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転移者は異世界で笑う  作者: 黒蓮
42/61

41 カウントダウン

今回も3話の連投です。

最近はコロナウイルスで大変ですが、皆さんは大丈夫ですか?外に出ずらい状況なので、家にこもって小説を読んでのんびり過ごすのもいいと思います。

 翌朝4時。悪魔の軍勢に対する不安があったのか、普段より早い時間に目が覚めた。外はまだ薄暗く静寂せいじゃくを保っている。


「監視部屋に確認に行くか。・・・うわっ。」


 現在のリヴァイアサン達の状況を確かめるべく部屋を出て監視部屋に向かう為に部屋から出ると、そこにはカレンを除いたひざまずいた姿勢の牛娘達4人が居た。


「「「「おはようございます。何かご用事がおありでしょうか?」」」」


4人のぴったりと息の合った挨拶に目を丸くするほど驚いてしまう。


「い、いや、監視部屋に行くだけだよ。・・・いつからそこに居たんだい?」


「はっ!御身に何もない様に、またいつご用事が出来るか分かりませんので、昨夜火乃宮様が部屋に戻られてからずっと待機しておりました。」


代表して一番体格の良いパメラが答えた。


(・・・信頼されることは有難いんだけど、これは信頼ではなく崇拝だな。しかも今の説明だと彼女達は睡眠もとらずにずっとここに居たことになるんだけど・・・どこのブラック企業ですか・・・)


「ありがとう。でもそんなに気を張らなくてもいいからね。それにもっとフレンドリーに接してくれてもいいから。」


「「「「はっ!ありがたき幸せ!ですがどうか我らの忠誠をお受け取り下さい。」」」」


 管理職として会社に勤めてはいたが、私が目指していた職場は楽しい雰囲気だった。仕事は楽しくなければ結果も出ない。風通しが良くなければいい改善案も共有されない。

 この雰囲気が一概に悪いというわけでは無いかもしれないが、彼女達との間に壁を感じてしまう。これからの建国にあたってはみんなの意見も聞きたいのにこの状況は周りから見たら威圧感を与えてしまいそうだった。


「分かったから。あまり仰々《ぎょうぎょう》しいのは遠慮してね。」


「「「「かしこまりました!」」」」


 分かってくれたのかくれなかったのかは追々考えるとして取り合えずこの問題は棚上げして監視部屋へと足を向けた。


 部屋に入ると壁際の椅子に綺麗な姿勢のまま眠っているシエラと、この時間でもモニターに集中しているユーリとジョシュの姿があった。


「おはよう。二人ともちゃんと睡眠は取ったのか?」


2人も寝たように感じられなかったので聞いてみた。するとユーリが笑顔で振り返りながら答えてくれた。


「大丈夫ですお父様!獣人って体力あるんで、1日寝ないぐらい何ともないんです!」


「そ、そうなんだ。それで魔獣達に変化はあったかい?」


徹夜ハイの様で変にテンションが高く、まだ呼ばれたことのないお父様という敬称を使われて、なんだか照れ臭く感じてしまった。


「いえ、特に変化は無かったです。魔獣達も帝国で確認されていたおおよその数と種族でした。」


答えたのはジョシュだった。


「そうか、ありがとう。では今のところ予定通りだな。」


そう言うと後ろに待機していた4人が息ピッタリに私に賞賛の言葉を掛けてくる。


「「「「さすがは火乃宮様!全てはあなた様のてのひらの上の出来事でございますね!」」」」


そんな彼女たちの発言に2人は驚いた表情を見せた。


(その驚きは彼女たちの態度か、それとも発言の内容か?)


「お父様凄いです!全て読み通りに事は進んでいるのですね!」


「いや、まぁそれは、ある程度のデータから想定出来るからね。」


(あっ、周りからの視線が凄い。)


 今の一連のやり取りの中で私に対する評価が、どんな予想外の事も想定してましたと言わんばかりの行動をしないといけないようなプレッシャーとなって圧し掛かってくる。

 評価とは相手に対する理想像でもある。求められる理想像が現実からかけ離れていくと、そのギャップに失望されてしまう。今後はなるべくそのギャップを生ませないように理想像のハードルを下げないといけないと考えながら監視部屋を後にした。



(何だかみんなの私に対するイメージが変な方向に行っているな・・・あんな眼差しを向けられたら失望させたくないと思ってしまうな。・・・ここを出発する前に使わないと思うがもしもの備えを置いていくか・・・)


 この世界では会社で働いていた時以上の責任感と仕事量だが、だからといって自らのキャパシティに不安を抱えるようになってはいけない。国をおこすと決めた時から私が下す全ての決断は正しいのだという確信を持った指示と行動が必要なのだ。


ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー


 時刻は午前7時。

既に私達はリヴァイアサン狙撃の為にレールガン設置場所へと来ている。被せていた漆黒の布を取ると昨日から変わらぬ姿の兵器が現れる。細かく確認しても特に誰かが弄った形跡は無かった。

