣き声。そして壇上の獣人の少女だった体は勢いよく血を流し、糸が切れた人形の様に床に倒れ伏し、「ごとっ」という音と共に頭が落ちた。

その様子を私はどこか自分とは違う世界の出来事のように見ているだけだった。


「静まれっ!!今からお前たちの生き方を説明する!」


奴隷商人の大声にシーンと辺りは静まりかえり、周りのみんなは泣きそうになる口を必死に手で押さえながら壇上の商人の言葉に耳を傾けていた。


「良いか、これからお前たちは新しい主人の元で生活することになる。そこで言われたことは全て従え!いいか、どんな事にも従え!拒否することは許されない!その時はお前たちが今見た通りだ。分かったら返事をしろ!」


「「「・・・・・・・」」」


 誰も何も言えずにいた。そこにあるのは何故、どうして自分がという、現状への嘆き悲しみ、あるいは諦めだった。

私達が返事をしなかったからか、段々と商人の顔が苛ついたものになり、手に持っていた何かが光るのが見えた。すると、私達が集まっていた真ん中辺りからまた頭が宙を舞い、血の雨が降ってきた。


「「「キャー!!」」」


再びの阿鼻叫喚だった。そして壇上の奴隷商人はサディスティックな眼をしながら声を張り上げる。


「黙れ!!私は返事をしろと言ったのだ!お前たちはただ返事をすればよい!そして人間のいう事を聞かなければ死ぬと言ったはずだろ!分かったか!?」


「「「・・はっ、はいっ!」」」


もはや分かっていてもいなくても、ただ「はい」と返事をするしかない。そうしなければ私たちは殺されてしまうのだから。


 それからはもっと地獄が待ち受けていた。私達をオークションにかけるため見栄えを気にしてか、冷たい水で身体を洗わされ、突貫着を着させられる。

次々に皆が売られていく中、私を買ったのは裕福な商人の人間だった。引き渡された時に私が見たその人間は自分のお腹で足元が見えないようなでっぷりとした体形に禿げた髪、少し歩けば豚のようにブヒブヒと荒い呼吸をしていて、嫌悪感しかなかった。


 そいつに連れられて、屋敷の一室に私は監禁された。大きいベットがあるだけで他には何もない、ドアには外からカギが掛けられ、窓には鉄格子がめられていた。

それから週に1度はそいつが来て、鞭や素手で私を痛めつけた後、私の上げる悲鳴を心地よさそうに聞きながら夢中で行為に及んでいた。


 そんな日々が3カ月も経てば心が壊れるのは簡単だった。私は何も反応しない人形の様になっていた。ただ、そいつはそれすらも楽しんでいた。時には翼を切り落とし、うめく私を笑いながら行為に及び、終われば回復の魔石で再生させるなどと、およそ理性のある者がする事とは思えない事までされた。


 それから2年経った頃に変化が訪れた。悪魔が現れたのだ。耳元でささやかれた言葉に私は心を取り戻し、歓喜した。

悪魔の言葉を聞いたその晩、あいつがやって来て、いつものように私を痛めつけようとした時屋敷中に悲鳴が広がった。あいつも状況を確認しようと扉を開けると、そこには屋敷の警備をしていた人間の首を持っているワイバーンの獣人に憑依している悪魔がいた。あいつが悲鳴を上げながら尻もちをつき必死に後ずさりしていると、悪魔が私にナイフを放ってきた。


「約束だ、復讐の機会を与えてやろう。殺し方は分かるな?」


ナイフの刀身に映った自分を見ると、その顔は目がくぼみ死人のような顔をしているが、口元だけは三日月の様に笑顔だった。


「や、やめろ!命令だ!俺を助けろ!ここから逃がせ!」


あいつは私に命令してきた。助けろなどと今の自分の状況が理解できていないらしい。腰が抜けているのか這い寄って来たあいつに私は笑顔でナイフを横に振った。


「はぴゅ?」


あいつは手に持っていた道具を投げ出し、自分の首を押さえたが、流れ出る血は止まることが無くヒュー、ヒューと変な音がするだけだった。私はあいつを蹴り倒し仰向けにすると今まで自分がされてきた拷問を一通りやった。全てやり終わったころにはあいつはとっくに事切れていた。


「・・・く、くく、あっははははははははははははは!人間よわっ、脆っ、何でこんな奴らにいい様にされていたんだ。」


最高の気分だった。私をしいたげていた奴が私に成すすべなく虐げられる。


「ヤバイ、楽しすぎる。人間なんてその辺にいくらでも居る。いくらでも楽しみがある。あ~、これからの私の人生楽し過ぎじゃん!」


しばらく愉悦ゆえつに浸かっていると悪魔が話し掛けて来た。


「満足したかな?人間ごときいくらでも殺して構わんが、私との契約も覚えているね?」


 悪魔に凄まれ視線を合わせると、心臓を握られているような感覚が襲ってきた。ただ目が合っているだけで私は悪魔に絶対に敵わないのだと本能が告げているようなそんな感覚になる。悪魔は私に近づき首輪をどうやってか外した。その様はまさに絶対者だった。


「は、はい勿論です。」


「よろしい。君が契約を果たせば私も約束を守ってあげよう。」


「あ、ありがとうございます。しかし、そんな不確かな契約で良いのですか?」


「ふふふ。不確かではないよ。これは確定した未来さ。」


「かしこまりました。ではまず獣人の拠点へと向かいます。」


「ああ、よろしく頼むよ。ただそんなに急がなくても大丈夫。多少人間と遊んでいくがいいさ。」


 そう言って悪魔は身をひるがえし、闇に紛れて消えていった。残された私は屋敷を調べると、すべての人間は四肢がもげて息絶えた状態だった。とりあえず綺麗な服に着替え、当面の金銭を手頃な袋に詰め込んでその屋敷を後にした。


あの時から8年、私はついに悪魔との契約を果たす時が来たのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さぁ着いたわよ救世主様。悪魔アバドン様の御前よ。」


運河まで連れてこられワイバーンから乱暴に降ろされると、動けないため不格好に地面に転がってしまう。そこには見上げるほどの巨体を誇るリヴァイアサンが岸まで近付いていた。首をもたげ、その大きな顔が眼前へと迫って来た。


そしてーーー


「残念だったな。お前はこの世界で俺に痛めつけられ、殺されるためだけに呼ばれたんだよ!!」


その悪魔の憎しみがこもった言葉を私は聞いた。

続きます。

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