 もう一つの封印してしまっていたレールガンは少し離れたところに迷彩の布を被せていたが、こちらも特に問題なかった。ただ、迷彩柄の布を作り出す時に、どの程度まで精密に創造できるかイメージしてみたところ、数メートル離れるとまるで分らないくらいの精度の物が出来たので、遠目から探した時には見つからなかったほどだった。とはいえ、創造するのにかなりの集中力と詳細なイメージをしなければならず、時間もかかったため2枚目は簡単な黒一色にしてしまっていた。


 簡単な整備も終わったところで、既に手伝いの牛娘5人は私の前に綺麗に整列している。


 あの後いくつかの保険を準備してから朝食を食べていると、寝ぼけまなこのカレンが食堂にやって来た。ただ登場と同時に牛娘4人組に両脇を抱えられものすごい勢いで廊下に連れ出されたかと思うと、何やら大きな声で説教を受けているようだった。断片的にだが「忠誠心が・・」とか「親衛隊の気構え」とかのフレーズと共に「ふえ~、ごめんなさ~い!!」と言うカレンの大声が食堂にまで響き渡って来た。

さらにその後私の席にスライディング土下座をしながら、「ごめんなさい、どうか私を見捨てないでください~!」とさらに大声で言うものだから朝から周りの視線が痛かった。その場はとにかく誤解がない様に事の顛末を周りに聞こえるように4人から話させて何とか事なきを得たのだった。


「まったく、朝の騒ぎのおかげで緊張感が台無しになったな。」


「ふみゅ、ごめんなさい。」


あからさまにカレンの表情に陰りが差す。

そんなカレンに近づき、頭を撫でながら感謝を伝える。


「冗談だ。おかげで肩の力が抜けたよ。みんなありがとう。」


(そうだ、仕事は楽しく。そして結果も出すのが私だったはずだ!)


 ミサイルが効かないという未知の生物との戦いに際して私はかなり緊張していたようだ。とにかく勝たなければ、みんなを守らなければという思いが先行してしまい、自分に余裕がなくなっていた。

 

私の言葉にカレンは頬を赤らめながら飛び切りの笑顔を見せてくれた。ただ他の4人は嫉妬のようななんとも言えない顔をしていたので順番に頭を撫でることにした。パメラは私より身長が高いので頭を下げて欲しいと言うと、跪いて涙を流しながら顔を真っ赤にしていた。そしてそれは続く3人も同様だったので、彼女たちについてはもう流れに身を任せようと諦めた。


 リヴァイアサン迎撃の準備も整い、あとは他の獣人達の配置が完了すれば先制攻撃に移ることになる。無人偵察機によって映し出されている様子には大きな運河の中央付近を悠然ゆうぜんと進むリヴァイアサンと、その後方にはクラーケン、上空にヒュドラを従えているのがスマホ経由で見えていた。リヴァイアサンが大き過ぎて本来巨大なクラーケンは相対的に小さく見えてしまうので、大した相手ではないように錯覚を起こしてしまいそうだった。ケルピーに至ってはもはや豆粒の様に映し出されている。


 徐々に近づいてきているその距離10キロは十分レールガンの射程距離の範疇はんちゅうにあるので、全員の準備が整い次第攻撃に移るとスマホで告げた。


 するとそんな中、上空を偵察をしているラリサが降りて来た。


「火乃宮様、上空から確認いたしました。皆準備は完了いたしました。」


「分かった、思ったより早かったね。でもスマホで連絡してくれればわざわざ来ることもないよ。」


「いえ、《《最後の》》報告は直接させて頂いた方がよろしいかと思いましたので。それにもしリヴァイアサンからの反撃があった場合は、《《一つしかない》》この兵器を守るために私も力になりたいですから。」


「そ、そうか。じゃあ少し離れて耳を塞いでくれ。」


「待ってください。カウントダウンはされないのですか?」


急にぐっと顔を寄せ、そんなことを聞いて来た。耳を塞ぐから意味はないと思ったが、やけにカウントして欲しいと迫ってくるので別に良いかと考えた。


「あ、ああ。じゃあ3秒前から始めるからみんな準備してくれ。」


みんなが離れて耳を塞いでいるのを見て、スマホで照準が問題なくリヴァイアサンの胸部になっていることを確認し、大きな声でカウントダウンを口にする。


「いくぞ!3、2、1、発射!」


直後閃光と共に響き渡る轟音。そして・・・



「・・・はっ、外した!?」


 偵察機の映像からはレールガンによって引き起こされた巨大な水柱と着弾した砲弾自体が持っている熱から発生した水蒸気が辺りを何も見えなくしていた。そして数秒後うっすらと見えるようになった映像には悠然とたたずむリヴァイアサンがそこに居た。


(ありえない!発射から着弾までのタイムラグは無視できる時間だ。つまり発射時に照準していればほぼ確実に当たるはず。魔力的なバリアを突破出来なかったか?もしくは・・・とにかく映像解析をーーー)


 先制攻撃のレールガンが失敗した為原因の解析を優先しようと考え、∑(シグマ)の映像解析を確認しようとした時にそれは起こった。いや、起こってしまった。私が想定した中で起こって欲しくないと思っていた出来事・・・しかし想定してしまっていた出来事が。

続きます。

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